2013年に中島大地によって結成されたエンターテイメントユニット・TRIBEが、初のプロデュース公演『To Row〜二匹の狼〜』を上演する。新撰組をモチーフに“正義とは?”を問いかけるこの作品こそ、役者集団としてのTRIBEの本当のスタートと言っていいだろう。TRIBEメンバーから船木政秀と、同作で坂本龍馬を演じる汐崎アイルを迎え、大いに語り合ってもらった。
役者自身の人間性を見てもらう
――― 結成以来、ツイキャス(ライブ映像配信)やイベントという形で、いわゆる役者集団とは少し違った活動を展開してきたTRIBE。そこには「役者自身を見せる」という狙いがあった。
中島「単純に役者一本に絞ってやっていくと、どうしても自分で幅を狭めてしまうのが
もったいないと思っていて、まずツイキャスで僕らがどういう人間であるかを提示しようと。役柄ではなく自分自身の人間性を見てもらうということですね。アイドルやダンスユニットをやっている先輩たちのイベントを観て、こういう方向性もあるんだと思ったのがヒントになりました。あと、アフタートークにもかなり憧れがあって、でも最初はどうしても出してもらえないので、だったら自分たちでイベントをやってみて、お客様がどのくらい僕ら自身に何かを求めてくれるのかを見てみたいと思ったのもきっかけの1つです」
船木「僕は今年からTRIBEに入りました。もともと大地さんの名前だけは知っていたのですが、去年の6月に一度共演させていただいてから、すごく仲良くなって。それで、12月にまた共演させていただいたときに、もしよかったらTRIBEに入らないかと声をかけてもらったんです。イベントとかツイキャスとかは僕も経験がなかったのですが、お客様やファンの人ともっと触れ合いたいという気持ちもあったので、入らせていただくことにしました」
中島「僕らが生かされてるのもファンの方のおかげだと思っているし、そんなお客様と身近に接することが、個人的に一番力になったりする。人の笑顔やエネルギーを間近で感じられる状況を作りたくて、イベントをバンバン打ってきました」 船木「ツイキャスに反響をもらったり、イベントで“舞台楽しみにしてます”って話しかけてもらったりして、もっとこれからも頑張らなきゃなって本当に思うようになりましたね」
――― そんなTRIBEの姿勢に、今回客演する汐崎も共感を寄せる。
汐崎「僕が一番大事にしているのは、自分が楽しくて、他人も楽しんでもらうということ。それ以外は二の次なんですよね。楽しくなるためには苦しい思いとか痛みもあると思うんですけど、それも分かち合えるというか、こいつとだったら一緒に転んでも痛くないし笑っていられる、っていう人たちと仕事をするのが楽しい。そんなことを踏まえて一緒に作品を作っていけたらなと思っています」
中島「以前共演したときから、アイルと一緒に作品を作りたいという思いはずっとありました。彼の方からも一緒にやろうって言っていただいて、今回の形が作れたことにとても満足しています」
船木「ほんと、すごいメンバーが揃いましたね。逆に恐いくらい(笑)。ここからスタートしていくわけなので、絶対に成功させなきゃって思います」
熱く楽しく、提案し合える現場に
――― 『To Row〜二匹の狼〜』は、「今までの新撰組もので主役をやっていない人に目を向けたかった」(中島)というアイデアから、原田左之助にスポットを当てる。その原田と行動を共にすることの多かった永倉新八を中島が演じ、船木が演じるのは“人斬り”河上彦斎。“二匹の狼”というタイトルは、原田と永倉の2人を指すものだ。
中島「最初は新撰組を描くというより、正義というものに対する疑問から始まりました。正義って、とても体(てい)のいい言葉というか、立場や目線によって何が正義かは変わってくる。それは誰もが日常生活の中で感じていることでもあるし、時代を遡ってみても、歴史上で起きた対立はみんな正義のために戦っていたと思うんです。そういうところから、世の中が大きく動いた幕末という瞬間をとらえてみようと発想して、新撰組に行き着いたという感じです。
もともと父が大衆演劇の役者なので、僕も歴史物が好きだったというのもあります。今の視点からするとファンタジー的にも見えて、魅力的だなと思うんです」
船木「僕も戦国時代とか幕末ものはすごく好きで、去年、新撰組の舞台をやらせていただいたときも(『人狼TLPT×新撰組 -壬生村の狼 至誠の巻-』)、やっぱりいいなと思いました。今までの新撰組ものとは全然違う、すごい作品にしたいですね」
汐崎「僕は幕末ものの作品にけっこう出ていて、すごくご縁を感じるんです。以前、新撰組ものの作品に出たときは伊東甲子太郎の役をやったので(2013年『FROGー新撰組寄留記ー』)、今回はやっと開国派になれました(笑)。新撰組については一般教養くらいのことしか知らないのでいろいろ調べたのですが、情報はたくさん残っているけど、本当にそれが事実だったかどうかは当時の人にしかわからない。だから僕らはその人たちの“気持ち”を大事にして、作品を面白くしていけばいいのかなと。ちょっとSFチックな要素が入ってきてもいいと思うし。新撰組だけに、新鮮な気持ちで挑めたらなと思います(笑)」
中島「うまいな〜(笑)」
汐崎「坂本龍馬って、調べれば調べるほど剣術に長けていたらしいので、その強さをストレートに見せると堅苦しい殺陣になっちゃうけど、それこそフィクションでもいいから、こうやったら面白いんじゃないの?って想像してもらえるような舞台になるといいよね。さっき言った新撰組の作品では、船木と一緒にけっこうトリッキーな動きをしていたし」 船木「槍の先がパカッと2つに分かれたりとか(笑)」
汐崎「そういうのって、ロマンだと思うんですよ。くだらないことでも何でもいいから、いっぱい話し合いながら作っていけたらなと思います」
中島「今回はASSHのメンバーも2人参加してくれるので(鵜飼主水、ヒロヤ)、殺陣とか小道具に関してアイデアがあれば大いに採用したいですし、役者陣はみんな、僕がつけた演出に対しても何かあればどんどん言ってほしい。劇団さんとかは別として、外部からたくさんのメンバーを集めて舞台をやるような演出家で、僕くらいの年齢の人ってそんなに多くないと思うんです。だからこそ、もっと切磋琢磨していきたいし、それこそ喧嘩したいくらいの気持ちでいる感じです」
汐崎「カンパニーって、仲良くなろうとすれば表向きにはすぐ仲良くなってしまうところがありますよね。でもそうじゃなくて、熱く楽しくやっていれば勝手に仲良くなれる。そのためにも、お互いにいろんな提案をしていける現場になればいいなと思いますね」
漫画化・アニメ化されても面白そう
――― こうして、TRIBEの新たな始まりにふさわしいステージが用意された。あとはもう楽しむだけ。ツイキャスやイベントで彼らのことを追いかけてきた人はもちろんのこと、多くの演劇ファンにとって、役者同士がエネルギーをぶつけ合う姿は見逃せないものになるだろう。
船木「まだまだTRIBEのことを知らない人たちにも僕たちのことを知ってもらって、もっと僕たちの作品を観たいと思ってもらえるように、まずは今回の公演を成功させたいです。観に来てくださるお客さんにも少なからず不安があると思いますけど、大地さんの作品は絶対に期待を裏切らないし、そのために僕ら役者も、皆さんに楽しんでいただけるような作品を全力で作っていきたい。そして、もっともっと上を目指していきたいと思っています」
汐崎「いつもどおり楽しみながら、“こんな坂本龍馬もありだな”って思ってもらえるように、自分のできることを精一杯やります。こんな言い方をしていいかどうかわからないですけど、これを漫画化とかアニメ化したら面白くなりそうな、たぶん観たことのない新撰組をこのメンバーで作っていけるんじゃないかなって思います。だから舞台先行ですよ!(笑)ぜひ観に来てください」
中島「実は本を書いているときから、これを漫画化したいっていう思いはあったんです。今、2.5次元って言われる作品がかなり多いですが、これは3次元から2次元にいくという。本当にそうなったらすごいですけど(笑)、そのくらいの気持ちで僕らは作品を届けていきます。観に来てくださった方の活力になるものを届けたいし、それができる役者陣が揃っているという自信もありますので、ぜひ劇場に足を運んで、何かを感じて持って帰っていただければと思います」
(取材・文&撮影:西本 勲)