昨年2月、多方面で活躍している中野裕理が企画・演出・構成・振付さらには出演もした舞台「隣のきのこちゃん」が上演。その第2弾が約1年ぶりに公演される。全3話のオムニバス形式で綴られていく物語は、考えることよりも心から楽しんでもらえるような内容になっている。今回、企画・演出を行う中野裕理、そして中野が想い描く構想を描き起こした脚本家ムラコ、主人公である「わたし」を演じ、中野と10年以上の仲である田中精にこの公演の成り立ち、意気込みを語ってもらった。
何も考えなくて見てもいい
――― 2015年2月上野ストアハウスにて上演された『隣のきのこちゃん』。驚くべきところは女優の中野裕理が企画・演出・振付そして出演と4足の草鞋を履いての公演だった。
中野 「最初は誕生日の2月3日に何かイベントをしたいと話していて、カフェバーでコントやダンスをしたいですと相談していたら膨らんでいって舞台になりました。」
――― その1年後、2作目の『隣のきのこちゃんpart2〜プロポーズはオドローゼ〜』の公演を控えることとなった。
中野 「『隣のきのこちゃん』を公演する事になったとき、part3まではやりたいと思っていて、Part1が終わってすぐにpart2の公演が決まりました。前回のは、蓋を開けるまで謎に包まれているってお客さんに言われていました(笑)本当に何も考えなくて見ていいんだと思われ始めてから、客席から笑いが起こり、最後にはお客さんから「こういう舞台は、初めて見た」って言ってくださるようになりました。」
理想に近づけた脚本と主人公
――― 中野の理想の構想に近づけたのは、お笑い芸人で多彩なセンスを放つ脚本家ムラコ。
中野 「同じ事務所に所属されていて、いろんな方から評判を聞いていたんです。そのあと、ムラコさんの脚本の舞台を初めて見に行ったんです。その時に、私の好みの内容で面白いなって思っていて、きっと私の想いをわかってくれると思いました。すごい、柔軟な方なのかなって感じました。」
ムラコ 「自分で脚本・演出もやっているので、他の人のプロットや意見の元、書いてみたいっていう欲求があったんで楽しかったです。密に連絡を取りあって2人で会って、とにかく中野さんから引き出して、聞いて、プロットも二人で考えました。」
田中 「今回、初参加で台本を読んだ時に、これは中野さんの世界観なのか、ムラコさんの世界観なのか、どっちが主導なのかが気になったんですけど、中野さんの世界観ということなんですね。」
中野 「そうなんです!私の箇条書きした構想をすごい汲んでくださって、しかも広げて書いてくださいました。」
――― 主人公の「わたし」を演じるのは、中野と10年来の仲である田中精。彼自身、中野が演出をすることに衝撃を覚えた昨年。その衝撃からすぐにオファーがかかった。
中野 「役としては、冴えない人を探していたんです。演技力は大前提で、さらに、常にツッコミを入れてもらいたくて、常識人で柔軟な人が良くて。そう思ったときに、精さんが経験もすごい豊富な方ですし、とにかく常識がある方でキャスティングさせてもらいました。」
田中 「part1がどういう作品だったんだろうって、ちょっと気になっていた時にオファーをいただきました。「精さんが主役で!」というプッシュもあって嬉しかったです。頂いたストーリーに「わたしは、会社をリストラされ、彼女にもフラれました。」って書いてあって、これがぴったりと言っていただいて、思わず「えっ!えっ!?」ってなりましたけども(笑)でも、思い当たる節があったので否定はできないなって、そういう意味ではすごいなって。」
中野 「ダンスも殺陣もやられている方なので動ける方が良かったというのもあります。」
田中 「10年前ぐらいからの知り合いなんですけど、その時は演出をするなんて、これっぽちも思っていなかったので、今回は誘っていただいて本当に嬉しかったです。」んですけど、中野さんの世界観ということなんですね。」
中野 「そうなんです!私の箇条書きした構想をすごい汲んでくださって、しかも広げて書いてくださいました。」
――― 主人公の「わたし」を演じるのは、中野と10年来の仲である田中精。彼自身、中野が演出をすることに衝撃を覚えた昨年。その衝撃からすぐにオファーがかかった。
中野 「役としては、冴えない人を探していたんです。演技力は大前提で、さらに、常にツッコミを入れてもらいたくて、常識人で柔軟な人が良くて。そう思ったときに、精さんが経験もすごい豊富な方ですし、とにかく常識がある方でキャスティングさせてもらいました。」
田中 「part1がどういう作品だったんだろうって、ちょっと気になっていた時にオファーをいただきました。「精さんが主役で!」というプッシュもあって嬉しかったです。頂いたストーリーに「わたしは、会社をリストラされ、彼女にもフラれました。」って書いてあって、これがぴったりと言っていただいて、思わず「えっ!えっ!?」ってなりましたけども(笑)でも、思い当たる節があったので否定はできないなって、そういう意味ではすごいなって。」
中野 「ダンスも殺陣もやられている方なので動ける方が良かったというのもあります。」
田中 「10年前ぐらいからの知り合いなんですけど、その時は演出をするなんて、これっぽちも思っていなかったので、今回は誘っていただいて本当に嬉しかったです。」
迷わずに進みゆく物語と演技
――― 前回同様、ジャンルとしては「ダンスコント」。このダンスコントという意味も伺った。
中野 「ダンスコントの意味について、去年、論争しました。結果どっちでもないってなって。脚本の中はコントがベースなんですけど、3話のオムニバス形式で、1話終わりごとにダンスをしていましたので。」
ムラコ 「僕、普段芸人で、コントをずっと書き続けてきたんですけど、たしかにダンスコントの意味が分からなかったですね。ダンスは完全に任せているわけですから、だから、コント&ダンスですよね。ちゃんとパートを割っていて、物語の筋にも乗っかっているので。」
中野 「あ、コント&ダンスかもしれませんね(笑)」
ムラコ 「脚本はスピーディーに書いたので、ダンスもありますし、音楽もいっぱい入ってくると思います。めちゃくちゃな部分は役者さんに思いっきりやっていただけたらと思っています。」
田中 「これ迷ったら、負けだなっていうのが多いですよね。」
ムラコ 「全部青信号なんです。本番中、芝居で迷わないようにとにかく進めというのがあります。」
田中 「これは何?って思ったら、いろんなループに陥るから、出てくるもので、面白そうだなっていうところをチョイスしてもらえたらいいのかなって思います。あとは、1つのジャンルにとらわれず、見たままに感じてもらったほうが良いかもしれません。」
ムラコ 「チラシなんかに、伏線は一切ありませんって書きたいぐらいです。」
中野 「世の中が難しいので、ここでは何も考えずに見て欲しいです。」
ムラコ 「今、世の中難しいって言いましたけど、中野さんが一番難しいですよ、我々からすれば(笑)」
中野 「あと、出演者にも注目してほしいです。個性派で、キャストさんの個人の力が見どころっていうのもあります。」
田中 「僕は、台本を読ませていただいた時点で、これがどういう形になっていくのかが、想像しにくかったんです。でも、文字で読むものじゃないと感じていて、中野さんの中にあるものを文字にして、僕らが形にしていくという、とても演劇的な作業が密に出るのが今回の作品だと思います。」
――― 無心で楽しんでいただくこと、そして中野ワールドを表現するために、この寒い季節を稽古で駆け抜けていく。その先に待つ春にハッピーを届けるためにも。
ムラコ 「11月に誰よりもきのこちゃんのことを考えていました。次は中野さんや役者さんもプランを練っていただいて、本番を迎えていただければと思います。」
田中 「この世界観の中で主役に選んでくれたことに、まず大感謝です。その反面、この世界観をどう再現できるかを、僕の中の1つのハードルにしていきたいなと思います。また今回、初共演のキャストさんも多く、この新しい出会いで作品をどう作っていくのかが楽しみです。中野さんの世界観も新しいので、今まで僕が経験したことのない作品ができるんじゃないかと思っています。新しいことにチャレンジできるという気持ちでワクワクしているので、それが作品に出せたらいいなと思います。」
中野 「3作品目が2時間の演目で、壮大なファンタジーにするっていうのが野望にあるので、次に繋げるために、今回を死ぬ気でやらないといけないと思っています。あと、最近、不景気気味なので、気持ちだけでも景気の良い作品にしたいなって思っています。不安や迷いとかが先行してしまう時代ですが、この作品の世界観を一生懸命全力で演劇という畑で作ってきた力を使って表現して、誰にでも思う不安を、そこまで不安にならずに取っ払ってもらえたら嬉しいです。その為には、私自身、この期間は『隣のきのこちゃん』の脳みそで行きたいと思っています。」
田中 「大丈夫だよ、『隣のきのこちゃん』が君の脳みそみたいな作品だから。」
(取材・文:熊谷洋幸 撮影:安藤史紘)