未成年犯罪者を集めたプルガトリウム更生学院を舞台に繰り広げられるハードコア系ラブコメ作品『サイコメ』が、3月に上演される。舞台ではオリジナルな設定を加えてバージョンアップ! 観客参加型で、謎解きによって2通りの結末を体感できる本作では、脚本を、原作者である水城水樹が務め、ミュージカル『ヘタリア〜Sing in’ the World〜』の長江崚行ほか豪華な俳優陣が世界観を表現する。舞台を前に、メインキャストの飛鳥凛、伊阪達也、梅田悠、そして総合演出のまつだ壱岱に話を聞いた。
謎解きによってヒロイン二人が見せるまったく違った結末
――― まずは、総合演出のまつださんに質問です。観客参加型で、謎解きのステージという企画を上演しようと思ったきっかけは何だったんですか?
まつだ「謎解きの舞台がやりたいということは数年前から考えていたんですね。その後『サイコメ』の原作者の水城水城さんとお会いする機会があって、それがやっと今になって実現したという感じです。流れとしてはサスペンスの部分もあるんですけど、コメディをベースにした物語になる予定です」
――― 今回、結末が謎解きによって変化するというのも見どころかと思いますが。
まつだ「謎解きによって結末を変えたいと水城さんに伝えたところ、原作にも氷河煉子と紅羽鋭利という、ふたりのヒロインが存在するから、そのどちらかが結末のカギを握る存在になる、二通りのエンディングができるのではないかと提案をいただきました。複数の結末が存在するという意味で、乙女ゲームのようなテイストもこの作品にも合っているんじゃないかということになって、実現化しました」
――― この「サイコメ;ステージ」は、脚本も原作者の水城さんが書かれるんですよね。
まつだ「このシリーズは一巻から六巻までと、短編集の『サイコメ UNPLAGUED OMNIBUS』というのが出ていて、今回の舞台は一巻の内容がベースになっているんですね。でも、それ以外の巻の話も結末に関わってくることになってくる、舞台ならではのオリジナル作品になっています」
――― 出演者の皆さんにもお話を聞きたいのですが、どの役もすごく個性的ですよね。
飛鳥「私が演じるのは氷河煉子という女の子です。いつもガスマスクをしている謎の存在で、グラマーでセクシーなキャラクターだったので、どうしようかなと戸惑いましたが(笑)、あまり重なる部分がないからこそ、いろいろ想像して煉子を作り上げていければいいなと思います」
梅田「私は久瑠宮聖という教師を演じます。聖は小柄でかわいらしい見た目なのに、サディスティックな性格なんです。髪の毛はピンクで、今までウィッグをつけた役もやったことなければ、先生役も初めてなので、楽しみですね。私の地声はちょっとハスキーなんですけど、そこもかわいらしい感じに演じていければと思っています。あと、学園の秘密の鍵を握る人物でもあります」
伊阪「僕は、早乙女紳士という役です。役の説明に『淡い茶髪の美青年』と書いていて、普段めったに演じることのないキャラクターなので、最初にお話をいただいたときは単純にうれしいなと思いました。今まで、まっすぐで正義感の強い役か、明るくてバカばっかりやっている役かのどっちかが多かったので。今回は優し気な美青年であると同時に、狡猾で残忍っていう性質も持ってる役なので、自分の中にある狡猾で残忍な性癖とか、隠れた攻撃性とかを膨らませて役作りしていければと……(笑)。いや、僕はすごく優しいタイプなんですけどね」
日常から離れた役だからこそ演じがいがある
――― やっぱり、日常から離れた役というのは演じがいがありますか?
まつだ「やっぱり普段できないのでそういう部分はあると思いますね」
伊阪「どういう内容の舞台であっても、負けたくないっていうのはあるんですよ。だから、かっこいい役だったら、誰よりもかっこよく演じたいし、悪い役だったら悪い部分をつきつめたい。もちろん、全体とのバランスもありますから、そこは見極めたうえで、今回も作り上げていきたいと思いますね」
飛鳥「私自身、日常から離れた役を演じることってあんまりないんですけど、二面性のあるお芝居は好きです。以前に出演したドラマでも、表向きは明るいけれど、その裏ではぜんぜん違う性質があると言う役を演じたんですね。そういう役は演じがいがあると思いました」
――― ところで、キャストのみなさんは共演したり一緒にお仕事されたりというのはあるんですか?
まつだ「それがお互いにみんな初めてなんですよね」
梅田「共演はないんですけど、実は私と伊阪さんは、高校の先輩、後輩なんですよ。それも、私のほうが年下で後輩だったんですけど、今回は私が先生役なので、ほんと不思議な感じです」
伊阪「一緒に遊びにいったりはしてましたけど、つきあってませんから(笑)。それを言ったら俺も15歳の役なんですけどね。でも、それは自然に見せていけたらと思っています」
――― そういう年齢が離れた役のときは、何か声であったりとかを変化させたりとかあるんですか?
伊阪「ちょっと前には、声だったり印象を変えて作り込んだこともあったんですけど、実際に演じてみると、やっぱり自然なものに変わっていくんですよね。作り込んだ声でやり続けられるのは、それはそれですごいと思うんですけど、結局は自然な形に落ち着くんじゃないかと」
まつだ「それはありますね。声優さんとお仕事することも多いんですが、ニュアンスによって声を変える部分は凄いなっているも思うんですが、舞台になると、やっぱり地の声に落ち着くことも多いんですよね」
――― 二次元のキャラクターを演じるときとは違って、自分の肉体で演じるときとでは、やはり演技の方法も変わってくるということですかね。
まつだ「もちろん人によってまた違うとは思いますけど、あるんじゃないでしょうか」
――― 最後に、この舞台のどんなところを見てほしいと思われますか?
まつだ「ライトノベルが原作なので、設定がすごく独特な世界でもあるんですが、今回はいろんな人に見てもらえるように、ポップな世界にしていきたいと思いますね。学園の生徒全員が犯罪者であるという日常とはまったく違う状況を描きますが、どこか笑えるものにできたほうが健全なのではないかと思います。だから、コメディであるということを大事に描きたいと思います」
伊阪「今のまつださんの話を聞いて、自分がその異常な状況を演じて、それで観客に笑ってもらえるということを想像すると、それをどうやって作っていくのかワクワクしますね」
梅田「みんなが普通じゃない役を演じる舞台ってのもなかなかないですよね。私もサディスティックな教師をとことん楽しみながら演じたいと思います」
飛鳥「エンディングが変わる舞台というのも初めてですし、結末によって煉子の心境も変わってくるので、そこも楽しみにしてほしいです。煉子っていうのは、好きな人に対しての気持ちが複雑なので、煉子にとってはハッピーでも、観ている人にとってはハッピーではなかったりする。そういう愛情表現の深さをちゃんと表現できればと思います」
伊阪「それを考えるとせつないですよね…」
梅田「そのせつないかもしれないエンディングと、もうひとつ別のエンディングがあるので、ぜひ二回観てもらいたい舞台になると思います」
(取材・文&撮影:西森路代)