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加納幸和・原川浩明(花組芝居)


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“ネオかぶき”を標榜する花組芝居が、新歌舞伎の名作を全段上演

関ヶ原合戦後の豊臣家の混乱を、坪内逍遙が歌舞伎の脚本に

歌舞伎を“堅苦しく高尚なもの”というイメージから解き放ち、“ネオかぶき”と称して活動を続ける花組芝居が、坪内逍遥の『桐一葉』を全段上演する。明治中期に書かれたこの作品は、“新歌舞伎”と呼ばれるスタイルのはしりとなったもので、関ヶ原の戦い後の大坂城を舞台に、豊臣家の家臣・片桐且元とその暗殺を企てる武将たちの姿を描く。折しも放送中のNHK大河ドラマ『真田丸』と重なる部分もあり、大いに注目したい公演だ。本作で脚本・演出を手掛け、淀君役で出演する座長の加納幸和と、片桐且元を演じる原川浩明に意気込みなどを聞いた。


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坪内逍遙ならではの手腕が光る『桐一葉』

――― 『桐一葉』は、もともと雑誌『早稲田文学』で連載された全7段の大作で、そのすべてが上演されるのは今回が約50年ぶり。部分上演を含めても24年ぶりのことなのだそうだ。

加納「明治に入ってから、文明開化で“活歴(かつれき)”と呼ばれる芝居が作られて、それはいわゆる史実に忠実に作られた新しい作品群だったんですけど、一般向けとしては堅苦しいということでなかなか評判が良くなかったんです。
 そこで坪内逍遙が、当時研究していたシェイクスピアと近松門左衛門を参考にしながら、歌舞伎の歌舞音曲みたいなものを利用して、今で言う大河ドラマみたいな作品を書いたのが『桐一葉』でした。シェイクスピアの、ちょっと脇筋があったり場面によって主役が違ったりするような支離滅裂さと、近松門左衛門の美しい文体が合体して、しかも『ハムレット』がパロディみたいに入っている。長い作品でもお客さんが大入り満員で、“新歌舞伎”が市民権を得るきっかけになったそうです」

――― 加納は『桐一葉』の続編にあたる『沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』を観て、その面白さに打たれたという。

加納「たまたま他の演目が観たくて歌舞伎座に行ったら『〜孤城落月』もやっていて、それはそれは面白かったんです。台詞劇なんですけど音楽はうまく使ってあるし、それもわざと古典と違う楽器が使われていたりして、よくできているなと。『桐一葉』も、50年前に国立劇場で上演されたときの本は読んでいて、面白いなと思っていました。ただ言葉がちょっと難しいので、うちでやるのも……と思っていたんですけど、昨年が徳川家康生誕400年で、今年は『真田丸』もやってらっしゃるので(笑)、やっぱりやってみようという気になったんです。それで改めて原作を全部読んでみると、すごく工夫されていて、男ばかりのシーンがあったら今度は女ばかりのシーンがあったり、ちょっと軽いところがあってまた重いところがあって、踊りのシーンもあったりとバラエティに富んでいる。どうせなら全段やった方が、坪内逍遙のやりたかったことがよくわかると考えたんです」

――― 花組芝居にとって、大作の全段上演は得意分野のひとつ。

加納「昔は、全段上演なんて無理だと思っていたんです。でも、石川耕士さんの脚本で忠臣蔵をやったときに(2007年『KANADEHON 忠臣蔵』)、あの長い作品がギューッと短くなったので、できるんだと思って(笑)。それ以来、毎年じゃないですけど古典の大作をやるときは全部やろうというスタンスになりました」


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粗野で躍動感のある面白さを目指して

――― 花組芝居の看板俳優の一人である原川浩明は、今回演じる片桐且元を「難しい役柄」だと話す。

原川「うちは“ネオかぶき”というスタイルで女形がいて、作品もだいたい女性を中心に、周りが翻弄されて滅びていくというものが多いんです。その中で、私はけっこういじめる側の役が多かったんですけど、今回はいじめられる側というか、なんとか豊臣家を存続させたいという気持ちと、自分が交渉役を務める徳川との間で葛藤する。そういう心の内を表現しなければいけないので、ある意味楽しくもありますが、やはり難しいです」

加納「小さな劇団で座付き作家がいると、どうしても“この人はこういう役”というのがだいたい固まってしまうところがある。でも、やっぱり役者なんだからいろんな役をやりたいよねっていうところで、うちは割と初期の頃からシャッフルしちゃってます。わざとこんな役にしてみました、みたいな(笑)。ちなみに『真田丸』で且元を演じていらっしゃる小林隆さんは、僕らのちょっと先輩ですけれども、同じようなエリアで芝居をしている方なので、そういう意味でも面白いですね」

――― そして、加納が演じる淀君のエキセントリックな振る舞いが物語を動かしていく。

加納「この役はもともと、五代目中村歌右衛門が中村芝翫を名乗っていた頃に初演しているんですけど、狂った感じの演技をするにあたって、精神病院に見学に行ったというエピソードが有名です。『〜孤城落月』ではもっと狂っていて、『桐一葉』はその予兆でヒステリーを起こすくらいですけどね。歌右衛門はこれが当たり役になって“淀君役者”なんて言われて、それから他の作品でも全部淀君をやっている。おそらくそのおかげで、その芸を継承していた六代目歌右衛門や七代目芝翫が亡くなってから誰もやらなくなっちゃったんですよね」

原川「これをやりたいって思っている歌舞伎役者さんは絶対いらっしゃると思います」

――― そしてもちろん、花組芝居ならではの味付けもある。逍遙の“新歌舞伎”に、江戸歌舞伎らしい野卑で庶民的な風合いを加えた仕立ては、花組芝居の真骨頂だ。

加納「新歌舞伎風の台詞回しというのは、古典のように節をつけたり語尾を伸ばしたりしないんです。我々はそれを、逆にもっと古い形に戻した方が粗野な感じがして面白いんじゃないかと。お衣装も、新歌舞伎ではそれが作られた当時のデザインに多少寄ったものを着たりするんですけど、あえて古典歌舞伎寄りにしています。下座音楽もそうですね。あくまでもドラマの流れを見てもらいたいので、起承転結をつけるために演技にも幅をもたせて、江戸時代の歌舞伎みたいに躍動感のあるものに仕上げたいと思っています」


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常に背水の陣という気持ちでやってきた

――― さまざまな挑戦の要素も交えた今回の『桐一葉』が目指すのは、とにかく“面白い!”と思えるエンターテイメント。

加納「良い作品なのに、このまま埋もれてしまうのは残念ですからね。坪内逍遙のことをご存知の方がどのくらいいらっしゃるのかわかりませんが、歌舞伎を同時代の演劇にするためにこれだけ苦労した人が明治の頃にいたんだっていうことを、僕らが平成でもう1回同時代の芝居として提示しようとしているのを見ていただくことで再確認してほしいなと思います」

原川「今回は久しぶりに白塗りでやるというのも大きいですね。今年7月の『恐怖時代』は、夏ということもあって浴衣で化粧無しでやったんですけど、役者としては全てがさらけ出されて見られているようで恥ずかしい部分もあるんです。だから白塗りまでいかなくても、化粧をした方が(芝居に)入りやすい。もちろん、本寸法でやる場合はそれに負けない芝居をしなければいけない大変さもありますけど、何をやるにしてもうちは大変ですよ(笑)。それが面白いんですけどね」

加納「常に背水の陣じゃないと面白くない、みたいな気持ちはどこかにありますね。いつも通りじゃ嫌というか。作っている自分たちが飽きないように、演目選びも含めて、あれもやってこれもやって、というようなところはどうしても意識してしまいます。それで30年近く続いているのかもしれません」


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――― そう、花組芝居は来年で活動開始30周年を迎える。団員の外部客演も多く、観客層は幅広い。

加納「でも、花組芝居という名前は知っているけど観たことはないという声はネットなどでずいぶん見かけますね。“いやいや、一度観てみて!”って思います(笑)」

原川「僕は“面白いから見てください”っていうのは嫌なんです。だって、観る人にとっては面白くないかもしれないじゃないですか。だから、とにかく一度気楽に観てください、それでもう一回観たくなったらまた来てください、っていうような感じです。それで百人来た中で一人でも興味を持ってくれて、またその人が友達を連れてくれば、そうやってつながっていくと思うんです」

加納「僕らが今やりたいこと、やるべきことをちゃんとやりきって、その上でお選びいただくのはお客様。そこで“これは面白い!”という人がいたらこちらは嬉しいし、新しいファンになっていただける。お互いにそういう機会を作り合いましょう、という気持ちですね。ちなみに、これから『真田丸』にはうちの植本潤も出演しますし、『桐一葉』が上演される頃にはちょうど近い時期の話になるようなので、ぜひそちらで予習していただいて(笑)、足をお運びください」


(取材・文&撮影:西本 勲)


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PROFILE

加納幸和(かのう・ゆきかず)のプロフィール画像

● 加納幸和(かのう・ゆきかず)
1960年1月25日生まれ、兵庫県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業。87年、『ザ・隅田川』にて、花組芝居を旗揚げ。来年30周年を迎える劇団の全ての公演を演出し、自らも女形として出演。96年には初のアメリカツアーを成功させて、国際的評価を得る。帝劇、新橋演舞場など、大劇場での出演・演出・脚本も多数こなし、ドラマや映画にも進出。また、歌舞伎の豊富な知識を生かし、カルチャースクールの講師を勤めるなど、多方面で活躍している。

原川浩明(はらかわ・ひろあき)のプロフィール画像

● 原川浩明(はらかわ・ひろあき)
1959年7月25日生まれ、長崎県出身。日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、旗揚げ公演『ザ・隅田川』から花組芝居に参加。外部出演作品も多く、主なものに『阿国(OKUNI)』『夜叉ヶ池』『OINARI -浅草ギンコ物語-』『コメディ水戸黄門』『帰ってきた蛍』などがある。TVや映画などにも出演。

公演情報

「全七段通し上演 『桐一葉』」のチラシ画像

花組芝居 
全七段通し上演 『桐一葉』


2016年9月30日 (金) 〜2016年10月10日 (月・祝)
あうるすぽっと
HP:公演ホームページ

20名限定!一般5,800円 → 【指定席引換券】4,800円さらに500Pゲット!

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