4人の脚本・演出家による。テーマや制限なしの30分間短編作品を上演する舞台「エンテナPLAY UNION」。物語毎に出演者も総入れ替えとなる舞台はどこかスポーツのような団体戦に似ている。脚本・演出・主演の色が濃く反映される4本の作品を見終えた後には、きっと新たな舞台の概念が生まれるのではないだろうか。今回は各脚本・演出家、主演、そしてプロデューサーの竹田の7名による、熱い火花散らすお互いの想いを語ってもらった。
第4回と続く秘密
――― 今回で4回目となる「エンテナPLAY UNION」。従来の演劇のスタイルとは違い、オムニバス形式で作品ごとに脚本・演出も出演者も変わる。さらには、テーマを設けないという点でも特徴的だ。
市川「企画当初は明確にオムニバスにしようという思いはなく、包み隠さず言うと、僕自身が30分作品しか書いたことがなくて(笑)ただ、回を重ねる毎にたくさんのキャストさん、脚本・演出家さんに出ていただいて、とても勉強になります。」
竹田「脚本・演出家さんが原作物を書くことが多くなったり、いろんな制約や圧迫がある中で書いて、演出をしているという話を時折聞いたことがあったので、みなさんが普段やりたいことを自由に書いて、演出してもらったら楽しいのではないかなと思い、テーマなしということにしました。あとは、続いてきた理由としては、オーディションを毎回行い、多くの方に参加してもらっていることです。演出家の方と主演と一部のキャスト以外は全員オーディションで選出しているんですよ。」
色の違う4作品
――― 今回の4本の作品はジャンルも内容もバラバラ。20年間、高校生クイズに人生をかけた男の物語『我が青春の高校生クイズ』。その熱い主人公を演じるのが新田だ。
新田「僕自身、アクション事務所に所属をしているのですが、お芝居もやりたく、このお話をいただいた時もIKKANさんの作品と聞いて、「ぜひよろしくお願いします」という感じでした。今回は、(約2週間で1日3時間ほど)稽古期間も少ないガチンコ勝負。舞台初めての方々とも一緒に演技することが刺激的で、自分にないものをたくさん持っているので、それすらも吸収して、楽しんでもらえればいいなって思います。それもあって作品は熱いですね。20年留年して、1つのことを追い続ける。これができるってドキドキものですね。妻にも逃げられ、それでも自分の夢を追う。夏は続くなと(笑)」
――― ハードボイルドなクールさとホットなコメディで織りなす別れさせ屋の物語『永遠の別れの報酬は三つ数えて暁に眠れ』。その脚本・演出に江戸川、主演は今回で2回目のPLAY UNIONとなる山崎だ。
山崎「前回は駒谷仁美さんのチームでやっていて、駒谷さんについていく形でやっていたのですが、今回は自分が引っ張る側でさらに初主演でもあるので、がんばろうと思っております。別れさせ屋という役で、初めて演じる役なので、楽しみだなっていうのと不安も1割あります。肩の力を抜いて、江戸川さんの期待に応えられるように頑張りたいです!」
江戸川「単純に今回の話をいただいた時に、面白そうだなって思ったのと、テーマがないので、好きにやらしてくれるのなら好きにやろうかなって思っています。単純に30分で何をやろうかなって考えたときに、すぐポっと浮かんだので、そんなに迷わなかったです。別れさせ屋の話になっているんですけど、30分の間でプロの職業人の仕事をしながら、人の醜い感情のようなものが出せて、なおかつコメディにできたらいいなと思っています。あとはあらすじを見た感じで、面白そうだなってなってくれればいいなとも思っています。」
――― 高梨が脚本・演出する『JUSTICE』では裁判員制度を題材にした司法エンターテイメントだ。
高梨「たまたま第二回公演を見に行ったことがありまして、そこで声をかけていただいたのがきっかけです。4本の作品をやるって、すごく勝負じゃないですか。どれが面白い・面白くないが明らかになっているので。それが面白いなって思います。」
竹田「このあたりの話って、今の段階では伏せておく方が多いんですよ、「仲良くやりましょうね」って言って、稽古始まってからバチバチするんですが、今その火花が落とされましたね(笑)最終稽古まで各作品の方と会わないんですよ、稽古どころか顔合わせも別々ですからね。」
全員「えぇー!」
高梨「それはすごいですね(笑)私は裁判のお話なんですけど、無作為に集められた裁判員の人たちの人間模様が30分の中で変わっていくのが描けたらなと思います。ちょっとコメディにも見えたらいいなと思います。」
――― 最後に市川が脚本・演出、主演に光希の『ブルーバードシンドローム』。あらすじから童話のような香りが漂ってくるのが特徴的だ。
光希「今回のお話を聞いて、純粋にうれしかったです。主演は3年前にやった以来なので、久しぶりの主演でドキドキワクワクしながら、あんまり引っ張るのは得意ではないですけど、いい方向に持っていけたらいいなと思います。」
市川「みんなで楽しくやりましょう(笑)いつも、ごくごく普通の日常にSF的な要素がストンって入ってくるのをやっているのですが、今回もそういうのをやりたくて書きました。鳥のお話なのですが、、ざっくり言うとリトルマーメイド的なお話です(笑)」
光希「そうなんですね(笑)おとぎ話というか、どんな感じになるか全く想像つかなくて、私は鳥になるんだろうなって。」
竹田「打ち合わせを市川と二人でしていたのですが、本当に光希さんはあっていますよ。」
4作品が1つの公演を作り上げる
――― お互いに刺激しあい、作り出される4つの作品。いつもとは違うコンセプト・スタイルに各々が熱く想いを語る。
新田「お客さんがあっての作品だと思うので、それぞれのチームがそれぞれの最高をもって、お客さんに楽しかったって思っていただけるように、全体として1つの作品を切磋琢磨しながらできればなと思います。」
山崎「面白くなる作品っていう自信は僕は持っているので、それを全部背負い、座組のみんなの期待などを背負いつつ、お客さんの頭の中に残るような作品にしていきたいなって思います。」
江戸川「僕の芝居は、割とカロリーを使う芝居が多いので、30分間全力で楽しいことをふざけてやるようなものにして、お客さんに楽しんでもらえばと思います。」
高梨「どの作品も熱量が高い感じになりそうなので、メンバーと楽しくやりたいなって思います。どの作品も好評であれば、公演としてより1つひとつが面白くなると思うので、そういう意味で頑張りたいと思います。」
光希「よりよいバトンをもらって、あげるという、作品をみんなで作り上げていければと思います。もちろん、私も全力でやりますので、よろしくお願いいたします。」
市川「今回で4作品目なんですけど、最初はくだらないことをトコトンやっていたんですけど、だんだんと考えさせられるような作品にできたらいいなと思っています。お客さんも客席で何かを思い返してもらえたらいいなと、、。作品全体としても仲良くやっていけたらいいなと思います。」
竹田「僕自身もこの企画が初プロデュースで、いろいろとアドバイスをいただいて次に活かしてきたので、すごく良い空気になるように、発破をかけさせていただいたり、相談に乗ったりだとかでコミュニケーションをとりつつ、一致団結した形になればいいなと思っています。演劇を見に来ること自体がとても敷居が高くなっているような気がしているので、この企画は「世にも奇妙な物語」のようなイメージで、演劇を見たことのない方にも、親しみやすくできるようになればいいと思っています。」
(取材・文:熊谷洋幸/撮影:安藤史紘)