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長田育恵・石村みか


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江戸後期、ひとりの女性絵師が、自らの光と闇に挑もうとしていた ――

葛飾北斎を父に持ち、本物の絵師になろうと肝を据えた応為の青春期を描く

劇作家・長田育恵を主宰として2009年に旗揚げした、てがみ座の第13回公演は、葛飾応為の≪夜桜美人図≫を基点とした舞台となる。幕末に生きる一人の女性絵師は、いかに北斎の影を逃れ、自分の絵をつかみ、そして女であることを受け入れたのか。劇作家・長田育恵と女優の石村みかに、上演を控えた現在の心境を聞いた。


インタビュー写真

――― 北斎の娘、応為を主人公にしようと思ったきっかけは何だったのですか?

長田「昔から女性そのものをテーマにしたかったんです。それも江戸時代なら女性の生命体としての力をシンプルに描けると思って。その上で、男性の多い絵師という仕事場の中で、女性がどうやって仕事を手にしていくかの話でもあります」

――― 現時点で石村さんはどんな役を演じられる予定ですか?

長田「まだ構想中で、応為の母親か、応為が美人画に書いた女性になるのかなと思っています。応為の母親は、江戸時代の普遍的な母親で、応為を嫁にいかせようとしたりするんですけど、そんな母親の姿を見たからこそ、応為は自分の生き方を見つけたのかもとも思います」

石村「今までとは違うものになればいいと思っています。これまでは、孤独であるけれど、精神の葛藤と向き合い続けて、ほんのちょっと光が見えるような役が多かったんです」

長田「でも、今度は洗いざらしの麻のような、日向の匂いのする役になればいいね」

石村「苦境ではあっても、強く乗り越えていけるような、そんな役を演じられたらいいですね」


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―――おふたりは 応為のことを、どんな人物ととらえていますか?

長田「純粋で強いし、揺らぎはあるけれど、ぶれないんですよ。現代って、友達の近況をFacebookなんかで知ると、自分が選択した人生なのに、これでいいのかなと思ったりもしますよね。でも、応為にはそういうことがなくて強い。自分の絵を他人と比べる必要はないし、近所づきあいで無理に愛想よくすることもない。部屋も汚くて、汚れたら引越せばいいと思っているんです。そこは父親の北斎譲りで、北斎も、外で買ってきたご飯を包んでいた竹の皮を捨てるのが面倒くさくて、皮を重ねておきっぱなしだったりしたそうです」

石村「応為ってかっこいいですよね。長田と重なって見える部分もあるんですよ。書くってことに対しては、辞めるとかそういうことを一切考えていない。応為もどうやったら自分の絵を自分のものにしていけるのかということにトライし続けているんです。でも、現代は自由なようでいて、いろんな縛りがって、好きなことをし続けることが難しいのかなとも思いますね。全精力を自分の選んだことに向けられる人は強いですね」

長田「確かに今の世の中だと、どんな教育を受けるか、老後をどう過ごすかという恐れに縛られていて、そのためにお金を貯めることに執心したりしてしまうけれど、応為はお金がなくなると、粘土で作った人形を売ったりしていたし、北斎も町で唐辛子売りをしてしのいでいたそうです」

石村「私も3歳半の娘がいるので、周囲のこうあるべきだっていう視線を感じることはあるんです。この歳だったらこれくらいの収入と生活をしてないといけない……みたいなものを感じることが。でも、応為を見ていると、そんなことに疲弊せずに生きているのはうらやましいですね」

長田「最近も女優の木野花さんに、『四の五の言わずにやりなさい。すべてをさらけ出したらそれが実力なんだから』って言われました。仕事で限界を感じるのは、自分で作り出した幻だから、そういうものはないと思いなさいって。私自身、仕事を受けたときは、これをやれば新しい光が見えるんじゃないかと思うんですが、やっているうちにその思いが曇ってくることもあるんです。でも、最初の思いを貫き通さないといけないなと」

石村「すごくシンプルでかっこいいよね」

長田「ほんと言われる通りだだなって思いました。今、書いていてなにがうれしいかっていうと、ドキドキするな、ワクワクするなっていうシーンが描けたときなんですけど、それを重ねていくしかないんだなと」


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――― 今までのお話を伺っていると非常に共感できます。私自身も、なんでそこまで人目を気にしてたんだろうと思うことはありました。一方で、他人の目はまったく気にしないで、生き生きと自分のやりたいことをしている人もいて、こんなことが可能なんだって思ったり。

長田「私も、天才がうらやましいってずっと言ってたんですけど、無我夢中になれる力のある人が天才だったんだなと思うんです」

石村「応為もそういう人なんでしょうね」

長田「応為も迷いはなかっただろうし、北斎が死んでからも大変でどうやって生きていこうと思ったこともあっただろうけど、自分が生きる場所に対してのこだわりには揺らぎがなかったと思います」

――― 応為は男性ばかりの絵師の中で、どういう存在だったのでしょうか?

長田「北斎の娘として見られることがほとんどで、絵の代筆もやっていて、北斎も美人画は応為のほうが腕があると認めていたけれど、自分の名前で絵を発表するのは40代後半でした。でも、北斎が死んだときに、印章を誰が受け継ぐかというときに、弟子から、応為が受け継ぐのなら北斎の名が廃れると反発があったみたいです」


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――― 石村さんは、長田さんといつも一緒にお仕事をされていますが、どんな存在ですか?

石村「自分の作品への愛情も、世界観もすごいですよ。長田の作品は、いつも自分を突き動かしてくれる感覚があります。始めは一人でてがみ座を立ち上げて、徐々に座員が増えていって。私も最初は客演で、この世界観の中にずっといたいと、どういう役でもいいから居させてほしいとお願いして今に至るんです」

――― さきほど、応為に対して「うらやましい部分もある」とは仰ってましたけど、劇団を一人で立ち上げるエネルギーというのは凄まじいものではないかと思いますが。

長田「以前はミュージカルの脚本と作詞をしていて、もっと作家性のあるものを書きたいなと思ったときに、自分の作品を立ち上げないことには劇作家ではないなと思って、てがみ座を立ち上げたんです」

――― 応為に惹かれる気持ちもわかります。

長田「やっぱり強いだろうなと思うし、孤独を引き受ける覚悟もできている。多くを望んでないし、たくさんのモノを持っているわけでもないけれど、持っているわずかのものをすごく大事にしているというか」

――― 今の社会って、「何もかも平均的に持っていないといけない」という観念にとらわれているのではないかというのはありますよね。どれかひとつ突出しているのでは満足できないというか。

石村「そうかもしれないですね。話しを聞いていると、ほんとに今の時代には全部をとろうとする感覚があるかもしれないと思いました」

長田「応為も北斎も、すべての持ち物を失っても、この筆一本あれば生きていけると言っていて、そこがシンプルでいいなと思いますね」

石村「お客さんにとっても、そういうシンプルな生き方を見たら清々しく思ってもらえるかもしれないですね」

長田「確かに。自分とまったく違った天才の話ではなく、同じ人間である応為が何を選ぶのかっていう視点で見てもらえるといいなと思います」



(取材・文&撮影:西森路代)


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PROFILE

長田育恵(おさだいくえ)のプロフィール画像

● 長田育恵(おさだいくえ)
1977年生まれ。東京都出身。劇作家(日本劇作家協会会員)、ミュージカル脚本家。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業後、日本劇作家協会戯曲セミナー研修課にて井上ひさしに師事。2009年に「演劇ユニットてがみ座」を旗揚げし、全公演の脚本を手掛ける。2016年戯曲『蜜柑とユウウツ - 茨木のり子異聞 -』で第19回鶴屋南北戯曲賞受賞している。

石村みか(いしむらみか)のプロフィール画像

● 石村みか(いしむらみか)
1973年生まれ。東京都出身。玉川大学演劇専攻卒業後、94年7月から約1年間 ロンドン国立ゴールドスミス大学に留学。1995年青山劇場10周年記念『銀河鉄道の夜』に出演。以降、劇団大人計画、新国立劇場、MODE、二兎社、THEガジラ、世田谷パブリックシアターなどのプロデュース公演に参加。劇団東京乾電池の劇団員を経て、2013年からてがみ座に入団して現在に至る。

公演情報

「燦々-さんさん-」のチラシ画像

てがみ座 第13回公演
燦々-さんさん-


2016年11月3日 (木・祝) 〜2016年11月13日 (日)
座・高円寺1
HP:公演ホームページ

20名限定!4,500円 → 【指定席引換券】3,900円さらに400Pゲット!

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