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高橋正徳・山本郁子・助川嘉隆


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数々の名優が演じてきた水上勉作品の傑作に、文学座が新たな魂を吹き込む。

揺さぶられることを恐れた男と、もっと揺さぶられたいと願った女。その愛と悲しい結末。

巨匠・谷崎潤一郎が絶賛した水上勉の傑作小説『越前竹人形』が文学座で上演される。これまで何度となく映画化・舞台化された名作に挑むのは、文学座が誇る新世代の演出家・高橋正徳。主人公の竹人形師・喜助に助川嘉隆、ヒロインの娼妓・玉枝に山本郁子を配し、水上の故郷・越前の山奥を舞台にした男女の物語を現代に甦らせる。玉枝を愛しながら指一本ふれることのなかった喜助。ふたりの関係は、現代の人々にどのように映るのだろうか。


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伝統を次世代へ引き継ぐためにも、この作品がやりたかった。

――― 本作は、文学座創立80周年記念公演の第1弾となる。杉村春子、太地喜和子、北村和夫、加藤武ら多くの名優を生んできた伝統の一座の節目を飾る1作だけに、その期待も大きい。

高橋「アニバーサリーの本公演を担当するのは今回が初めて。なかなかできることではないので、身が引き締まる想いですね。文学座では『飢餓海峡』『雁の寺』など水上作品をいくつも上演してきましたが、ここ最近はなかなか機会がなかった。でも、こうした和物の舞台は文学座の十八番であり、それを演じるための技術は諸先輩方が築いてきた文学座の財産と言うべきもの。それを次の世代へ継承していくためにも、このタイミングでこの作品がやりたいと熱望しました」

――― 文学座では、キャスティングは主に演出家に委ねられる。雪深き越前の山奥で、ひたすら竹人形をつくることだけに人生を捧げてきた職人・喜助には、「オープンだけど、ここから先は誰にも立ち入らせないというような心の闇の部分が喜助にぴったり」と、座員の助川嘉隆を指名した。

助川「正直、ノリ(高橋)から連絡をもらったときはビックリしました。しかも話を聞いたら主役だと言われて。“大丈夫か、文学座は”と思いました(笑)」

――― 助川が驚くのには、理由がある。助川は本作まで7年にわたって休座状態にあった。休座中は演劇活動を停止し、会社員として日々を過ごした。そんな自分が再び舞台に上がる。しかも80周年という記念公演の主役として。戸惑いとプレッシャーを乗り越え、助川が出演を決めた理由は、この7年の空白期間の中にあった。

助川「実は休座を決めたのは、妻が病気になったからでした。本当は文学座も辞めるつもりで。でも周りの方から“休座という方法もあるから”と説得され、しかも本来は5年までと決められているはずの休座期間を7年まで延長していただいて、今日に至っているんです。ノリから連絡をもらったのは、残念ながら妻が亡くなり、これからどうしようか考えていた時期のこと。調べたら、喜助という役は、大事な人を失った今の自分の人生にリンクするところがたくさんある役でした。それで、出演を決めました。この舞台では、今の自分の中にあるものを掘り下げて掘り下げて、広げていきたい。そうやって、喜助という男を通じて、人間の生きる力とか、愛されたいとか愛したいというエネルギーをみなさんにお伝えすることができれば」

――― 不器用な喜助が愛した娼妓・玉枝を演じるのは、「着物での所作から台詞回しまで日本的な美しさがある方」と高橋が尊敬の視線を送る山本郁子だ。山本は、偉大なる大先輩・杉村春子の代表作『女の一生』を引き継いだばかり。立て続けの大役に「最初は迷いました」と明かす。

山本「改めてお話を聞いてみたら、以前、太地喜和子さんが玉枝を演じていたことを知って。私の初舞台で主役だったのが太地さん。私にとって、杉村先生と太地さんが憧れの先輩でした。そのおふたりの役を演じることができるなんて、役者冥利に尽きる話。絶対に演じたいと思いました」

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生誕の地・福井。そこで水上先生の原風景を見た気がした。

――― 竹人形師と娼妓。現代の日本ではどちらも決して馴染み深い存在とは言いがたい。この役をものにするために、ふたりは本格的な稽古に入る前から入念に準備を進めている。

助川「福井県に金津創作の森というところがあって、そこに水上先生と親交のあった山田信雄先生という竹人形師の方がいらっしゃるんです。その方のもとで、2日間、竹の性質から切り方、割き方までみっちり教えていただきました。呼吸を共にすることで、竹人形師の空気を感じることができたのが何よりの収穫。後日、山田先生が使わない道具や竹を送ってくださって。東京に戻ってからも日々家でパンパンと竹を割ったり削ったりしています」

山本「私も実際に福井まで行って、水上先生の生まれ故郷を拝見してきました。先生の生家があった場所の近くに若州一滴文庫という記念館があって、先生ゆかりの品々が展示されているんです。そこは竹藪に囲まれた静かな里で、水上文学に底流する空気感や匂いが確かに感じられた。何だか水上先生の原風景を見た気がしました」

高橋「若州一滴文庫のあるおおい町は、福井駅から電車で3時間近くかかる場所で自然豊かなところなんです。水上先生はここで生まれ、その後、貧しい家庭の事情で京都の禅寺へ修行に出されたり、終戦後は東京で生活をされるなど、各地を転々としてきた。でも、根っこにはこのおおい町の風景があるんですよね。日本海側の土地が持つどんよりとした空模様とか空気とか、そういうところで生まれ育った人間特有の気質というものが、この『越前竹人形』の登場人物にもあるような気がします」

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失う恐怖を知っているから、玉枝にはふれられなかった。

――― 本作の焦点となるのは、喜助と玉枝の純粋すぎるがゆえに悲劇的な愛の顛末だ。玉枝を愛し、妻として迎えながらも、決して男女の営みを結ぼうとしない喜助。玉枝は、次第にそんな夫婦関係に思い悩むようになる。不器用すぎる喜助の心情は、現代人には一見すると理解しがたいかもしれない。

助川「たぶん喜助は失うことを恐れている男なんじゃないかと思うんです。母を早くに亡くし、父も失った喜助は、人はあっさりといなくなるものなんだということを十分すぎるほどよくわかっている。だから、身体の弱い玉枝にふれられないんじゃないかって。愛しい玉枝と結婚し、竹人形師としても名声を得た喜助にとって、今がいちばん幸せなとき。もしそこに新しく何か手を加えて、幸せが壊れたら、もう自分は生きていけない。玉枝を失うことを恐れるあまり、彼女を抱くことができなかったんじゃないか、と。そう考えると、喜助の気持ちがよくわかるような気がするんですね」

山本「ふたりの関係はとてもピュアで繊細なもの。そういう意味では、久しぶりの共演になる助川くんとなら、私たちのリアルな関係をリンクさせながら、より丁寧に喜助と玉枝の間にあるものを演じていけるような気がします。助川くんと一緒にお芝居をするのは、かれこれもう10年ぶりくらい。硝子人形にふれるように助川くんに接していけたら」

高橋「聖母マリアがキリストを抱くピエタ像というのがありますが、あんなふうに大きな愛で玉枝には喜助を包み込んでもらえればと思っています。でも、こうした女性特有の母性ってあくまで男性視点のもの。女性は女性でみんな深い業を抱えている。喜助を愛しながらも、崎山という悪い男に肉体を許してしまう玉枝は、まさに女性の性や業そのものですよね。女性の持つ聖母のような美しさの底から、そんな業を強く立ちのぼらせることができれば、より泥臭いヒューマンドラマになるんじゃないかと思います」

山本「男性を可愛らしく思う一方で、頼りたいのが女の本音。玉枝の心理はよくわかるし、共感してくださる方も多いんじゃないかと思います」

――― 歴史ある文学座と昭和の文豪。その組み合わせだけを見れば、若い層は敬遠するかもしれないが、実は現代を生きる若者にこそ重なる部分が大きい作品だと言える。

山本「リアルなお芝居というよりは、むしろとっても物語性の高い作品ですよね。髪型も衣裳も今とは全然違うし、きっと劇場に来るだけで非日常の空気を楽しんでいただけると思う。お伽噺に浸るような感覚でいらっしゃるのも面白いんじゃないでしょうか」

助川「あらすじだけ見ると暗い話のように思われるかもしれませんが、僕が演じる以上、たぶんシリアスだけでは終わらない気がします(笑)。今って情報が溢れすぎていて、どう生きていけば良いのか悩んでいる人も多いと思うんです。ぜひそんな人にこそ、この喜助という男の生き方を見て、ひとつの道標にしてもらえたら嬉しいです」

高橋「自分が教えている研究生を見ていても思うのですが、今の若い方たちって一見するとオープンなんだけど、すごく閉じたところがあるというか、心を揺さぶられることを恐れているような気がするんです。喜助もそう。揺さぶられたくないから、玉枝に置物のようにいてほしいと願っている。そういう気持ちって、今の若い男性の方も頷くところがあるんじゃないかと思います。一方で玉枝はもっと激しく揺さぶられたがっている。これも女性の方たちはわかるんじゃないでしょうか。時代背景は違っても誰かしらに感情移入できるのが、この作品の面白さ。敷居の高さなんて一切ありません。ぜひこの世界に思い切り浸ってください」


(取材・文&撮影:横川良明)


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PROFILE

高橋 正徳(たかはし・まさのり)のプロフィール画像

● 高橋 正徳(たかはし・まさのり)
1978年生まれ。東京都出身。00年、文学座附属演劇研究所40期生として入所。05年、文学座座員となり、現在に至る。木村光一、西川信廣、鵜山仁、瀬久男などの演出助手を務め、04年、文学座アトリエの会『TERRA NOVA テラ ノヴァ』で文学座初演出。以降、川村毅、鐘下辰男、佃典彦、東憲司、青木豪など多くの現代作家の新作を演出。
 また文学座附属演劇研究所の発表会の演出も多く務める。商業演劇から小劇場まで精力的に活動する傍ら、地方劇団・公共団体・学校などでの演劇ワークショップの講師としても活躍中。2011年文化庁新進芸術家海外研修制度により1年間イタリア・ローマに留学。

助川 嘉隆(すけがわ・よしたか)のプロフィール画像

● 助川 嘉隆(すけがわ・よしたか)
12月21日生まれ。北海道出身。97年、文学座研究所入所。00年、『心破れて』で初舞台を踏む。02年、座員となり、現在に至る。以降、文学座の本公演に数多く出演するも、一時休座。本作が復帰第1作となる。

山本 郁子(やまもと・いくこ)のプロフィール画像

● 山本 郁子(やまもと・いくこ)
8月16日生まれ。新潟県出身。87年、文学座研究所入所。88年、『好色一代女』で初舞台を踏む。92年、座員となり、現在に至る。文学座の本公演に数多く出演し、16年より女優・杉村春子の当たり役である『女の一生』の布引けい役を継承。名実ともに文学座の中核を担う女優のひとりとして、さらなる活躍が期待されている。

公演情報

「越前竹人形」のチラシ画像

文学座
越前竹人形


2016年10月25日 (火) 〜2016年11月3日 (木・祝)
紀伊國屋ホール
HP:公演ホームページ

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