――― 今回は、「花園RED」と「花園BLUE」の2バージョンの上演だそうですね。
竜史「初演の2013年では一演目のみの上演で、それが今回の『花園RED』の原型になっていて、2015年の『花園Z』の時に新作として作った作品が今回の『花園BLUE』の原型になっています。2015年時には『童貞ver』、『不良ver』という名前だった二作品を、『花園RED』、『花園BLUE』とそれぞれ名前を変え、パワーアップさせて上演します」
斉藤「2013年の初演の時の出演者は15人だけだったのですが、2015年に両演目併せた出演者数が30人になったことで、クライマックスシーンで15対15のラグビーの試合ができるようになって、ラグビーシーンの迫力は年々グレードアップしています」
――― なぜラグビーを題材に舞台を作ろうと思われたんですか?
竜史「普通球技大会というと、サッカーやバスケットといったメジャースポーツを扱うことが多いと思うのですが、僕の母校では、実際にラグビーのクラスマッチがあって、それがこの「花園」シリーズのモデルになっています。サッカーやバスケットって極端な話、一人上手い人がいれば勝てちゃう残酷なスポーツですよね?でもラグビーは一人では絶対に勝つことはできない。「首から下ならどんなハードなタックルをしてもいい」というルールがあるので、ラグビー部の屈強な奴が向かってきても、文化部3人が結束して止めることも十分可能です。そういった、いわゆるスクールカーストが上の人でも下の人でも対等にスポーツに打ち込むことができるという、ラグビーならではの“対等性”が、20歳の国が目指す主役不在の“群像劇”にマッチすると思ってラグビーを題材にしました。
――― ラグビーが題材の舞台と聴いていたので、ここに来るまで出演者全員がラグビー部出身のマッチョな人ばかりかと思っていました(笑)
廣P「この中で高校時代ラグビー部だったのは僕だけです(笑)」
古木「廣Pみたいに見るからにラグビー部っぽい俳優もいれば、マッチュみたいに見るからに不良っぽい俳優、僕みたいにクラスで全然喋らなかった感じの俳優もいて、RED、BLUE共に一つのクラスのような座組になっています」
竜史「そういった普段あまり交わらないグループにいるクラスメイト達が、球技大会に向けての三日間という、ある種祝祭的な時間を通して、出会い、お互いを知っていくというドラマ部分にも注目して頂きたいですね」
――― では、それぞれの役について教えてください。
廣P「僕はREDのみの出演になるんですけど、一言でいうと球技大会で偉そうにしてる奴ですね(笑)」
竜史「廣Pはラグビー部の役なのですが、ラグビーをできない人達の気持ちが分からないという、いわば文化部の天敵です(笑)一方で、ラグビー部にいる時は2年生で一人だけレギュラーなので、先輩とも同級生とも上手く距離が計れずに悩んでいる、という少し不器用な部分もあるキャラクターです」
斉藤「僕含めて劇団員3人は両演目に出演するのですが、僕は両演目で違うタイプの不良を演じます。REDで演じるのは、根はすげーいい奴で、クラスマッチを前にラグビーに対して熱くなっていく不良。BLUEで演じるのは、ガチの方の不良です」
竜史「REDの不良は後々いいお父さんになるタイプの不良だけど、BLUEの不良は塀の向こうに行っちゃうタイプの不良だね(笑)」
斉藤「BLUEの方は、ラグビーはどうでもいいと思っていて、試合にも来るのか来ないのかわからないっていう…」
竜史「BLUEはREDに比べると不良ばっかり出てくるので、球技大会に後ろ向きのキャラクターが多くて。でも、不良たちは不良たちで日ごろの鬱憤が溜まっているので、ラグビーにそのストレスをぶつけることを目的に、球技大会に少しずつ前のめりになっていきます」
――― 『ディストラクション・ベイビーズ』の祭りみたいな感じですね。
古木「正当に鬱憤を晴らせる場というか」
竜史「でもBLUEのマッチュの役は、柳楽さんがやってた役より悪い奴かもね(笑)」
斉藤「REDの登場人物たちはモテたくてラグビーをやるけど、BLUEの登場人物たちは鬱憤がたまってるからラグビーをやってる感じだね」
竜史「REDが『ウォーターボーイズ』的な作品だとしたら、BLUEは『アウトレイジ』的な作品で、いわばBLUEは不良の見本市ですね(笑)」
――― 古木さんの役は?
古木「REDではひきこもりの役です。ラグビーは1チーム15人でやるスポーツなんですけど、僕のせいでチームが14人になってしまいます。それに申し訳なさや気まずさは感じつつも、でも開けた場所に行くことがどうしてもできないという…。一方BLUEの役は、クソバカ不良(笑)理想の不良像もあるし、ラグビーに対しての熱意もあるけど、いろいろと追いついていかない」
竜史「『ろくでなしBLUES』に出てくるような少し古い不良に憧れている、愛すべき馬鹿です(笑)」
――― そして竜史さんはどんな役ですか?
竜史「REDでは、ラグビー部のひたむきな補欠の役を演じます。廣Pくんが演じる同じラグビー部のクラスメイトからプレッシャーをかけられながらも、レギュラー入りと『花園』を目指す努力家。BLUEでは元ラグビー部で喧嘩が強い、陽気な不良を演じます」
――― みなさん、この舞台のどんなところを見てほしいですか?
廣P「前回見に来たお客さんに、演劇を見に来た気がしないって言われたのが印象に残っていて。もちろん演技の部分も頑張ってるけど、ラグビーシーンは、マイムではなく実際にボールを持ってプレイするわけなので、間違いなく見どころだし、ともかく臨場感が半端ないです。あまり知らないバンドのライブとかでも、生で見るとすごい面白かったりしますよね。この舞台も生ならではの醍醐味がたくさん詰まっている舞台なので、見に来てほしいです。女の子にもいっぱい来てほしいし、高校生の話だから高校生にも是非見て欲しいです」
斉藤「この舞台では、喧嘩のシーンにしても、ラグビーのシーンにしても、マイムじゃなくて本気で当たってやっているので、僕らの舞台を見た後に、ほかの劇団の喧嘩のシーンを見て物足りなく思って欲しいし、『20歳の国って本気でやってるんだな』って思ってほしいですね。とはいえ、喧嘩してケガしまくりのアナーキーな集団ではないので安心してください(笑)」
古木「僕は前回の『花園Z』の時、千秋楽が終わった後、安堵感から泣いてしまって(笑)それくらい真剣にストイックにやってる舞台って他になかなかないと思うから、是非見に来てほしいですね。女の子はワクワクして、男の子は奮い立つような経験をしてほしいです」
竜史「僕はわかりづらい演劇は作りたくないと思っていて、お母さんにもわかるような演劇を作りたいと思っています。演劇はダサいというのが僕の持論で、そこを払拭して演劇はおしゃれなんだっていう動きもありますし、そういった演劇に憧れは尽きないですが、僕は僕にできる『ダサい演劇』を全力で作ることで、演劇ってダサいけど、でも面白いんだぜ!ってことが伝わればいいなと思っています。
…と、真面目なことばかり言ってしまいましたが、本音を言えばともかく女の子に見に来て欲しいです!元気のない人、沈んでいる人…といったふんわりとした対象ではなく、あくまで女の子という明確な対象に向けて僕らはこの作品を作っています!エンターテイメントを支えるのはいつでも女の子だし、僕たちも、女の子が来ることで、リアルに男子高生のような気持ちになれると思うので(笑)」
(取材・文&撮影:西森路代)