日本の近くに見つかった一つの国。その国の王になるための戦いに臨むのは12人の候補者自身ではなく彼らに仕える12人の執事達! 数々のエンターテインメント作品を手がけた中島大地が新たに仕掛ける作品の見どころとは?
――― yoppy project初プロデュース作品ということですが、舞台を作るきっかけは?
長谷川「私が芸能活動を一度休止している間、闘病生活を送っている家族のために私に何ができるかと考えていました。そしたら、自分が一番好きな舞台を作ることで家族に恩返しできればいいなと思いつきました。誰にでも支えてくれる人がいて、そのことを伝えられる舞台。絆をテーマにした舞台がやりたいと。それで、まずはホールを押さえようと思って六行会に電話しました」
中島「それ、普通じゃありえないでしょ?小劇場の中ではかなり大きいホールだと思いますよ。それを個人で電話してとっちゃうなんて(笑)」
長谷川「行動力だけはあるんですよ(笑)。それに、電話に出てくれたおじいちゃんがとってもいい人で」
中島「いやいや、そこじゃないでしょ!」
全員「(笑)」
――― 脚本・演出はこれまで数々のエンタテインメント作品に関わってきた中島大地。
長谷川「昔、一緒だった舞台で中島さんが演出助手をやられていた姿を見て、本当にすごい方だなと思いました。演出助手なのにとても説得力があって全てを任されていたので。その後、『ToRow〜2匹の狼〜』を拝見したときにとても台本が面白くて。今回の舞台は家族の絆をテーマにやりたかったのですが、わかりやすいエンターテインメント性のある作品をつくる中島さんに頼もうと決めました」
中島「普段脚本を書くときは、ニュースなどを見て腹が立ったことや疑問に思ったことからメッセージを汲み取って勝手に書くというやり方をしています。つまり自分がその瞬間に書きたいと思ったことしか書けない。なので、今回のお話をいただいたときに困りました。家族や絆というキーワードは自分の中にも常にあるので、いいなと思ったのですが、こういうのって男にとっては恥ずかしい部分だったりするじゃないですか。いつもは殺陣をバンバンやる舞台が得意なので、家族って・・・(笑)。作品を生み出すのはかなり難産でしたね」
――― 12人の主人に12人の執事
長谷川「中島さんには好きなこと書いていいよって言っていたにも関わらず、徐々にリクエストを増やしてしまいました(笑)」
中島「『家族の物語』ということ。そして『絆』がテーマだったのですが、そこにファンタジーがいいとか、いろいろな武器を使いたいとかが加わっていきました(笑)。ただ、できるだけ彼女の要望は叶えてあげたくて、僕なりに考えた結果、『執事』というアイデアを提案しました。執事をキーワードに家族の話につなげていこうと。執事って、舞台ではありがちな設定だけど、12人の主人に12人の執事がすべてつくっていう設定はまあないでしょう(笑)。見たことある執事ばかり書いても面白くないので。ありえない執事がバンバンでてきますよ」
――― 主演はダブルキャスト。声優として活躍する天野七瑠と元アイドルの今出舞がそれぞれ執事・主人としてペアを組む。
天野「執事役というのは初めてで、いろんな想像をしました。『おかえりなさいませ、ご主人様。』という紳士的な感じや、もう少しSっ気のある執事など、、、。でも台本を見たら、予想外の執事でした(笑)。今までまったく見たことがないタイプの執事です」
中島「いまはまだ明かせないことが多いですね。言えることとしたら、バトルバトラーという大会が行われるのですが、主人である今出さんが一人のOLとして参加しているということ。そのOLに天野くん演じる執事がつくという、かなり不思議な設定。だからお二人は主演にもかかわらず謎の存在です」
今出「私は『執事』というワードを見て、すぐにテンションがあがりました!私もついに執事持ちか!と(笑)。ところが台本をみたら、私が妄想していた傅くタイプの執事ではなかった・・・。あれ?って思いましたね(笑)」
中島「実はお二人とも舞台ご一緒するのが初めてです。今出さんの別の舞台をいくつか拝見したことがあるのですが、わりと強気な役が多いよね。見下してるような役。今回まったく違う役を用意したのでチャレンジしてほしいです。そして、初舞台の七瑠くんをどこまでたたせるかというのが僕のやりがいですね」
天野「今出さんとは今日初めてお会いしたのですが、これから舞台ではパートナーということなので、今回のテーマにもあるように絆を深めていければいいなと思います」
今出「私も同じことを思っています」
中島「舞台が広いのでたくさん走らせますよ!」
長谷川「全員武器が違うし」
天野「殺陣をつけてもらうこと自体初めてですが、ホールも広いということなので、いっぱいカラダを使って迫力ある戦闘シーンを楽しんでいただけるように頑張りたいと思います」
長谷川「お手本のようなコメント!」
今出「私も同じことを思っているって書いてください!」
全員「(笑)」
中島「とにかくたくさんバトルがあるので、お客さんご自身の目で見て肌で感じてほしいですね。全員1回は前かがみになって見てもらいたいというのが目標です。だから、役者には、お客さんと同じ気持ちになるような演技を期待したいです」
――― 舞台は感情をあらわにしていい場所
中島「舞台を見たことある人もない人も誰でも来てほしいです。例えるなら、テーマパークに来るような感覚でいいと思います。面白いなら笑ってもらってもいいし、悲しければ泣いてもいい。僕にとって舞台は、お客さんが感情をあらわにしてもいい場所ですね」
長谷川「お客さんも出演者も誰もがこれまで一人では生きてこられてないと思います。必ず誰かに支えてもらって生きてきたと思う。そういう意味では共感できることがあるから、誰でも来てほしい。自分は誰かにささえてもらっていきてるんだなと気づいてほしいですね。そして少し早い春がくればなと」
中島「そのコメント用意してたでしょ!まあ、でもそうだよね。主演が小春だからね」
長谷川「そ、そうです!」
中島「え?違ったの!?全員そこだと思ったと思うけど。3月の公演だから主演の役名に小春ってつけたんだけど・・・」
長谷川「じゃあ、思いは一致しているということで(笑)」
全員「(笑)」
――― 最後にカンフェティの読者へ一言お願いします
長谷川「休業している間に感じたこと。感謝している人に向けてつくる舞台です。誰にでも感謝している人や、支えてくれる人が必ずいることを感じてもらえたら嬉しいです。ぜひ劇場へ足を運んでください!」
今出「私は昔のアイドル時代のファンの人に来てほしいですね。アイドルのファンの人は舞台をあまり見ないので、舞台の面白さに気づいてもらえたらうれしいなと思います。元アイドルだから主演をやらせてもらえていると誤解されがちなので、そうじゃないぞと見返すつもりでがんばりたいです」
天野「執事という役は身近でないけれど、絆という部分では共感していただけることも多いのではないかと思います。お客さんとの一体感を大事にして共演者の方と作っていきたい。あと、殺陣に関してはスピード感が大事ですよね。そこは難しいことを考えずに、すごい!楽しい!と感じていただけるような舞台にしたいです」
中島「脚本・演出・出演とここまで大きな舞台を一人で任せていただけるのは初めて。わかりやすい笑いや涙で楽しんでいただきたいです。何かを感じさせるのは僕達の役目になるわけですが、日常ではないもの触れたからこそ、何か違和感のようなものに触れて持ち帰っていただいて、生きて行く糧になったらいいなと思います。自分も一出演者でもあるので、全員でクリエイティブな舞台を作って最後カーテンコールを迎えられればなと思っています。ぜひ劇場へ足を運んでください!」
(取材・文&撮影:菅原康太)