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ハセガワアユム


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今、演劇界が最も注目する次世代が描く、いびつな青春の疾走と暴走

この作品で岸田國士戯曲賞だって獲りたい。僕は本気でそう思っています。


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みんなが抱えてるいびつさのもうちょっと先を描きたい。

―――この男の内側には、常に「衝動」が疼いている。そう感じさせた。柔らかな面差しの下に秘めた、表現者としての高ぶり。ハセガワアユム、36歳。自らが率いる演劇ユニット・MUが、三鷹市芸術文化振興財団・星のホール MITAKA “Next” Selection 2016に選出されるなど、その才能と感性に、今、熱い視線が集まっている。
3月27日より下北沢駅前劇場で上演される『少年は銃を抱く』は、これまで何度か世に送り出してきた「ぶっ壊れた学園劇」の系譜に連なる一本だ。その名の通り、不登校の高校生が祖父からお守り代わりに銃をもらったところから物語は動き出す。


「これ、最初は映画用に書いたプロットが元なんです。3.11を境に演劇だけじゃなくて、やりたいことをやろうって決めて。映画監督をやるために、ENBUゼミの映画監督コースに行ったんですよ。オッサンひとりですげえ浮いてたんですけど(笑)。そこで「既成の作品を下敷きにして書こう」という大塚英志みたいな講座があって、僕が選んだのがトマス・ヴィンターベア監督の『ディア・ウェンディ』。予告編のナレーションを自分がやった縁で観たんですけど、これが、少年が銃を持つという話なんです。そこから自分の中で消化して書き上げたのがこのプロットです。洋楽の影響をきちんと消化してるバンドと同じで、結果的には着想だけ借りて、全然違うものになりましたね。『ディア・ウェンディ』は少年少女が中心の話なんですけど、『少年は銃を抱く』はそこに大人たちも関わってきて、いま僕が歪だと感じてる「自衛」ってテーマにまで突っ込んでいきたいなと思っています」


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―――白衣の下に女生徒の体育着を着た離婚調停中の美術教師が登場する『いつも心だけが追いつかない』や、トイレ難民の恋と魂を描く青春劇『便所の落書き屋さん』など、毎回意表を突いた設定が作品の妙味となっている。

「みんなが抱えてるいびつさのもうちょっと先を描いてるけれど、トリッキーな演劇をやろうとは思ってないんです。ポストドラマ演劇でもなく、王道の会話劇です。ただプリセット(初期設定)がどうしてもおかしいから、役がまともに歩もうと思ってもまともに歩めないだけ(笑)。それを僕も必死に一緒になって歩もうとするから自然と奇妙な葛藤が生まれてくるんですよね。MU独特の」

―――その奇妙なズレが作品を広げ、おかしみを添える。ハセガワアユムのこの世界観の源泉にあるものは果たして何か。

「たぶんそれは僕自身の存在がネジ曲がってることかな(笑)。名刺にも「ナレーター、劇作家、演出家、映画監督、プロデューサー」、しかも最近は新宿シアター・ミラクルの劇場職員にもなっちゃって。僕はいったい何者なんだろうかと思ったりもします。自分としてはいろんなところから受けた影響を全部演劇に注ぎこむんですけど、どこに行っても浮いた視点で全部きちんと観てる。それを全部混ぜて書くから、こういうちょっと捻れたキャラクターばっかり出てくるけど、結果的にどこにでも居そうなポピュラリティが産まれるのかなと。変態女装教師へも、観客が最終的に共感してしまうような」

―――フライヤーを見ても、まるで単館映画のような繊細な空気がある。だが、この場を借りて解いておきたい誤解があると言う。

「フライヤーの雰囲気から、MUは笑いのない乾いた世界だと見られがちなんです。でも、実際に劇場にはユーモアもあるし、お客さんの笑い声もある。証拠もYOUTUBEにアップされてるので(笑)、フライヤーでおっと思ったらぜひ劇場に来てほしい。そして、フライヤーのイメージとのギャップこそ醍醐味として楽しんで欲しいです


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大人たちが演じることで生まれる10代の深み。

―――また、10代という瑞々しくも痛々しい特有の季節を、大人の役者が演じるということに、ハセガワは独自の美学を持っている。
(写真左・斉藤マッチュ/写真右・小沢道成)


「声のお仕事をやらせていただいている現場で、最近、高校生の役を高校生の声優が演じるという場面に居合わせたことがあって、ちょっと驚いてしまったんですね。僕は高校生の役を大人が演じる方が深みがあって好きだし、それがアニメの面白さと思ってたんですけど、初々しさを優先するケースもあるんだなと。でも、僕の描く高校生っていうのは達観してねじれてるので(笑)、不器用さやピュアを前面に「高校生」とするのはちょっと違いますから。演劇における、大人が高校生の役を演じられる魔法くらいがちょうどいいんです。だから、今回は「虚構の劇団」の小沢(道成)くんをはじめ、演劇で高校生をやれる適齢期の役者を集めました」

―――MUでは、毎回、様々なフィールドから選りすぐりの役者を集め、公演を打つ。そのキャスティングもハセガワが自ら1人ひとりを選んでいる。

「主役の小沢道成くんは本当に天才。漫画に出てくる天才っているじゃないですか。何もないところでちょっと宙を見ていても画になるような、まさにあの感じ。芝居をいかに楽しんでサーフするかという波乗りみたいな揺れ幅が常にあって、本物の天才だと思います。だから、いつどの舞台で見てもエヴァーグリーンな輝きがある。彼の感性をいかにMUの高校生に結びつけられるかがキーかなと思っています」

―――一方、もう1人のキーパーソンを演じるのが、斉藤マッチュだ。

「彼の顔、すごく好きなんです。『進撃の巨人』のリヴァイにも似てると小劇場界では話題なんですが、演劇特有の泥臭さがあんまりないというか、僕とおなじでこの業界にはあまりいないタイプの人ですね。でも、実は演劇がものすごく好きで努力家。王子小劇場最優秀助演男優賞を射止めたり、言うならば努力型の天才です。鴻上(尚史)さんのところで育った天才と、努力を積み重ねてきたもう1人の天才。2人がぶつかる瞬間が見たくて決めたキャスティングです。うちのメンバー・古屋敷(悠)も着実に育ってきているので、この天才2人といい三つ巴になれば」

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ハセガワは、今、牙を取り戻した。

―――劇作家とは、孤独な存在だ。内なるものを外へと吐き出す作業は、時に苦しみも伴う。
(『狂犬百景』舞台写真 撮影・石澤知絵子)


「僕は自分がいろんな場所で培って来た、この審美眼が最大の武器だと思ってます。執筆も、ただ自分を妄信したり、システマチックに書きません。執筆中一番の苦労は、自分自身。執筆と批評を同時にやってる感じです。前回公演の『狂犬百景』もゾンビのような狂犬に囲まれるコンビニからスタートして書き始めたんですが、セルフチェックとの格闘の末、世界が広がり「犬狩りをしている狂気」や「動物愛護センターがパンクしてしまう無常観」までたどり着けました。好きなバンドに例えて恐縮ですけど、サニーデイ・サービスが「ささやかな恋愛」の歌ばかりだった初期から、四枚目のアルバム『24時』で「世界」を描いて覚醒した瞬間に近いです。いつだって稽古場より自分のセルフチェックが一番厳しい(笑)。」

―――だが、それはハセガワの演劇人としての覚悟の証でもある。

「僕がMUをはじめた当初は、ひとりで始めたし、とにかく売れたいって、何としても上に行くんだって、相当尖ってました。けど、それから数年経ったら劇団員が3人になり、集客や評価も含めて安定期に入って、自分の好きな場所で自分の好きなペースでやれればいいかって思うようにもなっていたんです。そんな時、劇団員の渡辺(まの)が「自身のユニットをやりたい」と休団を申し出てきて。そこで演劇の、劇団をやるってどういうことか、残酷だけど答えが分かりました。現状維持でやっていても意味がない。やっぱり上を目指さないと現状維持すら出来ないんだなと。演劇続けたきゃ売れるしかないんだ、って。そういう流れで、今、昔の牙を取り戻してきた感じです。初期の頃の何者でもないまま終わりたくないって気持ちが、自分の中でまた芽生えてる。だから、この『少年は銃を抱く』にもそんな意欲があります」


―――奇しくもそんな折にMITAKA “Next” Selection 2016に選ばれた。今、ハセガワの胸の内にあるのは、むき出しの野望だ。

「この作品が上手くいけば三鷹に再演で持っていきたいし、岸田國士戯曲賞を五人くらい輩出してるセレクションでもあるので、岸田國士戯曲賞も獲りたいと本気で思っています。作品をより多くのひとに届けるためにも、僕は絶対ほしいですよ。四畳半(でやれるような)演劇もいいけど、デカいとこでMUもやれますよってことを(前述の『狂犬百景』は2014年11月・原宿VACANTにて上演)やって見せて、それで三鷹にも選ばれた訳だし。言葉やカタチにしていくと人に伝わるし、イメージが現実になる。言わなきゃ何も始まらない。だから恥ずかしくても、自分の本当の気持ちはちゃんと声に出していこうと思います」

ハセガワは、本作を「MITAKA “Next” Selection 2016への最初の一歩」と位置づけた。その一歩が切り開く未来には何があるか。しばらくこの男から目を離せそうにない。

(取材・文&撮影:横川良明)

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PROFILE

ハセガワ アユムのプロフィール画像

● ハセガワ アユム
1978年 東京都生まれ。子役を経て、桐朋短期大学芸術学部演劇科卒業。99年より同期生を中心にコント系劇団を立ち上げて活動するも、02年に解散。その後は、俳優として、絶対王様、ブラジルなどの舞台に立つ。07年、ソロユニット・MUを立ち上げ。08年には『戦争に行って来た』で文芸社ビジュアルアート 星の戯曲賞 準グランプリを受賞した。また、20歳の頃よりナレーターとして活動する他、13年、映画『新見的おとぎばなし』で商業監督デビュー。同年、映画『ミスターホーム』池田千尋総監督のもと、オムニバス連作で一編『天才詩人』の脚本・監督を担当。様々な肩書きを巧みに使い分け、ジャンルにとらわれない活躍を見せている。

● MU(ムー)
尖った会話劇を武器に、ギャラリーから劇場、短編から長編、 あらゆる振り幅を自在に行き来して活動する演劇ユニット。14年には、初の大人数による集団劇『狂犬百景』を上演、新境地を開拓した。同作を決定打に、三鷹市芸術文化振興財団・星のホール MITAKA “Next” Selection 2016に選出。さらなる飛躍が期待されている。

公演情報

「少年は銃を抱く」のチラシ画像

MU
少年は銃を抱く


2015年3月27日 (金) 〜2015年4月1日 (水)
駅前劇場
HP:公演ホームページ

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