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ヤリナゲ


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旗揚げ5年目の(劇)ヤリナゲが迎えた大きな転機

全人類共通の「思ってることがわかってもらえない問題」を やたらテンション高く、徹底的にふざけて描く

90年代生まれの作家がつむぎだす、鋭い人間像が注目を集める(劇)ヤリナゲ。戦争と売春、出生前診断と中絶など社会問題を扱う硬派な劇団かと思いきや、そのアウトプットは「ふざけて」いる。頭にお茶のペットボトルをのせた緑茶家の「緑茶すずしい太郎」が主人公だったり、7月に上演する最新作の主人公も「今世紀最大のよいこ・Q太郎」だったりと内包するテーマとのギャップに心を奪われてしまう。作・演出の越寛生と長いキャリアを経て(劇)ヤリナゲにたどりついた俳優の浅見臣樹に、話を聞いた。


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もっとわがままに、もっと大胆に

――― 3年連続で佐藤佐吉賞の優秀演出賞を受賞し、この春劇団員が刷新。旗揚げ5年目にして大きな転機を迎えている(劇)ヤリナゲ。こうした変化は、劇作に何か影響を与えたのだろうか。

越「最近、演出のやり方を変えました。ワンマンになってきたというか」

浅見「いい意味でわがままになってきたよね。「無理にでも、もうちょっとセリフ通りに言ってください」とか言うようになってきた。それはすごいいいことだと思う。(2015年の)『206』とか(2016年の)『緑茶すずしい太郎の冒険』の時は、「一緒に考えていきましょう、どうしたらできますか?」みたいな感じだったでしょ」

越「はい。僕、学校の先生をしていたことがあるんですけど、その時なるべくわかんない子に合わせて教えようとしてたんですね。ふつう教員って、たくさん生徒がいたらその真ん中あたりに合わせるんですけど。そういう、わかんない人に合わせるような演出だったんです」

浅見「それって(演出家の)黒澤世莉イズムなのかな?」

越「そうだと思います、演出家としてすごいなと思っていて。すごく好きなんです」

浅見「俺も好き」

越「僕はずっと“世莉ラー”として、見た目から真似しようと髭生やしたりしてたんですけど(笑)。演出も真似ようと思って、「それは嘘である」とか「一緒に考えよう」みたいな感じで、この2年ぐらいやってきたんです。でもある時ふと、世莉さんの「おもしろ」と、僕の「おもしろ」は方向が違うということに気づいて。それでもっとわがままに演出することにしたんです」

浅見「(1月の)『モニカの話』からやり方が変わったよね。台本も遅くなったし」

越「今までに比べて、セリフをちゃんと書くようになったからだと思います。『モニカの話』を書いていた時に、初めて「登場人物が勝手にしゃべりだす」っていうことが起こって。この時、登場人物の「キャラクター」を作り込むことに挑戦していたんですよね。そうしたら、「わ、こいつら、勝手にしゃべってる!」ってなった(笑)。だから演出の時も「この言葉は僕のものじゃなくて、登場人物のものだから変えないで」っていう気持ちが強くなったんです」

浅見「なるほど」

越「それまでは、自分でしゃべりながら台本を書いていたんですよね。当時は稽古で「これは嘘だな、このセリフ言えないんだな」と思ったら、セリフごと削っていたんです。「ああ、僕のしゃべり言葉だから言えないんだな」と。それをやめて、「どうしたら言えますか」って言える方法を探るようにしたのが『206』の時です」

浅見「その演出がすごい面白かったんですよね。それをやりまくって、最終的に誰も台本通りにセリフを言わない(笑)。僕も小劇場で14年ぐらいやってますけど、そんなこと初めてでした。でもわがままな演出が、越にはハマッたんだよね。今までで一番手ごたえを感じてるって」

越「はい。演出の方向性を変えたことが劇団員の入れ替わりに影響したりもして、転機になったかなと思っています」

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根っこに抱えてきた「悪気なく相手を傷つけている問題」

――― これまで社会派のテーマを扱ってきたが、7月に上演する記念すべき10作目『預言者Q太郎の一生』ではどのようなことを描いていくのか。

越「現代にイエスみたいなすごい人が生まれて、そこに「三賢人」がやってくるという話です。誰からも愛されて、何を言っても「すごい、素敵!」って肯定され、許されてしまう人になりたいと思って書いた話です。ドストエフスキーの『白痴』の、ムイシュキン公爵のような」

浅見「率直と誠実の違いの話なんだよね」

越「はい。僕は「悪気なく言ったことで、ふいに相手を傷つけることがある問題」を抱えていて。言いかえると「私の思ってることは、他の人にはわかってもらえない問題」なんですけど」

浅見「それはどういうことなの」

越「小学校の時、同じクラスにハラダくんっていう人がいたんですけど、彼の顔がちょっと思春期特有でクレーターみたいになってて。僕は彼のこと「クレーター」って、呼んでたんですよ」

浅見「おう。それは、なかなかひどいんじゃないの」

越「そうなんですよ、今自分で言ってて「ひどいな」って思うんですけど。でも当時は親愛の表現として言ってたんです。悪口のつもりはぜんぜんなくて」

浅見「ええ!? 怖っ」

越「そう見えたから、見たままを言っていた。傷つけるつもりはなかったんです。つまり、僕はそういうことをしがちなんです」

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浅見「越としては、偽りなく正直に言ったつもりなのに、聞いた相手からすると直接的すぎて傷ついてしまう、っていうこと?」

越「そうです。この「悪気なく人を傷つけることがある問題」は、僕にとっては問題の源泉なんです。

浅見 「うんうん」

越「僕は自分の考えていることを、相手も同じように考えているって思っていたんです。相手も僕と同じ側からものを見ていると。だけどそうじゃないってわかってきた。そういうことを、表現したいと思っています」

――― 浅見臣樹は21歳でデビューし、これまで長くフリーの俳優として活動してきた。その浅見が初めて所属する決断をしたのが、(劇)ヤリナゲだ。浅見と越は10歳近く年齢が離れている。

浅見「去年の4月に誘われて……」

越「もう1年になるんですね」

浅見「そうだよ、入って1年経ったよ! 越の芝居の作り方には、嘘がないなぁと思ったんですよね。『緑茶すずしい太郎の冒険』の稽古の時に、越が「浅見さん、今嘘でセリフ言いましたよね? なんで言えたんですか?」って言うんです。なんかゾッとしちゃって(笑)」

越「嘘の時って、気持ち悪いんですよね。わざとらしかったり、セリフを消化できていないように見えたり」

浅見「そしたら次に「じゃあ、どうしたら言えますかね?」って話になって。どんどん嘘をなくしていく作業をしていったんです。「言えないならそのセリフやめましょう、でも言ってほしいから言うにはどうしたらいいですかね」って。それがすごく面白いなって。で結局、作ってる現場も作品も面白いから、入っちゃえ!と(笑)」


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ヤリナゲって、めちゃめちゃふざけてますね

――― 本作は、これまでとどのような違いを打ち出していこうと考えているのか。

浅見「今回はふざけ倒したいですね。うちの劇団って重たいとか、小難しいとか思われがちなんです。アガリスクエンターテインメントの塩原(俊之)さん(現在休団中)が、『モニカの話』を見に来てくださった時に「ヤリナゲって、もっと静かで考えさせる芝居だと思ってましたけど、めちゃめちゃふざけてますね!」って言うんです。そうです、ふざけられるし、好きにやれるから俺はここに入ったんです(笑)」

越「もっとふざけたい! もうちょっと軽い感じに思われたいです」

浅見「客演もいいよね。東京ムムムカンパニーの森亮平さんが、もう笑っちゃうぐらい男前で。ほぼディーン・フジオカさんかっていうくらい似てるし(笑)」

越「声も低くて、すてきですしね」

浅見「それから澤原剛生くんは、びっくりするぐらい不器用で、すごい変なヤツだし(笑)。この2人を見にくるだけでも、楽しいと思う。わがままに演出するからって、強そうな面子集めたでしょ(笑)」

越「はじめてのアゴラ劇場ですしね。アゴラは、すごく知的な感じのする劇場なんで、逆に体温が高い感じ、やたらテンション高く、やたら動いてる感じにしたいですね」


(取材・文:石川香苗子/撮影:友澤綾乃)

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PROFILE

越寛生(こし・ひろき)のプロフィール画像

● 越寛生(こし・ひろき)
1991年千葉県生まれ。高校時代に演劇を始め、国際基督教大学在学中に(劇)ヤリナゲを旗揚げ。小説を書いてみたがうまく書けず、セリフならなぜか書けたために劇作を始める。2015年『スーサイド・イズ・ペインレス』で佐藤佐吉賞最優秀演出賞を受賞。シニカルな笑いとデリカシーのない脚本・演出を得意とする。代表作に『モニカの話』『緑茶すずしい太郎の冒険』他。

浅見臣樹(あさみ・なおき)のプロフィール画像

● 浅見臣樹(あさみ・なおき)
1982年埼玉県生まれ。21歳でデビューし、フリーの俳優として活躍。劇団「柿喰う客」など数々の劇団に客演することで研鑽を積み、2015年の『206』より(劇)ヤリナゲの作品に参加。2016年4月より劇団員となった。主な出演作に、牡丹茶房『女学生J』、浅見臣樹1人企画『てのひらの夜/とみこのむすこ』、ぬいぐるみハンター『ウォーターバック』、柿喰う客『悪趣味』など。

公演情報

「預言者Q太郎の一生」のチラシ画像

(劇)ヤリナゲ 第10回公演
預言者Q太郎の一生


2017年7月14日 (金) 〜2017年7月23日 (日)
こまばアゴラ劇場
HP:公演ホームページ

8名限定!一般3,000円(全席自由・税込) → 2,200円 さらに100Pゲット!

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