こだわりを感じさせる作品で、私たちを驚かせてきたZu々(ずう)。 プロデュース公演・第1弾『Being at home with Claude〜クロードと一緒に〜』では「幸せなのかも…でも、不幸な愛」を描き、第2弾『Yè-夜-』は「幸せな愛」を、そして第3弾として上演する新作は、セクシュアリティをテーマにした作品で人気の小説家・森奈津子をフューチャー、エロスだけに終わらない『種や物質を超える愛』をテーマに描く。
――― 本作は数ある森奈津子作品の中から、両極に位置するエロティック&コメディタッチの『哀愁の女主人、情熱の女奴隷』を原作とする『哀愁主人、情熱奴隷』と、シリアスで泣ける『いなくなった猫の話』2本を上演。出演の加藤ひろたかと野尻大介に話を聞いた。
加藤「実はまだ今日の時点(6月)で演じる役は確定していないんです。それは役に寄せていくのではなく、色々探って行けたら、というプロデューサーの意向で」
野尻「どの役に一番落ち着くかを色々試すそうで、ドキドキします」
――― 『哀愁主人、情熱奴隷』(原作:「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」)はどんなお話ですか?
加藤「この作品はコメディになるのですが、アンドロイドが出てくる不思議な『おかしみ』みたいな、お腹を抱えて笑うというよりは、味のある面白さが強い作品だと思っています。ちょっとした常識のずれから生じるクスリとした笑いがあるので、このコメディをこれから作っていけることが楽しみです」
――― 会話劇になるようですが、テンポもあり挑戦ですね
加藤、「僕はストレートの芝居が大好きなので、楽しみですね」
野尻「『哀愁主人、情熱奴隷』を先に読ませていただきましたが、最初からくだけていてぶっ飛んでいる作品で、でも伝えたい事はとてもシンプルなんです。そしてハイスピードなセリフの掛け合いがあるそうなので、稽古でも楽しくなりそうです」
――― 『いなくなった猫の話』は泣けるお話とのことですが
野尻「動物と人間のハーフ、ハイブリットが出てくるお話しで、ペットを飼っていた経験のある人は号泣すると思います」
加藤「無償の愛です。ペットを赤ちゃんから育てて、子供と思っていたらいつの間にか先に歳をとってしまう。そんな寿命の違いの切ないお話です」
野尻「どちらの物語も役者同士、キャラクターのやり取りが見所です」
物にも魂が宿るという感覚を日本人は文化として受け入れている。人間だけが心があって、魂があるわけではない
加藤「作品の中でアンドロイドがコミュニケーションをとっていくのですが、それには無理があると思っていたんです。でも人間同士でも話しが伝わらい人もいるから、
もしかしたら形だけでもアンドロイドとは話せるのかもしれない…と思いはじめました。ちょっと先の未来を考えながら、コミュニケーションって何だろうとか、関係性って何だろうとか、僕も一緒に作りながら考えていきたいし、劇場でもみんなと一緒に考えられたら」
野尻「ぜんぜん先の未来と思いながら原作を読んでいましたが、今はそうは思っていなくて、ありえるように思えてきました。技術が発達して、会話ができるようなロボットも増えてきて、人だけが感情を持っているとは限らないような世界がやってくると思うんです。
ロボットが持っている気持ちとか、そういうものを表現することができたらと思います」
これは想像してなかった!という方へいかに持っていくか
――― 出演者が7人ということで、かなりじっくりと魅せる演出になりそうですね
加藤「僕は舞台で大声を出して身体を動かす芝居が多く、ち密で細かく組んで演じることが大好きなんです。今回の作品の演出家の古川さんが脚本を書いた作品に以前出演したことがあるのですが、その時、見学に来た古川さんと俳優と脚本家という立場で一緒に作品について話せて楽しかったので、また違うお話でご一緒できるので嬉しいです」
野尻「先日の舞台『厨病激発ボーイ』を古川さんが観にきてくださりご挨拶できました。本格的な舞台はこれで2作目なのですが、自分がどう変化するのか、もう楽しみでしかないですね」
――― 舞台など新しい作品に向かう時、心掛けていることはありますか?
加藤「やったことの無い事をやってみたい、という気持ちがあります。(相手が)想像しなかった演技プランや感情をどうやって稽古場に毎回持って行けたら楽しいかな…と、いつも課題にしていますね。 古川さんや原作の森先生が、『これは想像してなかった!』という方へいかに持っていくか、そういう所を今回挑戦してみたいです。
特に『哀愁主人〜』は、登場人物が女性から男性へ原作と変わっているので、見え方の違いとかもどう提供しようか、試してみたい事がたくさんあります!」
野尻「僕が心がけているのは…ストレートにするのか、ちょっとクセを付けて演じるのか、何通りも持っていって何が合うのか混ぜていく作業をいつもしています。そして稽古が始まるまでにはたくさんのパターンを準備して行くようにはしていますね。(一番初めの読み合わせで)初めから感情を込めてセリフを読む人や淡々と読む人など、色々な方がいらっしゃいますが僕の場合、最初は一番こんな感じかなって思ったものを披露しています。稽古が楽しみですね」
加藤「舞台の当日だけが演劇の楽しみではなくて、行く前からどうなるのか考えてもらうのも演劇の楽しみだと思っています」
野尻「そうですね。終わってから、あのラストだったけど、あのキャラクターが残りの人生をどう生きるのかなとか、自然に思い出してもらえたら嬉しいです」
加藤「そういう心に残るキャラクターをみせられたら嬉しいですね」
(取材・文&撮影:谷中理音)