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結城一糸・天野天街


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日本・チェコ国際共同公演・糸あやつり人形芝居『ゴーレム』の再演が決定!

役者と人形、音楽と映像が入り組んだ夢の世界を描く!

江戸時代から続く操り人形の伝統を受け継ぎ、日本を代表する操り人形の遣い手・結城一糸。 彼が主宰する一糸座とチェコの操り人形文化が融合し誕生した『ゴーレム』は、2016年に初演を迎え、人間と人形の共演や音楽と美術の美しさなど、伝統だけではなく新しいものを取り入れた幻想的な世界観で、演劇界に大きなインパクトを与えた。およそ1年後の再演となる今回、劇場を横浜から東京の座・高円寺2に移し、空間の変化は『ゴーレム』をどう進化させるのか。結城一糸と脚本・総合演出の天野天街(少年王者舘)に話を聞いた。


インタビュー写真

再演だが同じものではない

――― 初演を振り返って印象に残っている事を教えてください。

天野「印象に残っている事……脚本が遅れたことですね(笑)」

結城「(笑)。このゴーレムで『人間と人形』のコンセプトが多少見えてきた気がしましたよね」

天野「そうですね、この題材自体が『魂のありどころ』で、そういう世界観でしたよね。今回は再演ですが劇場が変わるので大変そうですね」

結城「(人形製作の)林さんからは人形の衣裳とかを少し変えたということで、いま手元に人形はいなくて。どういうデザインになるかで劇場の使い方も変わってきます」

――― では再演としつつも同じものではないですね。

結城「そうですね。3メートル以上の人形が出てきますが、演者の顔に似せていたので、今回は丸山厚人さんなので新しくなります。この人形は6人ぐらいで操り存在感がありますよ」


インタビュー写真

本作は『泣いた赤鬼』で脚本・演出を手がけた天野と、もっとじっくり創作したいということで生まれた意欲作だ。しかし人間と人形の共演、日本とチェコの共作、脚本を執筆する作業は手間がかかった

天野「勘で進めるしかない所がありましたよね。ゾヤさん(チェコの演出家)とは少しお話ししましたが、その時はまだチェコの人形は見ていなかったですし。言葉が通じないことは別として、どういうことがやりたいかのすり合わせがあまりない状態だったので、とっかかりの感覚を見つけるための時間はかかりましたね。
 あるシーンでバッとぶつける構成にしまして、異世界の中に異世界が登場するという感覚にしました。全てにおいてこだわって、やりたい事をやらせていただきましたね」

――― チェコの方々と公演を一緒にされて、日本との感覚の違いなど感じたことは?

結城「やっぱり違いますよね。チェコの風潮みたいなところがあって、人形劇をやる方々は、役者をやったり音楽をやっていたり、糸操り人形だけにこだわるということには希薄な所がありますよね。表現として色んな形の人形を使ったりしていました。
 例えば僕たちに棒遣いの人形を使ってと言われても、それは棒遣いの方に失礼と思いますから。僕たちは糸をどう遣うかを生まれてから長年やってきたこだわりがあるので、そういう部分ではチェコの人たちは自由なのかなと」

天野「ヒトガタとしての人形への考え方の深さはあるんだけど、見せ方においては『何となくこうであればいい』と自由な部分があった気がしますね。それは否定的な事ではなくて、感覚の違いだと思っていて」

結城「両方いい所があって、お互いのいいとこ取りでしたね。一緒にやって良かったです」

天野「チェコの方も色々獲得して帰っていかれましたよね。表現においてはびっくりすることはなかったですね」

結城「違いといえば、人形を扱う人が大柄だったことかな(笑)。190センチで、芝居の中にその大きさも書き込んでもらえて」

天野「そうそう(笑)。その特徴は取り入れないともったいないですからね」


インタビュー写真

『泣いた赤鬼』では鬼(人間)と村人(人形)の身長差がとても絶妙な作品だった。
そんな人間と人形が同時に存在する幻想的な世界観で魅せるのがこの一糸座の魅力だ。


――― つきなみですが、それぞれのお気に入りシーンなどはございますか?

結城「もう全部です! 一部分を切りとるのではなくて、流れみたいなものや色んな要素が含まれているので、どこが一番いいとかではなくて、人形と人形遣いと役者さんの関係とか、ものすごく複雑な幾何学模様のような芝居です」

天野「初演は時間がなくてギリギリで悔しい思いをした部分があるので、今回はきちんとつめていきたいです。丁寧に作ることができるので完成度は絶対に高くなるかと」

――― 劇場が座・高円寺2へ変わりますね。

結城「空間が違うと見え方が違うので、色々考えている所です」

天野「前回は奥行きを利用しましたが、今回は幅が広いから相談しながらですね」

結城「横浜でやった時は、奥からずうっと出てくることが一つのテーマに近いものがありました。近づいて行くけど遠ざかって行くみたいな」

天野「今回は同じ事をしますが、見え方はまったく変わると思います」

インタビュー写真

――― 日本では文化として操り人形がある部分と、ミステリアスな部分の趣味として人形が好きな若者がいますが、新しいお客様へのアプローチについては?

結城「ぼくは興味がでてきたらそっちの方に行ってみるのですが、僕が人形を遣って生きていくうえで、欠けたものではなくて、人間の欲望が横溢していくみたいなね、そういうイメージがあるので、その欲望が正しいとかではなくて、そこから何か始まるみたいな想いがありますね。新しい観客を獲得しようとかの為にはやるつもりはないんですけど、新しいことには常に興味を持っていくことが新しい観客獲得につながっていくことなのかな」


人形遣いと人形の関係がスリリングで面白い

天野「人形と人間の共演は、動かすモノと動かされるものの関係では、あるのですが、ふと、動かしていると思っていたモノに動かされているのではないか? 主従の関係、というか、彼我の関係が反転してしまうのではないか?という、危機感をはらみながら対峙していく、人形遣いと人形の関係がスリリングで面白いと考え、そんなカンカクのシーンも入れてみました。
 あとは『人間は何故動くのか?』という根源的で本質的な問いを『人形は何故動くのか?』という、皆がわかっているつもりになっている解答めくものの中につっ込んでカクランしてみたいな、と。
 人間の脳みそは意外と自分と似たものを見つけ出して、ヒトガタにすぐ置き換えていくような感覚が備わっていて、それが一番わかりやすい形で、そこになぜ自分たちが動いているのかと。
 それを動かしていることは征服することではなくて、ひょっとしたらむこうに征服させるかもしれない危機感を持ちながら対峙していく、人形遣いと人形の関係がスリリングで面白いなと、今回それをちょっと入れています」

結城「人形を道具にしてしまったらつまらなくて、もちろん人形を手段として扱うんだけど同時に目的としても扱う、人形そのものが持っている物に僕たちは魅かれてついていくみたいな部分があるんですよね。役者さんと僕たちが違うのは、やはり僕たちは影の部分、行為者なんです」

天野「一瞬世界が逆転してもおかしくないような感覚を感じでもらえると。いつも感じている世界とは違う所に一瞬で行くことができる作品だと思いますよ」

結城「役者と人形、音楽と映像が入り組んでいる夢の世界を描きます。初めて見る方は、まったく違った世界を体験できると思います。劇場でお待ちしております」


(取材・文&撮影:谷中理音)

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PROFILE

結城一糸(ゆうき・いっし)のプロフィール画像

● 結城一糸(ゆうき・いっし)
1948年生まれ。寛永年間から続く結城座・十代目結城孫三郎の三男として生まれ、5歳で初舞台を踏む。72年に三代目結城一糸を襲名。03年に結城座から独立、05年に「江戸糸あやつり人形座」を設立する。15年に「一糸座」と座名を改称し現在に至る。代表作に『寿三番叟』『釣女』『八百屋お七』など古典作品のほか、『アルトー24時++再び』『カリガリ博士』『泣いた赤鬼』『セロ弾きのゴーシュ』『星の王子さま』など現代作品も上演。海外公演やワークショップを行い、飽くなき糸操り人形の素晴らしさを伝えている。

天野天街(あまの・てんがい)のプロフィール画像

● 天野天街(あまの・てんがい)
1960年生まれ。愛知県出身。「劇団少年王者舘」主宰。82年に劇団を旗揚げし、名古屋を拠点として全国的に活躍中。演劇、ダンス、人形劇、コンサート等幅広いジャンルの舞台演出を多数手掛ける傍ら、漫画執筆、デザイン・ワーク、エッセイ等の分野でも活躍。98年より演劇ユニット《KUDAN Project》を始動、海外公演を開始。97年には名古屋市芸術奨励賞受賞ほか多数の受賞歴がある。主な作品は『シアンガーデン』『思い出し未来』『御姉妹』『高丘親王航海記』『真夜中の弥次さん喜多さん』など。

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