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井上芳雄・成河


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耽美と闇の世界に彩られた究極のエンターテインメントが新たな装いで姿を現わす!

演劇人としての意識を分かち合う2人が、2018年版『黒蜥蜴』への想いを語る

美貌の女盗賊・黒蜥蜴と、名探偵・明智小五郎の対決を描いた江戸川乱歩の傑作小説『黒蜥蜴』。これまで何度も舞台化/映像化され、中でも三島由紀夫による戯曲は、原作の耽美的な要素を強調した独特の世界観で多くのファンに愛されている。
 そして2018年、三島の戯曲をデヴィッド・ルヴォーが演出する新たな『黒蜥蜴』の上演が決定。黒蜥蜴を中谷美紀、明智小五郎を井上芳雄が演じるということで早くも話題沸騰中だ。そこで今回は、ミュージカル『ルドルフ〜ザ・ラスト・キス〜』(2012年)でルヴォーの演出を受けた経験を持つ井上と、黒蜥蜴の愛人・雨宮潤一役に起用された成河の2人にインタビュー。『ハムレット』『エリザベート』といった大作で共演し、お互いを「特別な関係」と話す彼らだが、ミュージカル以外での共演は初めてとなる本作には、今まで以上に大きな期待を抱いているようだ。


インタビュー写真

ルヴォーはみんなを魅了する魔法使いのような演出家

――― まず、出演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。

井上「デヴィッド・ルヴォーとは『ルドルフ〜ザ・ラスト・キス〜』でご一緒して以来、もう一度やりたいと熱望していて、やっと実現できたという気持ちです。本当は僕のスケジュール的に難しかったのですが、どうしてもやりたいといろんなところに無理を言って実現したので、とにかく嬉しいですね。しかも蓋を開けてみたら成河も一緒で」

――― 公式サイトのコメントによると、井上さんは1968年に美輪明宏(当時:丸山明宏)さんが黒蜥蜴を演じた映画版(深作欣二監督)をご覧になったそうですね。

井上「今回の出演が決まってから見ました。その前に宝塚のミュージカル版(木村新司脚本)を見て、その後原作を買って読んだ覚えがあります。そのときもすごく面白い作品だなと思っていましたが、68年の映画を見て“これか”と。だから今回は、もうやりたい要素ばかりですね」


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――― 成河さんはいかがですか?

成河「僕はTPT(シアタープロジェクト・東京)がベニサン・ピットにあった頃の最後の時期に関わっていたので、その創設者の1人であるルヴォーさんに対しては、外国人では誰よりも長く日本と創作を続け、いろんな形での日本の演劇との関わり方を模索していらっしゃる方だという印象がありました。
 なので、そのルヴォーさんとご一緒できるのであれば、小さくて濃密な空間でやりたいという欲があって、今回の話は最初一度お断りしたんです。それに、雨宮という役は僕よりも若くてフレッシュな俳優が演じた方が作品には合うんじゃないかという印象もありました。そのことを伝えたら、ルヴォーさんが直接会って話をしたいと言ってくださって」

――― どんな話をしたのですか?

成河「ルヴォーさんときちんとお会いして話すのは初めてでしたが、先ほどの話を正直にしました。さらに僕が見てきたルヴォーさんの作品や、いろんな日本の演劇についての話をしたらすごく盛り上がって、意気投合したんです。そのとき、今回の『黒蜥蜴』はフィジカルなものにしたいんだとおっしゃって…… 雨宮という役に対して僕が抱くイメージは確かにわかるけれども、同じクリエイターとして、それをフィジカルなものとして作り上げる助けになれるんじゃないかというような話をしてくださって、それが僕にはすごく響きました。
 だから雨宮役を一生懸命やりますというだけじゃなく、ルヴォーさんが作ろうとしている演劇に対して、自分が今まで蓄えてきた中から何か出せるものがあれば、すごく面白そうだなと思ってお引き受けしました」


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――― では改めて、ルヴォーさんの演出や人となりについて、どういうところが魅力的だと感じていますか?

井上「とにかく素敵なところがいっぱいあります。“人たらし”というと言い方が悪いかもしれませんが、ものすごくみんなを魅了する人で、僕たちに素晴らしい言葉をくれるんです。いつも世界中のいろんなところにいるのも、そうやってたくさんの人に好かれているからだと思います。アンサンブル一人一人に至るまで、役者のことをとてもよく見ていて、その姿にみんな感動させられるんです。こんな人は他に見たことがありません」

成河「イギリスの演出家さんって、やっぱり魔法使いですよね。役者の操り方が上手いというか、役者にものを伝えることこそが演出の仕事だと考えていらっしゃるところがあると思うので、その部分はとても楽しみにしています。そして、ものすごく勉強されている。三島由紀夫の戯曲に対しても、日本人では太刀打ちできないくらい勉強されていることが、話をしている中でもわかりましたし、さらにその先まで…… これからの日本の演劇にはどういう可能性があるのかというところまで射程に入れているんです。この人と一緒に演劇を作るのは絶対面白いに違いない、そう思っています」



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一緒にひとつの作品を作っていけるのが本当に楽しみ

――― 今回『黒蜥蜴』を一緒にやるにあたって、お互い期待するところは?

井上「さっき彼も言ったように、雨宮役を成河がやるというのは僕も意外ではありました。美青年の役だし……」

成河「(井上を小突く)」

井上「ごめんね(笑)。でも僕、成河の顔が好きなんですよ。美青年かどうかはちょっとわからないですけど(笑)、とにかく盲目的に彼の顔が好きなので、ついに成河の顔を活かす役柄が来たなと。活かさないかもしれないけど(笑)」

成河「(大爆笑)」

井上「あくまでも今回の雨宮をやるわけだから、今までのイメージと違って当然だし、ルヴォーも成河も、想像する通りにはやらない人なので、どうなるかわからないというのがいいですね。ミュージカルじゃない作品を一緒にやるのも初めてなので、稽古場で共有しながら役を作っていけるのもすごく楽しみです」

成河「僕にとって彼は本当に特別な存在で…… もともと小劇場出身の僕が『ハムレット』でミュージカルに初めて出演して、初めて出会ったミュージカル俳優が彼なんです。だから最初はちょっと警戒していたんですけど、彼は芝居に対してものすごく真面目で真摯で、世代的にもいろんな話ができた。
 ちょうどその頃、彼自身もいろんなことを考えていた大事な時期だったみたいで、悩みを打ち明けてもくれたし、とても真剣に葛藤していた姿を覚えています。しかも彼がハムレット役、僕は親友のホレイショー役ということもあって、すごく愛おしい存在でした。僕も彼にしか話せない話があったりするし、彼と会って話すのがすごく楽しいんです」


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井上「僕も同じですね。今何に興味があるのか、今どんなことを考えているのかを聞きたい、話したいと思う存在です。成河自身、何かをまとったり守ったりしないようにしている人だと思うので、こちらも自然とそうなっちゃうところがあるかもしれません。ある意味、根っからの演劇人というか、無理やり壁を取っ払おうとしている」

成河「ものを作っている人は、常に“これでいいんだろうか?”って考えているはずだと僕は思っているので、誰よりもそういう問題意識を持っている彼とはすごく話が通じるんです。だから今回は、自分の役を作ること以上に、1つの作品を作るということを彼と一緒にしたいです」

――― 黒蜥蜴を中谷美紀さんが演じることも大きな見どころですが。

成河「役に対してすごく集中されていく方という印象があるので、イメージとしてはぴったりですよね」

井上「僕はドラマでワンシーンだけご一緒したことがありますが、現場での気遣いは完璧だし、演技もしっかりキャラクターをつかまえてやってらっしゃる。あと、僕と同じ事務所にフィリップ・エマールというフランス人のパフォーマーがいるんですけど、彼と知り合ったのは中谷さんがきっかけだったりするので、そういう親近感もあります」

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成河「中谷さんは一人芝居もやられているじゃないですか。そこでどういう思いで舞台に立たれるのか、その姿勢みたいなものを僕はすごく知りたいので、いっぱいお話できたらいいなと思っています」


――― これまで何度も上演されてきた『黒蜥蜴』を、今度はどのように世の中へ投げかけたいと考えていますか?

成河「言いだすとキリがないですけど、とても興味があるのは、三島由紀夫の文体を、現代のお客さんがどう受け取るのかということ。どうしても日本人がイメージに縛られてしまう三島由紀夫の言葉に対して、こんな触れ方があるんだという1つの提示を、ルヴォーさんとは作れそうだと期待しています」

井上「ルヴォーが今これを日本でやろうとしていることに意味があると思うんです。外国人の演出家が、日本人の作品をリスペクトして上演するという…… でも、もうどこの国の人間かっていうのは関係なくて、そういう違うものさしで測れるようなものになったらいいですね。これで世の中を変えるんだっていう思いを持ってやり続けていることがすごく魅力的だと思うし、今回はこのカンパニーでそれをやることにすごく喜びを感じます。
 しかも、その結果を予想できないところがすごくいい。先が見えることをやっても仕方ないし、だいたいこんな感じになるだろうなというんじゃないところが、すごくいいと思います」


(取材・文&撮影:西本勲)

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PROFILE

井上芳雄(いのうえ・よしお)のプロフィール画像

● 井上芳雄(いのうえ・よしお)
1979年7月6日生まれ、福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科出身。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。その後も『モーツァルト!』『ミス・サイゴン』『ミー&マイガール』『ハムレット』ほか多くのミュージカルに出演する一方で、井上ひさしの遺作となった『組曲虐殺』では主役を演じ、大河ドラマ『おんな城主直虎』にも出演するなど、ストレートプレイや映像作品でも活躍。
 さらにCD制作やコンサートといった音楽活動も意欲的に行っている。2006年、第13回読売演劇大賞杉村春子賞を皮切りに受賞歴も多数。10月12日には東京国際フォーラム・ホールAにて『井上芳雄 by MYSELF スペシャルライブ』を行う。

成河(そんは)のプロフィール画像

● 成河(そんは)
1981年3月26日生まれ、東京都出身。大学時代より演劇を始める。2002年に北区つかこうへい劇団に入団し、『飛龍伝』『熱海殺人事件〜平壌から来た女刑事』などに出演。退団後はジョン・ケアード、サイモン・マクバーニー、野田秀樹など、国内外の著名演出家の舞台に多数出演。主な出演作は、テレビ&映画『SP』シリーズ、NHK連続テレビ小説『マッサン』、舞台『春琴』『ショーシャンクの空に』(主演)、『100万回生きたねこ』(主演)、『わたしは真悟』『髑髏城の七人 Season花』『子午線の祀り』など。
 平成20年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第18回読売演劇大賞優秀男優賞受賞。9月28日からは主演舞台『人間風車』(後藤ひろひと作/河原雅彦演出)の上演がスタンバイしている。

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