壮大なファンタジーと緻密な心理描写を融合し新しいエンターテインメントを生み出す舞台プロデュースユニット「銀岩塩」が、2019年9月に完全オリジナル作品として上演した『ABSO-METAL』の待望の続編が登場。特別な能力を持つ生徒だけが入学を許された特殊教育機関「セント・アモーディ学園」を舞台に、人間の全ての要素・才能が数値化、換算されるメダル“アブソメタル”を巡って学園を支配する生徒会と転入生との闘いを描く。前作に続き主人公の転入生ルカを演じる正木郁と、ヒロインのヴィヴィアン役の伊藤萌々香。銀岩塩からは生徒会長ナイゼル役に加えて演出を担う井上正大と、ナイゼルの片腕、ローク役で代表の岩田有弘に本作への意気込みを語ってもらった。
―――初の完全オリジナル作品の待望の続編が登場です。
岩田「『ABSO-METAL』は壮大な世界観の中に僕たちがやりたい事を詰め込むだけ詰め込み、アクションや歌、ダンスに最新技術を駆使した映像と骨太のお芝居という、まさに良いところ取りの作品です。それが造語ではありますが、“FUSIONICAL STAGE”というサブタイトルにも表れています。前作のハードルは超えないとお客様も納得してくれないはずなので、演出を手掛ける井上くんを中心に主演のお二人にもかなり頑張ってもらおうと思っています」
色んな魅力が詰まった作品
―――この壮大な世界観を学園モノにしようと思われたのはなぜでしょう?
岩田「登場人物の成長過程や恋愛を大人で描くのも何か違うじゃないですか。だから学園を舞台にドキドキワクワクを入れて、また大人社会ともぶつかりながら、若い子達が成長していく姿を、皆が共感する場所から始めたいと思いました。それにできるだけエリアを狭くして、物語を深く掘り下げた所から始めたいという思いで学園を舞台に設定しました。
人間の全ての価値を“アブソメタル”というメダルに変換することは恐ろしいことですが、そこに人間の在り方なども絡めて語ることができる作品でもありますし、観てもらえれば色んな魅力が詰まっている事がお分かりいただけると思います。
本来であれば、『ABSO-METAL』の前日譚となるVol.4.5『ABSO-METAL〜黎明〜』が2020年5月に上演予定でしたが、コロナ禍で2021年10月に延期となりました。『〜黎明〜』をご覧になっていただいて、より『2』が楽しめる構成にはなっていましたが、脚本の塩田泰造さんと演出の井上くんが奮闘して、『1』から『2』でも綺麗に観られるような作品になっているはずなので、期待していただければと思います」
―――演出を手掛ける井上さんにとっても前作以上に力の入った作品となりそうですね。
井上「様々なキャラクターにスポットを当てる舞台は多いと思いますが、僕は主人公とヒロインにしっかり焦点を絞った方が好きで、脚本の塩田さんともそういう話をしてきました。真ん中の二人がしっかりストーリーを牽引しながら、周りがどうそれを彩っていくかを考えていますね。特に主演の正木くんは『JINGA』での稽古場の姿勢を見て、役者として非常に熱いものを持っていると感じました。
次作の主演候補を決める上でも真っ先に名前が挙がりましたし、銀岩塩としても新しいシリーズを生み出したいと思っている中で、彼が応えてくれるのは非常に嬉しい事でした。
更に正木くんと伊藤さんにはアンサンブルだけで2週間おこなう「プレ稽古」にも参加してもらって、そんな作品に熱い思いを持つお二人がいるからこそ、全体の空気も引き締まっています。
今回も生徒会長のナイゼル役として僕は舞台に立ちますが、正直言うと僕が出なくても良いと思っています。自分が出るという事を少しでも考えると何かが壊れるような気がして。周りの皆には迷惑かけてしまうかもしれませんが、稽古場では代役の人に立ってもらい、なるべく自分は客観的に見られるようにしたいですね」
岩田「銀岩塩からしてみると、旗揚げから井上くんを中心に作品創りをしてきました。彼には役者として舞台に立って欲しいというものがあります。ただ皆さんが思う以上にクリエイティブな人で、作品を創り上げる過程も魅力的なので『ABSO-METAL』では彼の新境地を開く場所になっているのかなと。だから芝居だけでなく演出面にも皆さんには注目してもらいたいですね」
舞台のあり方を根底から覆された
―――主演のお二人は銀岩塩の印象をどの様にお持ちですか?
正木「Vol.2『牙狼
伊藤「私は前作の『Vol.4』が初めてでした。人見知りの性格もあって、皆さんの仲が深まったところに入っていくのに最初は少しドキドキしていましたが、それを温かく迎え入れてくださって緊張も解けたので、最終的には自分はこうしたいという意見まで出せるようになっていました。ヒロインのヴィヴィアンは明るくて皆の中心にいるような存在だったので、この中で私も同じように輝けたらいいなと思って思い切り演じさせてもらうことができました。また制服も独特のカッコよさがあってビジュアル撮影の時からテンションが上がりっぱなしでした」
ヴィヴィアンが闘う!
―――本作でヴィヴィアンは前作ではなかった殺陣のシーンがあるようですね。
伊藤「そうなんです! 前作ではルカとアイコが闘っているシーンをずっと見守る側でした。映像と組み合わさった殺陣が凄まじくカッコ良くて。本番中もずっと裏のモニターで観ていて、稽古中もふざけて殺陣をつけてもらって、いつかヴィヴィアンを闘わせてくださいとお願いしたらまさか『2』で実現するとは!」
岩田「台本読んで想像以上だったでしょ!?」
伊藤「本当に想像以上でした。私、出るたびに闘っていない?っていうぐらいに(笑)
びっくりはしましたが、楽しみが倍増しました。今から気合が入っています!」
誰もが予想しない展開に
―――今回、ルカが誰と闘うのかというところも気になります。
正木「そうですよね。おそらく9割ぐらいの方にとって予想外の展開になると思います。
ルカは前作でのライバル、アイコとの壮絶な死闘のあとに力を使い果たして7日間眠り続けたのですが、その間にも様々な事が巻き起こっていました。ルカが目覚めた時に果たしてどの様に学園が変わっていくのかにも是非注目してもらいたいですね。
また殺陣も前回よりも一味も二味も違う、まったく角度を変えたアクションになっているのでそこにも注目してもらいたいです。『2』が上演できるのも、前作を沢山の方にご覧になっていただいた事で実現しました。まずはそこに感謝の気持ちを持ちながら、前作では描ききれなかった深い部分までを掘り下げているので、全力で演じ切りたいと思います」
岩田「ルカは間違いなく前作以上に心も身体も疲弊すると思います(笑)」
正木「僕、公演が終わったあとに一人旅をするかもしれません(一同笑)」
Vol.4.5に繋げる作品に
―――本来であれば、Vol.4.5「ABSO-METAL〜黎明〜」が先に上演される予定でした。
井上「元の構成案が『黎明』があってからの本作だったので、僕らとしても思うところはありました。
でも塩田さんとも話し合って、逆に『黎明』を観たくなるような作品にしようと。なので『2』はその『黎明』への伏線が張り巡らされているのでファンの方は勿論ですが、初めて観る方にも楽しめるような作品にしていくので、そこは楽しみにしていただければと思います。
コロナの影響もあって家でも楽しみたいという声が出る中で、生の舞台でしか楽しめないというのはどこか引っかかっていて、映像に特化したのが映画やドラマだとしたら、『ABSO-METAL』は映像でも舞台でも楽しめるところを追求していきたいですね。『2』では前回以上に役者の芝居を観せる事を意識していて、その役者の芝居をより引き立たせる迫力ある映像になるはずです。
普通の舞台ではタブーとされているというか、これが当たり前だよねという既成概念を覆えしていこうと思っています。役者やスタッフの皆は苦労するかもしれませんが、お客様が観て最高に楽しかったというものを提供したいですし、例え無茶ぶりでも瞬発的に応えてくださる方々ばかりなので、そこに甘えさせてもらっています」
岩田「もう皆さん、ドMの方々ばかりですから(一同笑)」
―――期待以上の作品になりそうですね! 最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
岩田「『ABSO-METAL』の核心を『2』では突いてくるので、ストーリーのスピード感は半端ないと思います。今後どうなる!?というドキドキワクワクが詰まっていて、細かく説明するよりも、一度観れば一気に引き込む力を持っている作品なので、何も考えずに観に来てください」
伊藤「本当は言いたい事が沢山ありますが、それは会場に来てくださった方や画面越しに観てくださった方にプレゼントしたいと思っています。前回に引き続き、皆で素敵な作品にしていきますので是非観に来て欲しいです!」
正木「この『2』から入っていただいても間違いなく楽しめる作品になっています。でも出来るならば、『1』がブルーレイ・DVDで販売されていますので、観ていただいた方がより楽しめると思いますので、『1』『2』と続く『黎明』につなげていただければと思います。沢山の方に観ていただけることによってさらに“その先”へと期待ができますので、是非会場で皆様にお会いできる事を楽しみにしています!」
井上「今回は主演のお二人だけでなく、新キャストも魅力的な方々に出ていただいております。『ABSO-METAL』がより魅力のある作品とするべく、本番の日まで皆で悩みながら準備を進めていきますので、その結果を舞台上で皆様と共有できたらと思います」
(取材・文&撮影:小笠原大介)