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大島寛史・熊手竜久馬・立川せりか・吉岡瞳


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震災直後に上演された鴻上尚史の戯曲を、“平成生まれ”はどう表現するか

神奈川の演劇シーンを担う若手が集結! 平成世代による要注目のKAAT公演

神奈川県内で活躍する平成生まれの若手演劇人たちが、劇団/個人の壁を超えて集結し、KAATでの公演を実現させる。取り上げるのは、2011年に鴻上尚史が虚構の劇団のために書き下ろした『アンダー・ザ・ロウズ』。神奈川県演劇連盟がプロデュースする<TAK in KAAT>の一環として行われるこの公演について、製作委員会の委員長で演出を務める大島寛史(チリアクターズ)、副委員長で出演もする熊手竜久馬(虹の素)、ストーリーの要となる吉澤奈緒役をダブルキャストで演じる立川せりか、吉岡瞳の4人に集まってもらい話を聞いた。


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同世代の横のつながりを求めて

――― 企画の発端は約1年前、神奈川県演劇連盟に所属する2つの劇団をそれぞれ主宰している大島と熊手が、“一緒に何かやろう”と話し合ったところから始まった。

大島「僕がパーソナリティを担当していたローカルのラジオ番組に熊手君がゲストで来てくれて、確か打ち合わせの席でそういう話が出たんだよね。僕は小田原で、彼は横浜を拠点に活動しているんですけど、2人とも同い年で、劇団を主宰していて、脚本を書いて演出して役者もやるというように共通点がたくさんある。そんな奴が向こうの方にいるなっていう意識は、お互いにあったと思います」

熊手「それで“そっちはどういう稽古をしてるの?”って聞かれたから、言葉で説明するより、何か一緒にやった方がお互いのやり方も見えて面白いんじゃないかっていう話になって。そのあと俺はチリアクターズに客演したので向こうの稽古は経験できたけど、聞かれた俺の方はまだ見せてない(笑)。そういう流れから生まれたのが今回の企画です」

――― その後、同じく交流のあった劇団や俳優を招き入れて製作委員会が組織され、上演作品として『アンダー・ザ・ロウズ』が選ばれた。平行世界としての“もう1つの日本”を舞台に、若者のいじめや孤立などの問題を盛り込んだ同作は、2011年4月、東日本大震災直後の自粛ムードに包まれる中で上演された作品でもある。

熊手「作品を決める段階では、シェイクスピアとかの古典も候補に挙がっていました」

大島「もちろん自分で書くという選択肢もありつつ、その中でも『アンダー・ザ・ロウズ』は、僕らとだいたい同じ年恰好の人間によって上演されたという意味でも、チャレンジしがいのある戯曲だと思いました。当時の世間というか、日本人の対応といったものにも斬り込んで触れている作品なので、震災から5年というのを意図したわけではありませんが、今このタイミングで上演する意味はあると思っています」

――― キャスティングに際しては、同じ県内で新しい横のつながりを作るというテーマの下に一般公募のオーディションが行われた。

大島「知り合いだけで集まるんじゃなく、もっと広げていこうと。神奈川県には、僕らの世代で演劇をやっている奴はもっといるはずなので、その人たちと出会いたいなと思ったんです。実際、本当にたくさんの人がオーディションを受けに来てくれて、“今まで知らなかったいい人がこんなにいたんだ”と感じました」

熊手「神奈川県演劇連盟に加盟している団体は数十年の歴史がある老舗がほとんどなんですけど、そういう上の世代の人たちが合同公演を行ったりして、劇団同士で活発に交流しているんです。そんな姿を見て、僕らの世代も横のつながりをしっかり持ちたいと思ったというのはありますね」


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幅広いキャストで鴻上作品を演じる

――― そして今回の公演には、“平成生まれの神奈川合同公演”と冠されている。そこには、単に同世代で芝居を作るということ以上の意味もあるようだ。

熊手「大島は平成3年生まれ、俺は平成2年生まれで、平成世代の先頭をずっと走ってきたのですが、事あるごとに“えっ!平成生まれがもう中学生?”とか、“平成生まれがもう成人?”みたいなことを言われたり、ゆとりとか草食っていう言葉で語られ続けてきました。でも、これからの未来を作っていくのは間違いなく平成世代。そんな平成の先頭に自分が生まれたことにはきっと意味があると思って、今回は平成生まれというところにこだわりたいと考えたんです。あと、やっぱり俺らの世代にはネットがあって、他人とのコミュニケーションも対面じゃなくメールとかLINEでやり取りしてしまっている。そういう世代だからこそ、人と人との距離を測るツールでもある演劇というものを通してお互いの距離を縮められるんじゃないかとも思っています」

――― オーディションで選ばれたキャストは役者だけでなく、高校生や大学生、会社員と幅広く、演技のキャリアもそれぞれ異なる顔ぶれが揃った。

大島「以前に共演したことがある人や、製作委員の劇団メンバーも混ざっていますけど、初めましての人がけっこう集まりましたね。今日はそれを代表する2人に来てもらいました。立川さんは俺とは面識があったけど他の人とは初めてだし、吉岡さんは完全に初めましてですね」

立川「去年まで桐朋学園芸術短期大学に通っていて、鴻上尚史先生の授業も受けていました。卒業後はフリーの役者として活動しているんですけど、どうしても東京都内が中心なので、神奈川で横のつながりを作ろうという今回の企画は面白いなと思って参加しました」

吉岡「私は大学時代から演劇に興味があって、サークルでミュージカルをやったり、外のワークショップを受けたりしていました。今は会社務めをしながら、土日で演劇活動をしています。今回のキャストには他にも会社員の方がいらして、自分みたいな人が他にもいるんだなってびっくりしました(笑)」

立川「『アンダー・ザ・ロウズ』は映像で観たことがあって、そのときは社会のことや時代の風潮みたいなところを中心に観ていました。でも改めて戯曲を読み解いていくと、いろんな登場人物がそれぞれ1人の人間として生きている、人と人との問題が詰まった作品だと感じました。観る人が自分自身の問題として考えられるお芝居になるように、私たちからも発信したいなと思っています」

吉岡「鴻上さんの作品は好きで、虚構の劇団もよく観に行っていましたけど、『アンダー・ザ・ロウズ』は観ていなかったんです。鴻上さんらしいSFっぽさと、現代社会の問題にコメディ要素を交じえて訴えかけていくところがありながらも、今の時代に合わせた落としどころを1つ作って、そこから“じゃあ、あれはどうだったんだろう?”と巻き戻して考えさせられるような作品だと思いました。昔の戯曲よりやりやすそうだとも感じましたが、だからといって安直に進めないで、ちゃんと深めていかなければいけないなと思っています」

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東京に負けないという思いを胸に

――― そんな“新しい横のつながり”を演出家として仕切る大島の印象について尋ねてみると……。

熊手「自分が演出する場合との比較になってしまうけど、大島はシーンを途中で止めず、ダメ出しも少ない。役者に委ねているところがたくさんあるんだろうなという印象です」

立川「もともと大島さんとの共通言語みたいなものを持っている方の演技を見て、大島さんが何かに気づいて、役者も気づくという状況と、全くそういう共通言語がない状態で、大島さんも予想していなかったものが目の前に出てきた瞬間の発見みたいなものもいろいろあって、それは面白いです(笑)」

吉岡「私は、それぞれの役者に合わせた大島さんの言葉選びがすごいなと本当に感動していて。同世代と言っても、私自身も含めていろんなレベルや環境の方が集まっている中で、みんなが知ってるような言葉で説明したかと思いきや、すごく知識豊かに細かいところをつついてくるときもある。それが本当に的確なんです」

大島「居づらいなあ(苦笑)。さっき熊手君が言った通り、役者に委ねている部分はすごく多いです。今はそれを、稽古を通して少しずつ減らしている段階ですけど、それでも他の人よりは役者を信じていると思います。もちろん、出てきたものに対しては責任を持つけれど、せっかく未知数の若者が集まっているので、今はその創造力に賭けてみようかな、と」

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――― このように集まった演者たちが、KAAT 神奈川芸術劇場のステージに立つ。現在の、そしてこれからの神奈川演劇シーンを見守る上で大きな意味を持つ公演と言えるだろう。

熊手「東京の劇団を観に行ったり客演したりすると、東京の人たちから“神奈川は……”って言われたり、“東京に出てこいよ”って言われることが実はすごく多いんです。確かにそう言う人の気持ちはわかるし、ぶっちゃけてしまうと、神奈川のレベルは東京ほど高くないと俺は思っています。でも、だからと言って東京には行きたくないし、負けたくない。平成世代として昭和に負けたくないっていうのと同じように、神奈川で生まれて芝居を始めた人間として、東京に負けたくないという思いがあります。だから本当に、東京の人たちにも、東京以外の人たちにも、神奈川で面白い芝居をやってるぞって言わせたい。だから、観に来てくださいというより、応援してください!っていう感じですね……熱くなってしまってすみません(笑)」

立川「昭和の小劇場時代から最前線を走ってきた鴻上尚史さんによる脚本を使わせていただいて、平成しか知らない世代が集まって作る今回の舞台は、いつも“平成世代は……”という目で見ている人にとって、きっとその人たちなりの何かを感じるものになると思うんです。そして同世代の人にとっても、同じ時代を生きる上で得るものがあると思うので、本当にいろんな世代の人に観てもらいたいです。あとは、観た後に中華街でおいしいものでも食べて帰ってもらえばいいかなと(笑)」

吉岡「さっき熊手さんが言っていたように、インターネットとかの簡易なコミュニケーションが中心になっている私たちの世代にとって、こういうアナログな表現ができる演劇は、すごく稀有な表現方法だと思うんです。そんな世代のダイレクトな熱量を感じてもらえる貴重な機会かなと思いますし、たとえ荒削りでも、そういうところをしっかり伝えられる舞台にしたいです。これからの世代も捨てたもんじゃないって思ってもらえるような、ワクワクして帰ってもらえる芝居にしたいと思います。応援してください!(笑)」

大島「僕は普段ほとんど、有名な人が出ている演劇しか観ないんです。だから、今のところこの作品は僕の琴線に引っかからない(苦笑)。だったら、俺が面白いと思えるものにするためには何をすればいいんだろうということを、稽古をしながら一生懸命考えています。たぶん僕と同じように、無名な小劇団や役者には興味ない人っていると思うんですよ。そういう人が見ても、なかなか面白いじゃんって思ってもらえるような連中が集まっていると思うし、作品としても面白く観てもらえるようなものを責任持って作りますので、可能性に賭けてみていただければと思います」


(取材・文&撮影:西本 勲)


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PROFILE

大島寛史(おおしま・ひろし)のプロフィール画像

● 大島寛史(おおしま・ひろし)
1991年1月26日生まれ、神奈川県出身。桐朋学園芸術短期大学在学中の09年にチリアクターズを結成し、12年から神奈川県小田原市を拠点に活動。以降ほぼすべての公演で脚本・演出を手がける。今夏には第14回本公演を予定。

熊手竜久馬(くまで・たくま)のプロフィール画像

● 熊手竜久馬(くまで・たくま)
1990年8月8日生まれ、神奈川県出身。中学時代から劇団に所属。高校の演劇部で虹の素を結成し、脚本・演出を手がける。卒業後は役者として小劇場中心の活動を経て、10年に劇団として虹の素を旗揚げ。横浜を拠点に活動中。

立川せりか(たちかわ・せりか)のプロフィール画像

● 立川せりか(たちかわ・せりか)
1994年6月19日生まれ、神奈川県出身。中学時代の部活動で演劇を始め、高校卒業まで地元劇団の準劇団員として上演に関わる。その後、桐朋学園芸術短期大学在学中も精力的に活動し、15年に卒業してフリーの俳優に。

吉岡瞳(よしおか・ひとみのプロフィール画像

● 吉岡瞳(よしおか・ひとみ
1989年3月18日生まれ、兵庫県出身。大学のミュージカルサークルで演劇を始める。卒業後は一般企業に勤めながら、えんげきハウス(12〜13年)、劇団御座敷(14年〜)に参加。ジャンルを問わず精力的に活動中。

公演情報

「アンダー・ザ・ロウズ」のチラシ画像

平成生まれの神奈川合同公演
アンダー・ザ・ロウズ


2016年4月28日 (木) 〜2016年5月1日 (日)
KAAT 神奈川芸術劇場 <大スタジオ>
HP:公演ホームページ

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