2003年に中島大和率いる劇団ノーティーボーイズによって上演された「畳屋バラッド」は、11年の年月を経て2014年にSECOND・Nによって再演され、そしてこのたび再々演が決定した。新たなキャストとして、昨年『しくじり先生』のスペシャルで芸能界に復帰した元猿岩石の森脇和成を迎え、下町に巻き起こる悲喜こもごもを描く。カンフェティでは、主演の森脇さんに、舞台での復帰を前にした心境について聞いた。
――― 2015年7月のテレビ朝日系『しくじり先生俺みたいになるな!!&Qさま!! 合体3時間SP』で復帰宣言されていましたが、そのときからお芝居をしようと考えていたんですか?
「実はあの番組を収録したのは5月だったので、そこでサラリーマンは辞めると宣言したけれど、芸能界に復帰するとはまだ決めてなかったんです。収録のあとじっくり考えて、
芝居にもチャレンジしたいと思って復帰することになりました。もちろん、バラエティに呼ばれればいきますし、自分にできることはなんでもやりたいなと思っています」
――― それで、舞台に主演ということになりましたが、経緯というのは何だったんですか?
「キャスティングの大川雅大さんが『電波少年』を見てくださっていた世代だったそうで、声をかけていただきました。それと、作・演出の中島大和さんが、もともとお笑いコントグループの出身だったんですね。実際、すごい昔に先輩を介して会ったこともあったんです。そんな縁もあって、やってみたいなと思ったんです。」
――― この「畳屋バラッド」はどんな物語ですか?
「下町の商店街を舞台に、僕は畳屋で働いているんですけど、その近くに商業施設ができることになって、てんやわんやする中で、笑いあり、涙ありという話になっています」
――― その中で森脇さんの役は……
「僕は匠という役を演じるんですけど、匠は昔つきあっていた彼女と死に別れて、それを引きずりつつも、今働いている畳屋の娘さんと一緒になっていいかなという気持ちもあるんです。でも、商業施設ができることで、いろんな出来事がおこり、揺れ動くという。基本的には熱い男です」
――― 森脇さんは、匠のような熱い部分はあるほうですか?
「なくはないという感じですかね。中心人物には自分からはなりたがらないタイプなんですよ。リーダー的な存在や、社長にはなりたくないんですよね」
――― 森脇さんは、芸能界辞めてから社長もしていたこともあったような……。
「やってみて思ったことなんですよね。それに、結果的に人に頼って、周りに助けられて生きてきたなと。でも、匠も、人には頼られてるけど、しっかりしたタイプでもないんですよ。そういう意味では、自分と離れてないんじゃないかなと思います」
――― 今回はコメディ作品ということですが、森脇さんは、コメディという意味では、どんな役割があるんでしょうか。
「台本を読んでみて、本当にコメディ一色という感じで、僕は、出演者みんなに突っ込みまくる役割ですね。セリフ量もすごく多くて、回し役のような感じもあるので、やっぱりお笑いをやったことがある人のほうが演じやすいのかなと思いましたね。でも、何せ11年もブランクがあるので、ドキドキなんです。だから、今はまだ稽古前なんですけど、早く稽古に入りたいです。かけあいが本当に多いので、相手との間も込みでセリフを頭に入れたいです」
――― でも、こうやってお会いしてみると、40代でも若々しく見えますし、11年のブランクがあったとは思えないですね。
「そうですか。でももうちょっと老けたいというか、年相応の役ができるような見た目になりたいんですよね。今回の役は、わりと同年代の年相応なのでうれしいんですけど」
――― 以前も、舞台や映像でお芝居されてたんですよね。そのころはお芝居に対してどう思っていましたか?
「ミュージカルで『シンドバットの大冒険2000』というのをやったり、『蒲田行進曲2002』という舞台に出たりしました。映像でも、朝ドラにレギュラーで出ていたのと映画やドラマも何本か。そのころからお芝居は好きでしたね。もしかしたら、バラエティで場の空気を読んでしゃべるよりも、台本を読んで、じっくり作り込んでいくのが向いてるのかなとも思っています。お芝居に関しては、演出家さんの言われることを忠実にやりたいですね。以前だと、お笑い芸人さんがやってるしというので、演出家さんに厳しいことも言われなかったのかもしれないけれど、これからはそうもいかないと思うので」
――― 森脇さんがドラマに出られていた時代よりも、今はお笑いの方がたくさん演技をやられているかもれないですね。
「そうですね。コントとお芝居を一緒にしちゃいけないけど、コントも作・演出・出演って感じで、全部経験しますし、コントの中でのお芝居がある程度うまくないと、笑いに入り込めないってこともありますもんね。僕もコントをやることが好きでした」
――― 以前、舞台をやっていたとき、こういう部分が好きだったなという部分ってありましたか?
「芝居の終わったあとの達成感や充実感はなんともいえないものがありました。それと、いつも舞台で楽日がくると、今日が初日だったらいいのにって思ってましたね。本当はいけないのかもしれないけど、本番をやりながら完成に向かって成長に向かう部分もあったりして、そういう気分を、また味わえると思うとうれしいです」
――― 何かお芝居する上で目標とかはありますか?
「とくにこの人を目標にっていうのはないんですけど、芸能界で10年、一般社会でも10年と経験してるんです。こういう経験ってなかなかないですよね。サラリーマン時代は顔が死んでるって言われたけれど、売れた後にサラリーマンをやった人ってなかなかいないと思うんですよ。そういう苦労した経験が、演技にも生かせればと思います」
――― 最後に、この舞台に興味を持っている方に、おすすめしたい部分はありますか。
「芸能界復帰して、一発目のお芝居の仕事ですけど、まだ何の実績のない自分に声をかけていただいたことには本当に感謝しているし、全力で応えたいと思っています。まだ稽古前で、僕もどうなるのかまだわからないドキドキもあるけれど、それも一緒に見届けてほしいなと。でも、コメディで笑えるお芝居になることは間違いないと思います」
(取材・文&撮影:西森路代)