スタービートエンターテイメント所属の俳優たちで2010年に結成されたGEKIIKEが、8回目となる本公演『あまつきつねの鬼灯』を上演する。歌やダンス、アクションも交えた娯楽性の高い内容はさらにスケールアップ。GEKIIKEならではの舞台空間に期待が膨らむ中、鷲尾修斗・校條拳太朗・樋口夢祈の3人が、公演への意気込みやお互いの印象などを話してくれた。
それぞれ成長した役者たちで新しいことを
――― 第1回公演からすべての演出を手がけ、自身もキャストとして出演している樋口は、GEKIIKEの成り立ちを次のように説明する。
樋口「もともと事務所のメンバーで、お試し的にいろんなことをやってみようかというところから始まりました。当時、事務所が池袋にあったのと、イケメンがいっぱい入っている袋という意味を込めて“劇団イケ袋”と名付けたんですけど、メンバーの中で“ダサくね?”っていう意見が出て(笑)、劇イケって略され始めてもいたので“GEKIIKE”っていう名前になりました。CDの発売やイベントなど、アイドル活動に近いこともやらせていただきつつ、本公演は年に一度のお祭りみたいな感じで、1年間にそれぞれ成長した役者たちが集まって新しいことにどんどん挑戦していこうという形でやっています」
――― GEKIIKEに2012年から参加している鷲尾と、2013年に参加した校條も、GEKIIKEの本公演を毎年の恒例行事として楽しみにしているようだ。
鷲尾「自分が役者として初めて出演した舞台(2010年『OASIS』)で樋口さんと共演してから、ずっと仲良くさせていただいていました。外でいろんな舞台に出させてもらって、秋になるとまたここに帰ってくるという感じですね。それぞれの現場でいろんなものを吸収してきたメンバーが、みんなで力を合わせてさらに大きくして見せるというのが一番の醍醐味です」
校條「最初は演劇の舞台を見たこともない状態で、人前に立つということもよくわからなかったので、いろいろ学ばせていただいています。修斗さんも言ったように外でいろんなことを経験して、自分がどう変わったかというのを年1回のGEKIIKE本公演で見てもらう……そういう気持ちもあったりします」
樋口「そんな2人を見ていて……単純に頼もしいですね。以前は先輩・後輩という感じだったのが、今は仲間と言えるくらいの関係です。僕が知らない芝居の仕方や技術を持って帰ってくるので、役者としてすごく刺激になりますし、彼らの芝居に負けないような演出をするのも、毎年大変ではあります。こちらがぶつけたものに簡単について来られちゃうと“おいおい!”って思うので(笑)、もっと難しい演出を考えてみようかなって」
人ではないもの同士の派手なアクション
――― そんなGEKIIKEの新作『あまつきつねの鬼灯』は、日本古来から伝わる狐や鹿などの神々と、人間の持つ悪の部分が生み出した鴉の神との戦いを描く。
鷲尾「僕は狐の神様を演じます。GEKIIKEの本公演で、こんなにすごいウィッグと衣装を身にまとうのは初めてですけど、こういうのはつけるだけで気持ちが違いますね。ちょっと2.5次元っぽい要素も感じられて、どんな作品になるのか自分でも楽しみです」
校條「僕は鹿の神様ということで、GEKIIKEで人間以外のものを演じるのは初めてです。衣装もウィッグもすごいクオリティで、イメージが伝わってきますよね」
樋口「この豪華な衣装で、いろんな武器や技を駆使したアクションがメインになっていくと思います」
校條「僕は鹿っぽいアクションをしたいですね」
鷲尾「鹿っぽいアクションって何だよ(笑)」
校條「“あっ!鹿だ!”っていう感じの。蹴りとか」
鷲尾「じゃあ狐っぽいアクションは?(笑)」
校條「口です。嚙みつき」
鷲尾「なんでそういう泥仕合になるんだよ(笑)。見た目がこうだから、もっと美しい感じじゃないのかな」
校條「あと、狐って化けたりするじゃないですか。だから幻術とか」
鷲尾「手をかざしてグルッとやるだけで人を回したり?」
校條「それは相手役が大変なだけですね(笑)」
樋口「僕は鴉として、手下を引き連れて神様たちとのバトルを展開します。激しいアクションで羽根がむしれないように気をつけて(笑)。さっきも少しヒラヒラッと取れちゃったので……」
鷲尾「大丈夫ですよ、アロンアルファで直しておきますから」
樋口「ピンじゃなくて接着剤かよ!(笑)」
各メンバーから見た1人ひとりの持ち味は?
――― 先ほど樋口が話したように、先輩後輩の枠を超えた仲間のような存在だというGEKIIKEメンバー。そこで、今日集まってもらったメンバー1人ひとりの持ち味を、他の2人に語ってもらった。まずは校條について。
鷲尾「何に対しても純粋でまっすぐ進むところ。歳を重ねると、どうしてもいろんなことを考えてしまいますけど、それをしないところが彼の素晴らしさで、そこが人を惹きつける何かにつながってるのかなって思いますね」
樋口「役者ってちょっとバカじゃないといけなかったり、人がやらないようなことをやれる職業だと思うんです。拳太朗は、そこを簡単に振り切ってくる勢いがある。失敗しないように無難にやろうと加減するんじゃなくて、ダメなものはダメって怒られてもどんどん挑戦するっていうところは、役者として尊敬できますね」
――― 続いて、樋口について。
校條「事務所公演で演出もやるという立場もあって、常に全体を見る力を持っていらっしゃる方だなという印象はずっとあります。お母さんみたいな存在ですね。本当に細かいところまで見てくれていて、その場では言わなくても、後から“あそこはこうしたらどう?”って言ってくれたりして、全体を1つ1つ引き上げてくださる。そういうところが、やっぱりお母さんです」
鷲尾「樋口さんは……料理人ですね。みんなでバーベキューをやるとして、各自いろんな具材を持ってきたのを、配置を考え、どの焼き加減で焼き、っていうのを全部見てくれる人。だから僕らは、他の現場で吸収して帰ってきたものを安心して提示できるんです。どうせ上手く焼いてくれるだろうって思ってみんな投げる(笑)。だからやっぱり……」
鷲尾&校條(声を揃えて)「お母さん!」
樋口「うるせえよ(笑)」
――― では最後に、鷲尾について。
鷲尾「僕は(褒めるところは)ないでしょ」 校條「いや、こういうところですよ。めちゃくちゃ謙虚で真面目。稽古場に誰よりも早く来たりとか、自分がやらなきゃっていう気持ちをすごい持ってらっしゃる。僕ら後輩が、最初何をやればいいかわからないときとか、別にあれこれ言うわけじゃなく、やって見せてくれる。お芝居をする上でも、そういうやり方があるんだっていうのを背中で見せてくれる方ですね、そして、失敗をしない。精密機械のような方です」
樋口「何をするにしても早いですね。演出をしていて、指示するより自分がやっちゃった方が早いなと思うようなところや、こっちが忘れていたようなところを、修斗は全部補ってくれる。俺が“あれって……”って言ったら“用意してます”“もう終わってます”っていう感じで、先見の明というか、そこに対するストイックさがすごいです。役者間での評判もすごく良くて、違う現場に行って修斗と共演した人に会うと、どうして俺にそこまで力説するのかっていうくらい(鷲尾のことを)褒めてくれる。現場のサポートも丁寧で、僕が怒るタイプだとしたら、修斗は諭してあげるタイプです。だからお父さんかな?」
鷲尾「いや、歳の離れたお兄ちゃんかな。歳が離れてると喧嘩しないじゃない?」
校條「おもちゃ買ってくれたり」
鷲尾「そうそうそう。いいイメージしかないでしょ」
樋口「(そうやって自らピッタリのフレーズを出してくるところも)完璧だね」
校條「先見の明です」
樋口「パクるなよ!(笑)」
夢のような時間を皆さんにお届けします
――― こうして話しているだけでも伝わってくるメンバー間の強い絆が、GEKIIKEの舞台には存分に注ぎ込まれている。そんな3人に、『あまつきつねの鬼灯』への意気込みを聞こう。
樋口「ご覧の通り、見た目からして派手にいくだけでなく、今までで最大のアクション数で、さらにレベルアップしたGEKIIKEのパフォーマンスをしていこうと思っています。拳太朗が鹿キックをやりたいんだったら、すごいところからジャンプしてもらおうかな(笑)。他では見たことのないような演出も入れる予定なので、楽しみにしていただきたいです」
校條「皆さんは人間の殺陣とかアクションは見たことあると思うんですけど、神様と鴉が戦うところを見たことがありますか? ないですよね? 見に来てください! 見たこともないアクションを見せます。鹿キック見せます!」
鷲尾「カッコいいな(笑)」
樋口「まだキックを入れるって決まってないのに(笑)」
鷲尾「さっきも言ったように2.5次元っぽい雰囲気ではあるんですが、作品の内容としては、人間が誰しも抱えているものが原因で起こった出来事を描いています。何か少しでも皆さんに受け取って帰ってもらえるような作品をみんなで作り上げて、夢のような時間をお届けできたらなと思っています。僕個人としては、主演としてきちんとみんなを引っ張っていけるように頑張りたいですね。まあ、みんなが支えてくれるので安心してるんですけど(笑)」
樋口「あと、昨年の公演(『月下燦然ノ星 -帝都綺譚-』)と同じく、今回も舞台と連動した映画を作ります。舞台のキャストに映画だけのキャストを加えて豪華にいこうと思っています。舞台で見た生のアクションを、映画ではアップで見ることができたりと、また違った形の臨場感を味わっていただけると思いますので、こちらも楽しみにしていてください」
(取材・文&撮影:西本 勲)