今年5月に上演された、東京23区をそれぞれ代表する少女たちのサバイバルアクション『23区女子』。その脚本・演出を手掛けた冨江洋平の新作『47男子』は、各都道府県を司る47の神々が一人のヒロインを巡ってバトルを展開する、よりスケールアップしたエンターテインメント作品だ。「2017年一発目の作品として、自信を持ってお届けしたい」と意気込む冨江と、キャストを代表して鷲尾修斗・上仁 樹・齋藤健心の3人にインタビュー!
各都道府県のイメージを役者のキャラで肉付け
――― タイトルの響きから発想したという前作『23区女子』。そこで得た手応えが『47男子』につながっていると冨江は言う。
冨江「ポケモンGOやシン・ゴジラなどのように、エンターテインメントに自分の知っている場所が絡むと人は親近感を抱いて、楽しくなるんですね。『23区女子』も同じで、“自分の区はどんな役なんだろう”って期待して観てもらったり、応援してもらったりしました。そして、最近はローカルヒーローとかゆるキャラの活躍も目覚ましいので、日本全国で盛り上がってくれたらいいなと考えたのが『47男子』です。方言をいっぱい喋ってみたら面白いだろうなとか、いろいろなアイディアがあります。“うちの県はこんな扱いなの!?”っていう反応もあるかもしれませんが(笑)」
――― 毎年1回、あみだくじで選ばれた人間が、全国47都道府県を司る神々の中から1位を決める権限を与えられる。1位になった県とその周辺は1年間の繁栄を約束されるというシステムだ。今年はその大役を一人の少女が担うことに。何者かによって過去の記憶を奪われた彼女の前に47の神々が次から次へと現れ、自分の県を1位に選んでもらおうと競い合う。
冨江「もともと地味な性格で自分に自信のない女の子が、自分の名前も年齢もわからない状態で、目の前の状況に翻弄されながら少しずつ成長していく。ファンタジー作品らしく、初見のお客さんが自分の視点をヒロインに投影できるような形で展開します。そこに、日本を滅ぼそうという闇の企みが絡んできて、最後には……というストーリーです」
――― ある者は優しく、ある者は強引に、さまざまな方法で少女を誘う神々。疑似恋愛的な要素もある中、W主演を務めるのが、東京都の神=鷲尾修斗と、大阪府の神=上仁 樹だ。
鷲尾「純粋に、すごく楽しそうな作品だなと思いました。エンターテインメントとして華やかになるだろうし。東京らしさのイメージは人によって違うと思うので難しそうですが……方言もないですからね(笑)。これから稽古を重ねて、みんなでディスカッションして、上手く表現していきたいです」
上仁「オファーをいただいてすごく嬉しかったです。最初は恋愛ゲームっぽい印象があったのですが、アクションもあり、想像とは全く違いました。結構コッテコテの関西弁を使うキャラクターなので、まずは自分が普段使っている関西弁と織り交ぜて、ちょっと強気で強引な大阪を演じたいと思います(笑)」
冨江「鷲尾さんは見た目の印象とか、過去に出演した舞台のイメージで最初からお願いしたいと思っていて、出身地を調べたら東京だった。“おお!やっぱり!”という感じでしたね(笑)。上仁くんはどちらかというと可愛らしいルックスですけど、関西弁というより河内弁に近いイメージで書いています。こういう子がキツい感じでオラオラすれば(笑)、すごく魅力的なキャラクターになるんじゃないでしょうか。ヒロインに対する態度も対照的で、東京はいつも真摯に優しく接して、大阪はちょっと恥ずかしがりつつ強引に引っ張っていくという感じです」
日本全体を好きになってもらえれば
――― そして、群馬県の神を演じる齋藤健心も群馬県出身だ。
冨江「齋藤くんも、どちらかというと群馬県のイメージというより彼のビジュアルから僕が勝手に思い描いたイメージで書いています。それほど強くないのに強がって周りから可愛がられるというか、RPGで言うと盗賊キャラ(笑)。強い主人公に勝手にくっついて行って、でも本当の窮地に立たされたときは、この子のおかげで命拾いするような……そういうキャラでいてもらえたらいいなと考えています」
齋藤「僕も群馬県のイメージって、自分の出身県ですけど正直あまり思い浮かばなくて(笑)。でもそこで、群馬の隠れた良さみたいなものをちょっとでも表現できたらいいなと思いますし、僕自身がもっと群馬のことを好きになるチャンスでもあるのかなと。そういうところが楽しみです。あと、11月にアンサンブルの一員として出演したミュージカル『青春-AOHARU-鉄道 2〜信越地方よりアイをこめて』で、メインキャストの皆さんが鉄道を擬人化した役柄だったんですけど、そのときに見聞きしたこともいろいろ勉強になったので、それも参考にしたいと思ってます」
――― 47都道府県の神々が登場するというだけでも、とても賑やかな舞台になりそうな予感。前述のエキサイティングなストーリーとともに、楽しく見ごたえのある作品となるに違いない。
鷲尾「観に来てくれた人の出身県が必ずどこかに出てくることで共感も得られるだろうし、さっき冨江さんがおっしゃっていたように、主人公に自分を置き換えて楽しむこともできるので、エンターテインメントとしてすごく面白そうですよね。舞台を観てどの県が好きだったとか、私は東京出身だけど埼玉が好きになったとか、そういう会話で盛り上がってもらったり、舞台を通してそれぞれの県の魅力を感じて持ち帰ってもらえれば、僕らとしてはとても嬉しいです。僕自身は東京の魅力をみなさんにしっかり伝えられるように頑張りますし、立ち回りもありそうなので、お客さんがキュンキュンできるような舞台をみんなで作って、2017年一発目の最高の作品にできればと思っています。劇場でお待ちしております!」
齋藤「(拍手)鷲尾さんのコメントが完璧すぎて、先に言えばよかったなって思ってます(笑)。ええと……ひとつひとつの県がそれぞれメッセージ性を持って舞台に立つことで、日本全体を好きになってもらえる作品になればいいなと思います。あと自分としては、群馬県に行ってみたいと思ってもらえるように頑張りますので、どうそよろしくお願いします!」
上仁「今までにやったことのないキャラクターですが、役に悩み考えるときに、これまでの経験がきっと手助けしてくれると思います。今回は初めてのW主演なので本当に緊張もしますが、自分にとっては新たなる挑戦でもあると思います。だから一生懸命演じたいですし、見ていただける皆さんを楽しませられるように頑張ります! 劇場で待ってるでー♪♪」
冨江「先ほど話した闇の企みに絡めて、現代日本の問題などヘヴィな要素も出てきますが、最終的には日本全体が良くなるようにという、前向きなイメージで書いています。脚本とステージはドンと用意するので、あとは魅力的なキャストさんたちがどう仕上げてくれるか。それぞれのファンの皆さんは絶対見逃さない方がいいと思います。演出家としてはそれをまとめて、お客さんが観やすく面白いものにできるようにお手伝いするだけ。何と言ってもキャスト自身が熱くなってくれるのが作品にとっては一番いいことなので、今から本当に楽しみです」
(取材・文&撮影:西本 勲)