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益山貴司


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大阪から現れた新たな刺客! 話題の劇団子供鉅人が前代未聞の公演に挑む

出演者100人の『マクベス』に込めた戦略と熱い思い

2005年、益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成された劇団子供鉅人。2014年に東京進出を果たし、知名度と評価を着実に高めてきた彼らが、2017年2月、聖地・本多劇場でシェイクスピアの『マクベス』に挑戦する。そこには、“関西タテノリ系のテンションと骨太な物語の合わせ技イッポン劇団”と自称する子供鉅人らしい大胆な仕掛けもあり、演劇ファンのみならず幅広い客層へ届けようという強い意志に満ち溢れている。代表の益山貴司に聞いた。


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演劇を盛り上げていく気概を

――― 大阪では、益山が経営するバーを拠点に自由奔放な活動を展開してきた子供鉅人。そんな彼らが東京へ出てきた背景にはいくつかの理由があったという。

「二十代がメインの劇団員に仕事として演劇をさせていく上で、やっぱり大阪というところは餌場として厳しいというのがひとつ。あと何よりも自分たちは、普通に劇場公演だけをやっているわけではなく、先日は家を壊しながら公演したりとか(笑)、いろんな仕掛けをしているんですけど、それは演劇というものが水商売というか芸能である以上、お客さんをワクワクさせなきゃいけない。ファンとして応援したくなるチームになっていかなきゃいけないと思ったとき、結成10周年を迎えるにあたって、よりステップアップするために上京するというのはビッグなイベントになるだろうと、そういう選択でもありました」

――― また益山自身は、劇団として上京する前からNODA・MAP公演へのアンサンブル出演で何度か東京に来ており、その経験も大きく背中を押した。

「大阪にいた頃は、何が東京やねんって思ってたんですけど、演劇界最高峰のキャストとスタッフに触れて、これは本気やな、大阪じゃ無理やなって(笑)。その一方で、東京に行った関西の劇団の先輩たちが頑張っているのを見て、それに続け、追い越せっていう気持ちになったのも確かです」

――― その背景には、演劇界の現状に対する強い危機感がある。

「いわゆるエンターテイメントは別として、純粋演劇の動員が何年も前からジリ貧になっている中で、とにかく演劇を観てくれる人を増やすというのは、劇団や演劇人に課せられた宿命だと思うんです。もちろん頑張ってらっしゃる方はたくさんいますけど、最近の傾向として、カフェとか小さな劇場でやったりっていう、リスクを取っていかない公演が増えているのも事実。だからこそ、今回本多劇場で『マクベス』をやることで、演劇を盛り上げていく気概を見せたいという思いもあります」

――― そう話しながらも、持ち前の関西人気質が顔を出す。

「実際は大阪人らしいというか、いちびり(=お調子者)なところがあって(笑)。派手なことをしたいという気持ちは強いですね。普通に劇場公演だけとか、第何回公演ってやってるだけだと、自分が飽きちゃうんですよ。もっと毎回、ドキドキワクワクさせるようなことをやりたい。それと、演劇界を盛り上げたいというところがうまく融合できたらいいなって思ってます。大資本で作っている演劇にはない、我々小劇場を担うべき立ち位置というか実験というか、そういうものを目指したいですね」

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スリリングな人生を送るための“場”

――― では、そこで『マクベス』を選んだ理由とは何だろう。

「まず、いわゆる小劇場すごろくみたいなものが崩壊している中で、本多劇場で公演させていただけるというのはすごく嬉しいです。そこで、劇団的/演出家的野心として、シェイクスピアをちゃんと演出できるんだぜ、ということをアピールしたい(笑)。うまくいくかどうかはわかりませんが、少なくともそういう姿勢を示すことで、より大きな劇場や企画にも進出したいというアピールになればと」

――― そうした戦略的な理由以外に、作品として取り上げる動機もある。

「演劇で一番シンプルなのは、役者がいて台詞だけで成立するっていうことだと思うんです。シェイクスピアなんか読んでると、ト書きなんてほとんどなくて、役者が言葉によって世界を構築していく。いつも手を替え品を替えやっている私たちが、そういう演劇の一番原始的なカッコいいところにタッチしてみたらどうなるだろう、というのが課題の1つではあります」

――― そして今回の目玉と言えるのが、『マクベス』を出演者100人で上演すること。これはもちろん本多劇場史上最多となる(これまでの最高キャスト数は、2003年、流山児★事務所『書を捨てよ、街へ出よう』の54名)。

「初本多劇場なので、本多劇場初をやってみようという……ひと言で言うとノリです(笑)。大阪人的な自分に、勝手に面白さのノルマを課すみたいな。他の人がやってないことは何かなと考えたとき、自分たちがやれて、しかもインパクトのあることっていったら出演者数で、しかもぶっちぎりで勝つためにはキリのいいところで100人かなと。キャッチコピー的にも面白いし、話題を集めるという意味でも、新しい自分たちのスタンスを示すという意味でもいいのかなと思いました」

――― その実現に向けて、アンサンブルキャストを一般公募。実に様々な人が集まったそうだ。

「演劇なんてやったことがないという十代の方から、上は60代後半の方まで、すごく幅が広くて、ワクワクしながらも戦々恐々としてます(笑)。募集告知に、打ち上げをクラブでオールナイトでやると書いたので、それが楽しみで応募したっていう人もいて(笑)。それって芸能のある種の側面というか、お釈迦様がサイコロ博打で人を集めた、みたいなのに通じるものがありますね。もちろんシェイクスピアが大好きで来ましたという方もいらっしゃいますけど、目立ちたいとか楽しそうだということで来ていただけるのも大歓迎だし、もっと言うと、それが実は一般的な人々の感覚なんだなって思いました。いつまでも演劇村の小さな集まりにとどまってしまわないように、大きい網ですくえるような仕掛けをしていかなきゃいけないなということが、反面的にわかって面白かったです」

――― 雑多な人々が集う場としての演劇。そこへ向かう姿勢には、益山の出自が関係している。

「20歳のときに始めたバーで、ミュージシャンとか絵を描く人とかと交流があったんです。それこそ大友良英さんやあがた森魚さんといった方々に店でライブをしてもらったりとかする中で、そういういろんなジャンルを飲み込めるのが演劇なんだなと感じて。もともと6人兄弟の長男で、そういう“場”を作っていくのが好きなタイプでもあるので、劇団という場を通じて自分自身もいろんな人と知り合いたいし、自分の世界観をみんなに提出していくことで、スリリングな人生を送れるんじゃないかと」

――― そんな“場”を作る上で、何かモデルのようなものはあったのかと尋ねると、面白い答えが返ってきた。

「法事ですね(笑)。普段なかなか親戚付き合いってなかなかしない中で、年に1回とか2回集まってお互いの成長を見たり、いろいろ話をする。演劇の公演もそういう出会いに似ている気がします。歌舞伎にもそれに近いところがあって、人々が集まって役者の成長を見守ったり、1つのことにワクワクしたり……とってもいいシステムだと思います。関西だと維新派さんたちのように、屋台村を作ったりして演劇を見るだけじゃなくて体感するような仕掛けを作っているのはリスペクトできますね」

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群集劇に還元された新しい『マクベス』

――― 再び話題を『マクベス』に戻そう。100人キャストでの上演に関して、益山は「ノリです」と笑いながらも、そこに演劇的意味を見出すべく思考を深めた。そして、マクベスを女性が、マクベス夫人を男性が演じるという仕掛けも生まれた。

「やはりクリエイターとしては、ただ賑やかなだけではやはり作品とは言えない、ただのお祭りになってはいけないとすごく思うんです。さらに言うと、世界中でたくさん上演されている『マクベス』という古典を上演する意味というか、そこに対するアンサーも絶対に用意しなきゃいけない。そこで考えたのは、『マクベス』は、マクベスとマクベス夫人の夫婦の物語に集約されることが多いですが、これは国と国の戦争の話でもあり、その後ろで翻弄される民衆がいるんじゃないかという発想から作ってみようと。
 最初に頭に浮かんだのは、戦争に負けそうなスコットランドで、兵士たちではなく民衆が国を捨てて逃げようとしているイメージ。それは新宿駅で終電に乗ろうとしている人たちがワーッと走ってるのを見たときに思いついたんですけど、そこでマクベスというヒーローが人々を救うという構図が現れ、人々がマクベスを王様にしていくっていうイメージが出てきました。そのときちょうどトランプとヒラリーの選挙戦があり、ある種人々の熱狂によってトランプが大統領に押し上げられていった構図とか、ヒラリーが女性初の大統領になるのか?という流れとか……女性に男の役割を担わせようと民衆が思っていて、最後は裏切られていくというような図が見えてきたんです。そういうものを全てひっくるめた、ある種の群集劇というものに還元できたら面白いんじゃないかと考えています」

――― 新しい『マクベス』を見られるという期待と、何か面白いことに遭遇できそうだという期待。さまざまなワクワクを飲み込んで大きく弾ける子供鉅人の姿に注目したい。

「演劇は見るものじゃなく体感するものだということを、100人の圧力でぜひ感じてほしいです。みんなが一言“ワッ!”と言うだけでもすごい圧力になると思うので(笑)、それを体感してほしいですね。シェイクスピアに興味はあるけど見たことないっていう方もいらっしゃると思いますので、うちで初めての演劇、初めてのシェイクスピア、初めての100人を体験していただきたいです。ぜひお越しください!」


(取材・文&撮影:西本 勲)

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PROFILE

益山貴司(ますやま・たかし)のプロフィール画像

● 益山貴司(ますやま・たかし)
1982年4月11日生まれ、大阪府出身。高校時代より演劇活動を始め、卒業後、本格的に劇団活動を開始。2005年、弟の益山寛司らと劇団子供鉅人を結成し、ほぼ全作の脚本・構成・演出を務める。静かな会話劇から生バンドを伴った音楽劇まで、幅広い作風でファンを増やしている。俳優としてNODA・MAP『ザ・キャラクター』『南へ』『エッグ(再演)』や映像作品にも出演。

● 子供鉅人(こどもきょじん)
2005年結成。劇団名は「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。劇場のみならず、ビルや水上バス、ホテルなど、さまざまなシチュエーションで演劇の可能性を拡大し、関西演劇界の異端児となる。2014年に東京進出を果たし、結成10周年には新作3本を半年で一挙上演。東京芸術劇場主催「芸劇eyes」にも選出され、東京単独公演で2000人近くを動員した。小豆島の郷土芸能とのコラボレーションや、ゲストハウス全室を使ったツアー演劇など、「アートとしての演劇」と「舞台芸術としての演劇」を両立させる試みでも注目されている。

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