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ケン・カタヤマ


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スペインの観客を感動と興奮の嵐に巻き込んだステージが目の前に!

国境や言葉を超えて心をつなぐテノールの響き

グローバルな感覚と日本的なアイデンティティを融合させたテノールアーティストとして活動するケン・カタヤマが、スペインで活躍中の人気テノール歌手によるボーカルユニットADESSO!からヴィクトル・ディアスとホセ・アントニオ・モレノの2人を招き、『ADESSO+Japan Tour 2017』と題したコンサートツアーを行う。
 テノール歌手のコラボレーションは珍しくないが、国境や言葉を超えたこの共演には、「形のない“美”をわかり合える共通の心がある」とカタヤマは言う。今回の公演が実現した背景にある、彼の音楽家としての出自や考え方などを聞いていこう。


インタビュー写真

日本人のアイデンティティを、誇りを持って表現

――― 音大卒業からイタリア留学を経て、本格的なオペラやミュージカルなどへの出演に至るカタヤマの経歴からすると少し意外なことだが、音楽への入り口はリードギターだったという。

「もともとリードギター、リードボーカルの目立ちたがり屋で(笑)、ロックやジャズをやっていたんです。そこから音大に行って声楽の奥深さが面白くなり、卒業する頃には、大学院よりは外国に行きたいという気持ちが強くなっていました。自分としては、クラシックからポップスに移ってもそれほど崩れないけれど、ポップスからクラシック的なところには戻りにくいと思ったので、まずはクラシックを突き詰めるためにヨーロッパへの留学を決めたところがあります」

――― 早い時期からオリジナリティへの関心が強かったカタヤマは、「自分の中から出てくる音楽を表現するには、それにふさわしい技術が絶対に必要」と考えていた。

「クラシックにベルカント唱法というものがあるのですが、この歌い方はすべてのポップスにもつながる基本だと僕は思っています。特殊な分野は別として、特に欧米のポップスシーンで一流と呼ばれている人には、そういう基本がちゃんとあります。たとえばグラミー賞で、レオンタイン・プライス(NYメトロポリタンオペラのプリマドンナ)とスティーヴィー・ワンダーが同じ舞台で表彰されることは不自然ではないんです。それは、クラシックのレベルがポップスに寄っているのではなく、ポップスのレベルが高いということ。僕もそういうところを目指したくて、きちんとした技術を学ぶことにこだわっていました」

――― そして留学から帰国した後は、クラシックと並行して異ジャンルと組んだライブ活動を開始する。

「ジャズとかボサノバのミュージシャンとコラボレーションすることで何か新しいものが生まれるだろうと思っていましたが、お客さんの反応は最初は冷たいものでした。どうしてわざわざクラシック歌手がギターを弾いたりマイクで歌ったり、ドラムとかが入ったポップスの連中と音楽をやるんだと。今でこそ、アンドレア・ボチェッリやサラ・ブライトマン、イル・ディーヴォといったアーティストたちが、そういうサウンドの中で当たり前のようにクラシカルなテクニックや声の魅力をクロスオーバーさせていますが、当時は時代が違いましたからね。でも、将来必ず出来上がる道なんだと僕は信じて、やっていました」

――― その頃からカタヤマが大切にしているのが、日本人としてのアイデンティティだという。

「今まではひたすら、日本の文化には欧米から受け入れる一方のところがあり、技術的なところでは今も学ぶべきものがたくさんあると思います。でもそれを体得した上で、僕は日本人として、自分のアイデンティティを出していきたい。僕はオリジナル曲も多いのですが、どこかちょっと東洋的なところがあるんですね。去年スペインで公演したときも、日本の歌を歌っているときの方が反応が良かったんです。そこにはきっと、向こうの人にはないものがあったのでしょう。僕はそれを誇りを持ってやっていきたいと思っています」

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言葉や文化を超えて伝わる感動を

――― そのスペインでの公演が、今回『ADESSO+ Japan Tour 2017』が開催される直接のきっかけになった。アフリカ、ヨーロッパ、アジアの3大陸から招かれたテノール歌手3人が共演する『TENORE!』(ADESSO!のホセも出演)と、ボーカルユニットADESSO!とカタヤマのコラボレーション『ADESSO+ Ken Katayama』である。

「2つのコンサートの音楽監督であるピアニストのアルマンド・ペラージョさんが、日本で僕が歌っているのをたまたま聴いて声をかけてくれたんです。そこで言われたのが、日本語の歌はそのまま日本語で歌ってほしいということ。現地の方は言葉がわからないのでは?と尋ねても、それでいいんだって言うんです。さらに、僕のレパートリーの1つで、民謡の「最上川舟唄」をクラシカルなスタイルにアレンジしたものがあるのですが、それを現地のフラメンコダンサーとコラボレーションでやってみたらどうかという素晴らしい提案もしてくださいました」

――― コンサートには現地の都長/市長も訪れ、2公演とも大盛況。カタヤマはその日の様子を「まるでロックコンサートのようでした」と振り返る。

「事前にアルマンドさんが新聞やテレビなどで話題作りをしていてくれたこともあって、お客さんはどちらも満杯。みんなワーッて立ち上がって、日本ではちょっと考えられない光景でした。変なタイミングで拍手したり掛け声をかけたりしてもお構いなしで(笑)、静かにクラシックを聴いているというより、とにかく音楽を楽しんでいる感じでした」

――― そのとき共演したADESSO!のメンバーに、カタヤマは自身の考え方と通じるものを感じ取った。

「ヴィクトル・ディアスはミュージカルのスターで、ホセ・アントニオ・モレノはルチアーノ・パヴァロッティ賞を受賞して声楽界では名のある歌手。2人とも素晴らしいシンガーですが、違うジャンルとコラボレーションすることにとても柔軟なんです。お客さんが喜んでくれるんだったら、ぜひやってみようと。しかも日本がとても好きで、「最上川舟唄」をやったときも、言葉はわからないしリズムも全然違うのに、すごく感動してくれました。日本のスピリットを感じる楽曲に魅かれるのだと」

――― 4月に行われるコンサートは、モダンでクラシカルな世界を創出する第1部と、ジャパネスクをテーマにした第2部で構成。3人のシンガーがそれぞれの持ち味を活かし、日本語、イタリア語、スペイン語のコラボレーションでたっぷり聴かせる。演奏はドラムやベースなどの入ったバンド編成で、ポップスファンも聴きやすい内容と言えるだろう。

「音楽家同士がグローバルな視点で一緒にやることが大事だと、僕は考えています。音楽だけでなくスポーツなどにも言えることですが、人が感動する瞬間というのは、文化や言葉、宗教などの違いを超えていると思うんです。今回の共演でも、そういうものを持てたら最高ですね。そこでは、日本的なものといっても古典芸能に寄せるのではなく、あくまでもスピリットというか、心が通うものをやりたい。形のない、価値のある美しさを分かり合える心が、きっとお客様にも伝わると信じています」

(取材・文&撮影:西本 勲)

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PROFILE

ケン・カタヤマのプロフィール画像

● ケン・カタヤマ
武蔵野音楽大学声楽科卒業後、ミラノ国立ヴェルディ音楽院に留学。オペラ『魔笛』でデビュー。 劇団四季『オペラ座の怪人』に客演。多数のオペラ、オペレッタの主役に抜擢される。 2001年、イタリア、上海総領事館など野外ソロコンサートを行い、ナポリ・マリリアーノ芸術文化協会より功労賞授与。
幅広い音楽性と豊かな感性はクラシックに留まらず、ジャンルを超えたテノールアーティストとして活動。オリジナル曲をはじめ、ミュージカル『眠れない夜』のプロデュース、作詞・作曲、組曲「天地人」の作曲など、クリエイティブな分野においても精力的に活動している。 「祈り」(日本コロムビア)は合唱曲としても知られ、平和を願うメッセージソングとして全国に広がっている。

● ヴィクトル・ディアス
幼少の頃よりサルスエラ(スペイン版オペレッタ)に出演し、1990年にテノールソリストとしてデビュー。1993年にはプラシド・ドミンゴとの共演を果たす。その後、『レ・ミゼラブル』『ラ・マンチャの男』などのミュージカルで主演、高い評価を得る。これまで100を超えるサルスエラ、オペラ、ミュージカルに出演しており、スペインオペラ界屈指のテノール歌手の1人。

● ホセ・アントニオ・モレノ
ヨーロッパやアメリカの名だたる歌劇場で、『トスカ』『トゥーランドット』といったオペラや『ルイーザ・フェルナンダ』などのサルスエラでメインキャストを演じる、スペインを代表するテノール歌手の1人。2007年にはブルガリアの名ソプラノ、ライナ・カバイヴァンスカが主催するパヴァロッティ追悼イベントでルチアーノ・パヴァロッティ賞を受賞した。