芸能事務所ラ・セッテと演劇集団イヌッコロのコラボ公演 『まわれ!無敵のマーダーケース』が10月に上演される。本作は今年3月にイヌッコロの劇団公演としても上演された作品で、今回はチームPとチームKの2チームで上演。脚本・演出は劇団公演同様イヌッコロの羽仁修が手掛けるが、映像も導入され、新たな作品になるという。チームPの桑野晃輔と畠山遼、チームKの木ノ本嶺浩と石田隼に話を聞いた。
2チームでの上演はバチバチ!?
――― 『まわれ!無敵のマーダーケース』に出演が決まっての感想をお聞きしたいのですが、まず主人公の小説家・藤澤を演じるチームPの桑野さんとチームKの木ノ本さん、いかがでしょうか。
桑野「僕は演劇集団イヌッコロの作品は今回が4回目の出演なんです。これまで参加させて頂いた3回のうち、2回主役をやらせていただいているのですが、イヌッコロの主役ってまあ大変なんですよ! その大変さをわかってたうえで、イヌッコロから必要としてもらえているので、今回も主役をやらせていただくことにしました(笑)。がんばります!」
――― どう大変なんですか?
桑野「ワンシチュエーションコメディのドタバタ劇って、全体をちゃんと見てる役割の人がいるんですけど、イヌッコロはそれを主役が担うんです。今回の作品も、脚本を読むとそういうところが多かったので。大変そうです。でもみんなでつくっていけたらと思います」
木ノ本「僕は以前、(作・演出の)羽仁さんの脚本で(畠山)遼くんと一緒にやったことはあるんですけど、イヌッコロさんの作品への参加は初です。脚本を読んだときは僕も『大変だな』って思いましたね。ただ、楽しみです。会話で進んでいくし、ちゃんとチームワークが取れてないとできない作品だなと思っているので。役者冥利に尽きますよね」
――― 藤澤の担当編集者・末國を演じるチームPの畠山さん、チームKの石田さんはどうですか?
畠山「僕は、桑野の晃輔くん、木ノ本の嶺くん、それぞれの座長の作品に出たことがあるんですけど、ふたりのお芝居がすごく好きで。今回、嶺くんとは別のチームなんですけど、晃輔くんと一緒にやらせていただけるので、とても嬉しいです。そばで芝居を見られることもすごくワクワクするし……」
桑野「ははは! 恥ずかしい!」
畠山「そばで支えられたらいいなと思いますし、『遼、成長したな』って思ってもらえるように、晃輔くん、そして皆さんとやっていきたいと思います」
――― ちなみに、桑野さんと木ノ本さんはどんな印象ですか?
畠山「ふたりともやさしいお芝居をするなっていう印象があります」
桑野「初めて言われました。そこ、掘り下げてもいいですか?」
畠山「やめてください(笑)」
木ノ本「時間の許す限りお願いします!」
畠山「いや、ごめんなさい!」
――― 石田さんと木ノ本さんは初共演ですよね。
石田「はい。僕はチームKのキャストの方々とは全員、初めましてなんですよ。そこも楽しみな部分ですね。あとはチームPとチームK……なんでPとKかなって思ってるんですけど。サッカーのPK(ペナルティーキック)じゃないかって勝手に決めてて」
一同「(笑)」
石田「PKのような危機感が『まわれ!無敵のマーダーケース』では大事なのかなって」
畠山「“無敵”って入ってるけど(笑)」
石田「だから(?)僕もチームKで、いいスパイスとして、皆さんと一緒に回っていけたらいいなと思っています!」
――― 石田さんがおっしゃったように今回はチームが分かれているのも特徴ですよね。ここに集まっていただいた皆さんは同世代ですが、チームに分かれて同じ作品&役柄を演じるってどんな感じになりそうですか? バチバチですか?
桑野「そりゃバチバチですよ!」
木ノ本「絶対話すなよ! チームPと話すなよ!」
一同「(爆笑)」
桑野「今のは嘘です(笑)。でも全然違うものに必ずなると思うし。PもKも……PKも、みんな揃ってこの作品だと思うので。仲良く刺激し合って良きライバルだと思ってがんばりたいですね」
石田「PKはチーム感ですね! つないでいくっていう。多分これが正解だと思います!」
桑野「正解に思えてきた(笑)」
――― イヌッコロ経験の豊富な桑野さん、稽古はどんな感じでしたか?
木ノ本「それ、気になる」
桑野「稽古はゆるい印象があります(笑)。それがイヌッコロさんのよさなんです。ほんとにこれでいいのかな?ちゃんとおもしろいのかな?っていうのも、『いいじゃん!』ってなるんですよね」
木ノ本「それがあのちょっと抜けた笑いになるのかな?」
桑野「そうだと思いますね」
木ノ本「決めきらないよさ、みたいな感じがありますよね」
桑野「ガチガチの新喜劇みたいなのじゃなくて、なんか大丈夫かな?みたいな(笑)。その面白さがあって」
石田「稽古がゆるいって、挑戦しやすいのかなって思いますね。そういう空気感ってあるじゃないですか」
桑野「それはある! やれば羽仁さんもアドバイスをくれますし。だから、やりすぎたほうがいいくらい。でもやりすぎても『いいね』しか言われなくて、どこまでやったらいいんだろうって思うときもあります(笑)」
木ノ本「あはは! 羽仁さん、『いいね』って言いそう」
桑野「こっちはもうちょっと(言葉が)ほしい、みたいな(笑)」
木ノ本「コメディって稽古しすぎると、本当にこれで面白いのかわからなくなったりしますよね。これでお客さん笑うのかなって思いながら初日やったらウケて、2回目で落ちちゃうみたいな。往々にしてそういうことがあるんじゃないかなって」
石田「欲しがってしまったら終わりですよね」
木ノ本「途中で欲が出てやってみちゃって反省してもとに戻したりね(笑)。先日、羽仁さんとお会いすることがあって『稽古ってどんな感じなんですか?』って聞いたら、『木ノ本くんは気付いたら稽古終わってると思うよ』って言われて(笑)。台詞を入れてその日の稽古をやれば、流れに沿ってその場にいるような感じだから、考えなくてもいいのかもしれないっておっしゃってましたね」
主人公・藤澤のモデルはもしや……?
――― 脚本は読まれてどうでしたか?
畠山「僕、羽仁さんの台本って“勘違いの笑い”のイメージがあって。今回もそうですけど。勘違いの積み重ねで事件になっていくような。そういうところが面白いなって感じています」
石田「うん、面白い(笑)。くだらないというか。それにコメディだけじゃない笑いもあって、いろんな種類の笑いが集められてるなって思いました」
畠山「ちょっとサスペンス要素もあるし」
木ノ本「ラブはないけどキュンとするところはあると思います!」
桑野「でもこれを観て感動するとは思わない(笑)」
石田「気軽に観に来れる作品ですね」
木ノ本「観たあとに、笑いながらビール飲んでもらえるようなね」
一同「そうそう!!」
――― 映像キャストの方がいらっしゃいますが、どう関わってくるんですか?
桑野「まだ言えないんです!」
木ノ本「どう関わるか!」
石田「新感覚のものになるはず!」
――― Wキャストで映像があって、って何度か観たくなりそうですね。
桑野「うん、そうですね。映像を観て、舞台を観て、また映像を観たら『つながった!』って思う部分も出てくると思うので」
――― その中で桑野さんと木ノ本さんが演じる作家・藤澤はどんな役でしょうか?
木ノ本「暴君?」
桑野「(笑)」
――― そんな怖い人なんですか?
木ノ本「怖いというか、無茶な先輩です。でも案外人のための行動なのかな?ってちょっと思うんだけど、いやそんなこと考えてないだろ、この人、みたいな感じで」
桑野「僕は羽仁さんのことかなって思って」
木ノ本「そう!ぽいんだよね! 脚本を読みながら顔が浮かぶ」
桑野「もちろん羽仁さんが書かれているからっていうもあると思うんですけど。でも、羽仁さんもこういうことで悩むのかな〜って思いました(笑)」
――演じるうえではどんな魅力がありそうですか?
桑野「藤澤はめちゃめちゃ喋るんですよ。台詞がめっちゃ多くて。しかも途中でお客さんに向かって状況説明するところもあったりするので、どう気持ちを整理するのか、やってみないとわからない感じです」
――― 最初におっしゃった「主演が大変」のパターンですね。
桑野「もう大変です! 冷や汗が出てきます」
木ノ本「台詞ひとつのズレでガタガタって崩れていきそうだしね。ゆるそうなんだけど、一言二言ズレるだけで全然意味が変わってきちゃうことがすごく多い作品なので。常に周りを見て聞いてないとダメだなっていうのはありますね」
――― 畠山さんと石田さんが演じる編集者・末國はどうですか?
畠山「藤澤に振り回されるイメージが強いです。藤澤はいろんな人を振り回すんですけど」
石田「でも意外と末國もちょっとぶっ飛んでるところもあるんですよね。ド真面目すぎて、それが変わった方向にいっちゃう。末國を演じて、木ノ本さんを逆に大変にさせるくらいかき回せたらいいなって思います」
木ノ本「無茶苦茶するぜ、俺!」
石田「(笑)。でもその中で芯として持っておかなきゃいけないなって思ってるのは、末國が藤澤の作品を大好きなことだと思っていて。藤沢にいろいろ言うシーンもあるけど、それは全部藤澤を想ってのことなので。その芯をちゃんと持って演じていければいいのかなと思います」
畠山「支えなきゃいけない立場ですよね。僕も晃輔くんを支えようと思います!」
――― 畠山さんは桑野さんと共演経験があるから、既に一歩踏み込んだ間柄から始められますね。
畠山「(キラキラした目で)晃輔くんが好きなんです!」
桑野「ありがとうな(笑)。でもガッツリ絡むのは初めてなので、どうすれば畠山遼という食材が美味しくなるのか、桑野晃輔という食材が美味しくなるのかをお互い研究し合って、やりやすいようにやっていけたらいいかなって思いますね」
畠山「僕はついていくのみです!!」
木ノ本「(石田に)僕らもいろいろ話しながらやっていきましょうね(笑)」
石田「よろしくお願いします。初めて撮影でお会いしたときに、インスピレーションで『多分、大丈夫だな』と思ったので! 根拠はないんですけど(笑)。僕もいろいろとお世話になると思います!」
Wキャストはカレーとハヤシライスみたいな感じ?
――― 最後に、読んでくださった方に一言ずつお願いします。
畠山「嶺くんが言ったように、観劇後にお酒でも飲んで、未成年の方はジュースを飲んで、楽しかったなって笑っていただけたら嬉しいです。Wキャストなので、片方のチームを観たあとに『もうひとつのチームも観たいな』って思っていただけるように。各々のチームが一生懸命がんばらないといけないなと思います。ぜひ観に来てください!」
石田「僕、すごく考えてたんですけど。カレーとハヤシライスみたいな感じかな……」
桑野・木ノ本・畠山「……!?」
石田「それぞれに魅力がある、みたいな」
木ノ本「(こらえきれず)あはは!」
石田「ごめんなさい。何かに例えたかったんです。カレーも美味しい、ハヤシライスも美味しい。なので……やばい、ここまでしか考えてなかった」
木ノ本「いいこと言えそう! その心は!?」
石田「…………皆さんがご飯です!」
木ノ本「おお!?」
石田「皆さんが来て、初めて完成します!!」
一同「(拍手)」
石田「本当に面白い作品になると思うので、映像も舞台も楽しんでください!」
――― では主演のおふたりもお願いします。
桑野「いやもうほんとに、カレーとハヤシライスですよね」
一同「(笑)」
桑野「コメディなんですけど、コメディと思って演りません。ちゃんと真剣に演じるから“面白い”があると思うので。舞台となる山中のペンションを覗いているような気分で作品を観てもらえると思います。楽しみにしてください。がんばります!」
木ノ本「桑野さんがおっしゃったように、きっちり芝居をすれば面白おかしくなっていく脚本ですし、それがイヌッコロさんの戯曲の魅力だと思うので。2チームあったり、映像があったり、いろんな仕掛けがある中で、すごく芝居の根っこに迫ったようなことをやろうとしている作品だと思います。というのも多分、変なことをしたら浮いちゃうと思うんですよ。目立とうとすると絶対に浮いちゃう戯曲だけど、みんなが役になっていけば自然と面白くなる作品だと思うので。そこをしっかりと真面目にやりたいなと思っています。今日、石田さんと話して、早く一緒に芝居をやってみたいなと思ったので(笑)。このみんなでがんばりたいです。楽しみにしててください!」
(取材・文&撮影:中川實穗)