AUBE GIRL'S STAGEとは、女性の出演者で行う舞台公演を企画し、役者やスタッフがより活動の幅を広げ、これからの芸能、演劇界を担う女優・タレントに育って欲しいと想いが込められている2016年スタートのプロジェクトだ。ステージに立つ出演者は初舞台となる者もおり、ここで様々な体験をする。10~20代の女性たちが2チームとなり、これまで2作品の青春群像劇を上演してきた。
およそ1年ぶり3作目となる今作は『若者の貧困』をテーマに若者の葛藤と奮闘、人とのつながりを描くミステリー&ヒューマン物語。プロデューサー山本夢人と、主人公・美代をWキャストで演じる来瞳舞夢、山下恵那に話を聞いた。
3作目となる本作のテーマと役作りについて
山本「1回目、2回目の公演は17~18歳の女子高生に焦点を当てた作品でしたが、今回は年齢を上げて22〜23歳の社会人成りたての女性のメンタルや人間関係を描きます。『若者の貧困』という重めなテーマですが、重めの空気ではなくて、ここにぶち当たっている子や費用を貯めないと次に進めない女性が増えてきていて、そういう彼女達に何ができるのか?どうしたらいいのか?そういう切り口で描きます」
来瞳「私は本職でアイドルをやっているので、バイトとの兼ね合いでお小遣いが足りなかったり、買いたい物が全て買えないこともあるので、テーマに共感する部分もあります。でも実家暮らしなので、本当の意味での貧困ではありません。主人公と違う立場ですが、どう演じるか今から考えながら挑戦して行こうと」
山下「私も実家暮らしですが、やはり買いたい物はあるので、お仕事とアルバイトをしてコツコツ貯めています。でも舞台などお稽古があるとアルバイトができなくなるので、父親にお願いしてカンパしてもらったり(笑)。この主人公とは違う立場ですが、どうやって美代の気持ちになれるかを大事に研究して演じたいと思っています」
このAUBEという所がこれから女優として巣立っていく所になりたい
――― 出演者は毎回オーディションで決められるそうですが、選考の基準とは?
山本「オーディションで見ている事は、まず基礎がどのくらいあるかですね。基礎という言葉も難しいのですが、舞台経験がなくてもある程度舞台をできそうだなとか、コミュニケーション能力が高い、プロフィールのこの経験数でこの表現ができるのであれば、とか、もちろんこの子は若いのに経験豊かでしっかりしているとか、そういう所を見て能力の高い子を選んでいます。それはこのAUBEという所が、これから女優として巣立っていく所になりたいので。もちろん僕基準のところもありますが(笑)」
――― それぞれの個性の出会いで作品が変化しますよね。この主人公・美代は来瞳さんと山下さんのWキャストになりますが、本日初めての対面とききました。
山下「はい、一緒に切磋琢磨していきたいですよね!」
来瞳「そうですよね!さっき一緒にラーメン屋さんに行く約束をしました!」
山下「もう意見が合っています!」
――― ラーメン屋=スタミナ、力強くてカッコいい!
山本「これくらい元気があった方が頼もしくていいです!」
もう一歩踏み込んだやさしさや、思いやりがこれからの未来にすごく必要ではないか
――― 話は戻りまして、プロットを拝見しますと『ミステリー&ヒューマン』ということですが…
山本「これは劇場で観ていただきたいのですが、前半をミステリータッチに描いて行こうかと、そして
ちょっと不思議な能力が出てきます。前回までの2作品は青春群像劇でしたが、今回は謎の要素を強めて、会話のテンポの速くし、『なぜこんなことが起こるのか?』謎解きに近いミステリーの面白さも一つの見所になっています。
そしてこの美代は、わりと感情的な性格になると思います。例えば目の前にお金に困っている人がいて、ある程度の共感はできてもその人の問題で、そんなに肩入れはできないはずなんです。でも美代は肩入れしてしまって何とかできないかと浪人生の優花に共感していってしまう。その姿勢も今回のテーマで、僕はもう一歩踏み込んだやさしさや、思いやりがこれからの未来にすごく必要ではないかと思っていて、そういったキャラクターに僕は仕上げていきたいと思っています」
――― 実際の援助というよりは、寄り添っていくような…
山本「そうなんです。『寄り添う』がとても大事なポイントです。そして更にどんでん返しがあります!それはお楽しみにしていてください。そこがミステリーなんです!」
――― 総勢26人、この元気でパワーあふれる女子たちをまとめて行くわけですね
山本「そこは大変なんですよね…(全員爆笑) 基本は優しさを大切にしていますが、AUBEは成長させる所なので、ある程度の事は言っていかなくてはいけないですし、お客様に観てもらうレベルに達するには言っていく必要がありますよね。レベルが高い所を目ざしてやっているからお客さまに期待してもらえると思うんです。なので僕はけっこう言います。ただし、フォローは大事なので、それぞれの立場にたって、きっちりひとりひとりを見てあげること、優劣をつくらずに全員を公平に見ること。そこは非常に大切だと思っています。
前回は僕と演出家の2人が現場にいましたが、今回は僕一人なのでそういう難しさもあります。キャストの平均年齢が22〜23歳、多感な年頃だと思うので、さらに自信を付けさせてあげたいですね」
『この人が伸びたらすごいことになるな』という出演者を集めています
――― 稽古にむけて楽しみにしていることや考えていることはありますか?
来瞳「舞台出演が2回目で、舞台そのものをどうやって作っていくか不安な事ばかりですが、ずっとお芝居をやりたかったので、何でも受け止めて吸収して全部自分の力にして行けたらと思っていますね。怒られるのは怖いですが(笑)、めげずにやりたいです。心の準備はできています!」
山下「私は役がある舞台出演はほぼ初めてになります。以前何もわからない状態でアンサンブルで出演させていただいた時に、皆さんのお芝居の仕方をたくさん学ぶことができました。稽古の時は代役で入りしましたが、代役で違う方が入ると、同じセリフなのにこうも違うのかと、とても魅力を感じました。そこで学んだ事を今回この作品でいかに発揮できるか、不安もありますが、たくさん怒られて自分を成長させたいと思っているので、どんどん挑んで行きたいと思っています」
――― 舞台作品に挑むために、何か自分的なスイッチなど参考にしていることはありますか?
来瞳「実は漫画家を目指していたことがありまして、漫画のキャラクターに生かしたくて人間観察が好きなんです。 それが今演技の面で役に立っているなと思うことが多いですね。モノマネが得意で、芸能人の方の仕草とかを真似したりしています。観察していると色々吸収できるので、常に気になる人がいたら観察する癖をつけるようにしています」
山下「私は色々なジャンルの舞台を観に行くようになりました。こういう時はこんな仕草をするんだとか、色々観て観察します。声優になりたかったこともあり、私もモノマネが好きでアニメの声真似セリフをたくさんやっていて得意なので、そのスイッチから舞台のスイッチに切りかえていければ」
山本「この2人もそうですが、個性豊かな女性たちが揃っていますので、ぜひ劇場で確認して欲しいですね」
――― では最後にメッセージをお願いします。
来瞳「やるからには一人でも多くの方に観てほしいと思っています。普段ライブに来てくださる方、ライブには行ってなかったけどお芝居に興味がある方、今までとは違う私を見ることができると思います。劇場でお待ちしております」
山下「『今まではこうだったけど今回は違うんだぜ!違う私を見て!』という意気込みです。より輝いて、みんなと切磋琢磨して素敵な舞台を作り上げられたらなと思っています」
山本「少ない舞台経験の2人が主演という作品ですが、『初主演でもここまでやるか!』という所まで必ず持って行きます。長く密度の濃い稽古もやりますので、これからどんどん舞台に立ちたいという彼女たちが、どこまで伸びていくのか。演劇を見慣れている方からすればまだまだ粗削りかもしれませんが、『この人が伸びたらすごいことになるな』という出演者を集めていますので、まずはそこを見てもらいたいですね。
あとストーリー的には彼女たちに似合うものということで、初演から研ぎ澄ませながら今回はこのテーマを作りました。僕から見て、今の若者はあまり本音を言わないというか、コミュニケーション能力が高いがゆえに、本音をおいてしまったり、自分で消化してしまう賢さがあるんですよね。でも舞台で観たいのは本音であって、若い子たちの本音っていうのをなんとかあぶり出そうと思うし、この2人には必ずそれを表現してもらおうと思うので、そういった所もチェックして欲しいです。
さらに今作のテーマで言えば、『一つのピンチ』なんです。ピンチが起こった時に、起きることがあって、ピンチには人を引き付ける力があると言いますか、力になりたいという思いが生まれると言いますか、このテーマでどこまで周りが力になれるかも描きますが、デジタル時代で希薄と思われている若者の人間関係は実はそうではないという所も描きたい。そこで若い子たちが寄り添う姿、人がつながっていく姿を見てもらいたいと思っています」
(取材・文&撮影:谷中理音)