1983年の初演以降、30年以上愛され続けている高橋いさをの戯曲『ある日、ぼくらは夢の中で出会う』。4人の刑事と4人の誘拐犯が登場し、現実と虚構が交錯する四人芝居に、劇団6番シード(通称6C)が挑む。最後となる番外公演へ向けて、主演を務める客演の菅野英樹、劇団員の宇田川美樹、土屋兼久、椎名亜音、そして本公演のプロデュサーである島崎翼にその意気込みを聞いた。
――― 今回で三回目を迎える番外公演。これまで「本公演ではできないこと」に敢えて挑戦してきたが、番外公演は今回がラストとなる。
島崎「“本公演ではできないことをやろう”というのが、この番外公演シリーズ。本公演には劇団独自のルールがあるんです。劇団員は全員出演、あと、主宰である松本陽一の脚本・演出でやるとか。そうなると、役者の劇団員が6人いるので、登場人物が6人以下の脚本は自ずと除外される。今回は4人芝居なので、本公演では絶対できないですね」
椎名「わたし、他の人が書いた作品を、松本さんが演出する現場は初めてで。だからとても楽しみです」
島崎「例外もありますが、本公演は主演も基本的に劇団員が務めます。だから本公演の作品は、必然的に6Cの劇団員が主演できるものになるんですよね。でも番外公演だったらそうじゃないものが選べる」
椎名「若い男子とか!(笑)」
宇田川「うち若い男子いないからね」
椎名「若い女子もね。若い人がいないんです。若い人が主演の作品ができなくて(笑)」
宇田川「そろそろ平均年齢40歳くらいになっちゃうもんね」
――― 最後の番外公演に、この『ある日、ぼくらは夢の中で出会う』を選んだのは、プロデューサーの島崎氏。実はそこには知られざる強い思い入れがあった。
島崎「この作品は、高校生の時、初めて自分でお金を払って観に行った公演なんです。自分でお金を払って演劇を観たという印象がすごく残っていて。だから番外公演の最後は、この作品で締めくくりたかったんです。」
椎名「わたしも、高校の演劇部時代にみんなで読み合わせをしたことがある作品なんです。青春時代に通って来た作家さんの作品を、ここにきて改めてやるっていうのはとても楽しみです」
土屋「今上演されている作品って、ダンスがあったり歌があったり、照明から何からきらびやかですごいなって思う作品が多いんですけど、正直あまりストーリーまでは楽しめないことが多いような気がするんです。今一番やりたいのは、やはり作品を楽しんでもらえるもの。35年前に上演された戯曲が、僕らの手によってまた上演できるとなった時に、会話劇を十二分に楽しんでもらえたらと思いますね」
――― 主演を務める菅野英樹は、2017年4月に上演された『人生の大事な部分はガムテで止まっている』で6C作品に初出演。その魅力は意外なところにあるようで……?!
島崎「“一般人風”なんだけど、一般人じゃない。芸能の匂いがしないプロっぽさを感じたんです。今回声をかけたのは、この4人芝居は、3人がベテラン刑事でひとりが新米なんですけど、6Cに関わりの深い役者さんを選ぶと新米感が出ないなと思って」
菅野「去年だったかな、実は初めて6Cを知ってDVDを観たんですけど、それがめっちゃ面白くて、どうやったらここの作品に出られるんだろうと思って」
椎名「いま劇団で映画を撮ってるんですけど、その映画のエキストラに来たのが一番最初だったんだよね」
菅野「周りからも運がいいってよく言われるんですが、6Cを知って出たいなと思っていた時に、映画のエキストラを募集していて。そしたら今度は、次回公演のオーディションをやるっていうから」
宇田川「外部の人を呼んでオーディションするのも久しぶりだったからね」
椎名「菅野くんは、満場一致で合格になったんだよ」
宇田川「でもオーラないよね」
(一同爆笑)
菅野「それ、すごい言われます。存在感ないよねホントにって……」
宇田川「でもオーラがないのがいいんでしょ?」
島崎「それは本当に褒め言葉」
菅野「どんどん公演が近づいてきてるんですけど、いまだに『なんでなんだろうな〜……なんで今こうなってるんだろうなあ俺は』みたいな、信じられない部分が強いです。プレッシャーも、けっこうどころじゃないですね、かなり感じてます。でも楽しみですね。楽しみなことしかないです!」
――― 虚構と現実が入り交じる高橋いさをの傑作戯曲を、スピード感溢れるノンストップコメディを得意とする6Cの松本陽一がどう魅せるのか。原作では全員男性の設定を今回男女半々で演じるというのも見逃せないポイントだ。
土屋「今回の公演期間中、僕の誕生日がありますので、ぜひお祝いに来てください。やっぱり演劇って、実際劇場に足を運んで頂いてなんぼなので、ひとりでも多くの方に観ていただきたい。だから僕はこの誕生日を武器に!(笑)」
椎名「じゃあ観に来る方は、5人ぐらいお友だちを連れて観に来て頂きたいですね」
菅野「2月の半ばだから、バレンタインもありますね!」
土屋「でもバレンタインは初日にはもう終わってるんだよね」
菅野「だったらバレンタイン“シーズン”ということで」
宇田川「シーズンやバースデーに頼り過ぎだな」
椎名「最初どんなきっかけでも良いので、たくさんのお客様に劇団6番シードの公演を観に来てほしいと思います」
(取材・文:前田有貴/撮影:友澤綾乃)