「100点満点をゴールとせず、最後まで妥協しない作品作り」を信念に、相馬あこが旗揚げした演劇ユニット、100点un・チョイス!
着実に作品を発表し続けてきた彼らの第5回本公演は、2015年に初演し大好評だった『ひまわり』をパワーアップして再演する。稽古真っ只中の相馬と、清水一希、高野祐衣、栗山航に話を聞いた。
――― 再演ですが、今回初見の方もいらっしゃると思います。どんな作品なのでしょう?
相馬「ラブストーリーです。シェアハウスを舞台にした恋模様を描いているんですけれども、恋愛をしていく中で、ある出来事に直面した時にそれぞれの人生が変化していく……という。そういうことをすごくリアリティのある感じで描いている作品ですね。ただね、これ、すごくお話しするのが難しいんですよ、どこまで話していいのか…」
――― ネタバレしたら困る?
相馬「そうなんですよ! だからすごく難しくて、漠然とした話しかできないんです」
――― 想像よりも複雑な、一筋縄ではいかさなそうな感じですね。
清水「もう映画みたいな話。舞台じゃない」
高野「舞台じゃない?」
清水「とにかく忙しい! よくこれ初演でできましたね? っていう」
相馬「作品の中で、時が経つのが早いんですよ。1年半を描いてるんですけど」
清水「翌日、何ヶ月後、って時間軸がポンポン変わるので、忙しくて忙しくて」
相馬「だから舞台裏はすごいことになってるんです」
清水「DVDの特典で、転換映像入れようかって話してるくらい。裏ではこんなことになってたのか! って知ってほしい。本当に大変だから」
相馬「一応、暗転して明転したらこんなに変わってる! っていうのは、100点un・チョイス!の売りにしてまして。だから役者が暗転の中で死にそうになってるんです(笑)」
清水「色々な仕事させてもらってきましたけど、初めてですね、ここまでなのは」
高野「えー、怖い怖い!」
清水「僕、ファースト写真集よりも着替えますからね(笑)」
栗山「僕は、最初に脚本読んだ時に、すごくリアルだなあと思った。話し方とか、話す内容とかも。シェアハウスで起こってることって本当にこういうことだよな、って思うくらいリアルに描かれていたので、僕としてはすごくナチュラルに、本当にそこに居るだけでいいっていう感覚で稽古してます。舞台って、嘘……というと語弊があるけど、表現しようとしてる感じがする時がありますよね。相馬さんはすごくナチュラルに演出つけてくれるので、観てる人は本当に劇場にシェアハウスがあるような感覚に陥ると思う」
――― みなさんが演じる役は、それぞれどんなキャラクターですか?
清水「これも話すのが難しいんですよね。ほぼバレる気がする……。まず僕は、真人っていう26歳の見習いカメラマンです。祐衣が演じる、昔同級生だった由奈ちゃんとシェアハウスで再会して、恋心を抱くんだけど……という感じで」
相馬「シェアハウスの7人に加えて、その他の人たちも登場するんですけど、相関図的にはいろんな矢印が飛び交ってます」
清水「すっごい複雑で、女の子が好きそう。絶対演出家女の人でしょ? って感じ」
相馬「確かに、初演の時も女の子人気がかなり高かった作品ですね」
栗山「実体験なんですか?」
相馬「全然入ってないよ!」
清水「いや、一部は多分入ってると思います(笑)。そんでまた、栗山君が演る浩太が、いい男なんですよ」
栗山「美容師なんですけど、由奈と真人と出会って人生が大きく変わります。僕が今まで演じたことのないくらい格好いい男なんです」
相馬「一番モテキャラだよね。お客さんがキュンキュンしちゃうような」
栗山「ただ、僕は感情を表に出せる役なので良かったんですけど、由奈や真人は結構隠していかなきゃならないところが多いので、大変だなと思いますね。僕は心にまっすぐ正直に生きていけば、浩太を演じられるんじゃないかなと思っています」
清水「いいこと言うなあ。よく栗山くんをキャスティングしてくれたなって思うくらい、ハマってるんですよ」
栗山「本当? こういう役は初めてなんで、良かった」
清水「ただ、栗山君自身はお酒飲むとずっと笑ってますけどね」
高野「めっちゃ天然だよね?」
栗山「天然じゃないよ!」
相馬「栗山君は、マイワールドがあるんですよ。浩太を演じる時にも、それがいい意味で色になってると思います」
高野「私が演じる由奈は、過去にいろいろ大変なことがあって、それを抱えてシェアハウスに来たんですよ。そこから変わっていくんですけど、最初は普通の女の子……かな?」
相馬「空気感は一般の女の子とは少し違うかな」
高野「台詞は普通に日常会話で進むんですけど、心の中で思ってることがすごい多いし、別のこと考えてたりするので、大変ですね」
――― 内に秘めた思いがあるのに表現しない役は、難しそうですね。
高野「本当にそうなんです!基本、お客様から見たら心の中が見えずらい女の子です」
相馬「祐衣は、普段から声が震えてるんですよ」
高野「え? 私の声、震えてる?」
相馬「いい意味で切ない声してるんですよ。本人は、風邪引いてるって言ってるんですけど、多分花粉症で(笑)」
高野「嘘でしょ? ついに?」
相馬「だから、今の声は由奈のイメージに合ってるとは思います(笑)」
――― お稽古は順調ですか?
清水「まだそこまで詰めれてないんですけどね」
相馬「表現するっていう舞台じゃないので、大事にしていることを少しずつ伝えている段階なんですよね。キャラクターを演じるというより、もっともっと人の感情が動くような、お客様に届けるための稽古をしなくてはって感じです。あと2週間ですからね」
高野「わー、あと2週間? ヘヘヘっ」
清水「笑っちゃってるし(笑)」
相馬「せっかく一人ひとり違う役者さんが演じるので、脚本の真人、由奈、浩太を超えて欲しいですね」
――― それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
栗山「バレたらいけないから内容についてはあんまり言えませんけど、結構心に残ります」
相馬・高野・清水「結構って(笑)」
栗山「いやいや(笑)、僕は普段、冷めてるって言われるんですけど、この脚本を読んだ時には僕も変わったというか、すごく心動かされまして。僕自身、早く完成したものを観たいし、観てくださるお客様は、帰り道、行きと同じはずなのに違う風景に見えるくらい、心の変化があると思います。GW、暇だったら来てください」
高野・清水「暇だったら!?」
相馬「栗山君、ツイッターだと素敵なこと書いてるんですよ? 『ひまわりを咲かせに来てください』みたいな」
栗山「あれね、3時間くらい考えてますから」
相馬・高野・清水(爆笑)
相馬「嘘でしょー?」
栗山「一回保存してますからね(笑)。いや、見せてやる! とか言うのはあんまり好きじゃないんですよ。僕たちのリアルな生活を気軽に観に欲しいんですけど、気軽に観に来ると、心動かされて大変な事になります」
高野「私は舞台やお芝居の経験あんまりなくて、そんなもの無いのかもしれないけど、正解がまだよく分からないんですよ。しっくりこないっていうか。だからお芝居難しいな〜ってずっと思いながらやってきて、正直、そこまで舞台やりたいです! 頑張ります! ってスタンスではなかったんですね。でもこの舞台が決まって、台本読んだら、そんな私でもこれは頑張りたいなって思ったんです。中途半端な気持ちではできないなって思って、お芝居に対する気持ちも変わりました。私、何とかなると思って生きてきた、基本適当人間なんですけど、この作品はちゃんと頑張ろうって思って。そういう気持ちで挑んでるんで、GW…暇なら見に来てください(笑)」
相馬「(笑)。祐衣が一生懸命しゃべってると、私、切なくなってきちゃって、なんか泣けてきちゃうんですよね。これは祐衣の魅力だと思います」
清水「この『ひまわり』は、小劇場の概念をぶち壊してくれてますね。小劇場でやるレベルの話じゃないんです。やろうとしてる事も、実際にみんなが思ってることも、セットも。もちろんどの舞台も、もう一回見たいな、DVD欲しいなって思ってもらえるように頑張りますけど、これは多分、普通にやれば絶対そう思ってもらえる作品なので。暇だったら(笑)、足を運んでみてください」
相馬「絶対言うと思った!」
清水「そのくらいインパクトある作品なんで。劇場で見ていただかないと、損をすると思います!」
相馬「清水くんが言ったように、100点un・チョイス!の作品は、小劇場の枠を越える挑戦をいつもしてるんですけど、『ひまわり』はまさにその挑戦がある作品です。誰もが生きているといずれ経験することが描かれているんですけど、お客様に、その先を少し感じていただきたいなっていうところから始まりました。生きていると経験する、経験する“けれども”ってところが、伝わればいいかな。前を向いて、とかは言いたくないんだけど、これを観たから明日から頑張ろうって思っていただけたら。『ひまわり』っていうタイトルのイメージも、観終わった後ではきっと変わると思います。劇中にもひまわりの花は登場するんですけど、最後にお客様の心にひまわりが少しでも残ったら嬉しいです」
取材・文:土屋美緒 撮影:友澤綾乃