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CEDAR


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貴族を捨て盗賊となった青年は英雄なのか、それともただの犯罪者か

ドイツ文学の幻の傑作!2人の兄弟を通して善と悪を描く

演出家・松森望宏と俳優の桧山征翔・尾尻征大の3人で旗揚げされた演劇ユニット『CEDAR』の最新作は、ドストエフスキーが影響を受けた作家として知られるシラーの『群盗』。日本ではおよそ半世紀ほど前に映像化や舞台化がされたきりの幻の名作を上演。


インタビュー写真

男芝居は数ありますが、若い2人が闘う芝居ってあまり無いんです

――― 第3弾のきっかけは何ですか? 半年に1本のスピードで上演していますが、手応えはいかがでしたか?

松森「この劇団を作ったきっかけが1作目『夜の長い旅路』でした。今まで読んだ作品の中で一番面白いと思い、この作品を上演したいという気持ちだけで劇団を作りました。それが終ってしまって、次に何をやろうか考えた時に、2012年にイギリスで『胎内』という作品を公演しまして、それがとても評判が良く(英国シェフィールド国際演劇祭・最優秀演出家賞・俳優賞・音響賞 受賞作品)、映画監督・深作健太さんが『胎内』を観たいと言ってくれて、それで第2弾『胎内』を上演しました。そして第3弾で何をしようかと考えた時に、この『群盗』しかない、まずはこの2人の為にやりたいという想いで始めたのがきっかけになります。この作品はずっと読んでいまして、僕はシェイクスピアよりシラーの方が好きで、ただ登場人物が多いので劇団の体力的には無理かなと思っていましたが、自分達がやりたい事をやらないで公演を打つよりも、やりたいと思った事をやろう、
『群盗』は男兄弟2人の話で劇団にいい青年が2人いるのでバッチリだなと。男芝居は数ありますが、若い2人が闘う芝居ってあまり無いんです。同年代の2人が前に出る、かつ僕がやりたい作品という所から今回選びました」

英雄に憧れた貴族の青年カールは、弟フランツの策略で死んだことにされてしまう。しかしカールは自らの理想のために森に住まう盗賊となる。貴族を捨て盗賊となった青年は英雄なのか、それともただの犯罪者なのか……。2人の兄弟の引き返せない悲劇の物語

――― これは兄弟が対決するということになるのでしょうか?

松森「2人の対決ですが、実はこの2人は直接会うシーンは無いんです。それぞれの立場で生きているので会いません。策略に振り回され2人の想いの中で誤解しながら進んでいく物語です。兄カールは弟フランツの策略にはまり、誤解しながら群盗になっていきますが、2人の対決よりもこの作品が持っている“善と悪”をテーマに描きたいと思っています。演劇って哲学的要素が絶対に必要だと思っていて、硬派な感じではなく決して難しいものでもなくて、人間が生きるために必ずもっている根源的なものを表現したいなと思っています。本作は1700年代の本で300年前のドイツの時代劇ですが、封建社会から脱出するお話で、自由を求めて戦っていくひとりの男の話なんです。そこには哲学的なテーマがあると思ってやらせていただいています」

――― 勇敢で頼れる兄カールをどう演じて行こうと思っていますか?

尾尻「カールは自分の年齢に近いので、自分と重なる部分があるなと思いながら読んでいます。自由を求めて仲間たちと手を組み、目的に向かってみんなを引っ張っていく、リーダーシップをとる姿に憧れます。自分が先日大学を卒業して縛られていたものから解放され、これからどう生きて行こうかと考えた時にカールの背中が凄くカッコよく見えて、自分もこうなりたい、こういう生き方を伝えたいという想いがとても膨らみました。そういう姿を僕なりに表現していきたいです。このタイミングでこの役に出会えたことは意味があることと感じています」

――― 男が憧れる男、長男ですから優しい部分もありますね。

尾尻「そうなんです。盗賊ですが彼の中には正義があって、殺人や盗みはタブーでそれらを排除していくんです。彼の求める自由が確かにあって、現代にも通じるところがあると思っています。自分は末っ子で兄たちの背中を見て育った甘ちゃんなので(笑)、兄の姿を思い出して参考にしようかな」

――― 対して弟フランツは、物語上は悪役になりますよね。

桧山「色んなものに嫉妬している役ですね。信用も女性関係も兄がうまくいっている、顔も兄の方がいい、色々な嫉妬があって父親に嘘をついたりしますが、ただの悪役にしたくないと思っています。実は人間はこういう面もあって誰もが共感できる部分があると思って、僕もどちらかと言えば嫉妬に満ち溢れた男なので(笑)、ぴったりな役どころだと思っています。(全員笑)悪役という記号を演じるのではなくて人間を演じたいなと。それが見ている人の共感を生むことができればいいな」

松森「フランツはリチャード三世なんです。シェイクスピアの影響をとても受けていて、その時のシラーもたくさんシェイクスピアを見て感化されていてその中で一番かっこいい男と思っていたと思うんですよ。リチャード3世は背むしの男で大悪党。この作品と同じような構成なので、顔も悪くて体も弱くてでも狡猾で、でもそれだけではない魅力がある」

インタビュー写真

CEDARでやりたいことは、お互いのエネルギーのぶつかり合い

――― 2人をどう魅せようと思っていますか?

松森「CEDARでやりたいことは、お互いのエネルギーのぶつかり合いですね。
2人は物語上会いませんが、フランツが影で色々操作して渦巻く嫉妬の世界の中で、カールはそれでも振り切って自由を勝ち取ろうと生きていくけど、でもラストに向かって落ちていく…...。どういう風に見せたいかというよりも、人間的な部分を共有できたらいいなと思っています。僕は哲学者・埴谷雄高と池田晶子が大好きで、つまずいた時や悩んだときに読んでいるのですが、そこの形而上に生きる方法の全てが書いてあると思っていて何かあった時に必ず読むんです。キャラクターの作り方はそれぞれでいいと思いますが、僕が稽古を始める時、本読みをやっている時も、毎回その本を引っ張り出して“生きるとは”からはじめています。みんなポカンとなりますが、この劇団としてはやっておきたい作業で、コアな部分を突き詰めると精神力の高い作品ができると思っています」

桧山「作品の特徴もありますが、毎回本読みに時間をかける劇団です」

松森「台本の解釈を全員で共有する意味で、一行一行これってどういう意味だろう?と、そこからはじめます。この共有作業を10日以上やってなかなか立ち稽古にならないので、役者さんは苦しいみたいですけど(笑)」

桧山「そして時間も無くなってくるのでみんな焦るという(笑)」

――― 役者さんにとっては生殺しのようで辛そうですね(笑)。

松森「(笑)。イギリスで『胎内』公演をやった時に、言葉は分からないので字幕でやったんですが、スタンディングオベーションになって。言葉が分からなくてでも内容が分かる、人間の本質みたいなところを掘り下げて作るとイギリスの人にも伝わるんだと。ビジュアル的な表現ではなくて精神に共感する、人間に共感するんだと思ったんです。イギリス人に関わらず火星人にでもわかる演劇をやりたいとよく言っています。根幹の部分を共有できていれば宇宙人にもわかる演劇になるというのが僕の目指すところです。火星人がいるかどうかはわかりませんが。」

≪こういう作品をやると役者としての能力が格段に上がる≫

――― 本番に向けて楽しみにしていることや意気込みをお願いします。

尾尻「役者をはじめて日が浅いですが、初主演になります。
自分の人生経験の中でトップに立つということはあまり無かったことなので、人の上に立つ人間とはどういう人間なのか、座長として何をすべきなのか考えている所です。至らないところもあり、悔しい思いを毎日すると思いますが、この日々は絶対大切にしたいと思っています。稽古期間や本番は怖い反面、楽しみでもあります」

桧山「2作品上演してきて、どちらもものすごいセリフ量だったんです。僕も演劇を始めてまだ数年で経験は浅いですが、3作品目でこの1作目、2作目をさらに上回るくらいの物量の作品をやらなくてはいけないようです。1、2作も本当に乗り越えることが大変でしたが、今回もあれ以上やるのかと思ったら大変だなと思う反面、これを乗り越えた時にどんな自分になるんだろうなと。こういう作品をやると役者としての能力が格段に上がると思っています。かなり大変だと思いますが」

松森「稽古をやっていて楽しかったことなんて一秒もないよね(笑)。初日やってお客様の反応で報われる。稽古は本当に辛いです。産みの苦しみです」

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桧山「すごいですよ(笑)。特に骨太な作品になると圧倒的な技量の足りなさに気付かされることが多いんですね。そこで落ち込むし、でも落ち込んでいても次の日は来る。落ち込んでいる暇があったら次の日をどうするか考えないといけないという毎日。本当に間に合うのかなという気持ちと毎回戦っている」

――― そんなギリギリ感もこの作品には合うのかもしれませんね。

松森「長台詞はエネルギーで乗り越えなければいけないと思うんです。そんな中でペラペラした感じでは絶対できない。長台詞には作家やその人物の想いが乗っかっているので、それを表現するのはものすごく大変ですけれど乗り越えなくてはいけないところですね」

――― 凄くエネルギーを使う作品ですが、そのエネルギーはどうやって作っていますか?

松森「僕は酒です(笑)」

尾尻「僕は湯船に浸かっている時間が好きで、疲れている時は湯船に浸かりたいなあ。一人の時間で自分のことを考えられるので、そこでチャージしてる」

桧山「アイドルか!(笑)僕は何かでエネルギーを溜め込んで稽古に挑むというよりも、稽古をしていて作品からパワーをもらうことが本当にあるんです。作者が書いたセリフを追っているだけでこみ上げてくるものとか、そういうもので乗り越えているなと思う時はあります。前回の『胎内』で思わなかった? 最後のシーンとか。言葉に出しているだけでみなぎってくるものがあるんですよ。そういう作品を選ぶ松森さんが凄いなって思います」

生きる力をこの作品で感じてもらえたら

――― 最後にメッセージをお願いします。

尾尻「22歳という年齢を迎えて同世代の人に観て欲しいと思っています。不満に思っている事や苦しいと思っている事から乗り越えられる生きる力みたいなものを、この作品を観て感じてもらえたら。そんな作品にできたらと思っています」

桧山「同世代の方々に見て欲しいですし、僕が常々思っているのは『演劇をあまり観たことがない人も観て面白いよ』って。難しそうなことをやっている集団だと思われているようですが、松森さんの作品選びのポイントはどれも人間を描いていて、誰が見ても分かると思うし、誰が見ても共感でき感じることができると思うので、演劇好きとか嫌いとか関係ないと思っています。老若男女問わずいろんな人に見てもらいたいですね」

松森「難しい作品をわかりやすくすることは目指しています。一番大事にしたいのは、演劇は「精神のリレー」だということ。作家は血反吐を吐きながら死ぬ思いで本を書いていると思うんですね。それを僕らが舞台上で上演します。お客様がその上演を見て、精神のバトンを引き継いでいただけたら。
演劇を見ることによって人間らしさみたいなものを一瞬考え直す時間になったらいいな。ハードルが高いものを観て欲しいということではなく少しでも考えるきっかけになったら。人間とは何だったんだろう、私とはなんだろう、自分自身を振り返る時間として劇場ってすごく重要な場所だと思うんですよね。明日からの活力になればいいな、気楽にご覧頂きたいと思います」

(取材・文&撮影:谷中理音)


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PROFILE

松森望宏(まつもり・のぞみ)のプロフィール画像

● 松森望宏(まつもり・のぞみ)
1984年2月10日生まれ、北海道出身。
日本大学藝術学部演劇学科卒業。2006年より演出助手としてミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、『里見八犬伝』など様々な舞台で活躍。2012年から演出を始め舞台『胎内』で英国 シェフィールド国際演劇祭(International Student Drama Festival) で最優秀演出家賞を受賞。2016年劇団CEDAR設立、代表作には『夜への長い旅路』など。

桧山征翔(ひやま・せいと)のプロフィール画像

● 桧山征翔(ひやま・せいと)
1994年10月15日生まれ、大阪府出身。
2016年7月、松森と出会い演劇ユニット「CEDAR」を立ち上げる。自身プロデュース公演として『わたしとアイツの奇妙な旅』を上演するなどプロデュ―サーとしても活躍中。近年の作品に、舞台『もっと強くなりたい』、CEDAR『夜への長い旅路』、『胎内』、『新版 長寿庵啄木』など。

尾尻征大(おじり・まさひろ)のプロフィール画像

● 尾尻征大(おじり・まさひろ)
1995年10月15日生まれ、石川県出身。
日本大学藝術学部演劇学科卒業。舞台監督や制作の活動を経て俳優としてCEDARの劇団員となる。舞台監督制作として『罠』、『里見八犬伝』などに参加。近年の出演作品に『胎内』、『カワイクなくちゃいけないリユウ』、『斬撃 八犬伝』などがある。

● CEDAR(シダー)
演出家・松森望宏と俳優の桧山征翔・尾尻征大の3人で旗揚げされた演劇ユニット。世界中の日の目をみない優れた名戯曲にスポットをあて、劇作家が綴ってきた想いを丁寧に表現することをコンセプトに良質な作品を届けている。CEDARは松・桧の針葉樹から由来する。

公演情報