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一ノ瀬京介


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“継続できるエンターテイメント”を目指して、多彩な要素を貪欲に取り込む

芝居ありダンスあり生演奏あり、豪華キャストで贈るファンタジー作品

“感動を文化へ、非日常を日常へ”をテーマに掲げて昨年発足したサステナクリエーションファミリーが、第4回公演『SAMAEL〜サマエル〜』を6月に上演する。サステナビリティ(持続可能性)≠ノ由来する団体名には、代表を務める一ノ瀬京介の「演劇に興味がない人を一人でも多く振り向かせたい」という強い思いが込められている。一時期はビジネスの世界でキャリアを積み、再びエンターテイメントの世界に戻ってきたというユニークな経歴を持つ彼ならではの演劇観にも注目したい。


インタビュー写真

ビジネスの世界で築いたものを演劇に

――― プロフィールには、桜美林大学で演劇とダンスに出会ったとありますが、以前からそういう分野に興味があって入学したのですか?

「いえ、もともとはデッサンやイラスト、デザインの勉強のために行ったんです。といっても特別な情熱があったわけではなく、絵が好きだったからなんとなくそういう勉強ができればいいかという程度でした。そこで同じ学科の友達から、演劇の授業があると教えてもらって、1回行ってみたら平田(オリザ)先生がいらっしゃって、すごく面白かったんです。先生の人間性にも魅了されましたし、学内で上演した作品で初めて演劇というものに触れて、“なんだこれは”と衝撃を受けました。さらに木佐貫(邦子)先生が入ってこられてダンスも盛んになって、それにも影響されてダンスを始めて……心が動くとすぐに始めるという、単純な感じです(笑)。それで4年間は芝居とダンスばかりやっていました」

――― 卒業後は芸能事務所に所属して俳優活動をされたそうですね。

「アルバイトをしながら俳優活動もして、けっこう大きな舞台も出させてもらっていたのですが、25歳になって三十代も視野に入ってきた頃に、このままじゃ良くないと思い始めて……。もともと自分で作品を作りたいタイプだったので、もし仮に俳優としてすごく売れたりすると、めちゃくちゃ忙しくなって、自分が思い描いているライフスタイルから離れていくなと。それで、特にあてもなかったのですが、思い切って事務所をやめてしまったんです。その後、3ヶ月くらいはバイトだけで暮らしていました」

――― そこから一転して、ビジネスの世界に身を投じたというのは?

「当然、バイトだけの日々はものすごく退屈で、何の充実感もない生活になってしまって、これではいけないと思いました。自分がやりたいことをやるには資本が必要だと思い、会社を経営している友人に相談したところ、30歳で会社を5つくらい経営している実業家の方を紹介してもらって、直感的に“この人に教わりたい”と思ったんです。それで、その恩師の下でまず1年半くらい営業の仕事をして、少しずつ営業成績も上がっていったところで、今度は営業マンのトレーニングを担当することになって、人材教育の勉強としてリーダーシップとマネージメントを学びました。チームや組織を動かしていくノウハウですね。そうして28、29歳くらいにはビジネスのことがなんとなくわかってきたのですが、もっと自由な時間が欲しいと思って恩師に相談し、次は投資の勉強をしながら、仕組みを任せられる人を育てていきました。それで31歳くらいに、抱えていたビジネスをほとんど手放して、ようやく少しだけできた資本と時間を、自分が本当にやりたいことに使おうということで去年の頭に団体を立ち上げて、今度はエンターテイメントだけをやっていける体制が整ったという感じです。しばらく好きなことを我慢していた間に溜まったものを、全部アウトプットしているのが今の状態ですね」

クリエイターと観客で大きなファミリーを

――― 団体名にあるように、“続けていく”ことを重視しているようですね。

「1回1回の公演に終始するのではなく、持続可能な形でクリエイションし続けるファミリーということで命名しました。より多くの方に何を届けたいのかを明確にした上で、継続可能なエンターテイメントとしてやっていくことが重要ではないかと。もともと学生時代に演劇と出会って、面白いことをやっている人たちがたくさんいるのを知ったのですが、世間一般ではほとんど知られていなかったりする。その現状をなんとかしたいとずっと思っていましたし、日本のエンターテイメントや芸能、アートがもっと盛り上がって、ヨーロッパのように1つの“文化”になっていってほしい。そのためには、作る側がもっと勉強する必要があると思います。ただ“やりたい、作りたい”だけではなく、エンターテイメントやアートを通して“こういう社会を実現したい”という意識がないと、広がっていかないし、続かない。そして観る側も、何のために舞台を観るのか、何のために芸術に触れるのかということをちゃんとわかっている方がいいと思うんです。そこでは、ちょっと堅い言葉で言うと啓蒙的なことも必要だと思いますし、そこでクリエイターとお客様が垣根なく、大きなファミリーのようになったらいいなという思いがあります」

――― そんな志を抱いた上で、作品としてはどういうものを目指していますか?

「演劇をあまり観たことのない人でも劇世界の虜になってもらえるものにしたいと思っていて、もともとダンスもやっていたのでそれも活かしたいなと。僕が書く脚本はちょっと哲学的というか、堅苦しくなりがちなのですが、芝居は芝居で人間ドラマを描いた上で、ダンスや生演奏をエフェクト的に入れていくという作風にこだわっています。エンターテイメント性があることで間口が広がるし、実際に少しずつ手応えも感じています」

インタビュー写真

――― 今回の『SAMAEL〜サマエル〜』は、前作『GOLIATH〜ゴリアテ〜』に続いて旧約聖書のモチーフですね。

「先ほどの話に加えて、ファンタジーへのこだわりもあります。内容は現実的ですけど、登場人物の名前は全部カタカナにして、衣装もファンタジーに寄せていくことで非日常感を出して、もっとライトなものというか、かしこまって観なくてもいいものにしたいんです。現実世界に生きる人に届く物語を、ただ真面目にやるだけじゃなく、もう一歩先のエンターテイメントに昇華させたいと思っています」

――― キャスティングも、昨年立ち上げられたばかりの団体とは思えないほど多彩で豪華です。

「キャスティングは本当に頑張っています。今回主演のspi君はご存知のとおりの活躍ぶりで、かなり先までスケジュールが埋まっていたのですが、たまたま『SAMAEL〜サマエル〜』の時期はオフで空いていたんです。でも僕の経歴や考えを直接伝えたら興味を持ってくださって、企画書を読んですぐに“やります”と言ってくれて。そこから林田航平君も紹介してくれたりと、どんどん繋がっていきました。まさに“引き寄せた”という感じですね」

より質の高い作品を目指して

――― 今回は役者にとってかなり大変なものになるだろうとTwitterで発言されていましたね。

「前作もそうだったんですけど、キャスト全員が場面転換無しで長時間出ずっぱりのところがあるんです。今回は13人がずっとしゃべり続けていて、しかも会話の内容がけっこう哲学的なので、もしかしたら苦労する部分もあるかもしれません。でも役者さんってストイックな方が多いので、そういうのも楽しんでくれると思っています」

――― ダンスや生演奏はどのように絡むのですか?

「例えばダンスでいうと、要所要所に意味のあるダンスが入るという感じです。見るだけでは意味がわからないような抽象的なものではなく、お芝居の中に入ることで、こういう意味なんだろうなというのがわかったりする。衣装もシーンによって変わることで、踊り手たちは今こういうつもりで出てきてるんだろうなというように意味がついてくるので、そこが面白いんじゃないかと思います。言葉のやり取りによる生の魂のぶつけ合いに加えて、視覚と聴覚からも感情に訴えかけて、それら全ての相乗効果を僕自身も観てみたいと思っているんです」

――― 演劇ファンの間口を広げるために様々な工夫をされていますが、演劇を見慣れている人に向けてはどういうアピールをしていきたいですか?

「ある程度演劇に興味がある皆様には、オリジナリティを伝えたいですね。芝居もダンスも生演奏もあるけど、ミュージカルではない、ちょっと独特な世界を体験してもらいたいというのが一番です。こういう作品はなかなか日本では観られないぞとか、こういうテイストもあるんだとか、そんなふうに捉えていただければと思います。そしておそらく、僕のように脚本と演出と振り付けを全部自分でやっている人はあまりいないと思うんです。このシーンのこのダンスはこうでなければならないというのがあるので、なかなか人に託せないんですよ。そのぶん稽古が大変になっちゃうんですけど(笑)。でも今は、昔できなかったことができるようになったという実感があるので、作ってきた土台を活かしながら、作品の質をさらに高めていきたいと思っています」

(取材・文:西本 勲 撮影:岩田えり)

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PROFILE

一ノ瀬京介(いちのせ・きょうすけ)のプロフィール画像

● 一ノ瀬京介(いちのせ・きょうすけ)
1985年2月14日生まれ、東京都出身。
桜美林大学在学中に平田オリザとの出会いで演劇に魅了され、木佐貫邦子との出会いでコンテンポラリーダンスを学ぶ。卒業後は主に舞台・ ドラマ・映画などで俳優として活動するが、26歳で芸能活動を一時休止。多くの経営者の指導の下、数年間で3種類の事業を展開する。そこでの学びを活かし、本格的に創作活動を再開するため2017年にサステナクリエーションファミリーを発足。全公演で脚本・演出・振付を担当している。

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