『お嬢様へのおもてなし』をコンセプトに礼儀作法を心得た執事・フットマンが勤める「執事喫茶Swallowtail」の課外活動の一環として生まれた「執事歌劇団」が第13回公演をおこなう。今回は初の試みとなる推理劇。大雪に閉ざされた別荘で1人の執事が何者かに襲われた。錯綜する推理の先に浮き上がる真犯人とは? 名探偵(?)として立ち上がる9人の使用人達に舞台への意気込みを聞いた。
お嬢様には8通りの探偵像を楽しんでもらえたら
――― 「執事喫茶」で実際に務めている皆さんが舞台に立ちます
伊織「以前から推理物をやってみたいという思いがあり、脚本家の熊脇直介さんと共に“全員探偵、全員容疑者”というコンセプトで脚本を書きました。普段我々は、お嬢様のお屋敷内のティーサロンでお目にかかりますが、今回はお嬢様の別荘が舞台です。全員が自分を演じるという難しさ、面白さもありますが、ミステリーとは言ってもコミカルな一面もあり、肩の力が抜けて楽しめる作品になっています。お嬢様には8通りの探偵像を楽しんでもらえると思います」
瑞沢「普段はお屋敷に隣接するギフトショップでヴァンドゥール(販売員)としてお嬢様方に焼き菓子等を販売しております。瑞沢役として舞台に立たせて頂くのは今回2回目ですが、初の主役という事でかなり緊張をしております。前回は右も左も分からない状況でしたが、お嬢様や先輩方に背中を押してもらい、この大役を頂きました。普段は自由奔放な性格をしていますが、舞台ではまた違った一面を披露して、これまでより成長した姿をお見せできたらと思います。とにかく全力で挑みます」
言葉や行動の1つ1つに謎解きのヒントが……
環「私は『ファーストフットマン』という役職で皆より少し上の立場なので、お兄さん的な立ち回りになります。伊織の脚本を読み返すと、言葉や行動の1つ1つに謎解きのヒントが隠されていて、勘の良いお嬢様であれば気がつく良い難易度かと。ハードルも高くないので、目と耳を駆使すればきっと正解にたどり着けるはずです。あ、でもミスリードも含まれているので注意が必要ですよ(笑)。また私はエンディングテーマを含め、劇中歌の作曲も担当しています。歌と踊りもこの作品も見所です。皆様が見終わった時に温かい気持ちになるような物をご用意してあります」
舞台の世界観を現したオリジナル楽曲にも注目
百合野「今作ではオープニング楽曲を担当しています。舞台の世界観と歌詞がうまく表現できたと自負しております。また。脚本を見ても私の心配性やおせっかい焼き、調和を大切にしている部分をうまく表現しているなと感じました。その気持ちが舞台の中でどう転ぶのかにも注目して頂けたら嬉しいですね。特に使用人全員で推理する場面はエンターテイメント性があって見所です。また個人的には私のトレードーマークである眼鏡がどう変化するかにも注目して欲しいですね」
隈川「今回、使用人の中で唯一の被害者として、犯人に襲われて記憶を失うという役回りです。推理をするというよりもされる側。証拠品に近いような立ち位置におります。一番状況を把握できていない人物ではありますが、物語のカギを握っており、別視点から見ればお嬢様と同じ目線で舞台に参加できていると感じます。今作では劇中歌の作成を担当しました。コメディータッチの曲が得意で、緊迫したシーンでもどこか『クスっ』となるような曲をご用意できたと思います」
日頃の執事達とは異なる一面をお見せできる場
香川「私はドアマンという、お屋敷でお嬢様を最初にお迎えする立場です。舞台では脚本や作曲をする者もおり、普段、お嬢様に見せることのない、我々の違った一面をお見せできる良い機会と考えております。私も意気込んでおりますが、日頃のティーサロンでお仕えしている延長線として自然体な所をお見せできればと思います。」
能見「能見が能見を演じるのは初めてなので、非常に楽しみにしております。私は幼少の頃から数学が好きで、普段のティーサロンでも論理的に考えるところがあり、それがどのように推理にアプローチするのか、是非注目して頂きたいです。9通りの個性溢れる使用人の目線に立って謎解きを進めていく事もこの作品の魅力の1つではないかと考えます」
一度のみならず、2度目以降もより深く楽しめます
影山「初舞台となります。脚本を見ていても『普段の私はこういう風に見られているのか』ととても新鮮な気持ちになります。とにかく馴染めるように、それでいて良い化学変化を起せるように頑張ります。昔から推理小説は好きで色んな作品を観ていますが、やはり会話の中にヒントが隠されている場合が多いです。と、同時に人は本音と建前もあるので、鵜呑みするのは危険ですよ。一度、ご覧になって真相にたどり着いても、2度目以降はより深みを味わえるのも推理の楽しみだと考えます」
的場「今回、ゲスト出演として舞台に立たせて頂きます。洋菓子販売のスペシャリストで役どころとしては主役、瑞沢の頼りになる(?)上司という立場になります。能見が論理的であれば私は感覚的。そもそも探偵ができるのか?という部分はさておき、ある意味コメディ担当の飛び道具として、外部の立場からかき回そうかと企んでおります。今作ではお嬢様がご到着前に使用人達がどのようなやり取りをしているのかに注目して頂きたいですね。そして6回公演ありますので、何度も!ご覧になって頂きたいです」
ティーサロンはお嬢様のご自宅です
――― お屋敷のティーサロンとは、どの様な場所でしょうか
伊織「私共、使用人は礼儀作法だけでなく、ホテルレストラン検定や、ソムリエ、ティーインストラクターの資格などを有し、日頃、社会勉強で頑張っていらっしゃるお嬢様に少しでも癒しや寛ぎをご提供できる様に執心しております。ですが、特に別世界というわけでなく、ご自宅に帰ってきてくださる気持ちでお越し頂ければ幸いです。いつでもお屋敷の門は開いておりますので、お嬢様の一日でも早いお帰りを我々一同、お待ち申し上げております」
(取材・文&撮影:小笠原大介)