小劇場にこだわりを持ち、ハイクオリティーなミュージカルを上演しているプロデュース団体、Scoreが放つ最新作は劇中劇。ニューヨーク、ブルックリン橋のたもと。日々の生活費を稼ぐため、ホームレスの一座による、とある「物語」が始まった。亡き母の言葉に導かれ、未完成のララバイ(子守歌)を手がかりに、ニューヨークに降り立った少女ブルックリン。まだ見ぬ父と対面を果たすため、歌手となって成功を収めるが…。
愛と、名声。そして信頼がテーマの感動ミュージカルに、宝塚歌劇団出身・女優で歌手のRiRiKAと、米国の名門アポロ・シアター、アマチュアナイトで日本人史上最年少優勝を果たした歌手、青野紗穂が主演(交互出演)で挑む。
人の心に秘められた信念や力を表現したい
――― 本作への出演が決まった時の心境を教えてください。
RiRiKA「初めてこのお芝居を観たときから絶対、ブルックリンをやりたい!と思っていましたので、1つ夢が叶いなました。ずっとチャンスを待っていたので、その熱意が伝わったと思うとすごく嬉しいです。まず言えることは音楽が本当にカッコいい。宝塚とはまた違う、私が憧れていたジャンルです。その分、難しさもありますが、私にとってもチャレンジなので、やる気で乗り越えてみせます。
この作品の登場人物は皆、葛藤を抱えて生きていて、それぞれにストーリーがあります。私達が演じるブルックリンにも秘められた強さがあって、心の中に秘めた力や信念などをうまく表現できたらと思っています。もちろんそこを掘り下げていくのはすごく苦しい大変な作業ですが、そういう部分を見せられることで、楽曲もより輝くと思うので、臆することなく追及していきたいですね」
青野「ずっとこの作品にはハッピーなイメージを持っていましたが、台本を読むとかなりセンチメンタルな部分が強くて、物語を通して人間の愛や信念が持つ力みたいなものを感じとることができました。育ってきた時代や環境は違いますが、私自身も中学生でアメリカに渡って、追い求めてきた歌への追求や夢を目指す気持ちなどは、主人公のブルックリンに非常に共感できる部分が多いので、この役をやらせていただくのはとてもワクワクしています。それに憧れのRiRiKAさんと一緒にお芝居ができ、しかも同じ役という事でドキドキしています」
オリジナル性や感覚を大事にした歌い方をしたい
――― RiRiKAさんは宝塚歌劇団、青野さんはアメリカでの音楽留学経験と、同じ役でも歌い方に個性が現れると思いますが。
青野「私がやってきたのはゴスペルやR&Bというジャンルで、決められた歌をしっかり綺麗に歌うというよりも、オリジナル性やセッションした時の感覚など、その場で変わる歌い方が多かったです。だから物語の時代に流行ったオールドスクールのような歌い方など、自分もアメリカにいた分、理解はできるので、そういう部分を出していければなと思っています。すごく綺麗で澄んでいるRiRiKAさんの声とは違い、私は低音という強みがあるのでまた違ったブルックリンを感じてもらえたら嬉しいです」
RiRiKA「私は対照的に「楽譜ちゃん」です(笑)。決められた事を毎日同じようにできないといけない世界にいました。宝塚時代アドリブで歌うということが許される役には巡り合ったことがありません……(笑)。同じものをいかに正確に出せるかという部分を追求してきました。作品としては青野さんが得意とする、時に自由であることは必要だと思うので、そこは逆に私が苦労する部分かと思いますが、歌手として大切にしているのは、言葉を大切に伝えること。ミュージカルやお芝居は聞き取れなかったら意味がないので、一言一言を確実にお客さんに届けるという気持ちでやっていきたいですね。」
少女の成長という時間の流れを表現したい
――― ブルックリンが生まれたパリ、そして父を追い求め、降り立つニューヨークと、1人の少女の成長をどの様に演じますか?
青野「ブルックリンは物心ついた時から、父の存在を知らないわけですが、物語の鍵となる未完成の子守歌を通して、父親の事を思い描きながらその存在も近くに感じていたんじゃないかと思います。それが彼女のニューヨークでの信念につながっているんじゃないかと。私も小さい頃から父の仕事の都合などで自分のいる場所が変わることが多かったこともあり、身の回りの変化や時間の経過には敏感な方だと思うので、自分の経験も重ねながら、彼女の成長を演じられたらと思います」
RiRiKA「私もそこはどう表現するか1つの挑戦ですね。時間の流れとか、幼少期の事があってこそ、後のブルックリンにつながっていくので、私は子供時代からガチで演じたいと思います。例え笑いが来たとしても!(笑)」
物語を彩る華やかな音楽に注目して欲しい
――― 最後に本公演の見所と読者の方へメッセージをお願いします。
RiRiKA「冒頭から惹きつけられる音楽には注目して欲しいです。ストーリーには悲しく、葛藤する部分もありますが、音楽には楽しく華やかなものが沢山込められている事で救われる場面も多いと思います。とくにブルックリンのソロパートはかなりハイトーンなので、歌う方はかなり大変ですが、聞き応えはあります。今回は固定キャストなので、完全に組の色が出る所も面白いと思います。是非、2回とは言わず沢山観に来てもらいたいです」
青野「この物語には両親の愛が込められています。私も離れてみて両親の寛大さが分かりました。なので、反抗期の真っ只中の人達にきっと響くお話になっていると思います。もちろん、家族や恋人で観に来てもらいたい作品です。
歌はその時の雰囲気や息の吸い方ひとつで、心情や伝わる情景は違ってくると思います。ミュージカルならではの生の歌や空気感みたいなものを感じてもらいたいですね。ブルックリンは誰かに語りかけるように歌う場面が多く、私達も一言を発する重さを感じて臨みたいと思います」
(取材・文&撮影:小笠原大介)