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架空畳


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『エントロピー演劇』を標榜する架空畳が、『かけみちるカデンツァ』を再演!

身動きのとれない女の子たちの葛藤の表現を重ねたところから見えるものは?

『エントロピー演劇』とは異常な情報量、台詞量、運動量を詰め込む芝居のこと。そんな芝居で注目の架空畳(かくうじょう)が、2016年に発表して以来、数々の賞の候補作となった『かけみちるカデンツァ』を再演する。カンフェティでは、作・演出してきた小野寺邦彦に話を聞いた。


インタビュー写真

――― この『かけみちるカデンツァ』を書かれたきっかけを教えてください。

小野寺「初演のときに、出られそうな俳優が女性だけだったので、それじゃあ、女性だけの企画にしようとなったんです。テーマに関しては、満員電車で痴漢にあったことのある女性って、統計を見てもたくさんいるのに、その現場を僕は見たことがない。それは確率的にもおかしいことで、そんな風に世の中に起こっているのに自覚できないことってたくさんあるんじゃないかと思ったんです。そこで、いても気づかれないことには、どんなことがあるだろうと思って、そのパターンを8人の女優がいたので8パターン考えたんです」

――― どのようなパターンがあったのでしょうか?

小野寺「痴漢の話もあるし、次にいきなりクリミア戦争の話にもなったりしました。歴史的には大きな戦争だけど、ひとつのものの見方として気づかれなかったということもありうるのではないかという見立てで」

――― 最近公開になった、映画『タクシー運転手』で描かれた光州事件なんかも、当時は報じられませんした。ということは、“気づかれなかった事柄”であるし、そういう風に“人には見えない出来事”がいっぱいあるということですよね。

小野寺「ほかにも、生田萬さんの『ブリキの自発団』という劇団の戯曲に影響を受けて、実際に手紙を書いて許可をもらって書いたパターンもあります。宇宙船でコールドスリープをしている人が、中途覚醒して目はさめてるけど、身体は動かない。それで、7万年を空想で遊ぶことで時間をやりすごすんだけど、ふとそのことに気づいてしまうという戯曲で、『いるのに気づかれない人』のアイデアとして使わせてもらったりもしました。

――― 女性だけでなく、男性でもあり得る話ですね。

小野寺「8人のパターンは、8人の人間に起こってることで、どれも構造は同じなんですけど、同じ性別のパターンを連続して見せることで、外側から俯瞰する、批評するレイヤーが描けるのかなと思いました。今回、男性の俳優もいるのですが、僕自身が、そんな風に誰かの存在に気づかない人間であるということを忘れたくないので、出てもらっているという感じです。例えば、自分が経験していないことでも、月に行ったというようなことは、想像力を巡らせば、行った人はいるんだなと思えるのに、痴漢にあった人のことは、想像力を巡らせても、いるという感覚に達しない。あるものに関しては“ある”と思えるのに、あるものに関しては“ある”と思えないということに、ある種の暴力性が存在するのではないかと思ったんです」

――― その暴力性を無きものにするのは、自分としてはフェアじゃない、みたいな意味ですかね。

小野寺「感覚だけを信じると、“見たことのないものは見たことがないもの”になってしまうけど、僕は感覚よりも理屈や理性のほうが偉いと思っているので、なるべく理性的に、見ていないことを無いと思うことにはしたくないと思いました」


インタビュー写真

――― 俯瞰して見ると仰ってましたが、戯曲を書く時は、どんな風に書いているんですか?

小野寺「僕は大学で学芸員や批評家を目指す人のいる学科に通っていて、その頃、自分は分析的で物語を作るタイプの人間ではないと思ってたんですね。でも、いざ戯曲を書いてみると、分析的には書けなかったんです。だったら、分析的な要素を排除して書いてみたら、これが書けたんです。批評的には正しい書き方ではないかもしれないけれど、ある意味、アホになって書いていくと、8割くらい書いたところで、まとまりがつかなくなって。そのときに、別の人間の目線を持ち出して終わらせるんです。なにかの物語を見ると、素人でも、『俺ならこうするな』って視点ができるじゃないですか。そんな風に、自分が書いたものを他人として見ると、最後まで書けるということがわかったんです」

――― その残りの2割で、学生時代に批評したり、分析的に書いていた経験が活かされているという訳ですね。エントロピー演劇というのは、「異常な情報量、台詞量、運動量を詰め込む芝居」とありますが、実際にはどんなものなのでしょうか。

小野寺「これは、僕が褒めていただいたときの話なので、僭越なんですけど、劇作家協会でこの戯曲をリーディングの題材として選んで頂いたことがあって、そのときにドラマトゥルク・翻訳家の長島確先生から一本の芝居のテーマになることが、ひとつのシーンで消費されているということを言われたんです。例えば、少女が集まって、自分たちにしか通用しない言語を開発してしゃべり始めるというシーンがあって。それを『ある人なら、このテーマだけで一本書けますよ』と。その消費の速度と量と、アイデアを次々と出しては捨てていくことは、ある意味、エントロピー演劇と名乗るにふさわしいと長島先生には言われました」

――― もし、「そのひとつのテーマで一本書いてみて」と言われたらどうしますか?

小野寺「興味を持って書いたものは、それで終わりだとは思ってるんですけど、一つのテーマで書いてみればと言われたら、この『かけみちるカデンツァ』のように、そのテーマに対してのパターンをたくさん出していくような感じになると思います」

――― 『かけみちるカデンツァ』のHPでも、戯曲の最初の部分をそのまま出されていますよね。公式HPによくある、短い説明文みたいなものを一切載せていないのも、そういった情報の量と消費に関係があるんでしょうか。

小野寺「ひとつのことをテーマとして語るとき、情報を出すなら、出す部分をコントロールしていいのかなというのがあるんです。例えば、なにかお芝居を観ていても、都合のいいことや、自分の得意なところは、ぞんぶんに情報を出すんだけど、後ろめたいところは、強引に芝居がタタターンとテンポがあがることに気づきました。
 ほかにも、お芝居の終わりのほうになると、主語がデカくなって、『人は弱いもの』とか言い出す。でも、それはあなたが弱いのであって、人全員が弱いのではないのではないかと。例えば、同じ女性としてうれしいとか、同じ男性として誇らしいとか言い出すと、それは突き詰めると優生思想にもつながると思うんです。同じアーリア人としてうれしいとか。だから、芝居をまとめるときに主語がデカくなることはしないようにしています。情報量の出し方ひとつとっても、コントロールを無意識でしているのもかもしれないと」

――― 都合の悪い場面、あまりうまく書けない場面で、芝居のテンポがよくなって、そこで情報量が少なくなることがある。けれどそれは、実は観客に対するコントロールにあたるのではないか、と。なるほど、なかなか気づかない視点でした。

小野寺「だから、この芝居のことは、情報を出して出して消費してもらうのが大事だと思っていて、セリフ量、運動量、情報量が膨大になって、常に消費されて後戻りされることがないというのが、エントロピー演劇だなと。今回の舞台で言えば、ひとりの女の子が見えないところに閉じ込められて、ひとりでいる物語ですというところから、どれだけの情報が表せるかということが重要なので」

――― 例えばキャッチコピーを考える時、キャッチ―な部分を抽出して誰かの目を引くというのは、情報をコントロールしていることだ、というのは、確かに実感がありますし、その情報のコントロールに欺瞞を感じることもありますね。ある意味“解釈をこうしてください”と言われているような。ただこの舞台が「ひとりの女の子が見えないところに閉じ込められて、ひとりでいる物語です」と要約されていると、観客は安心する、ということはあるかもしれないです。

小野寺「確かにそうですね。そういうストーリーが芝居の主題ではないし、ガイドラインを示せば、見る側も、すんなり入り込むことができるかもしれないです」

――― 最後に、読者に向けて一言お願いします。

小野寺「お芝居っていろいろあって、『かけみちるカデンツァ』は、台詞を追うだけで、すべてが理解できるようなウェルメイドなものではないかもしれませんし、観た人には、これは今まで知ってた芝居じゃないと思うかもしれません。でも、そういうウェルメイドなものがあるからこそ、架空畳のようなオルタナティブな演劇って存在すると思うんです。そこは表と裏で、舞台にもこういうものがあるんだなと思っていただければうれしいです。
 でも、実はお芝居自体は、些細な個人の出来事を描いていて、観ているみなさんに、こう考えなさい、感じなさいという説教じみた話ではないんですよ。脈絡なくお話が始まって、それを次々と観ていくと、何か通底するものがあるとわかるようなものになっていると思います」


(取材・文&撮影:西森路代)

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PROFILE

小野寺邦彦(おのでら・くにひこ)のプロフィール画像

● 小野寺邦彦(おのでら・くにひこ)
2006年、多摩美術大学在学中に小野寺邦彦が岩松毅らとともに架空畳を旗揚げ。すべての上映作品を作激、演出。2012年『薔薇とダイヤモンド』、2016年『かけみちるカデンツァ』が第日本劇作家協会新人戯曲賞候補になるなど、注目を集めている。

公演情報

「かけみちるカデンツァ‐BLIZZARD BEAT MIX‐」のチラシ画像

架空畳 第17回公演
かけみちるカデンツァ‐BLIZZARD BEAT MIX‐


2018年8月25日 (土) 〜2018年8月26日 (日)
吉祥寺シアター
HP:公演ホームページ

10名限定!3,500円(全席指定・税込) → 3,000円

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