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松金よね子・岡本 麗・田岡美也子


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詩人・茨木のり子の“魂”を、舞台ならではのエンターテイメントに昇華した名作が再演!

ベテラン女優3人が、お互い高め合ってきた32年間に1つの区切りをつける

1986年に松金よね子・岡本麗・田岡美也子の3人で結成され、女性の視点でリアリティのある等身大の舞台を作り続けてきたグループる・ばるが、2015年の作品『蜜柑とユウウツ 〜茨木のり子異聞〜』の再演をもって32年間の活動に幕をおろす。
脚本はてがみ座の長田育恵、演出をマキノノゾミが手掛けた同作は、《倚りかからず》《自分の感受性くらい》などで知られる詩人・茨木のり子の人生とメッセージを、大胆な発想で丁寧に舞台化している(長田はこの作品で第19回鶴屋南北戯曲賞を受賞)。「る・ばるの最後にふさわしい作品。初演のつもりで取り組みたい」と口を揃える3人の話をたっぷりと聞いていこう。


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全員が“初めて”に挑戦した作品。そして今回も

――― 以前、別の取材で脚本の長田さんに本作の話をお聞きしたのですが(※てがみ座『海越えの花たち』インタビュー)、時間をかけた本読みに長田さんもずっと同席して、脚本を細かく書き直したりしながら「たくさんの人の手で作品が磨かれていく実感を味わった」とおっしゃっていたのが印象的でした。

岡本「私たちもそれはすごく感じました」

松金「ああいう作り方はいいですね。作家があれだけ稽古場に来てくれて作品を創っていくというのは、一番いいやり方かもしれません」

――― 皆さんの手応えとしてはどうですか。

松金「そういう作り方をしたものですから、作品についてずいぶん理解できていたと思っていたんですけれど、今回改めて茨木のり子さんの作品やエッセイを読んだり、劇中に出てくる金子光晴さんや谷川俊太郎さんの書いたものを読んだりすると、“ああ、こういうお話があったのか”と、どんどん自分の中で掘り下げていってしまって。登場人物の皆さんの、脚本には書かれていないドラマチックな部分がすごすぎるんです。それを再演するということは、ワクワクすると同時にドキドキもたくさんあります」

岡本「今思うと、初演は気負い過ぎたのか、ちゃんと読めないまま突入したという反省があります。今度はじっくり読み直してみて、まだ3年しか経っていませんが、前は気がつかなかった部分も含めて脚本が発酵、熟成しているように感じたんです。なので私もさらなる高みを目指してやっていきたいと思います」

田岡「あと、初演のときと今の状況を比べると、もっと怖い時代になっていますよね。茨木さんは元軍国少女だったことへの反省から、自分の感性で語ろうということで新しい詩を書き始めた。あの時代にそういうことをやろうとした茨木さんの思いを、今もう一度ちゃんと伝えたいと思って、ギアを新しく入れ直しているところです」

――― 作品そのものに対する印象を改めて聞かせていただけますか。

松金「それまでグループる・ばるでやってきた“元気な女たち3人組”というイメージとはちょっと違ったのと、時間軸を超えて話が入り組んでいくので、これは演技者として難しいねというのを、客演の木野花さんも含めた女性4人で話したのを覚えています。難しい脚本だけどやりがいがあるし、これはお客様の好みもはっきり分かれるだろうなと。長田さんもマキノさんもこういう脚本は初めてだとおっしゃっていて、もちろん役者も初めて。みんなが初めてにチャレンジするみたいなことで、正解はどこにも見当たらない。
 だから誰かに合わせるのではなく、みんなで信じて突き進んでいくしかなかったんです。それは今回も同じですね。正解が見えないぶん、どうにでもできる。きっと、あと何十年後でもやれる脚本だなと思います」

岡本「よくぞ作家はこんな素晴らしい脚本を書いたなと思いました。茨木さんの舞台をやりたいと言い出したのは私たちで、確かに彼女の詩や思いは素晴らしいんですけど、彼女自身はあまりに立派すぎて破綻のない方なので、これをどうやって芝居にするんだろうって思っていたんです。それがこういう“魂”の話になって、すごいなと思いました。でも松金が言ったように、やるのは難しいぞと(笑)。だから今回もチャレンジ、もう再チャレンジどころではないくらいですね」

田岡「る・ばるで次に何をやろうってなったときに、3人で一致したのが茨木のり子さんでしたが、茨木さんのことを知りたければ詩やエッセイを読めばいい、几帳面に生きた彼女自身を演劇にするのは難しすぎると思っていたんです。でも、3人の“ノリコ”をやるという出発点が決まって、ガーッと世界が変わった気がしました。これはどんな時代でも、その時代に向かっていく人間という普遍的なテーマを持った、スタンダードな作品だなと。
 あと、脚本を作っていく過程で、長田さんやマキノさんを含めたみんながものすごく心を開いて、風通しのいい話し合いをしたんです。そういう素晴らしい時間を共有できたというのもあって、いつかまた再演したいと思っていました。ですから改めてすごく緊張していますし、大きな山に頑張って登っていこうという気持ちです」


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る・ばるは、みんなが容赦なく言い合う場所

――― グループる・ばるでの32年間の活動を振り返って、皆さんにどんな影響があったと感じていますか?

松金「最初はこの3人で何かやってみたいと、たった1回だけのつもりで公演したのですが、公演を重ねて、る・ばるのことを知ってくださる方が少しずつ増えてくると、演劇者としての責任感をより強く感じるようになりました。もちろん、与えられた仕事を1人でやるのも大きな責任ですけど、“る・ばるの松金”と言われることはもっと責任を感じる(笑)。あと、よそに行くとダメ出しをされない年代になってきても、る・ばるではまるで養成所のように、どの演出家も、ダメなものはダメだって言ってくださるのが本当に幸せなことで」

岡本「私たちもお互いに言い合ってるし」

松金「特に私が、うるさいお母さんのようにね(笑)。喧嘩みたいになることもありますよ。でも言いたいことを言えたのは、いいことだと思います」

岡本「言わないでグッとこらえてたら、32年続かなかった。まあ、役者としての自分が何者なのかというのがわかってきたというか」

松金「る・ばるがなかったら、“いろいろ経験も積んでらっしゃるから、どうぞお好きにやってください”って言われても、それに疑問を持たない役者になっていたかもしれません。でも、る・ばるがあったことによって、やればやるほど自分の至らなさが……これは嘘でも謙虚でもなく、当たり前のように身に沁みてわかってきました」

岡本「昔、歌舞伎の人間国宝の方が、“80歳を過ぎても勉強です、完璧な役者なんてありません”とおっしゃっているのを聞いて、“またまた〜”なんて思ってたんですけど、今は確かにおっしゃるとおりだと思います」

田岡「る・ばるは一番古い仲間なのに一番緊張します。それはもう容赦なく言われるし、自分が気付かないところにハッとさせられるし、一番自信を失うところでもある。『蜜柑〜』の初演のとき、私たちが一番年長なのに一番叱られていて、マキノさんは“久しぶりに昔の演劇部のような熱い気持ちになった”っておっしゃってました。またそれとは別にもう1つ、る・ばるはプロデューサーとして何かを仕掛けていくことの面白さを初めて知った場所でもあります。ゼロから立ち上げて一生懸命種をまいていくのは、意外と面白いなって。それがいつか報われるということを実感として感じた年月でもありました」


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――― そんなグループる・ばるを、どんな形で終わらせるのがいいか、数年前から考えておられたそうですが。

松金「なんとなくですけどね。真剣に考えていたというよりは」

田岡「頭のどこか片隅にはありつつ、まだもうちょっといいか、みたいな感じはありましたけど(笑)」

松金「世間でも“終活”とか流行ってるじゃないですか。そういうことも関係していたかもしれませんね」

岡本「る・ばるを今まで支えてくださったお客様たちは、る・ばるの元気さとかを期待していらっしゃるわけですから、そういうものを見せられなくなってから辞めるよりは、後ろ髪引かれるくらいのところで辞めた方が美しいかな、というのはありました」

田岡「以前、麿赤兒さんとお話ししたとき、衰えていく自分をさらけ出して見せていくのも1つの表現なんだと言われたことがあるんです。それはそれでわかる気もするんですけど、私たちの場合はセリフがある以上、それをちゃんと言えなければなりたたない。だから、それは私たちにはできないことなんだなって。惜しまれているうちに幕を引いて区切りをつけるのも、自分のような性格にとっては大事なことかもしれないと思っています」

――― そこで、こういう素晴らしい作品が背中を押してくれた。

岡本「そうですね。最後にほんとにこんな作品で終われるというのは幸せです」

松金「私たちとお客様が、また違う新しいところにいくことを暗示しているような解釈もできるお話ですからね。そういうところも、最後にふさわしいかなって思います」

新しく生まれた『蜜柑とユウウツ』を見せたい

――― 最後に、今回の再演ではどんな変化を予感していますか。

松金「まず、キャストが2人変わります。る・ばるはいつも、一緒にやりたい方とずっとやってきましたが、まだまだご一緒したい方は山ほどいるんです。向こうはともかく(笑)。だから、決して初演の方が良くないというんじゃなくて、せっかくだから最後にまた新しい方とやりたい。役者って絶対、前と同じようにはやらないぞって思うものですから、それに私たちも刺激されると思うんです」

岡本「化学反応がね。それもすごく楽しみです。私たち自身、いろんな作品の再演をしてきて、前回(2016年)公演した『八百屋のお告げ』は再々演だったんですけど、全部ご覧になったお客様が、3回とも全然印象が違うとおっしゃってくださって。自分たちもそれなりに熟して、演出家の目も熟して、世の中も変化して……というのを全部ひっくるめて、まっさらなところから出発するようにやれた再演というのは、やっぱりお客様もわかってくださる。だから今回も真摯に取り組みたいですね」

田岡「こんなにみんなの思いがあるわけなので、稽古が始まるのが怖いのと期待する気持ちが半々です。それと、『八百屋のお告げ』の再々演が、こんなに変わるのかというくらい、ものすごく目からウロコだったんですよ。あのときに得た感動を、今回も絶対にもう一度味わいたいです。再演の醍醐味というのは、なぞるんじゃなくてもっと高みに向かうということなので、それを目指したいし、達成したいです。『八百屋のお告げ』のときに言われたように、今回も“新生『蜜柑とユウウツ』”っていうものにしたいと、すごく切実に思っています」

松金「お客様もぜひ、初演だと思って来ていただきたいですね」


(取材・文:西本 勲/撮影:小山真一郎)


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PROFILE

松金よね子(まつかね・よねこ)のプロフィール画像

● 松金よね子(まつかね・よねこ)
東京都出身。劇団テアトル・エコー出身。ノックアウト所属。小劇場から商業演劇、ミュージカルと幅広く活躍するほか、テレビや映画、CMにも多数出演。1981年に『地下は天国』で第16回紀伊國屋演劇賞・個人賞を受賞。

岡本 麗(おかもと・れい)のプロフィール画像

● 岡本 麗(おかもと・れい)
長崎県出身。アンジィ所属。劇団俳優小劇場付属養成所を経てテレビや映画など多方面で活躍。テレビ朝日系『はぐれ刑事純情派』シリーズでは長年レギュラーを務めた。主な出演舞台に『寝盗られ宗介』『金閣寺』『東おんなに京おんな』など。

田岡美也子(たおか・みやこ)のプロフィール画像

● 田岡美也子(たおか・みやこ)
大阪府出身。エム・カンパニー所属。劇団俳優小劇場付属養成所、早稲田小劇場(現SCOT)出身。舞台を中心に活動する一方で、テレビや映画の出演も多い。主な出演舞台に『贋作・罪と罰』『時の物置』『こんにちは、母さん』など。

公演情報

「蜜柑とユウウツ 〜茨木のり子異聞〜」のチラシ画像

グループる・ばるvol.24 さよなら身終い公演
蜜柑とユウウツ 〜茨木のり子異聞〜


2018年9月13日 (木) 〜2018年9月23日 (日・祝)
東京芸術劇場 シアターイースト
HP:公演ホームページ

40名限定!4,500円 → 【指定席引換券】3,900円さらに1,200Pゲット!(9/6 17時50分更新)

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