加藤凛太郎が代表を務めるプロデュース集団「RINCO」。初のプロデュース公演『リミット・オブ・タイムラグ』は“時間制限”をテーマに描く。作品のストーリー進行で“登場人物が時間に追われる”そして“演じている役者も時間と戦う”というもの。ステージ上に時計を置きリアルタイムで物語が進行、さらに役者たちもシーンごとに配分されたお決まりの時間を秒単位でコントロールするという遊び心満載、いや役者にとって挑戦を超える作品が誕生しようとしている。加藤凛太郎のギミック(仕掛け)とは。
お客様と一緒になって盛り上がっていけたら
――― 時間制限、時間概念のある作品と聞き出演者たちは驚き、そして闘志を燃やしていた。
黒貴「舞台をやる時は尺が決まっていますが、全体の尺なのでそこに収めようという意識は常にあるんです。ただ今回シーンごとに何分と区切ると聞いて『加藤プロデューサーおかしいだろう』と(笑)。僕は時間を守る方なので性格を生かして板の上に乗せればいいのかな」
栗生「初めて聞いた時は絶対無理だと思いました(笑)。お芝居は感情でセリフを言っていて、ある程度の時間に収めますが、2、3分は許容範囲、細かい時間を気にしたことがありませんでした。でも共演者を確認しますと沖野さんはじめしっかり引っ張ってくれそうな人がたくさんいるので乗っかって行こうと思っております」
沖野「作演出の久保田唱とは18年来の付き合いで彼が作っている作品は八割方出演していると思うのですが、日頃から時間を気にする演出家なので自分的には時間の概念はわかる方ではあると思います。 でも1、2分ずれるのは普通なのに毎回同じタイムでやる作品と聞いた時には、僕はその概念に携わらない役柄にして欲しいなと。ただフワッとプロデューサーから色々匂わされているのでがんばらないといけないのかも。そうなったらプロデューサーに良い時計を買ってもらいます」(全員笑)
相笠「私はあまり緊張しないタイプですが、今作は時間のせいで緊張しそうです。時間をまわす役にならないように祈っています。最初の人が時間を使うと最後になる人が大変ですよね」
沖野「あの人今日やたら早口だなとかあるかもね」
――― 誰かが調節するというより全員でタイムを取らないと成立しないのが加藤プロデューサーのギミックだ。さらに毎公演同じ進行のステージを目指す。役者はステージの時計を確認しながら奮闘することになりそうだ。 加藤プロデューサーはお客様ファースト、お客様が楽しむことを大前提としてそのひとつに製作発表を一般公開しましたよね?
黒貴「初めての経験です。世界観をわかってもらって観に来て欲しいというプロデューサーの気持ちがより表れたイベントとだと感じますね」
相笠「私はアイドルやっていたので舞台作品に触れていなかったファンが多いと思います。製作発表イベントは参加しやすいので見学だけの気持ちで来るかもしれませんが、この発表を聞いたら本番も興味を持ってくれるんじゃないかな」
栗生「凛太郎さんが企画してくださる一つ一つが面白くて、本番前にお客様やキャストも楽しめる材料をたくさん用意してくださるんです。今回一般公開という形でこれからお楽しみが待っていることをより伝えられたので、本番までお客様と一緒になって盛り上がっていけたらいいな」
――― 本作では加藤が一緒にやりたい役者へ声をかけ新メンバーも含め信頼関係で結ばれている役者やスタッフたちが集った。特に初共演メンバーとの作業はプロデュースの醍醐味という。加藤とはどんな人物なのだろうか。
黒貴「本当に面白い方。今回のプロデュースから宣伝の仕掛けまで全部独りで考えているんです。過去に共演もしましたがお芝居でも尊敬できる部分が多く多才な方です。まだ発表になっていない見たことがなかったような仕掛けがあるらしいので、そこもお楽しみにしていてください!」
栗生「初共演の時、加藤さんは弟役だったんです。最初は怖いイメージでしたが、年々丸くなっているかな。今はプロデューサーとしてみんなが楽しんで仕事に取り組めるように企画をしてくださるので、私の中では仏になりそうなくらい尊敬しています。プロデューサー兼役者としても出演するので、元姉として支えていけたら」
沖野「加藤君は一番仲が良い役者さんです。彼が初のプロデューサーとして企画を立上げたので出演を決めました。僕は今声優のお仕事を多くやらせていただいていているので舞台はスケジュール的に縮小している中で加藤さんからお話いただいていて、声をかけてくれたことが嬉しくて。企画書をもらって自分のマネージャーにプレゼンして出演を説得しました。出演が決まって嬉しいですね」
見どころは“冷静でない彼ら”
――― 物語はとあるローカル局が舞台、突然謎の人物に局がジャックされる。人気番組『オーディエンス・オブ・コネクト』のテレビマン達は事件に巻き込まれながら、番組を救うため『生放送』と『真実の時間』という“時間にとらわれた”絶対に負けられない戦いを繰り広げる。
沖野「作家・久保田唱が創る作品はギミック(仕掛け)が多いので、今回も満載な予感がしますね。彼は最後までできていても役者にネタバラシをしないんです。彼はとてもこだわりあり、そしてコメディが大好き。お客様も一緒になって楽しめる作品であることは間違いないです。そしてお客様が一番面白いのは、普段全く焦らない役者が凄く焦っている姿を見ることができます! 普段の僕は舞台上で何が起こっても動じないタイプですがこの作品ばかりは大変なことになっているだろうと、そこをご期待ください。いい意味でLIVE感があるかな。お客様も1回目と2回目では違って日を追って何度も楽しめる作品かと思います」
――― 時間制限はお客様の笑いの時間も考え操らなければいけないということでしょうか?
黒貴「そうなんですよ」
沖野「上演時間が最もずれるジャンルはコメディなんです。笑いは役者同士の空気感が一番大事で、それを芝居にして更にお客様の反応も感じながら舞台上で空間が流れていくのでタイムがどんどんずれたり、いつもと違うところで笑いが起きるとそこに対応して組み立てることが多いですね。笑いが起きたら待たなければいけないのですが、今回待っていたら取り返しがつかなくなるかもしれない」
栗生「今回のキャストには笑いの爆弾みたいな人が沢山いるから面白くなると思います。今回オーディションを開催していてその中ですごい人がいたという噂も聞きました。稽古でどれくらい自分が面白くなれるのか、本番までにどうすり合わせられるのか、いまヒリヒリしています」
沖野「僕はツッコム役になる予感がします。僕の本業がツッコミなので。ただツッコムにしてはボケの人数が多すぎる! いまの僕の楽しみであり、最も不安な部分でもあります。しかもファンキーにボケる奴が多いのは栗生さんと同意見です」
栗生「ちなみにどなたが一番ですか?」
沖野「(福地)教光さんじゃない?」
栗生「彼なんですね!」
黒貴「加藤さんも沖野さんも、僕がこの業界に入ったばかりの頃に共演させていただき憧れていたんです。この作品でご一緒するにあたって成長した自分を見せたいと思っています。雑なボケでもどんなボケでもオッキーさんが回収してくれるものと信じて、オッキーさんに拾ってもらえることがとにかく楽しみです!」
――― 秒単位で時間をコントロールすることについてのプレッシャーはありますか?
沖野「ずれるのは普通のこと、とても大変なことをやろうとしているんだなって思いますね。アニメでは秒単位でセリフを言っているので僕は得意な方かと思いますけど、怪物たちがいますのでね。自分だけのペースではないので、相手が遅れたら自分が巻かなくてはいけない。突き放せないんですよね……大変だ! 稽古と本番では全然違うことになるね」
黒貴「けっこう協調性がある方が揃っていると思っています。稽古の段階から沢山コミュニケーションをとっていきたいです。そうすれば本番でも助け合いに繋がるのかな」
沖野「ジェントルマンだな〜」
栗生「絶対無理から始まっているので、稽古で『ここいけるかも』とか、そういう境地になることが今は楽しみですね」
相笠「過去に共演経験がある方は数人なので、今のお話を聞いて怖いなと思いました。私はすぐ人を避けてしまう所があるので、無理だと思ったら助けられないかもしれない。(全員笑)栗生さんとペアを組ませてもらえたらいいな」
沖野「ここにも怪物がおったで〜」
黒貴「この作品はタイムリミットも楽しめますが、久保田さんが創るコメディ作品なのでまずは良質なコメディを楽しんでほしいですね」
沖野「すごく信頼するプロデューサーと、すごく信頼する作演出家と、見るだけで面白そうな役者たちが集まっております。間違いなく面白く笑える作品になっていると思いますので、是非笑いにいらしてください」
(取材・文&撮影:谷中理音)