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日澤雄介・古川 健・岡本 篤


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善悪では裁ききれない人間の業を歴史の系譜を通じて描く大作

「731部隊」と「薬害エイズ事件」。時代を超え、脈々と医学界に受け継がれた“闇”とは!?

社会的事象をモチーフに、緻密な調査とハードな台詞表現によって、生々しい人間ドラマを描いている劇団「チョコレートケーキ」が、時代を超えて日本医学界に脈々と息づく闇を「連動公演」という新たな試みで炙り出す。9月末の企画公演「ドキュメンタリー」で突きつけられた『非加熱製剤の危険性に知りながら、なぜ誰も止めることができなかったのか』という問いは、戦中の満州で研究という名の下に、人体実験を重ね、非道の限りを尽くした旧日本陸軍「731部隊」の実相へとつながっていた。人間の根深い業から生み出され、決して清算できない“負の遺産”の内実に鋭く切り込む意欲作だ。


インタビュー写真

負の遺産が何に起因するものかを描きたかった

――― 本作品の構想に至った経緯を教えてください。

古川「去年から今年にかけて、外部の劇団向けに脚本を書く機会が増える中で、自分の中に初期衝動みたいな感覚が大きくなってきて、僕の中でずっと温めていた『731部隊』を扱ったお芝居をしようと。でもそれができる場所が自分の劇団しかなかったので、皆に相談したら、『古川くんならいつか言い出すだろうな』と、皆感じていたんですかね(笑)
731部隊の存在を知ったのは中学生の時で、こういう事があったのかと、かなり衝撃を受けました。80年代、90年代にかけては、小説やテレビ特集とかで、このテーマへの注目が高かったが、近年は減っていて、忘れちゃいけない過去に取り組むという意味では、今この時代にやる意義は高いと思いました。せっかくやるなら企画公演として、本公演につながる何か布石というか、テーマ的に共通性のあるものをという事で薬害エイズ問題を扱った作品にしたのが、9月末に上演された『ドキュメンタリー』でした。

731部隊では軍国主義、現代では会社の利益と、形や目的は違えども、人命軽視の体質が、脈々と体質が受け継がれてきてしまったという側面がある気がして、負の遺産というか。それは何に起因するものかというものを伝えたいと思っていて、筆を取りました」

日澤「2作品を同時上映ではなく、時間をずらして公演するのは初の試みです。その為にも、本作のスピンオフ的な役割として、9月の企画公演『ドキュメンタリー』を布石に打てたことは良かったと考えています。『731部隊』というものが存在していたのは知っていたが、調べれば調べるほど、当時の実験施設でおこなわれていた内容が目を覆いたくなるようなものばかりなので、これをどうやって舞台で見せていくかが問われる作品ですね。誤った歴史は決して繰り返してはいけないし、忘れてはいけないというのがこの劇団の共通認識にあります。

でも、『ただこういう事がありました』では弱いので、お客さんの皮膚感覚に訴えかけられるように、どう表現するかはいつも演出家として考えています。やろうと思えばどこまでもグロテスクにできますが、音などを使用してお客さんに想像してもらうのが良いかと思っています。扉の向こうで今、何かおこなわれているのかを想起させる。舞台装置としてオブジェを使うのも考えています」

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エゴイズムと倫理観の葛藤。根本は人間ドラマである

――― 演じる側にもかなりのエネルギーを求められる作品になりそうですね。

岡本「確かに体力や緊張感は求められますね(笑)。戦時中から1980年代を2つの作品に分けて描く壮大なストーリーで、内容的にはジャーナリスティックな論評をされがちな作品ですが、演じる俳優としては、あくまでも根本は人間ドラマであるという事を表現したいです。脚本を読んでみると、僕は夏目漱石の『こころ』を想起するんですね。エゴイズムと倫理観の葛藤が、本作では医学者としてのユートピアにいる心境と、それを戦後引きずって生きた人間の生き様に重なっているような気がします。でも我々あくまでもエンターテイメントとしてお芝居をしたいという事が根本にあります。こういうテーマを扱っていて、不謹慎と言われかねないですけども、お芝居である以上は面白くないと意味がありません。ややもすると、主義主張が押し付けがましくなる題材ですが、舞台の上で展開される人間の生き様を覗き見してもらうぐらいの気持ちで演じたらと思います」

――― 本作では人体実験の被験者(マルタ)役に、中国出身の俳優を起用されていますね。

古川「中国の女優さんを起用することは僕が考えました。中国語ができる日本の俳優さんでも良かったのですが、パッケージングとして中国のネイティブの方が入ってもらうことで、作品そのものに強度が加わると思っていて、逃げ道を用意しないというか、そういう覚悟を持って題材を扱っているというアピールにもつながると考えました。元々、女優の李丹さんは存じ上げていて、声をかけられる関係にあったため、こういうチャレンジをしたいと伝えたところ、彼女も快諾してくれました。彼女は中国人であり、そういう事件が昔の満州であったという史事が、作品を作っていく上で彼女の心にもたらすものがあるかも知れません」


決して特別な人間が起したことではない

――― この舞台を通じて伝えたいことや、注目してもらいた点はありますか?

古川「この作品では生きた人間を描きたいと思っています。お客さんを感動させるのは知識ではなく、実際に生身の俳優さんが言葉を語り、動くことによってもたらされるものなんですね。その時代を生きた人間が、何を思い、感じ、そしてどう行動したのかを物語にする事を心がけてきました。731部隊がした事は決して許されるものではありませんが、決して特別な人間が起したものではないという事。我々と同じ人間がそこにいて、こういう事が起きた。何がそうさせたのか?という事にメスを入れたいと思っています。またそれが演劇の力だと思っています」


インタビュー写真

日澤「あまりしっかりこういう画を見てもらうという作り方はしていなくて、舞台上で俳優さんたちが呼吸している。生活している様子を一緒に体験してもらう。お芝居はどこを見てもどう感じとってもらってもいいと思うんです。その一方で僕らはその空間の中の関係性や空気感には特にこだわりを持っています。その空気感をお客さんに感じてもらえれば、見るとより体験してもらう感覚に近くなる。

僕らは歴史を扱っている劇団で、上演時間も決して短くないし、カッコいい男や美女が出ているわけではない。確かにエンターテイメントとはいいつつも、入りやすい世界観ではないと思います。でも笑いだけがエンターテイメントではない。まずは見てよといいたいですね。心と頭をフルに使って体験できる舞台、それが劇団チョコレートケーキだと思います」


2、3年後、ターニングポイントとなる作品に

――― 最後に読者にメッセージをお願いします。

岡本「こういう題材はタブー視されてきた雰囲気がありますが、それもおかしい話です。そこは歴史を扱ってきた劇団として真摯に取り組みます。でも敢えて言わせてください。敷居は低いです。あまりお客さんに楽をさせる芝居ではないかもしれませんが、観終わったあとに、何か心に残るような作品になると信じています」

古川「決して難しい話を難しくしてやろうと思っているのではなくて、誰もが理解できる形で、こういうテーマの作品を描きたいと思っているので、素直に舞台の上に現れたものを感じて頂ければ充実した観劇体験になると思うので、どうか自然体で劇場に来て欲しいです」


日澤「この時期に731部隊の作品をやることは、2,3年後に振りかえったときに、劇団の中で「ああ、だからだね」と言われるようなターングポイントになると思っています。題材選びを含めて、日々の生活の中にある“何らかの流れ”に引きずられて僕たちはこの作品をやるようになったのではと思います。お客さんと共に作り上げる瞬間、瞬間が歴史になっていくと思うので、是非、その歴史を目撃しに来て欲しいです」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

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PROFILE

日澤雄介(ひさわ・ゆうすけ)のプロフィール画像

● 日澤雄介(ひさわ・ゆうすけ)
1976年5月23日生まれ、東京都出身。
劇団チョコレートケーキ主宰、演出家。劇団を主宰しながら俳優としても活躍中。演出家として劇団内外の様々な作品を手掛け、第25回読売演劇大賞 優秀演出家賞ほか受賞歴が多数ある。近年の作品に、ホリプロ『Little Voice』、トム・プロジェクト『Sing a song』、On7『その頬、熱線に焼かれ』などがある。

古川 健(ふるかわ・たけし)のプロフィール画像

● 古川 健(ふるかわ・たけし)
1978年8月31日生まれ、東京都出身。
劇団チョコレートケーキ所属・俳優・脚本。第2回公演以降、劇団の全作品に参加し、2009年からは脚本を担当している。俳優としても活躍中。第25回テアトロ新人戯曲賞 最優秀賞など受賞歴がある。近年の作品に、トム・プロジェクト『Sing a song』、On7『その頬、熱線に焼かれ』、文学座アトリエの会『かのような私‐或いは斎藤平の一生-』などがある。

岡本篤(おかもと・あつし)のプロフィール画像

● 岡本篤(おかもと・あつし)
1979年11月30日生まれ、栃木県出身。
劇団チョコレートケーキ所属・俳優。第2回公演以降、全作品に参加している。近年の作品には、TV『NHKスペシャル メルトダウンFile.6 原子炉冷却 12日間の深層〜見過ごされた"危機"〜』、TBS『わにとかげぎす』、風琴工房『penalty killing』、Mrs.fictions『15 Minutes Made Anniversary』、トム・プロジェクト『Sing a song』など。

公演情報

「遺産」のチラシ画像

劇団チョコレートケーキ 第30回公演
遺産


2018年11月7日 (水) 〜2018年11月15日 (木)
すみだパークスタジオ(倉)
HP:公演ホームページ

24名限定!3,800円 → 3,300円 さらに100Pゲット!

詳細はこちら

「第30回公演『遺産』」のチラシ画像

劇団チョコレートケーキ
第30回公演『遺産』


2018年11月7日 (水) 〜2018年11月15日 (木)
すみだパークスタジオ倉
HP:公演ホームページ

前売:3,800円
初日割:3,500円◆11月7日(水)19:00
(全席指定・税込)

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