ガールズ演劇カンパニー・アリスインプロジェクトの12月公演は、魔銃ドナーの設定にあわせ、ヴァンパイアハンターである11人のドナーの中へ紛れ込んだ、吸血鬼バイツ(スパイ)を探す、『アドリブ心理劇 ドナー・イレブン』を上演する。
『魔銃ドナー』の世界観にあわせ、キャストが演じるキャラクターには、深い設定があり、その性格も様々。脚本によって敷き詰められた伏線が、アドリブ心理劇のゲーム展開によって180度違った結末へと導かれる斬新な舞台劇だ。ゲーム上の役割や、共演するキャストによってアドリブを多用する、毎回違った演技を披露することになる。この舞台劇について、鈴木友梨耶、鈴木真梨耶、新谷姫加、優茉の4人が語ってくれた。
自分の性格と演じる役柄、そのギャップを語る発言に、えっ?!?!?!?!
――― アリスインプロジェクト12月公演として上演される『アドリブ心理劇 ドナー・イレブン』は、アドリブ心理劇として物語が展開していきます。その話へ入る前に、それぞれ演じる役柄をいただいたときにどんな印象を抱いたのか、そこから教えてください。
姫加「わたしが演じる柚木鬼灯は、自分の感情に嘘をつくことのない強い女性。アリスインプロジェクトの11月公演『ともだちインプット』で演じた敷島ナツとは性格が真反対だったから、今から演じるのが楽しみです。わたしも、普段から物事をはっきり口にするような強い女性(笑)。だから、自分と重ね合わせながら演じようと思っています」
――― 同じく柚木鬼灯を、友梨耶さんも演じます。
友梨耶「鬼灯は、バイツ(吸血鬼)に妹を殺された過去を持つ女性。『アドリブ心理劇 ドナー・イレブン』の舞台には、妹の真梨耶も出演するので、妹のことを思う役柄という面では、わたし自身鬼灯に感情移入しやすいかなと台本を読みながら感じました」
真梨耶「真梨耶は死んでないけどね(笑)」
友梨耶「それはわかってる!! そうじゃなくて、妹のことを想うという意味で……」
真梨耶「真梨耶は生きてるけどね(笑)」
友梨耶 「今の会話で、妹に対しての感情移入は難しくなりました(笑)」
真梨耶 「そこは、ちゃんと感情移入してください!!」
――― ホント、仲良しですね(笑)。
友梨耶「最初に台本を読んだとき、わたしが赤見清子役、真梨耶が柚木鬼灯役のほうに性格が近かったから、この配役は嬉しい意外性でした。そのぶん、演じがいがあるなとも感じています」
真梨耶「わたしも、そう。生意気な性格の柚木鬼灯のほうが、ふだんの真梨耶っぽいんです。わたしの演じる赤見清子は、気持ちが真っ直ぐでリーダー的な性格じゃないですか。わたし、見た目だけの印象だと“怖そう”“強そう”と言われるけど、だいぶおちゃらけた性格だから、むしろ赤見清子を演じるのは、やり甲斐がありそうです(笑)」
友梨耶「清子のようにみんなを引っ張っていくタイプではなく、その場をおちゃらけた雰囲気にしてく子だからね」
優茉「わたし、そのノリ好きです。わたしが演じるのは咲本小夏という、つねに不安に駆られている女の子。わたしは性格的にポジティブだし、前にアリスインプロジェクトさんの舞台へ出演したときもキャピキャピした明るい性格の役だったから、自分と真逆な役柄が今回巡ってきたのでビックリしました。むしろ、小夏のようなヒステリックで、すぐに不安がっちゃう女の子をどう演じるのか、そこをわたし自身も楽しみにしています」
ゲームの勝敗によって、物語の結末が変わります。
――― 本作はアドリブ心理劇と言われるように、物語の中へ様々な心理ゲームを取り入れることにより、その結果次第で、物語の道筋もいくつか用意された結末へと進みます。同時に、役者陣たちがストーリー展開に合わせ、どうアドリブのセリフを組み込みながら話の流れへ臨機応変に対応してゆくかも求められますね。
友梨耶「それまでお芝居って、話の流れの中でセリフをちょっといじるアドリブはあっても、基本は決められたセリフを演じていくものだと思っていたから、今回の舞台劇の中、自分の役柄を理解したうえでどんな風にアドリブを組み入れていくのか、それが楽しみです」
真梨耶「わたし、以前にやったお芝居のとき、演出家の方から「自由にやっていいよ」と言われたことを信じて、自由にアドリブを入れたお芝居をしました。決められた自分のセリフを言わずにアドリブでやっていたくらい(笑)。だから、わたしもアドリブ劇は楽しみです」
友梨耶「だけど今回は、その役柄になったうえでのアドリブだから、これまでのよう真梨耶のキャラクターを出してというわけにはいかないよ」
真梨耶「あっ、確かに。じゃあ、今からそれが素になるよう、普段から清子のように恰好よく生きようかな(笑)」
優茉「わたし、セリフがあるときは平気ですけど、アドリブになると素の自分のイントネーションになってしまうから、そこだけが心配です」
友梨耶「何処出身なんですか?」
優茉「青森です」
姫加「えっ、わたしもそう!!」
優茉「えーっ、仲良くしましょ!! 演出家の方は、わたしのイントネーションもアドリブ劇の中で活かしたいとは言ってくださいましたけど。それまで普通に標準語だった小夏が、アドリブ劇になったとたん、いきなり青森弁になったら「『えっ、この子はどうしたの? 』となっちゃうでしょ。だから、そうならないようにしゃべらなきゃと思うと、けっこうひやひやです。」
――― たとえば、青森から東京へ上京してまだ一年という設定にしちゃえば、方言でも通用するのでは……?
優茉「あっ、勝手に設定を…」
友梨耶「変えちゃいましょ!!」
真梨耶「わたし、なんでやねんって言いたい!!」
友梨耶「あんたの場合は、ただ言いたいだけでしょ。エセな関西弁ほどむかつくって言われるから、やめときなさい!!」
姫加「この舞台、一つの役柄に対して2〜3人の役者があてがわれているじゃないですか。それって、その日の物語ごとに、いろんな配役をしてゆくからだと聞きました」
友梨耶「ということは、どの組み合わせの人たちと一つのお芝居を演じるのか、毎回の公演日にならないとわからないということですよね。お芝居って、誰と合わせるかによっても流れや雰囲気が変わるように、そこへもアドリブ的な対応力が求められるということ?」
真梨耶「それ、楽しそう!!」
友梨耶「いや、むしろ大変だから!!」
優茉「毎回、お芝居の中に出てくるゲームの答えによっても、その日の物語の展開も変わっていくように、そこってRPG的な要素らしいです。ゲームの勝敗によって物語の結末が変わっていくように、演じるのは大変だけど、どうアドリブ交じりに乗り越えてゆくか楽しみです」
友梨耶「なんか、早くもドキドキしてきた(笑)」
毎日展開が変われば、予測出来ないことも起きそうなのがアドリブ劇。
――― 最後に、それぞれ『アドリブ心理劇 ドナー・イレブン』へ向かう今の気持ちを語っていただけますか?
友梨耶「この舞台劇はアドリブの場面も多ければ、私たち役者自身も、毎回の物語がどう展開していくのかわからない楽しさがあります。毎回異なる舞台劇へなるように、何度も観ていただけたらなと思います」
真梨耶「今までのお芝居では、かならず「あの役柄って真梨耶っぽいよね」と言われてきました。でも今回の舞台では、何時ものわたしとは違う面を見せつけたいなと思います」
優茉「明るくポジティブな性格のわたしが、ネガティブな小夏を演じるわけですが、その小夏の気持ちへ寄り添うためにも、わたし、普段の生活から些細なことにも不安を覚えて暮らそうかなと思っています。それこそ、ちょっとでも躓いたら「死にたい……」と思ったり。そういうマイナス思考な自分になりながら、少しでも小夏の気持ちを理解したうえで臨もうと思います」
姫加「もちろん、セリフを中心にですけど。今回は、アドリブ劇。わたし自身、アドリブ劇は初めての経験になりますが、舞台自体を今はすごく楽しんでいるように、今回も楽しもうと思っています。何より、毎日展開が変われば、予測出来ないことも起きそうだから、毎回新鮮な気持ちで舞台に立つことが出来ます。一つとして同じ内容が生まれないように、観る方々も、その新鮮さを何度も楽しんでもらえたら嬉しいです」
(取材・文:長澤智典 撮影:安藤史紘)