お得な公演チケットサイト Confetti(カンフェティ)

PICKUP

柄本 明


キメ画像1

別役さんの作品は圧倒的に面白いんです。セットも少ないしね(笑)。

子供も大人も楽しめる。東京乾電池が送る別役実版「西遊記」

劇団東京乾電池、恒例ともいえる1 月の公演は、ザ・スズナリで別役実の手による『飛んで孫悟空』が上演される。これはもともと別役が女優の岸田今日子に頼まれて、彼女が所属していた演劇集団・円による「こどもステージ」のために書き下ろされた作品。大人も子供も楽しめる『別役版西遊記』というわけだが、それをまた柄本明がどのように演出していくのかが楽しみのひとつでもあるだろう。そんなわけで、劇団を率いる立場でもある柄本に話を聞ききに下北沢のアトリエにお邪魔したのだが、ゆっくりとした柄本の口調とは裏腹に、出てくる話題は急速にスピンして、いつしか気まぐれな筋斗雲に乗ってあらぬ方へと飛び出していくのだった。


インタビュー写真

――― 実は前回劇団が手がけたのが、同じ別役作品から「さらっていってよピーターパン」だった。同じ別役作品であり、さらに同じくこどもステージに書き下ろされた作品。これは何か意図するものがあったのだろうか。

「特にないですね。(演目は)僕が決めるわけでもないですから。ただ、うちは別役さんの作品がものすごく多いです。だって圧倒的に面白いんですから。日本人の作家では一方のトップでしょうね。その双璧に唐(十郎)さんがいるんじゃないですか。僕自身、大好きな作家さんです。何しろ別役さんは今までずっと書き続けてらっしゃるでしょ。あと別役さんの作品はセットがあまり要らなくてね。だいたい電信柱とかバス停とか。だからあんまりお金がない劇団にはいいんですよ(笑)」
 
――― 別役実と唐十郎。いろいろな見方があるにせよ、柄本にとっては二大巨頭という事なのだろう。でも話を聞いていて気になったのは、そこに例えばつかこうへいは入ってこないのだろうか、ということ。

「「蒲田行進曲」初演は僕でしたから。銀ちゃんが加藤健一さんでね。二年目が(風間)杜夫さん。だから縁はあります。でもそれっきりでしたけどね。以前(2013年まで)新宿にあるゴールデン街劇場、毎月「月末シアター」というのをやっていまして、6年くらいやって全部で70本くらいを毎月末公演しました。その時も別役作品が圧倒的に多かったです。小さな劇場ですから、まあスペースにあっているという事や、セットがシンプルという事もありますが。まあよく続けたものです」

――― 確かに劇団の資料を見ているとずいぶんと別役作品を手がけている。ところが柄本自身は別役作品を観客として観ることがあまりないようなのだ。

「あまり、というかほとんど無い。見ていて面白いこともないし(笑)。(別役さんの演劇を指して)不条理っていう言葉を使うこと自体僕にはなじめないですね。この言葉自体はベケットとかイヨネスコとかの作品が出てきて使われるようになったんですが、そもそも今の世の中そのものが不条理じゃあないですか。その中で別役さんは非常に「条理」な事を書いていると思いますよ」

インタビュー写真

――― 「世の中は不条理」と聞かされてドキッとした。ツッコミ損ねたのだけど、それが「今の」なのか「根源的に」なのかは計りきれない。どちらも充分に可能性があるからだ。ただ少しだけ確信を持って言うと、「今」は色々なところで不条理が噴出している、ということには共感してもらえるのではないか。まあそこまで深くほじくらなくとも、よく観察すると人間社会の中には気が付かない、もしくは気が付かないようにしている不条理が結構あるものだ。不条理演劇はそういったほころびをうまくつまみ出したものだともいえるのではないか。

「ただ一般向けのレッテルとしては成功した例だとは思いますけど。でも、例えば一時期岩松(了)さんたちが作った芝居が「静かな演劇」と呼ばれたのだけど、別にその作品は別に「静か」ではないわけですよ」

――― 同時期に岩松の他、平田オリザ等の作品もそう称されたが、これはあくまでも他のパワーを押し込めたような舞台に対して、日常のエネルギーレベルで演じられる作品につけられたレッテルだった。

「逆に言うなら、言葉を発しないなら静かなのか?という事。ただ(こうしたレッテルがあると)受け入れられやすいわけですね」

――― そこで思い出したのは転形劇場の「沈黙劇」だ。セリフがほとんど無いこのスタイルの演劇だが、形式上の沈黙が続くが、その舞台の裏には様々なざわめきが押し込められている。レッテルに惑わされてはいけない例ではないか。

「そうそう、そういうこと。結局、日本の文化の問題でもあるんだけど、テレビの影響もあって「わからければいけない」という風潮が強いんだね。だから「レッテル=言葉」をつけることでみんな納得するわけ。ともかく現代はテレビが教育機関みたいなものでしょ。あれがひどすぎる。わからなくちゃいけないというね。感じがします。

このまえハロルド・ピンターの「誰もいない国」を石倉三郎さん達と新国立劇場でやりました。ピンターは僕も好きなんだけど、僕自身わからないことについて説明を求められるような感じがあってね。でも僕もわからないんですよ。もっと言えば他人の書いたことなんかわからない。自分のことだってわからない。なんでこんな姿形で生まれてきて、こんなコトしているのかなんてわからないんです。でもそういうことになっちゃっているわけです。だから(昨今の)わからなくてはいけないという風潮は、どうもね」

インタビュー写真

――― さて、筋斗雲はだいぶ遠くまで来てしまった。少し引き戻して、改めて別役作品の凄さを覗いてみる。

「別役さんが凄いと思うのは、どんな風に上演しても、文句言わないこと(笑)。他はあまりわからないけど、書いたらハイって渡してしまう。そのスタンスには感心します。僕も以前『風のセールスマン」(初演:2009年)を書いていただきました。その時は地方が初演だったのだけど、ついてきてくださいましたね」

――― そこから先は話さなかったが、もちろん何も注文はつけなかったのだろう。

「もともと別役さんは鈴木忠志さんなんかと一緒に活動していたのだけど、分かれてからは労組の仕事などをされていたんですね。それで演劇に対しても、役者でもみんな仕事を持って週末集まって芝居しようといったよう風な姿勢がある。僕もそう思うのだけど、(我々の演劇は)アマチュア演劇ですよ。そうでないといけない。別役さんの作品はその間尺に凄く合うんです」

――― なるほど。演劇はあくまでも日常の仕事の中に埋め込まれるべきということか。

「そうですね。だから生活の手段として、僕の場合はテレビや映画のお仕事をいただいてやっているわけ。それらと演劇していることは、似通っているように見えるかも知れませんが、全然別のことですよ。基本、我々の演劇って青春の誤解で始めるわけじゃないですか。なんだかあの場所が格好良く見えて、そこに行きたくなってというね。入り方は色々だけど、アルバイトした金で芝居小屋借りて面白いコトしようという。それが原点だし、今も変わっていません。生活の糧を何にしようとね。(僕は)変わりようがないんですよね。よくね「テレビや映画でずっとお芝居していますよね。本当にお芝居が好きなんですね」という質問が来ますが、これ、無性に腹が立ちますね。貧しいけど演劇を続けているのがエライみたいなね。それは全く違います」

――― 書き手としては非常に説明しにくいが、要するに好きな事を好きにやるために、好きではないこともやっているということだろう。

「そう、好きの中にはいろいろあって、嫌になるときも含めてだから。もっと残酷に言えば我々は契約によって生きているわけで取り決めた時間は義務を果たす。仕事としての役者なら2次元の世界を3次元にしてしゃべるわけです」

インタビュー写真

――― さて、この時点ではまだ稽古も序盤なのか、配役などは決まっていないようだった。インタビューの少し後には劇団員が集まってくるというので、冒頭に掲げる写真はその時大勢で撮ることにして、決まっていないことも承知で配役プランを聞いてみる。

「うちは役者が多いんで、ダブルとかトリプル・キャストになります。基本的に僕は演出だけだけど、もしかしたらちょっと出るかも知れません。今は60人とかいますからね。劇団員が何故ここに来るかって? どうなんだろう。まあ若いときにこんな事やりたいと思ってやってきて居続けるわけでしょう」

――― もうご承知かと思うが話を乗せた筋斗雲はこの間もだいぶあちこち飛び回っている。これが凄く楽しいのだけど、楽しんでいるわけにも行かない。先に出た言葉を拝借するなら、こちらもするべき事をするべき時間にしなくてはいけないのだから。というわけで、今回の劇場について。ホームグラウンドともいえる下北沢のザ・スズナリについて聞いてみた。

「僕の中ではザ・スズナリは日本で最高の劇場です。色々なところと比べてもね。これは僕だけじゃ無いと思います。なんだろう。本多さんの作る劇場はみんないいですよ。本多劇場はもちろん。僕はあそこのこけら落としに出ていますから。大きいのから小さいのまで。その中でもスズナリはいいです。ここ(アトリエ)もいいです。自分なりの感覚なのですが、まあ「カミサマ」が居るんですね。それが居るところと居ないところがありますからね」

話を終えてアトリエを辞し、劇団員が集まったところで戻って改めて撮影を始める。「早く撮っちゃいましょう」という柄本の表情は雑談混じりにインタビューに応えてくれたときのものとは全く違っている。撮影が終わると演出家の席に腰を掛け、誰も居ない舞台に向かって何かをつぶやく柄本。演出家の視線の先にはきっと芝居が進行しているに違いない。我々は挨拶もせずにその場を立ち去ったのだった。

(取材・文&撮影:渡部晋也)

キメ画像2

PROFILE

柄本 明(えもと・あきら)のプロフィール画像

● 柄本 明(えもと・あきら)
1948年11月3日生まれ、東京都出身。
1976年劇団東京乾電池を結成。座長を務める。1998年『カンゾー先生』にて第22回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。以降、映画賞をさまざま受賞。映画のみならず、舞台やテレビドラマにも多数出演し、2011年には紫綬褒章を受章した。2015年には第41回放送文化基金賞 番組部門 『演技賞』受賞。

公演情報

「飛んで孫悟空」のチラシ画像

劇団東京乾電池
飛んで孫悟空


2019年1月11日 (金) 〜2019年1月20日 (日)
下北沢 ザ・スズナリ
HP:公演ホームページ

16名限定!一般3,000円 → 2,400円 さらに100Pゲット!

詳細はこちら

「飛んで孫悟空」のチラシ画像

劇団東京乾電池公演
飛んで孫悟空


2019年1月11日 (金) 〜2019年1月20日 (日)
下北沢 ザ・スズナリ
HP:公演ホームページ

一般:3,000円
小・中学生:1,500円
(全席自由・税込)

※小・中学生チケットの方は、当日学生証(身分証)のご提示をお願いする場合がございます。

詳細はこちら