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青木涼子


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伝統芸能の技を駆使した新たなアート世界

「能」×「現代音楽」。独創性が切り開く新境地へ

伝統芸能である能と現代音楽を融合させ、独自の新ジャンルを切り開く「能×現代音楽アーティスト」、青木涼子が、ハンガリーの作曲家エトヴェシュ・ペーテルと演劇界を代表する演出家、平田オリザと手を組み、日本・ハンガリー国交150周年を記念した新作舞台を上演する。オペラとのコラボレーションを果たすなど、その先進的なアート観から、日本のみならず世界各国で高い評価を集める青木が出演する作品には「伝統に培われた能の技術を使い、全く新しいものを作っている」という自負が込められている。


インタビュー写真

――― 能との出会いを教えてください。

「幼少期はバレエを習っていたのですが、中学生の時にふとテレビで能の舞台を目にして、囃子に合わせて舞う姿に『カッコいい!こんな動きをしてみたい』と思ったんですね。元々日本の伝統に興味があったこともあり、地元の初心者向けのカルチャースクールに、年配の方に混じりながら通い始めました。最初はバレエと平行して習っていたのですが、高校進学直前に、ロシアへの短期留学の機会があって、そこでロシアの女の子のレッスンを受ける姿を見たときに、そのレベルの高さに『これは無理だな』と自分の実力の限界を感じ、バレエをやめ、能にもう少し真剣に取り組むことにしました」

横のつながりで出会った現代音楽

――― 東京藝大では現在に通じる出会いがあったそうですね。

「藝大では能のいろはを学びました。実技だけでなく、先生への挨拶や、お茶の淹れ方、手紙の書き方にいたるまで、学ぶことが多かったです。簡単ではなかったですが、素晴らしい先生との出会いもあり、能の魅力を知ることができました。一方で、大学には沢山の才能溢れる学生が多いのに、縦社会で、他の学科との交流が少なく、横のつながりが欲しいなと思っていた時に、学内の交流を促進させようという機運が高まって、色んなジャンルの作品に参加させてもらうようになりました。

中でも現代音楽と出会いは衝撃的でしたね。この出会いが今につながるきっかけでした。また大学院では『女性と能』をテーマに、英国留学をしたのですが、能について正しい知識を持っている人がごく限定的で、それまで能が当たり前という世界で学んできた私にとってはショックでもありました」

“暗黙の了解”への疑問。新たな表現への挑戦

――― 現在へのキャリアはどの様にして作られましたか?

「能楽協会に所属してプロの能楽師の道も考えましたが、私は能の家の出身でもないですし、伝統の世界では生まれた家で将来が決まってしまいます。また能は男性によって作られてきたものなので、女性の活躍はなかなか簡単ではありません。それに大学時代、周りの学生がどんどん新しい物を生み出していく姿に伝統芸能に身を置く自分としては悔しかった。でも能は芸術(アート)としての表現でもあり、もっと自由であってもいいはず。ならば他ジャンルと融合させることで能の可能性を広げることはできないかと思うようになり、能楽協会に所属せずフリーでの活動を始めました。

海外でも公演が出来るように、能の謡とフルートやパーカッションなど洋楽器との少人数の編成で作曲家に曲を委嘱し始めました。伝統芸能の世界は小さな世界なので、その人のバックグラウンドなど周りの人間が知っているのが前提ですが、海外では私の事を全く知らない状況に1人で飛び込んでいかないといけない。そこでどう舞台を作り、お客さんとコミュニケーションをとるかという所から始めないといけないんですね。でも私としては性に合っていると思います。能楽は伝統を守るために存在する世界であり、その中にいてはなかなか新しいものを発信することは難しいので、クリエーション志向が高かった自分としてはその仕組みの中から出る事は必然だったような気がします」

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情報過多の現代で「余白の美」を感じて欲しい

――― 能と現代音楽で表現したいことはどんな世界でしょうか?

「よく、伝統芸能で新しい事に挑戦と言うと、『分かりやすく表現してくれるはず』という期待を受けますが、むしろその逆で、能と現代音楽でさらに分かりにくくなっています。ご期待に全く沿えてないです(笑)。現代音楽って本当に面白くて、作曲家によっては、共演する奏者が楽器でなく、子供の玩具やホースを演奏させられたりします。私の出演する作品は能の謡を用いた音楽作品なので、皆さんが期待する能とは違うかもしれません。例えば能面も出てきません。でも、自分の思っている能のイメージを再確認しにきても安心はするけど、つまらなくないですか? 恐らく最初は???が沢山、頭につくと思います。でも、能は基本的に舞台上に何も無く、それをお客さんの頭の中で想像してもらって完成する舞台です。「余白の美」というのでしょうか。そういう点では現代音楽との共通点がすごくあると思うんですよね。私の作品でも、想像力をフルに使って、お客さんに感じてもらいたいのです。

今は何でも丁寧に説明がつく時代。テレビでも字幕が出るし、スマートフォンですぐ調べられる環境の中で、耳を澄まして聞いて、想像してみるという体験が乏しくなっている気がします。でもアートが好きな人だと共通点はきっとあるはず。そのチャンネルを少し変えてもらえれば、面白いとはまる人もいると思います。一方で、お客さんに観てもらうために、ある程度のインパクトを作ることは大事ですね。例えば私がワンピースを着て、ヒールを履いて、能面を持っているチラシ。これは“現代と伝統の融合”をコンセプトとして見せています。でも肝心なのは、ただ派手にするのではなくて、ちゃんとした古典のバックグラウンドがあった上で、意図を持ち、しっかりとした作曲家に作ってもらっている。そういう軸があってやらないとただ上辺だけのものになってしまいます。

能面を掛け、扇を手に持ち、静かにすり足で動く、それが能で、それと何か掛け合わせて新しい舞台になるんだろうという固定概念を持って観に来たお客さんの期待を裏切りたいです。自分の思っているイメージを再確認しにきても安心はするけど、つまらない。
え、何!?という常に期待を裏切る作品を生み出したいのです」

  ――― 本作について教えてください。

「エトヴェシュさんが三島由紀夫の自決にインスパイアされて1973年に書かれた『Harakiri』を2011年にローマで公演した事をきっかけに、色々とお仕事をご一緒するようになりました。彼が2014年に来日したときにも上演させて頂く中で、いつか新作をお願いしたいと思っていたところに、今回の機会を頂きました。今回の『くちづけ』(原題『Secret Kiss』)というタイトルは、演出の平田さんが邦題を考えてくれました。

イタリア人のアレッサンドラ・バリッコという作家が書いた『絹』という小説が基になっていて、これは映画化もされています。オリエンタリズム満載の作品で、男女の機微を描いたオペラチックな題材です。ハンガリーのエトヴェシュさんが考える“和の美”みたいな部分が入り、きっと私達、日本人には考え付かない舞台になるのではないでしょうか。楽しみにしていてもらいたいです」

固定概念を持たずに来て欲しい

――― 最後に読者にメッセージをお願いします。

「私がやっている事は全くの新しいジャンルであり、別に『能』と言われなくても良いと思っています。私は能の技術をまず学びましたが、現在では特に能の声楽部分である謡を用いて新しいジャンルを作っていければと思っています。残念ながら、今の日本では、エンターテイメントとアートの境界が曖昧になっていると思います。もっと多くの人達に、思考させる芸術に触れ合う機会を増やしてもらえたら嬉しいです。どうか固定概念を持たずに真っ白な気持ちでお越しください」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

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PROFILE

青木涼子(あおき・りょうこ)のプロフィール画像

● 青木涼子(あおき・りょうこ)
東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽専攻卒業(観世流シテ方専攻)。同大学院音楽研究科修士課程修了。ロンドン大学博士課程修了(Ph.D取得)。世界の主要な作曲家と共同で、能と現代音楽の新たな試みを行っている。2010年より作曲家に委嘱するシリーズを主催しており、2014年にはデビューアルバム「能×現代音楽」(ALCD-98)をリリースした。日本だけでなく世界の音楽祭に招待されパフォーマンスを行っている。2013年マドリッド、テアトロ・レアル王立劇場にG・モルティエのキャスティングのもと、W・リーム作曲オペラ「メキシコの征服」(P・オーディ演出)のマリンチェ役で好演。平成27年度文化庁の文化交流使に指名され、ヨーロッパで活動を行った。あいちトリエンナーレ2016で、A・デュモン作曲オペラ「秘密の閨」に主演した。2017年春の三越伊勢丹JAPAN SENSESのメインビジュアルに起用された。2017年12月にはパリ・フェスティバル・ドートンヌ、ケルン・フィルハーモニーにて細川俊夫作曲、平田オリザ台本の室内オペラ「二人静」をアンサンブル・アンテルコンタンポランと共に世界初演、2018年1月フェデリコ・ガルデッラ作曲のオーケストラ曲をソリストとしてフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団と共に世界初演、2018年2月アムステルダムでロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と共演。2019年はペーテル・エトヴェシュ「Secret Kiss(くちづけ)」を3月9日東京文化会館日本初演の他、スウェーデン、ポルトガル、スペイン、ドイツ、ハンガリーで、細川俊夫「二人静〜海から来た少女〜」をカナダ、韓国、ニューヨーク等で演奏、海外での公演も多く予定されている。

公演情報

舞台芸術創造事業 日本・ハンガリー国交樹立150 周年記念 『くちづけ〜現代音楽と能〜』

日:2019年3月9日(土)16:00開演(15:30開場)
場:東京文化会館 小ホール
HP:公演ホームページ

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