「ギャップ萌え」という言葉がある。百科事典なら「その人の本来あるべき姿ではなく、その対極にあるような姿を見せつけられたときに、より一層の関心を持ってしまう状態」といったところだろうが、その「本来」が本気であればあるほど。そして「対極」が本来からかけ離れれば離れるほど、その「萌え」の熱量は高くなる。
――― 数々の舞台で活躍するミュージカル俳優やダンサーが集まる『KAKAI 歌会』。俳優の原田優一が構成・演出を担当するこの舞台は、2013年に第一回を開催したところ、思った以上の反響があったという。もともとは原田が“自分で演出した舞台を創ってみたい”と漏らしたところから始まったという。
原田「この4人がお笑い色の強いメンバーで、そっちの要素が強くなっちゃって (笑)。それが思いのほかお客さんにウケまして。とくに女性ふたりですね。宝塚出身なのですが、それ以前に関西人だったという(笑)。今ではお客さんも笑いの部分に期待しているみたいですね。ともかくお客さんも、自分たちも楽しめるコンサートにしたいと思います」
――― そんな舞台に今回初参加するのは、宝塚のトップ娘役からミュージカルで大活躍の愛加あゆ。幅広い表現力には定評がある彼女だが、笑いの要素が強い舞台はどうなるのか。
愛加「いままで(原田)優一さんの演出作品には何本か出演させていただいたのですが、毎回すごく面白かったんです。だから今回はいったいどうなるか(笑)、もうドキドキです。少しだけ構成は聞いていますが、普通ではあり得ない事ばかりで(笑)。もちろん若干の不安はありますが、楽しみの方が強いです」
原田「皆さん最初は『できるかなあ』なんておっしゃいますが、実際にやらしてみるともうノリノリですよ。泉見(洋平)さんや今井さんもそうでした。それが今では率先してやってますから。それもあんまり指示するとかえって真面目になるので、基本的な動きは指示しますが、パフォーマンス内部については皆さんにお任せ。“爆発してくださーい”って感じです。野放しの方が面白いですね」
愛加「撮影の時は私の後が今井さんでした。メイクルームでご挨拶したんですが、つけまつげを着けていらして(笑)。 ノリノリなんです(笑)」
原田「男性でもみんなつけまつげをしてます。最近は今井さんに女装させないと機嫌が悪くなるし(笑)、宣伝写真には毎回工夫を凝らすのですが、 あんまりやると収拾がつかなくなりそうで(笑)」
――― 今回の「歌会」の1つのキーワードが「戦隊ヒーロー」だそうだが。
原田「そうです。戦隊ヒーローへのオマージュですから、オープニングはそ れをイメージした衣装で行きます。さっきも話したように出演者が9人だったことがきっかけだけど、出演者はそれぞれがミュージカル・ダンス・宝塚など、芸能の各界で一線を極めた人たちが集まっています。その集結した感じや皆さんが持っている能力へのリスペクトも込められています。メンバーそれぞれの闘いの舞台を観ることができるでしょうね」
――― もちろん全編この路線で行くわけでは無いのだが、それにしてもステージには色々な楽曲が登場しそうだ。彼らを支える音楽チームの役割は相当に重要になってくる。
原田「テーマは僕が何となく思い描くわけですが、音楽面については音楽監督のYUKAさんと相談して作り上げています。僕自身、アイデアはあても、音楽的な部分は全くわからない。だから結構無茶振りをしているみたいです。
でもYUKAさんにはそれに応えてもらっていますね。例えばメドレーや2つの曲を混ぜ合わすマッシュという手法につても、凄く厄介な注文をYUKAさんはサラッとやってくれますから。それに本気のミュージカルナンバーだってあります。やっぱりお客さんとしてはその当たりも求めていらっしゃるから」
――― これだけの名優達がいるのだから、彼らの唄声で舞台の追体験をしたいと思うのは当然だろう。そんな思いに応えたとおぼしき演目を企画書に探してみると……桃太郎とオズの魔法使いというキーワードが目に入った。
原田「これは結構苦戦していて、最初に桃太郎とオズの魔法使いを混ぜてみたんですが、そうしたらなんの話かわからなくなってしまって(笑)。そこで別の話を考えました。原田薫さんがマリー・アントワネットで、その従女である愛加さんがアントワネットに徹底的にいびられるという……(笑)」
愛加「私、マリー・アントワネットをやったことがあるので、それに引っかけて(笑)」
原田「でもそれも難航して、結局、桃太郎に戻りました」
――― はてさてどんな物語が展開するのだろう。確実なのは第一線のミュージカル俳優達の本気の唄声と本気の笑いが詰まった舞台になることは間違いないだろう。
原田「音楽遊びというか、アレンジやアイデアでこれだけ遊べるんだよ、ということですよね。楽しみにしていてください」
――― 間違いなく極上の「ギャップ萌え」が待っていることだろう。
(取材・文&撮影:渡部晋也)