愛しい奴らが、もう一度帰ってくる! 16年に第1弾、17年に第2弾を上演し人気を博した『泪橋ディンドンバンド』が、待望の第3弾を2月13日から博品館劇場で上演する。過去2作に引き続き、街のチンドン屋、その名もディンドンバンドのメンバー・番野哲也を、和田雅成が演じる。
――― 第3弾、おめでとうございます。これまでの作品を観ていない方のために、どんな作品か教えてください。
「ディンドンバンドっていうのは、なんでも屋のチンドン屋さんのことで、そこにいる奴らは皆、いかんせん生き方が上手くないんですよ。そんな馬鹿な奴らが集まって、好きなことをやっているコメディです。気軽に笑って、何も考えずに観られる約1時間半の舞台。観に来る人が無理をしないで来られる舞台っていうのが僕も好きなんで、そういうところを目指してやってます。」
――― 和田さんが演じる哲也は、どんなキャラクターですか?
「哲也はもう、ほぼ僕なんですよ。このシリーズは基本的に、脚本・演出されている堤(泰之)さんが当て書きしてくださっているので。初演の時は、僕は参加できなかったんですけど、皆で食事に行って、人となりがどういう人なのかっていうのをセッションして、そこから脚本書いてくださいましたし。僕も稽古中にちょっといじってもらったり、舞台の上でもバリッバリ関西弁でツッコンでツッコンで、って感じなので、5:5どころじゃないですね、もう8:2で自分です。甘えてるのかもしれないですけど、それが許される舞台なのかなって。自分たちの事務所とエヌオーフォーさんで一緒に作っている舞台なので、自由にやってます」
――― 今回は初めて、哲也が中心となった物語が描かれます。
「一応、今回は僕が主演ってことになってますが、皆で馬鹿なことをする話なので、実際は誰が主演とかじゃない感じになると思うし、特別なプレッシャーはないですね」
――― 第3弾の具体的なストーリーはまだ明かされていませんが、どんな話になるのでしょう?
「詳しくは今の時点で全然僕らにも分からないんですけど、サブタイトルが『泥まみれの月』で、『俺たちは止まらない』がテーマ。ただ、過去2作で中心人物だった銀ちゃん役の八神蓮さんが、今回は全公演の半分くらい、後半だけしか出られないのが、どうなるんだろう?って気にはなってます。
とはいえ、これまで作り上げてきたものがあるので、あんまり心配はしてません。皆で本気で、ただただバカなことをやれるのがすごく楽しみなので、稽古も待ち遠しいです。この舞台の稽古はいつも短めなんですけど、ダラダラするよりはすごくいいなと思ってて。長いと飽きちゃうこともあるので、しっかりキュッとやったほうが、僕は向かっていけるというか。だから、キュッとやって、ガッと行きたいと思ってます」
――― 笑えるシーンもたくさんある作品ですが、お稽古中に生まれたアイデアやアドリブを取り入れるようなこともあるんですか?
「自分のやってみたい事を稽古で試してみて、堤さんが何も言わなかったらOKっていうのはありますね。あとこの舞台、結構衣装がたくさんあったりして、やってみないと分かんないことがたくさんあるんですよ。僕、前に安里勇哉と2人で女装するシーンがあったんですけど、それは地獄でしたね、もう安里がブスすぎて(笑)。
それって、実際に女装してみないと分かんないじゃないですか。もう稽古場で笑いが止まんなくなっちゃって、『ごめんなさい、今このシーンやってもダメです』っていうくらい、本当に笑った(笑)。そういう時に初見で出るツッコミっていうのは、存分にやります。『いや、ほんまブスやで』っていうのをしっかり伝えます。自分もきっとひどかったんでしょうけど、でもあれよりは絶対まし!(笑)。
皆は露出系の衣装も多いんですけど、僕はあんまり露出することが好きではないのでそれはNGにしてて、もっぱら女装系ですね、チャイナドレスとかセーラー○ーンとか。台本に書いてあるのを最初に読んだ時は、これマジで?って思いましたけど、2からは抵抗無くなってました(笑)。まあ、さっきも言ったように何も考えずに観られる舞台を目指してるので、いろんな衣装を着たりするのも見てて面白いと思うし、そういうところでも楽しんでもらえるのかなって思いますね」
――― 今回の衣装も楽しみです(笑)。
「頑張ります(笑)。あと、僕がこの舞台をすごく好きなのは、本当に、初見の人が楽しめるって事なんです。これまでの作品を観られなかった人が3を観に来て、分かんなかったら面白くないよね?って思うんですよ。もちろんシリーズで楽しんでいただく舞台の良さもありますけど、この舞台に関しては、そういうの全く考えずにやりたいっていう事を制作サイドにお伝えしてるので。どのタイミングでこの舞台を好きになってくれた人にも楽しんでもらえる舞台です」
――― 過去2作を見ていなくても、臆せず劇場へ足を運んでいただきたいですね。
「最近特に思うんですけど、生きていくのって難しいじゃないですか。いろんなしがらみがあったり、自分のやりたいことなのかどうか分かんないとか、観に来てくれた人にも色々な人生があると思うんです。そんな中で、この舞台を観て、“うわー、あいつら下らねえな、でも頑張って生きてんだな”って思ってもらえたらいいな。この舞台を、皆さんそれぞれの人生の、ほんの箸休めにでもしてもらえたら嬉しいです」
(取材・文:土屋美緒 撮影:岩田えり)