仲谷鳰原作の大人気百合漫画『やがて君になる』が5月に舞台化される。誰に対しても恋愛感情を抱けない少女・侑が、自分自身のことが嫌いなために他人からの好意を受け入れられない少女・燈子と出会い始まる物語を、美しく繊細に描いていく。小糸侑役・河内美里と七海燈子役・小泉萌香に話を聞いた。
是非触れて欲しい“美しくて綺麗な作品”
――― 原作はご存知でしたか?
河内「私は舞台化もまだ知らない状態でアニメの放送中に視聴者として拝見していて、二人の行く末が素直に気になりました。儚くて脆くて綺麗で、でも芯は強くて。二人の恋模様だけではなく他のキャラクター達の人間としての葛藤も描かれていて、思わず綺麗だなぁとつぶやいてしまうほど美しい作品だと思います」
小泉「作品自体は知っていましたが、お話しをいただいてから原作もアニメも初めて拝見しました。“百合作品”と聞くと様々な印象を持つ方がいらっしゃると思いますが、この作品は“美しくて綺麗な作品”が第一印象。まだその世界に触れていない方にも是非ご覧頂きたい作品です。絵も綺麗で、すぐに大好きになりましたね」
――― 舞台化発表では大きな反響がありました。周りの反応はいかがでしたか?
河内「原作を知っている方が周りに多かったのですごく反響があり、とても嬉しかったです。期待値がどんどん上がってきていてプレッシャーもありますけど(笑)」
小泉「しばらく疎遠だった友達から久しぶりに連絡が来て、『この作品に出るの? 絶対に観に行く!』と宣言してくれました(笑)。良い作品になるように頑張りたいです」
原作やアニメを何度も見返して考えています
――― 侑と燈子は1学年違い、演じる河内さんと小泉さんも1学年違い、等身大の関係も役作りに生かせそうですね。
河内「そうなんです! 偶然だそうですが驚きました。侑は先輩に対して一見ドライなように見えて、言葉の端々から優しさがすごくにじみ出ているキャラクター。“人を好きになる気持ちがわからない”という侑ほどではないですが、自分と重ね合わせると少し似ているところや共感できるところがあって。侑として七海先輩への接し方などどうやって気持ちの変化をグラデーションにしていくのか、どう表現したらお客さんに伝わり共感してもらえるのか、原作やアニメを何度も見返して考えています。侑はとても気を使う子なんです。友達同士でも周りの空気を読んだり……純粋に侑というキャラクターが好きなので、楽しみですがドキドキしています」
小泉「私も共通点が多いと感じていて、まず身長が163pで一緒なんです。私にもしっかりしておしとやかな完璧な姉がいて……あ、生きてますよ(笑)! 私は騒がしいタイプですが姉はおとなしくて綺麗で、私も姉のようになりたいと思いましたが途中で諦めました(笑)。生徒会長になったり誰かの中心に立つ性格ではないのですが、燈子も亡くなったお姉さんみたいになりたいという想いで生徒会長になっていくので、その強い心を見習って自分の中に入れて、演じていきたいです」
――― 同性の先輩や後輩に憧れる経験はありましたか?
小泉「私は中高一貫の女子校に通っていましたが、6年間一緒にいると友達以上で家族のような関係になるんです。その中でやはりカップルはいたのでふたりの気持ちはわかります。ベリーショートのボーイッシュな子がモテる印象があったかも(笑)」
河内「そうそう(笑)。純粋に憧れることはありますよね。私は同級生がバスケ部で頑張っている姿がカッコイイと思って見ていましたし、そういう子の背中とかすごく好きだったり、宝塚歌劇団も好きです。百合作品に対してもとても興味がありました。気持ちはわかりますね」
――― ちなみにどんな高校生活を送っていましたか?
河内「友達はいっぱいいましたがその割に私はドライで、学校帰りにどこか寄っていこうと誘われても真っすぐ帰るタイプでした(笑)。お昼ご飯の時間は校外に出ても良い学校だったので、そんな中でもクラスのみんなでご飯を食べに行く機会はよくありましたね。近くに美味しいカレー屋さんがあって、学校の生徒は常連で、先輩も後輩も学年の垣根を超えて仲良く食べていました」
小泉「楽しそう! 私は6年間コーラス部に所属していたんですが、みんな活発な性格の子ばかりでワイワイ活動していました。女子校でしたが男勝りの子も多くて、世間が思う夢のあるイメージとは違うかもしれません。部活が青春でした!」
佐伯沙弥香との三角関係や生徒会劇も見どころ
――― 楽しかった高校生活を作品にも生かせそうですね。では本作の見どころを教えてください。
河内「やはりメインは2人の関係性や距離感、人としての成長や自分の壁を超えるための葛藤が見どころになると思います。さらに2人だけでは変われない部分もたくさんあるので佐伯先輩や先生だったり、周りの人物にも影響されて変わっていくところを綺麗に描いていけたら」
――― 侑は心の中のセリフも多いですよね。
河内「そうなんです! 言えない気持ちが多いんです。それをどう表現するのか、ここも見どころになりそうですね」
小泉「燈子は素直な子ですが本音は侑にしか言えなくて、みんなには本音を見せずに生きています。その差を繊細に表現できたらいいな。2人の関係性もそうですが、実は佐伯沙弥香との三角関係もあるので、そういう関係性も見ていただけたらと思います。私個人としては普段とは違う、しっかりしている姿をお届けします(笑)。生徒会長ですよ! 凛としたところをお見せしたいです!」
河内「そして本作では生徒会劇も描きます。作品の中で劇中劇をやることは初めての経験ですし、アニメでも描かれていない部分なので楽しみです。生徒会劇にまつわるお話で、燈子とセリフ合わせをするシーンがあるんです。その練習の中で本当の気持ちを引き出すやりとりがあるのですが、舞台で描かれるのか楽しみですね」
小泉「劇中劇は経験がありますが、その時間は自分の中に人物が3人いるんです。それはけっこう難しいことで、あと燈子は演技が初めてという設定なのでぎこちなさとか、どう表現するのか課題ですし、注目して欲しい部分でもあります」
この作品がたくさんの方に愛されていることを実感しています
河内「稽古ではみんなのオシャレな稽古着を見るのが楽しみです。女の子の持ち物は可愛いので楽屋も華やかになりそう!」
小泉「みんなの制服姿が気になります! とってもかわいい制服なんです! セーラータイプの制服は着たことがなかったので楽しみです」
河内「上のセーラー服を脱ぐとジャンパースカートでリボンの色が学年で違ったり、作品ならではの制服を着られるのは楽しみですね」
――― 最後にメッセージをお願いします。
小泉「『絶対観に行きます!』『原作を読みます!』など、すでにすごい反響をいただいていまして、本当にこの作品がたくさんの方に愛されていることを実感しています。舞台も好きになってもらえるように頑張りますので沢山の方に観に来ていただきたいです」
河内「原作ファンの方、まだ舞台に触れたことがない方もたくさんいらっしゃると思います。そして舞台をきっかけに原作に触れてファンになってもらえたり、相乗効果で盛り上がっていけたら嬉しいです。自分も作品のファンなので、あのシーンはどうなるの?と、とても気になりますしワクワクしています。皆さんの期待を裏切らないように素敵な作品にできたら」
(取材・文:谷中理音 撮影:佐藤雄哉)