主宰の青山太久によって2015年に「○組(わぐみ)」として旗揚げし、今春からは新たに10人の劇団員を迎えて再スタートを切った「劇団わ」。その人気作の一つである『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』は、2017年に初演され、2018年には続編『バック・トゥ・ザ・君の笑顔〜お江戸でござる〜』を加えた2本立てを上演して好評を博した。そして今年7月、完結編『バック・トゥ・ザ・君の笑顔〜ロボットって笑うっけ?〜』をさらに加え、1ヶ月に3本続けて上演するという異例のスタイルでシリーズを締めくくる。とある田舎の町を舞台に、時代を越えて繰り広げられるハートフルな物語はどこへ向かうのか!? まさに“君バク祭り”と言えるこの夏を盛り上げるべく、各作品の主人公&ヒロイン計6人にインタビュー!
いろんな人に愛されてきたシリーズに関われる幸せ
――― 今日はお集まりいただきありがとうございます。この中では柳瀬さんが唯一、初演からシリーズ全作品に参加していて、1作目『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』ではヒロインの鈴森咲良を演じていますね。
柳瀬「そうなんです。タイトルの通り、シリーズ全体が笑顔に重きを置いているのですが、『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』はすごく温かくて、でもタイムリープというSF的な要素もありつつ、キャラクターもすごく魅力的で、男性も女性もドキドキワクワクできるような作品だと思います。この作品だからこそ素敵な人が集まってくるんだなという、愛を感じる座組でもあるので、今年もすごく楽しみにしています」
――― その『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』は今回が再々演ということになりますが、新たに主人公の町田 徹を演じるのが木さん。
木「はい。校生の役ということで、胸が引きちぎれそうです(笑)。初演、再演と好評だった作品の真ん中に立たせていただくのはとても光栄なんですけど、プレッシャーが半端ないです。再々演が一番良かったと思ってもらえるように頑張ります。タイムリープものも好きだし、個人的な趣味が神社巡りなので、神様が登場するこのお話はめっちゃ楽しみですね」
――― 江戸時代が舞台となる2作目の『バック・トゥ・ザ・君の笑顔〜お江戸でござる〜』は、再演で主人公もヒロインも新キャストになります。その主人公・田中一郎を演じるのが室さん。
室「主宰の青山タッくんから“室さんにぴったりの役です”と言われたんですけど、僕は普段は全然主役をやる人間ではなくて、脇を固められたらいいなっていう精神の持ち主なので、最初はどうしようかなと思いました。でも台本を読ませてもらって、主人公の優しさをすごく感じて、ぜひやらせてほしいなと」
――― シリーズ3部作の2作目は難しいって言われますよね。
室「ホンマにね!(笑) でも、全シリーズの良いところがそれぞれに出て、トータルで良い1ヶ月だったなって言ってもらえるように、1作目からのバトンをしっかり受け取って、完結編に渡したいと思います」
――― ヒロインの吉田 菊を演じる安達さんはいかがですか?
安達「台本を読んだとき、普通に文字だけで泣いちゃったんです。登場人物同士が心を揺さぶられながら進んでいく物語で、読んでいる自分も感情が震えました。メインキャラクター以外にスポットが当たる部分もたくさんあるので、どんなお客さんが観ても、このキャラクターはカッコいいなとか、可愛いなっていうポイントがあると思います。本当にいろんな方に愛されてきた作品なんだなって思えたので、そんな素晴らしい作品に関われてとても幸せです」
――― そして柳瀬さんも出演されると。
柳瀬「1作目が咲良で、2作目が桜子。咲良の生まれ変わり前みたいな感じの役ですね。シリーズ全体の舞台となる町があるんですけど、そこで起きている運命のようなものが巡っていくのが、この作品のテーマなのかなと思います」
お互い信頼関係のあるキャスト陣で、3部作のバトンを繋ぐ
――― 完結編となる新作『バック・トゥ・ザ・君の笑顔〜ロボットって笑うっけ?〜』は、未来へ飛ぶストーリーのようですが。
五十嵐「もちろん単体でも楽しめる作品ですけど、前2作とリンクしている部分も多いので、シリーズ全部通して観ていただくと、より心が震えるんじゃないかと思います。僕はヒューマノイドと呼ばれるロボットを発明した天才を演じますが、実はこの前までやっていた舞台も同じような役で、めちゃめちゃ発明してるなって(笑)。今回はロボットの話ではありますけど、前2作と同じく“愛”の話だなと感じました」
――― ヒロインの小田さんは二役を演じるそうですね。
小田「はい。五十嵐さんが演じる主人公・風早陽一の奥さんである幸希と、自分に何かあったときに主人公を守れるように自分自身で作り出したヒューマノイド・アスラの二役です」
――― その設定だけでも切ない……。
小田「二役をやるのは初めてで、しかも人間とロボットなので不安もありますけど楽しみです。人が笑顔になるのって、いろんな人とのつながりや助けがあったり、自分自身が一歩成長するようないろんな瞬間で笑顔になると思うんですけど、江戸時代でも現代でも未来でも、人の温かさはずっと共通して大事なんだなというのを、作品を通して感じています」
――― 完結編での柳瀬さんの役どころは?
柳瀬「ヒューマノイドのサクラLPという役です。1作目が友情から愛への変化を描いたものだとしたら、2作目はほんとに愛の真っ只中みたいな作品で、3作目は終わりとか別れみたいなものに付随する愛みたいな感じがある。3部作を通して観ると“人生”を感じられる作品じゃないかなと思っています」
五十嵐「いいこと言うなあ」
室「今の、俺が言ったことにしておいてください(笑)」
木「じゃあ僕は、あさ美(小田)の言葉を僕の言葉にしておいてください。笑顔のくだりが好きだったので(笑)」
(全員爆笑)
――― それぞれ別々の作品ですが、こうして皆さんで話していると、まるで1つの同じ作品に参加しているようなムードを感じます。
五十嵐「さっきも話に出ましたが、バトンを繋ぐというか……。自分だけってなると、受け取ることも渡すこともできないですからね」
小田「信頼関係がありますね。それこそ男性陣は以前に……」
室「同じ作品で集結したことがあるからね。今度はこういう形でお互いにバトンを繋いでいくというのは、すごくやりやすいのかなと思います」
五十嵐「でも、やっぱりプレッシャーは半端ないですね。シリーズ完結編で」
木「いやいや、最初もけっこうヤバいです(笑)。今回初めて観る方も多いと思うので、1作目があまり良くなかったら2作目も3作目も観ないと思うんです。なので私たちは必ず……」
柳瀬「バトンだけは渡さないと!」
シリーズ全作品を通して何かを感じてもらえたら
――― 1ヶ月間で3作品を連続上演するというのも珍しいですよね。
室「すごい企画だなと思いましたよ」
小田「私たちは3作目なので、稽古が終わってから本番までけっこう空くんです」
五十嵐「稽古して、一度クールダウンして……」
木「まあまあ長いクールダウン(笑)」
室「カレーみたいに、寝かせたら美味しくなるみたいな」
木「2週間も空いたら腐っちゃう(笑)」
五十嵐「腐らないように頑張ります(笑)」
――― 人気シリーズということで楽しみにしているお客さんも多いと思いますので、最後に一言ずつメッセージをいただけますか? 完結編のお二人から順にお願いします。
小田「劇団わの作品は何回か出させていただいていますが、主宰の青山さんからは、言葉というものは人を傷つける武器にもなるし、喜ばしいことを言ったりもする、すごく重たいものだよと教わりました。今回は完結編ということで責任重大ですけど、青山さんや作・演出の芳ちゃん(村上 芳)を含めたみんなの思いを私たち役者がしっかり伝えて、3部作の最終章として良い笑顔を届けられたらなと思います」
五十嵐「タイトルにもある通り、笑顔の力ってすごいなと思うんです。僕がこの仕事を始めたきっかけも、人を笑わせたいなっていう単純な思いからでした。たぶん皆さんも、自分一人だけでは頑張れなくても、親とか友達とか恋人とか、大切な人の笑顔を見るために頑張りたいって、たぶんそういうのが原動力になると思うんです。この作品を観てくださった人には本当に笑顔になってほしいし、キャストもスタッフさんも含めて、関わってくれた人すべてが笑顔で終われるように、気を引き締めて頑張ります」
安達「自分が台本を読んだときに受けた心の震えを、お客さんにもぜひ伝えたいと思います。そして、役者が実際に演じることで何倍にもパワーが増すと思うので、そこも伝えたいですね。3部作の大事な真ん中なので、しっかりと真摯に取り組みたいですし、私自身いろんなキャラクターと絡むシーンが多いので、皆さんとコミュニケーションをとって、家族のような感じで公演できたらいいなと思います」
室「7月は中目黒キンケロシアターに来ないと損!というくらいの気持ちを持って、みんなで作品に向かっています。僕個人としては、劇団わさんに呼んでいただいた分、しっかり盛り立てていきたいです。あと、“この人が出ているからこの作品だけ観る”というのは絶対に嫌なので、自分の推しが出ていなくても、すべての作品を観てほしいです。それで3作を通して感じてもらえることがあったら嬉しいですし、出演して良かったという思いにも繋がるので、ぜひ7月の中目黒キンケロシアターにすべてを捧げていただきたいです」
木「僕ら自身も笑顔で作りたいし、お客さんも笑顔で、今年の夏は笑った夏だったなというのを皆さんに届けたい。それが一番ですね。そして毎年この感じで、夏と言えば劇団わの『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』シリーズが必ずあります、みたいになっていったらいいなって、勝手に思ってます(笑)」
柳瀬「私はもともと夏が苦手だったんですけど、このシリーズを始めてから夏がすごく好きになりました。今は残念ながら世の中がすごく疲れていて、心から笑える瞬間もあまりなかったりするような時代ですけど、この作品は涙もあればほっこり笑えるところもあって、見終わったときに自然に笑顔になれると思います。実は、1作目の咲良は笑顔を見せないヒロインで、そんな彼女が人との繋がりの中で笑顔を取り戻していくお話なんです。2作目は過去の思い出とかを含めて大切なものを感じてもらえるお話だし、3作目は、これから歩んでいく未来は自分が変わればきっと明るいものになる……そんなお話になったらいいなって思いますね」
(取材・文&撮影:西本 勲)