SOLID STARプロデュースの舞台『ハッピーマーケット!!』がリバイバル上演される。“何気ない日常に転がっている小さなドラマが実は面白おかしくない?”をテーマに退屈な日常を送っていた店員・伊藤と大学生・加藤が、スーパーマーケットの妖精と出会うことで人生が変わっていく様をミュージカルコメディとして紡いでいく。出演者を代表して、鈴木勝大、田村心、野村宏伸、脚本・演出の白柳力に話を聞いた。
子供の頃に母親に連れられて行きました
――― 皆さんは普段スーパーマーケットへ行かれますか?
鈴木「行きますね! 惣菜パンとか買います。小学生くらいの時に初めて母親にプレゼントを買ったのもスーパーマーケットでした。確か母の日に、友達とハンカチを買いに行きました」
田村「数年前、子供が独りで来ていて、たぶん余ったお釣りでお菓子を買っていいというおつかいだったのではと思うのですが、レジで僕の前に会計をしていて何円か足りず、店員さんと子供で気まずい空気が流れていて……そっと出してあげました」
野村「スーパーマーケットといったら昔の食品だけを売っているお店を想像します。子供の頃に母親に連れられて行きましたね、お菓子とか買ってもらうことを楽しみに。生活の中で重要な場所だと思うので今でも行きますよ。現在は僕が親になり子供と行きますが、やっぱりお菓子をおねだりされて、甘いので買ってしまいます(笑)」
白柳「優しい! 3人ともいいエピソードですね。僕は働いた経験があるので、その人間模様が作品に活かされています。スーパーバイザーは本当に恐れられているんですよ。あと、本人は気づいてないと思いますが、常連のお客様は意外と店員の間では覚えられてます」
――― その経験が存分に活かされた本作ですが、リバイバル公演と初演とは、どんな違いがあるのでしょうか?
白柳「キャラクター的に少し変わっていること、演出的にも舞台美術もアレンジしたいという気持ちもあって、キャストもほとんど変わりますし、挑戦するという意味で“リバイバル公演”としています。再演と言ってしまうと同じことを繰り返す印象になってしまうかなと思いまして」
――― それぞれの役どころを教えてください。
白柳「この3人は従業員側(鈴木)、お客様(田村)、お店の経営者側(野村)、それぞれの主人公になりますね」
鈴木「『どうせ僕なんか』が口癖の店員・伊藤を演じます。みなさんもよく使いますよね。でもその人なりの正義があって言葉通りに思っていないと思うので、裏にあるモノを拾い上げながら演じていきたいです。先日ビジュアル撮影がありそこでキャラクターの外観を作れたので、そこからもこの伊藤君をどう表現するか色々出てきました。実はこのタイプのキャラクターは初めてで、これからの稽古で試せたらと楽しみです。若い人から見たらどこか当てはまる行動があるんじゃないかな」
田村「大学生の加藤は『それって意味があるの?』が口癖ですが、僕はここまでやさぐれてはいないです(笑)。でもちょっとわかるといいますか、前作の映像を見せていただきましたが、大学生が盛り上がって飲みに行く様を妖精は面白がるんですけど、加藤はそうは思っていなくて。僕は普段お酒が飲めないので飲み会にはあまり行かないのですが、加藤に共感できるところもあったので、そういう部分を役として消化して普段思っていることを上手く表現できたらいいですね」
野村「僕はどうなるのかまだ想像がつかないですが、副店長の西の、色々な人に振り回されながらも一生懸命に対応していく人の良さを出していけたらいいかな。今回も瑞季ちゃんが娘役で、僕の娘役は3回目になりますが、また違った家族になりそうですね。僕はSOLID STARでは6作品目にして初のミュージカル! 楽しみながらやりたいですね」
――― このカンパニーの経験者となる野村は「特に厳しい稽古場ではなく、若い方には恐れないで伸び伸びやってくれればそれだけでいい」とエールを送った。
地毛で舞台に立つことが初めての経験で新鮮
――― 退屈な自分の殻を破るきっかけに2人が三角関係となる恋のお話があります。普段の生活で変化を求めたり、楽しくするためにやっていること、心掛けていることはありますか?
鈴木「うーーん、仕事ですかね。現場でお芝居をしていることが一番楽しいです。現場でなるべく楽しめるように準備を頑張ろうと心掛けていますね。舞台では稽古が足りていないと本番を楽しめなかったり怖かったりしますし、映像では役との合致点が見つからない状態でカメラの前に行ったらやはり怖いです。お芝居に対してストレスを感じつつも、でも一番ストレス発散にもなっていて。矛盾していますが仕事をしている時間が楽しいのでそのために頑張ることですね」
田村「プライベートでテンションを上げようと思うことはあまりないです。いまお話を聞いていて確かにそうだなって。僕も現場で一番楽しく過ごせるように心掛けているかもしれません。裏方をやらせていただいていた時は舞台に立つ側の人間になりたいという想いでテンションを上げていたと思います」
鈴木「と言いつつも趣味で卓球をしますね。色々スポーツにハマってきましたが、全部1、2年したら飽きてしまうところこれだけは続いています。卓球は気分を上げるスポーツかも」
野村「僕はお酒ですかね(笑)。最近は稽古終わりとかで飲む事が減りましたが。ある程度舞台を作っていく間にコミュニケーションを取るにはお酒もけっこう大事だと思っているので、飲めなくてもそういう席で色々話したりするとチームワークもできるし、たまにはいいと思っています」
全員「お供いたします!(笑)」
――― 先ほど鈴木さんからビジュアル撮影のお話が出ましたが、他の皆さんはいかがでしたか?
田村「僕の衣裳はあまり普段と変わらない雰囲気でした。逆に今までやってきた作品がウイッグだったので地毛で舞台に立つことが初めての経験で新鮮で、撮影ではソワソワしちゃいました(笑)。衣裳もシンプルで、僕の中では一枚ベールをはがされたみたいで、ちょっと緊張します」
野村「僕はお店のブルゾンを着てスラックスを穿きました。このタイプは今までなかなか無かったですね」
白柳「野村さんキマってました! 現場で『ちょっとカッコよくないですか?』って。どちらかというとかっこ悪い役なんですけど『なに着こなしちゃってるんですか!』って感じの空気でした」(全員爆笑)
スーパーマーケットを舞台にしたミュージカルはこの作品だけ
――― スーパーマーケットの妖精スーとパーを始め、個性的なキャラクター達が歌とダンスで物語を盛り上げる。さらにテンポあるやり取りなど、見どころ満載だ。伊藤と加藤はそんなキャラクター達に振り回される。
鈴木「楽しいミュージカルナンバーが色々あるので、みなさんが面白く歌っているところを早く見たいですね。恋愛すると人って変わりますよね。年齢や能力に関係なく恋愛するとミスをしたり、恋愛って恐ろしい(笑)。恋愛と対極にあるような伊藤が恋に落ちていくところも見どころになると思うので、どう変わっていくのか自分も楽しみですし、みなさんにも楽しんでもらいたいです」
田村「僕はコメディが初挑戦なんです。ずっと挑戦したいジャンルで、でもテンポ感とかとても難しいと聞いています。大変なこともあると思いますが必死についていって、みんなで面白い作品を作りたいです」
野村「僕のソロ楽曲はブルース調だそうで、カッコよく歌ってお芝居とのギャップも見せられたらなと。舞台で歌うことはなかったのでそこは見どころですね」
白柳「リバイバルですので前回を引っ張るのではなく、それぞれの個性を出してほしいと思っています。またお芝居の一つとして歌うことがミュージカルの面白いところ。お芝居の流れの延長で歌って踊ってくれたら。
そしてこの作品の名キャラクター・妖精スーとパーもパワーアップといいますか、前回とはキャラクターの性格も変わると思います。今回の伊藤、加藤とコミュニケーションをとりながら関係性を築き上げてほしいですね」
鈴木「平成のネガティブなキャラクターですが、そんなネガティブさが昭和生まれの方に勘違いされてしまうんです。でもゆとり世代もがんばって生きているというところをお見せしたいです」
田村「今回ほとんどが初めて共演する方ばかりですが、良い関係性を築いて良い作品を作ります。
劇場でお待ちしております!」
野村「素敵なミュージカルを作ります。お客様と僕たちと劇場の空間の中で一体となって楽しんでください」
白柳「おそらくスーパーマーケットを舞台にしたミュージカルはこの作品だけ。万引き犯の歌、スーパーバイザーの歌とか、普通のミュージカルでは無いナンバーばかりと思います。珍しいことをやりますのでお見逃しなく!」
(取材・文:谷中理音 撮影:間野真由美)