中島大地によって2013年に結成されたエンターテイメントユニット『TRIBE』が、およそ2年ぶりに新作を上演する。『TRIBE』史上初、若手中心で届ける怪盗モノに、一条龍之介が舞台初主演で挑む。作品を代表して作・演出の中島大地、出演者から一条龍之介、阿佐美貴士、新木美優に話を聞いた。
なぜ盗みを働くのか
“自分が興味のないものは盗まない”そんなポリシーを持った怪盗・石川四季(いしかわしき)と百地樹(ももちいつき)。2人は依頼を受けては盗みを働いていたがそんなある日、日本の宝でもある三種の神器の中の2つ「剣璽(けんじ)を盗み出せ」とメールが届く。そんな代物に興味はない四季。しかしそれを狙う盗賊団、裏で動く黒い影に巻き込まれ、国を巻き込んだ盗みが始まる。
――― 剣璽」は令和の儀式などで最近話題になりましたが、この作品をつくるきっかけは?
中島「TRIBEの新作としては2年ぶりですね。劇場のサイズからも現実味がある方が面白いかなと思って怪盗に着目して、剣璽がメディアで取り上げられていますが、その前にこの物語はできていたので、やばいメディアから拾ったと思われる〜と思いながらも、ま、いいかと(笑)。
日本を舞台にした物語にしたかったので、怪盗といえば日本で生まれたルパン三世や石川五右衛門に着目して主人公は石川四季という名前をつけました。2人は武器を持っていますが、盗みを働く人間のポリシーとして殺さずの誓いがある役どころ。2人はなぜ盗みを働くのか、何のために盗むのか。そこがこの物語のテーマでもあり着目して欲しいところですね」
――― 一条さんは初主演となりますが、決まった時のお気持ちは?
一条「過去TRIBE公演に出演されていた方々と同じラインに立って主演をやらせていただくのでプレッシャーが大きすぎて! 今回はTRIBEメンバーは僕しか出ないので、そこも背負わなくてはいけないですし緊張しています。四季は信念を持ち貫いているという役どころ。なぜ盗みをするのか彼のバックボーンに何があったのか作中で明かされていくと思うので、しっかり信念を持って演じていけたら」
――― 普段の役作りはどのようにしていますか?
一条「僕はまず脚本をザッと読んで1回目の印象で作ってみて大地さんに相談しますが、だいたい1度全部ゼロになります」(全員笑)
阿佐美「僕は四季の相棒・百地樹役を演じます。ルパンで言ったら五右衛門の立場になるようです。今回一条が主演ということで、僕の中では付き合いも長くかわいがっている弟分。うまくサポートできたらと思っています。でも人を支えていられるほど僕も余裕はないので、きっと大地さんにボコボコにされると思います(笑)。一度ゼロになってお互い励まし合いながら挑もうかな」
中島「彼は身体のさばきは器用なので、基本的に動いている時にダサい見え方をすることはないんです。あとは台詞回しがうまくなれば、他にいないくらい上手になるんじゃないかな。熱のあるクール目な役、特撮で言えば四季が赤で樹が青」
阿佐美「がんばります!」
――― 樹の武器は刀だそうですが、四季の武器は?
中島「四季は鍵が武器でネックレスのようにかけ、それで武器を受け止めたりします」
一条「僕は小道具も作るので今ヒモをどうしようか悩んでいて、本体も相談しつつ作っています。出来上がりをお楽しみにしていてください」
――― では、新木さんの役どころを教えてください。
新木「片倉ひより役で職業は探偵です。探偵と聞くとコナンを思い出してしまいました」
中島「正解です。今作は日本の怪盗や探偵アニメの集合体を想像してもらえたら」
新木「四季と樹を推理して追っているそうなので、戦う可能性もあるそう。私は初TRIBEなんです!TRIBEに新しい風を吹かせます!」
中島「僕の演出は3本やっているので頼もしいですね。彼女にも相棒役で佐藤和斗くんとタッグを組んでもらいます。女性ならではの見どころも考えているのでお楽しみに」
新木「見どころは自分でも作っちゃいます!」
中島「元気っ子なのでシャカリキキャラにはなると思う。このキャラクター達がどうよじれていくのか、そこも見どころになります」
誰が上に立つか見たい
中島「作品作りで1作品目からずっとこだわっている部分がペアという見せ方で、2組とかバディの作品が多いんです。そもそも苗字が違う2人がなぜつながったのか、今回は過去にもこだわって描いていこうかなと。演出も今までとは違う、やったことがない手法に挑戦してみようと思っています。
今回僕らTRIBEのおじさん達が出ない理由は、若手でやりたかったんです。龍を主演にするからには龍が信頼していて僕も知っていて、とてもイイヤツとわかっている人たちに今回声をかけました。龍をたたいてもみんながフォローできる関係性と信頼がある。
僕の作品は主演が前から引っ張る舞台は少なくて、主演が支えられるか下から支えるかの舞台しかないんです。つぶれている者を支える方が絶対にまとまるんです。そして今回僕は出演しないので、誰が上に立つか見たい。主演がいても誰か必ず一番上に立ってくる人がいるんですよ。それが貴士なのか美優なのか、龍なのか、また全然違うのか。そういうところを見たくて。
3人に特別こうしていきたいとかではなく、僕の演出よりもそのペア間の話し合いの方が大事になってくると思っています。さらに僕の想像を超えてこないと僕は面白くない。僕は複数のキャラを考えなければいけないけど役者は1つ考えればいいので僕の演出を超えるのは当たり前。そこをこの3人には期待したいですね。あと鷲尾直人がいない公演というのも僕の中では挑戦で、全作出演していた人間がこの5本目でいなくなったんです。こんなに若いカンパニーは無かったし、その分若手の熱量とエネルギーに期待してほしいですね」
――― 阿佐美さんは人気2.5次元作品で殺陣師として、新木さんも振付師として活躍していらっしゃいます。アクションシーンに期待してしまいますが、今作でも殺陣師として参加も?
阿佐美「今回は2人とも完全にプレイヤーとして参加します」
中島「僕が殺陣をつけますが、ワーサルシアターを壊す勢いでバチバチのアクションになると思います。アクションでもそれぞれの見どころを作っていきます」
新木「どうなるのか楽しみ!」
――― 最後にメッセージをお願いします。
阿佐美「TRIBEの魅力の一つとしてアクションがあります。生の迫力を楽しんでほしいです。怪盗役は初めて演じますが、大地さんがどう演出するのか全く想像ができないので僕もお客様も一緒に楽しんでもらえたら。精一杯がんばります!」
新木「女の子なので皆さんにはできないことをやって、大地さんの正解を超えるようにがんばります。たくさんの人に見に来てもらえるようにいい作品を作ります!」
一条「初主演でつぶれないように、周りの方に支えてもらえるような主演を目指します。お客様の心に届く良い作品にできるようにがんばります」
中島「僕たちができることは持っている力の限りやること。若い子たちが燃え尽きるさまを僕は見届けるだけです。彼らの想いを信じて劇場に足を運んでいただけますと幸いです」
(取材・文&撮影:谷中理音)