ものづくり計画作品として、2015年、2018年に上演され絶賛を博し、常に再演を求める熱い声が止まない舞台『瀬戸の花嫁』が、中野の小劇場街ポケットスクエアで最大規模を誇る劇場、中野ザ・ポケットにて再再演の幕を開けることになった。『瀬戸の花嫁』は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で、嫁をもらいたいと願いながら結婚できない男たちと、島で暮らしたいと願う都会に疲れた女たちの集団見合いが、島全体のビッグイベントになっていく様を通して、過疎化と高齢化という決して他人事ではない悩みを、ハートフルな人情喜劇として描いた作品。全編が本格的な広島弁で描かれることも、大きな特徴となっている。そんな作品の再再演に集う、蓮城まこと、藤本結衣、池田努が舞台にかける想いや、お互いの魅力を語り合ってくれた。
身近な登場人物による心温まる物語
――― 今、作品について感じていることから教えてください。
蓮城「大浜直樹さんとは『河童村ブルース』でご一緒させて頂いたのですが、その時から大浜さんが描かれるハートフルな世界観をとても素敵だと思っていました。今回の『瀬戸の花嫁』も2018年の再演を拝見したのですが、心が温まる作品で、当時私は別の舞台の稽古中だったこともあって、様々な刺激も受けインスパイアされるものも多かったですし、家族愛や地域への愛が色濃く描かれていることに大きな感銘を受けました。そんな大好きな作品に、今回お声がけ頂けたことを本当に嬉しく思っています。しかも拝見した時に強く印象に残った結婚相談所の職員役を演じさせて頂くのですが、本州と離島との懸け橋になりたいと真っ直ぐに願っている役どころなので、精一杯表現していきたいです」
池田「僕も再演の舞台を観たのですが、たくさん出演させて頂いている大浜さんの作品の中でも原点のような作品だと思いました。とても素朴で、変わった人も出ては来ますが(笑)、登場人物が皆身近に生きている人に感じられるんです。そういう普通の人に光を当てるのが大浜さんの得意とされるところで、シンプルにそこに焦点を当てた作品に参加できるのが光栄です。僕、テレビでよくやっている“婚活ドキュメンタリー”を観るのが好きなんです。でも2組くらいしか成立しないことがほとんどで、家や土地や仕事をどうつないでいくのか?というのは、地方の方達にとっては本当に切実な問題なんだということがよくわかります。結婚が個人のものとは言えない、結婚できないことによって地域が衰退してしまうのは、今の日本のあちこちで実際に起っていることなので、そういうリアリティをちゃんと描きたいですね」
藤本「再再演ということで、個人的に再演作品に出させて頂いた経験があまりないので、たくさんの方から愛され続けて3回目の上演を迎える作品に対する、皆様の期待にきちんと応えていかなければというプレッシャーもありますが、皆さんと一緒に素敵な作品を創れたらいいなと思っています。特に今回は物語の中心にいる役柄を頂いて、そういう経験もほとんどないので、背筋が伸びる思いがします!頑張っていきたいです」
――― また、全編が本格的な広島弁で綴られるのもこの作品の大きな個性になっていると思いますが、その点についてはいかがですか?
蓮城「先日顔合わせの時にレクチャーをして頂いたのですが、やはり難しくて!」
藤本「本当に難しいですよね! 広島の方としてネイティブに話すだけでもすごく大変だと思ったのですが、そこに感情を乗せるとなると、外国語じゃないかと思ったくらい難しくて!」
池田「でも歌を歌える方は大丈夫ですよ!」
蓮城「そうなんですか?」
池田「音で覚えられるから。大浜さんの広島弁に対するこだわりはすごくて、ちょっとでも音が違うと言い直される。それを耳で完コビする感じですね。僕は『風車』という作品で、広島弁の洗礼を受けたので」
蓮城「あぁ、じゃあ池田さんこそ大丈夫なんですね?」
池田「いや、でもずいぶん前だからサッパリ忘れているし、生の舞台ってトラブルはつきものじゃないですか。でも、何かあってもアドリブが出ない!(笑)」
蓮城「あ〜確かに!」
藤本「広島弁でアドリブは出ないですよね!」
池田「そう、それが大変だった。でも地域の言葉が使われるからこそ、伝わるものがあるからね」
蓮城「私も自分が大分の出身なので、それはすごく感じます」
藤本「広島の方がご覧になって、懐かしいなと感じて頂けるようになるのが目標だと思っていて、共演者の方に広島出身の方がいらしたので、早速LINEグループを作ってもらいました。わからなかったらいつでも電話していいと言ってもらっています!」
池田「本当に? それはすごいな!」
藤本「8月の本番までに、一層努力して頑張りたいと思います!」
新しい顔合わせで新たな『瀬戸の花嫁』を創りたい!
――― お互いの印象、魅力についてはどう感じていますか?
蓮城「池田さんとは『河童村ブルース』以来ですよね?」
池田「2年ぶり? 当時、宝塚を退団されたばかりでしたよね?」
蓮城「そうです」
池田「ですから、大変キャリアのある方だと伺っていたんですが、とても可愛い方で」
蓮城「本当ですか? やった!(笑)」
池田「良い意味で謙虚で真っ直ぐで、無垢に作品と人と向き合っている。それはキャリアがあればあるだけ、できるようでなかなかできないことなんですが、そのまっさらな感じが素敵な方だなと思いました」
蓮城「嬉しいです! 私こそ池田さんのことは、本当に真っ直ぐで、気持ちの良い方だなと思っていました。一緒に舞台をさせて頂けるのが幸せでした」
池田「またまた(笑)」
蓮城「本当です!」
藤本「本当にそうですよね! 私も池田さんとは同じ舞台に立たせて頂いていて、お子さんもいらっしゃる舞台だったのですが、休憩時間もずっとお子さんと遊んでいらして。ご自分で考えたいこともおありだろうと思うのに、誰よりもお子さんの面倒をみていらしたから1番なつかれてもいて、なんて素敵なんだろう!と思いました。私も池田さんのような大人になりたいと思っていたので、今回またご一緒できると伺ってとても嬉しかったです」
池田「結衣ちゃんとの共演はつい最近だよね? 2ヶ月前?」
藤本「はい!」
池田「その時はとても女性の多いカンパニーだったのですが、結衣ちゃんは一歩引いて皆を立てられる人で、今も僕を立ててくれているでしょう?(笑)」
藤本「いえいえ!(笑)」
池田「嫌な顔をいっさいしないし、常に自分のことより相手のことを考えて、考えるだけじゃなくて行動できるのが素晴らしいなと思って。だから今回もすごく楽しみですね。可愛らしい人格者だと思います」
蓮城「わぁ、楽しみです!私達は今回が『はじめまして』ですね」
藤本「はい!これからどんどん仲良くさせて頂きたいです!」
蓮城「私は元AKB48や元乃木坂46の方とお仕事させて頂くことも多いのですが、同じアイドルと言ってもひとくくりではなくて、皆さんがとても個性的なので、藤本さんがどんなお芝居をされるのかがすごく楽しみです」
――― 大きく分ければ同じGIRLSチーム出身ということにもなりますね。
蓮城「私がお二人の真ん中という感じかな? 男も女もやるので(笑)」
藤本「素敵です! 私もこういう現場に入ると、女性の方と絡ませて頂けることが多いし、学ばせて頂けることもたくさんあると思いますので、よろしくお願いします!」
蓮城「こちらこそ!」
――― 皆さんで、どんな作品を創られるのかがとても楽しみですが、では改めて作品への意気込みをお願いします。
蓮城「再演を観させて頂いてとても素敵だと思った作品でしたから、そこに出演できることを幸せに思っています。新たな再再演の『瀬戸の花嫁』を皆様と一緒に創っていきたいと思います」
藤本「本当に温かい作品で、老若男女問わず愛して頂ける、どんな世代の方にも必ず伝えられるもののある作品だと思っています。都会の方は広島に旅をしたくなるような、地方から都心に出て来ていらっしゃる方は自分のふるさとに帰ってみようかな?と思えるような舞台なので、是非劇場でこの温かさを感じて頂けたらと思います」
池田「夏の暑い時期に心が温まる、笑って泣ける王道中の王道の作品になると思います。はじめて観る方も楽しめて、何度もご覧になっている方も更に楽しめるような作品に仕上げていきたいと思いますので、どうぞ令和初の夏に劇場にお越しください! お待ち申し上げております!」
(取材・文&撮影:橘 涼香)