2018年、30回池袋演劇祭にて『みらい館大明賞』を受賞し注目を集めている晩餐ヒロックスは、日本大学芸術学部・演劇学科演出コース出身の渡部寛隆が主宰を務め、後輩の小田龍哉ほか5人で構成される『愛』に関する作風が特徴の若手劇団だ。2019年1作目となる本公演では、誰もが知るおとぎ話『浦島太郎』を下敷きに、その後日談として浦島太郎の息子“浦島小太郎”を主人公に描いていく。作品を代表して晩餐ヒロックスから渡部寛隆、小田龍哉。演劇界のニューヒロイン石井陽菜、アイドルグループ「ふわふわ」で活躍中の平塚日菜に話を聞いた。
出生の秘密なども含め色々な謎を描いていきます
――― おとぎ話では深く触れられなかった玉手箱の秘密、おじいさんになった浦島太郎の想いなど、親を知り自分のルーツを探す愛の物語とは?
渡部「僕は昔話がとても好きなんです。その中でも浦島太郎のお話は一番モヤモヤしませんか?」
平塚「確かに他の作品にくらべて印象は薄いですね」
石井「某ケータイ会社のCMの印象が強い(笑)」
渡部「カメを助けたのに最後はおじいさんになってしまう悲劇のお話で、その続きを書きたくなってしまいました。今回は浦島太郎に小太郎という息子がいたというお話です」
小田「僕が主人公の小太郎を演じます。浦島太郎の人生を知らず、自分のルーツを探す役どころです」
石井「私は乙姫役を演じます」
小田「似合いますよね!」
渡部「某CMだと菜々緒さん」
石井「あら大変、がんばって美脚を目指します(笑)」
渡部「小太郎と乙姫、2人の間を海の中でつなげてくれるのが平塚さん演じる人魚姫。平塚さんを見た瞬間、人魚っぽいと思ったんです。実は平塚さんのラジオを聞いていたら、“駿河湾のマーメイド”と言われているんですか? 僕それをぜんぜん知らなくて」
平塚「(笑)。私は中学3年生の時に“ふわふわ”というグループに入って活動を始めましたが、その時に一人ひとりキャッチフレーズをつけようということになり、静岡県出身で駿河湾が有名なので、そこからできたのが“駿河湾のマーメイド”というキャッチフレーズで。自己紹介の時に毎回それを使っていたんですが、いまは19歳になるのでここ1〜2年封印していました(笑)。ところが今日のラジオでメンバーが急に入れ込んできたので驚きました」
石井「グループ活動とリンクした役になるんですね、ファンの方は嬉しいですよね」
平塚「人魚役は嬉しいです!」
渡部「そして石井さんの艶のある圧倒的ヒロイン感は魅力的です。いつかご一緒したいという想いが叶いました。自然と目で追ってしまう役者さんていらっしゃいますよね。そうそう、この間表参道で70メートルくらい先に歩いてた石井さんを見つけてしまったという。それが初対面(笑)」
石井「驚きますよね。私は街中で知り合いにあまり会わない人なので本当にびっくりしちゃって!」
渡部「僕は歩いている時も人を観察してしまうんです」
――― 演出家としては大事な要素かもしれませんね。この2人の女性、乙姫と人魚姫によって小太郎の物語が動き出すのですね。
渡部「小太郎は浦島太郎に色々な昔話を聞かされて育ったんです。その父が死ぬ間際にひとつだけ伝えていないことがあると自伝を語ります。でもそれが何の話か教えてもらえないまま浦島太郎は亡くなってしまう、そこからこの物語が始まります。時代は現代、昔助けられたカメは成り上がって大出世、そこに竜宮城も入り乱れた物語です。昔話の中で竜宮城のことはほとんど描かれていなんです。今作ではそこをもっと膨らませたい。小太郎の出生の秘密なども含め色々な謎を描いていきます」
信頼関係が固い現場なので、楽しんで稽古ができると思います
――― 平塚さんは初の舞台出演となるそうですね。
平塚「はい、今回この作品が初舞台になります。ずっと舞台に出演したいという想いがあって、決まった時はメッチャ嬉しくて」
石井「かわいい!」
平塚「この取材で更にどんな作品になるのかお話を伺ってとても楽しみですし、自分の役どころをがんばりたい気持ちでいっぱいです」
――― 石井さんは多くの演劇団体の作品に出演されています。この劇団は初出演ですが、初参加の時の心構えなどをお聞かせください。
石井「出演して良かったなと思えるところに出演したいので、その劇団の作品を観た感想や出演した方の感想を聞いたりとか、動画がネットにあったら見たりけっこう調べます。私が好きな現場は、一つの作品に対してみんなでいいものを作ろう、良いものを届けようとする想いのある現場。晩餐ヒロックスさんの映像を拝見したときに、誰もサボっていなくて。みんなで作り上げた舞台であることが動画でわかったので、楽しみですし一緒にできて嬉しいです」
渡部「良かった!」
――― 小田さんはそんな皆様をお迎えする立場になりますね。
小田「石井さんがおっしゃる通り、みんなで作っていく劇団です。稽古が始まる前に早めに来てアップをしますが、曲が流れたらいつの間にかみんなオープニングダンスを踊っている。その環境を作ってくれるのは役者と演出家の信頼関係があるからだと思うんです。寛隆さんは役者が大好きで、できるまで離れずにとことんやるタイプ」
石井「あきらめないのね! それはすごい!」
小田「横の信頼関係が固い現場なので、楽しんで稽古ができると思います!」
平塚「はい、楽しみます。普段はアイドルをやっていて歌ったり踊ったりすることは大好きなので、それを今回生かせそうで楽しみです」
稽古では色々なパターンを試しています
――― 役作りについて、そしてどう演出して行こうと?
石井「初参加の方からどう演じればなど相談を受けることが多いと思います。そんな時に参考になるキャラクターや作品を紹介してもらえると嬉しいですよね」
渡部「うーん、今回はコントとかお笑いかな。お笑いが一番難しいと思っていて、アイドルも歌を歌っている時より、曲間のフリートークの方が難しくないですか?」
平塚「難しいです! MCやトークは次につなげなくてはいけないので、お客様を飽きさせないようにテンポ感も難しいです」
渡部「僕の演出のモットーとして、お客様を絶対に寝かさないという想いがあり、さらにお客様に夢を見てもらう場所が劇場だと思っているので、そこを意識しています。平塚さんにはぜひ笑いの“間”を追求して欲しいですね」
平塚「“間”ですね」
石井「私もそれはすごく研究しました。ボケとツッコミの東京03さんがオススメ。ツッコミの仕方が何パターンもあって、めちゃくちゃ勉強になる」
渡部「平塚さんは映画も好きなんだよね」
平塚「いまお仕事に生かせることとして、レッスンや参考になる演技を見るという一環で映画もたくさん観ています。これから東京03さんも意識していけたら」
渡部「あとNODA・MAPとタクフェスが僕はお気に入りでして。そのあたりも資料として観て欲しいな、DVDを送りますね」
石井「お客様の反応は毎回違うし、カーテンコールでもいつもとは違う景色が劇場で見られると思います。お辞儀をして顔を上げた時、お客様がすごい笑顔で拍手をしていてくれると本当に嬉しくて、それを今回経験してもらえたら、がんばろうね!」
平塚「はい! がんばります!」
自分の推しメンバーをもっと好きになれる作品に
――ヒロックスさん的なコミュニケーション、距離の縮め方は?
渡部「ゴリゴリの筋トレをします」
ーーえ?! 筋トレがチームワークを良くする手段なんですか?
小田「意外と筋トレはでかいんです」
石井「筋トレ……あまりやりたくない(笑)。最近筋トレの現場が多いんですよね」
渡部「この劇団はゲーム感覚で筋トレを行うので大丈夫です! 僕がお酒を飲めないので稽古後にみんなを飲み会とかに誘えなくて」
小田「他のカンパニーに比べて飲み会は少ないかもしれない(笑)」
石井「私もお酒を飲まないのでそれは嬉しいかも。『みんなでファミレスに行こうか』の方がいい」
渡部「それですね、最高! みんなでファミレス行きましょう!」
――最後にメッセージをお願いします
渡部「自分の推しメンバーをもっと好きになれる作品になると思います。もちろん石井さん、平塚さんのファンの皆様は観劇した後、これからも応援したい、大好きだ!と思いながら劇場を後にすることになると思います。心から楽しみにしていてください!」
平塚「初めての舞台で今も緊張していますが、稽古をやっていく中で自分から発見したり、自分でこうしたいという想いをちゃんと伝えられる、それをお芝居で表現できるように挑んでいきたいです。観てくださる方に楽しんでもらえるよう全力で頑張ります」
石井「熱烈なオファーをいただいたので、その期待に応えられるように筋トレも頑張りたいと思います。色々な舞台をやってきましたが、また新しい私を見せることができたら良いですね。」
小田「俳優はクリエイターであり、常に想像しなければいけなくて、寛隆さんはそういう力を一緒に培ってくださる方です。キャスト、スタッフ、そしてお客様と一緒にこの劇団の良さをわかってもらえるように気合いを入れて挑みます。良い作品をお届けしたいです。劇場でお待ちしております!」
(取材・文&撮影:谷中理音)