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西洋能『男が死ぬ日』


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戯曲が生まれて60年。遂に日本初演を迎える『男が死ぬ日』とは

テネシー・ウィリアムズと三島由紀夫の友情から生まれた衝撃作

本作は『ガラスの動物園』などで知られるテネシー・ウィリアムズと三島由紀夫の友情から生まれた日米の演劇要素を混交させた衝撃作である。なぜ日本上演に60年もかかってしまったのか。そこにはテネシーと三島と思われる性別を超えた愛やパーソナルな部分が生々しく描かれていたという。まるで暴露本の様に。日本人が知らない三島由紀夫の顔とは!? 作品を代表して、演出のボビー中西、東洋人役Wキャストのハリー杉山、呉山賢治、そして翻訳の広田敦郎に話を聞いた。


インタビュー写真

世界初演で東洋人役を演じたボビー中西が日本初演を演出

本作は2001年7月、米国コネチカット州ホワイトバーン劇場にてアーサー・ストーチ演出によって世界初演が行われた。今回演出を務めるボビー中西は、その中で三島由紀夫をモデルにして書かれたという主人公・東洋人を演じた。その強烈な作品との出会いと感動を日本でも上演したいという想いから2015年、実験的にリーディング公演を実施、そしてついに初演を迎える。

――― タイトルにある「西洋能」とは?

広田「1957年にニューヨークで三島由紀夫とテネシーが出会ったことから始まっています。三島の『近代能楽集』が5本英語に翻訳され、アメリカで出版されました。三島はそのブロードウェイでの上演の可能性を探るためニューヨークを訪れていた時、出版社の紹介でテネシー・ウィリアムズと紹介で会うことになっていたのですが、偶然にも先に出会ってしまったというエピソードがあります。

テネシーは『近代能楽集』をとても気に入っていました。そこで、三島が能を近代に翻案したように、テネシーも能に感化された芝居を書き、敬意を評して「西洋能」いう副題をつけたわけです。厳密にお能の通りやっているわけではありませが、能の形式を強く意識した形で書かれており、ちゃんと語り部がいてシテがいてワキがいます。」

中西「そして歌舞伎のエッセンスも織り交ぜながら」

広田「テネシーは58年に初めて来日しており、その時に能を観ているはずですが、歌舞伎座にも毎日のように通ったと語っています。実際彼は『イグアナの夜』、『牛乳列車はもうここには止まらない』といった戯曲にも歌舞伎や日本の伝統文化の要素を取り入れています。

この戯曲を書くきっかけの一つとなったのは、若い頃テネシーが交流したジャクソン・ポロックの交通事故死なのですが、日本との関連で言えば、当時活発だった「具体」という美術運動にも影響を受けているという説があります。ポロックもそうですが、作品だけではなく、作品を作る自分自身をも作品にしてしまうようなアーティストっていますよね。『男が死ぬ日』の主人公の画家もそういったアーティストを連想させます。」

――― 広田は「こんなことを書くのか、ということは多かった」と作業を振り返る。稽古場ではまず原作について、それぞれの解釈を共有し語り合うことから始まった。物語の年代と作家達の人生の年代が一致するところから、眠っていた人生が紐解かれていく。

原作は2つバージョン 
中西「もともと僕が2001年に世界初演で東洋人役をやらせていただきまして、それ以来いつか日本でこの作品をやりたいという想いがあって、2011年に日本に拠点を移しベースができたところで一度リーディング公演という形で、今回も出演してくれる本多章一くんと菊地凛子さんと、古畑新之くんをメインに上演しました。
ふたりの友情から生まれた作品を日本の人に知ってもらうということが僕のミッションと思っていて、リーディングの手応えはもちろんありましたし、本公演に向けての準備にかかることができました」

――― 実は原作は2つバージョンがあるとのこと。今回は最初に書かれた方を上演されるそうですが、どう違うのでしょうか?

中西「広田さんとどちらのバージョンをやろうかと話し合いましたが、よりまとまっている最初の方に決めました」

広田「70年に三島が割腹自殺をした後、72年に完成したのが新しいバージョンです。まだ訳してはいませんが、半分ぐらい書き換わっており、三島が死んだことについても言及があります。テネシーはすごく書き換えが好きな作家さんなんですね。たとえば『ガラスの動物園』でも全集版とアクティング版とでは異なる箇所があります。『男が死ぬ日』の新しいバージョンはより難解に感じられました。

テネシー・ウィリアムズはアバンギャルドな物や実験的な物に対する志向がすごく強い作家で、後期の型破りな劇は日本ではあまり知られていません。彼がやろうとしていた新しいことに対する評価はアメリカでも不当に低く、それは今もあまり変わっていないように思います。実際、なかなか読みにくいものも多く、今回のお芝居も翻訳は気が狂いそうになる程難しかったです(笑)」

インタビュー写真

人生の一つのターニングポイントになる挑戦

――― 演者のお2人はその難しい台本を手にした印象は?

ハリー「最初の印象は、どうしようかなと(笑)僕の仕事のキャパシティというものが番組の MC であったり、ラジオのナビゲーターなどをさせていただく中で、役者というアイデンティティは本当に限られたものなんですね。初めてこの作品を読ませて頂いた時、まず日本語から入ったんです。この抽象的で詩的な例えというものは、英文を見てもめちゃくちゃ難しかった。

これは一人ではなすすべがないので、チームとしての意識を高めなければいけないと、今年の頭の段階から思っていました。セリフを全部頭の中に叩き込むというよりは、具体的にどういうメッセージがあるのか、テネシー・ウィリアムズはどういう人なのか、三島由紀夫はどんな人なのか…というものを総合的に外側からちょっとずつ理解するというプロセスに悪戦苦闘しているところです」

――― 初舞台とお聞きしておりますが、まずこの作品を1作目に選んだことがとても興味深いです。

ハリー「選んだという言葉を使われましたが、選ぶというよりは必然的なもので、やらない理由がないと言うか。背景を申しますと、自分の父が1964年にオリンピックの取材で来日し、三島由紀夫さんの取材を重ねるうちに 彼の作品と人柄に惹かれ亡くなられるまでに、大きな影響を受けました。三島さんの影響もあり、日本と恋に落ちました。後に日本人の母と結婚することになるのですが。自分の人生のヒーローである父親が三島由紀夫という存在に出会っていなかったら日本に残っていないというほど影響されていたんです。

父は81歳を迎えている中、彼に向けたメッセージと、自分の人生の一つのターニングポイントになる挑戦と思っています。今ちょっとずつ見えてきている光というものに向けて全身全霊で挑んでいる途中です。34歳で初舞台は非常にリスキーであると思いますが、もともと“やってみないとわからない”というチャレンジ精神はあるので今はワクワクしかないですね。でもなかなか難しい本です(笑)」

――― テそして舞台が2作目という呉山さんですが少し余裕がありそうに見えます。

呉山「余裕は全く無いですね(笑)。そもそもはじめは出演する枠ではなかったんです。僕はボビーさんのクラスで演技を教えてもらって3年くらい経ち、そこが演技を始めた場所であり今も教えをいただいているのですが、そこで一度台本を読んでいるんです。その時には出演はないと思っていたので、単純にすごく難しい作品だなぁと印象を受けていました。その後しばらくして出演の相談がありまして、すぐにYESと言えなかったんです、怖すぎて。

この東洋人という役は、誰かと芝居をしているという形ではなく、お客様に向けてメッセージを伝えリードしていく役割。スピーチの練習もしていないですし、芝居とは違う要素が入ってくる感覚があったからすごく怖くて……。どうしようかなとずっと悩んで、ボビーさんに10日間くらい待ってもらえますかと(笑)。
ボビーさんが初演で演じたというプレッシャーもありましたが、でもここでやらない理由を考えた時に、最終的に“怖いから”だけだなと思ったんですね。怖い所に行けば何か得るものがあるという考え方に変わった時に、やらせて頂きますとお返事をしました。

今チームとして少しずつ台本を読み進めながら外堀を固めている段階で、ハリー君が言ったようにセリフを言える言えないというよりは、この人たちがどう生き、どういう歴史を刻んだのか。三島の思想や考え方、生きてきた歴史、そしてテネシーの人生を学ばないと、このセリフを一つたりとも自分のものにできないなという感覚がすごくあって。ただ芝居をするではなく、人の歴史をちゃんと辿って消化しないと言葉が全部嘘になってしまう芝居だなと。そこが今一番難しいなと思っているところです。

僕自身三島由紀夫の事はほとんど知らなかったですし、テネシーの名前を知っていても背景はわからなかった。今は(7月)ゆっくりと二人のことを知ることができるものを読んで勉強をしています。作品としては本当に難しい。お客様にどう届けることができるのか、今みんなでトライしているところです」

インタビュー写真

役者として確実に100%成長させてもらえるものが眠っている

――― ハリーさん呉山さんは、ボビーさんがやった役を演じるのですから稽古から熱くなりそうですね。ボビーさんが講師として指導しているリアリズムの演技「マイズナーテクニック」も磨かれていくだろうと。

中西「そうですね、20年ニューヨークにいまして、ネバーフッドプレイハウスでマイズナーテクニックを学んで、その後アクターズスタジオのメンバーになりました。もともとテネシー・ウィリアムズのお芝居は、ほとんどアクターズスタジオのメンバーで演じられたので、そのメソッド演技というものを使いながらアメリカで勉強してきた全てのテクニックを駆使して、東洋人を含め男女の関係性も表現していきたいと思っています」

――― ダブルキャストのハリーさんと呉山さんは全く違うタイプの東洋人役になりそうですね。

中西「今回の僕のテーマと繋がっているところなのですが、ハリーくんも賢治もハーフなんです。東洋と西洋、男と女、二つのものが共存しているみたいなところがテーマになっているので、彼らも東洋と西洋の血が入っている。今回のテーマにはぴったりな2人です」

――― 東洋人役なのにハーフのキャスティングが不思議でした。

中西「そうなんです。僕がアメリカで上演した時にはアメリカ人のキャストだったから、僕の東洋人役は日本人ということでそのままキャスティングできたんです。でも日本で上演した場合、アメリカ人は日本人が演じることになります。最初はアメリカ人役を外国の方に演じてもらおうとも思いましたがなかなかハマらず。最終的にご縁があった2人になり、ハーフはテーマに合うところもあったのでこのキャスティングになりました」

広田「日本人だけでやると意味が分からなくなるところがあり、特別な要素を入れた方がいいのではないかと提案した事もあったので、こういう形になり楽しみですね」

――― では、楽しみにしていることや、作品の魅力について教えてください。

ハリー「まずは作品の存在ですよね。父を通して三島の存在や作品を読んできましたが、そもそもテネシーと三島という、それぞれの国を代表する劇作家たちが繋がっていて、この作品に含まれている三島に向けての尊敬と愛情が読めば読む程めちゃくちゃスリリングで面白いんです。最初全然わからなかったところが、ジグソーパズルがハマっていくように『こういう意味だったの?』と。それが正解ではないかもしれないですが、ボビーさんと賢治くんと今までやってきたディスカッションが確実に固まってきていて、自分がこの作品の一部になれるということが嬉しいという思いでいっぱいです」

呉山「この台本には役者として確実に100%成長させてもらえるものが眠っていると思うので、宝物のような素晴らしい本です。自分が門をたたいて演技を始めたことでボビーさんに出会い初舞台を踏み、色んな縁を経て自分がここに居ることに感謝しています。
この作品を通してボビーさんが伝えたいもの、テネシーや三島が伝えた
いことをお客様にちゃんと届けられるように挑んでいけたら。熱い夏になりそうです(笑)」

インタビュー写真

三島自身が描かれた作品は日本に無い

――― 見どころについて教えてください。

中西「日本の演劇スタイルと西洋の演劇スタイルをビジュアルも含め織り交ぜるというところがまず見どころポイントです。それと日米を代表する劇作家テネシー・ウィリアムズと三島由紀夫の友情から生まれた作品であるということは、なかなか聞いたことがないですし、60年ぐらい前に書かれた作品が60年の時を経ってやっと日本で初演を迎えるということも注目です。

そして三島由紀夫いえば日本人はみんな知っている作家で沢山の作品を残していますが、この東洋人は三島由紀夫をモデルに書かれていると言われてて、彼自身が描かれた作品は日本に無いと思っています。これは三島由紀夫ファンとしても見どころになってくるんじゃないかなと思います。本多くん演じる男(画家)と遠藤さん演じる女(愛人)、その2人が東京のホテルに滞在していて、そこにハリーくんと賢治が演じる東洋人が出会い関わっていきます」 

広田「この画家は新しい手法を求めて苦悩しています。彼は愛人を心のよりどころとしていますが、女性の方は画家との関係に疑問を持ち、清算しようとします。男女がプライドをかけて死闘するお話です。そこに三島由紀夫を思わせるストーリーテラー「東洋人」が現れ、東京帝国大学の法学生という役を演じながら、自己破滅型のアーティストの苦悩や愛憎入り混じる複雑な男女関係について客観的なコメントを加えていきます。」

中西「とてもドロドロしたテネシーらしい、とても個人的なメッセージが書かれていると僕は思っています」

広田「テネシーの個人的なストーリーがより濃く反映されている作品です。50年代はテネシーは転機となった時期です。40年代に華々しい成功を収めた彼は、もう同じような作品は書きたくない、もっと破天荒な作品を書きたいと思っていたのに、観客も批評家もそれを認めず、『ガラスの動物園』や『欲望という名の電車』のような作品をいつまでも求めていました。

また、彼のパートナーでマネージャーをしていたフランク・マーロウという男性がいるのですが、『男が死ぬ日』の男女関係にはテネシーとマーロウの葛藤も投影されています。
あと、生きるということ死ぬということの対比ですね。『欲望という名の電車』などもそうですが、死がとても大きなテーマになっています。」

――― 最後にメッセージをお願いします。

ハリー「三島は日本人になくてはならない存在でとても評価されていますが、国際的にはどれほど評価されていたのか、ということがちょっと垣間見えるかもしれません。そして生と死を日常的に考えることはあまりないかもしれませんが、自分にとってそれがどういうものなのか改めて考えさせてくれる作品になっています。やはり僕にとってはずっと残る作品になると今から実感しています」

広田「三島由紀夫は日本人のアイデンティティについて深く考えた作家でしたが、それ以上にインターナショナルな作家だったんですね。それはテネシー・ウィリアムズについても同様で、彼はアメリカ南部出身の劇作家というだけではない、世界中の演劇人に影響を与えたアーティストだった。そんな彼らが国境を超えて親交を結び、その友情が新しい芸術を生み出すきっかけとなった。それは日本で三島を読んでいてもなかなか実感できないことです。二人についてこれまであまり注目されていなかった一面について、この「西洋能」を通じて知っていただければと思います。テネシーや三島がいかに大きなフィールドで活躍していたか、この1時間半ほどの芝居の中に現れています。」

(取材・文&撮影:谷中理音)

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PROFILE

ボビー中西/中西正康(ぼびー・なかにし)のプロフィール画像

● ボビー中西/中西正康(ぼびー・なかにし)
1968年生まれ、千葉県出身。
BNAW代表。演技講師、演出家として活躍中。1987年、高校卒業と同時にコント赤信号に弟子入り。1990年にはN.Yに渡り、名門ネイバーフッドプレイハウスに入学。アクターズ・スタジオでは、50年の歴史上、日本人として2人目の生涯会員に。主な演出作品に、舞台「初恋」、舞台「杏仁豆腐のココロ」などがある。

ハリー杉山(はりー・すぎやま)のプロフィール画像

● ハリー杉山(はりー・すぎやま)
1985年1月20日生まれ、東京都出身。
数ヶ国語を操り、TVのMCやラジオパーソナリティ、モデル、俳優など幅広く活躍中。Eテレ「おもてなしの基礎英語」、CX「ノンストップ!」、BS日テレ「木曜のシネマ★イブ」ほか多数の番組にレギュラー出演中。

呉山賢治(くれやま・けんじ)のプロフィール画像

● 呉山賢治(くれやま・けんじ)
1985年6月29日生まれ、大阪府出身。
ファッションモデルとして広告や雑誌、CM、ファッションショーなど幅広く出演中。主な広告に『ユニクロ』、『Gillette』、『JT PloomTECH』などがある。

広田敦郎(ひろた・あつろう)のプロフィール画像

● 広田敦郎(ひろた・あつろう)
翻訳家。
近作にシアタークリエ『ブラッケン・ムーア 〜荒地の亡霊〜』、シアターコクーン『民衆の敵』など。書籍としてテネシー・ウィリアムズの死後発表された未翻訳の戯曲、西洋能『男が死ぬ日』、『緑の目─見るものなんか何もない』、『パレード─もうすぐ夏の終わり』発売中。

公演情報

「西洋能『男が死ぬ日』」のチラシ画像

Hell’s Kitchen 46
西洋能『男が死ぬ日』


2019年9月5日 (木) 〜2019年9月15日 (日)
すみだパークスタジオ(倉)
HP:公演ホームページ

10名限定! 前売5,000円 → 3,850円 さらに1,500Pゲット!(9/3 18時10分更新)

詳細はこちら

「西洋能『男が死ぬ日』」のチラシ画像

Hell’s Kitchen 46
西洋能『男が死ぬ日』


2019年9月5日 (木) 〜2019年9月15日 (日)
すみだパークスタジオ(倉)
HP:公演ホームページ

前売:5,000円
(全席指定・税込)

詳細はこちら