「お客様に声を出して笑ってもらう!」をテーマに、様々な題材のシチュエーションコメディ作品を上演し続けている演劇集団イヌッコロの第14回公演『いさめ!池田屋シアター』が9月11日から中野のザ・ポケットで上演される。舞台となる旅館「池田屋」を切り盛りする女将役に山田邦子を迎え、新撰組の名をあげようとする近藤勇と女将がひと芝居打ったところから、全てが意外な方向へと転がっていく、イヌッコロ初の時代劇となる。そんな舞台を創り上げる、山田邦子、こいづか登、演出の佐野瑞樹が集い、新たな舞台への意気込みや、互いの魅力を語り合ってくれた。
心からお腹を抱えて笑える舞台
――― 今回、幕末の事件として大変有名な「池田屋騒動」をテーマにした新作の上演ということですが。
佐野「と言っても、ざっくり言ってしまうと『池田屋騒動』をモチーフにした、演劇集団イヌッコロならではのワンシチュエーションコメディになります。まだ羽仁から具体的な脚本はあがってきていないんですが(笑)」
山田「時代劇のコメディなので、若い方にはおわかりにならないと思いますけれど、私達の世代だと『てなもんや三度笠』(※1960年代に「お化け番組」とも称された大ヒットテレビ作品。三度笠を被った渡世人・藤田まこと演じるあんかけの時次郎が、白木みのる演じる相棒の小坊主と諸国を放浪しながら繰り広げる大騒動を描いたコメディ時代劇。)の感じね」
こいづか「そうです! そうです! まさにそれ!」
山田「皆時代劇の恰好はしているけれども、現代の話しも入っているようなコメディ作品で、ドタバタもあれば、歌も踊りもあるという。そんな憧れの番組と同じ方向性の舞台を、この二人と一緒にできるというのが、本当に嬉しくて!」
佐野「それは、もう僕たちが真っ先に言うことです!」
山田「二人と最初に会ってから、もう20年くらい?」
こいづか「17、8年は経ってますね」
山田「その長い付き合いの間、二人はヒタヒタと演劇を続けていて、この間のイヌッコロの公演も観に行って、心からお腹を抱えて笑ったんです。それでこんなに楽しい舞台を是非やってみたい、是非出させて下さい!とお願いしました」
こいづか「とんでもないです! こちらからお願いしたんです!」
山田「役者バカこいづかからね(笑)」
こいづか「前から時代劇をやりたいねという話はずっとしていたのですが、やはり和の素養がある人がいないとなかなか難しいと二の足を踏んでいて。でももし邦子さんに出て頂けるんだったら、和物の造詣は本当に深い方だし、きっと実現できるだろう!ということで!」
佐野「今しかない! 今こそ時代劇だ!と盛り上がったよね! 作品も『池田屋騒動』を全うに描くのではなく、邦子さんに演じて頂く女将や新撰組と色々な人が絡んできてあちこちで勘違いが生まれ、食い違いが重なって大騒動になる、まぁイヌッコロさん得意の世界になるはずです。でもいくらドタバタ要素があっても、やっぱりちょっとした和ものの動きが綺麗だと見え方も違ってくるので、邦子さんに先頭に立って頂いて、皆もそれを学んでと」
山田「わー、プレッシャーがかかるわ(笑)! でもこいちゃん(こいづか)もずっと殺陣をやっていて、和物大好きでしょう?」
こいづか「はい、大好きです!」
佐野「皆の殺陣もつけてもらうことになると思います」
山田「仮に殺陣がない場面でもきっと斬り付けてくると思う(爆笑)。今回の座組で一番若い方は何歳くらい?」
こいづか「23歳ですね」
山田「いいわね! やっぱり若い方がどんな芝居の組み立て方をするのかを感じられるのは楽しみです。私はどっぷり昭和ですけど、令和っぽい考え方を吸収できたらと思っています」
――― 折角の機会なのでお互いの魅力を語ってください。
佐野「それはもうなんと言っても『山田邦子』さんですからね! 僕たちにとってはスーパースターですから、気さくに話してくださるのでこうしてご一緒していますが、内心ではめちゃめちゃ緊張します」
山田「そう?」
佐野「そりゃそうですよ! ですから是非山田邦子さんらしい、懐の大きい度量の広い、邦子さんそのままの女将を舞台に乗せていきたいです。」
こいづか「邦子さんにはあまりにもずっとお世話になっていて、何からお話しして良いかわからないくらいなんですが」
山田「こいちゃんとはお誕生日が一緒なんです。6月13日で。それには運命を感じていて、私がお誕生会をしていれば『あぁ、こいちゃんも今日歳を重ねたんだな』と必ず思い出していました。でも、今年になってこいちゃんがお母様に久しぶりにお会いしたら『お前19日生まれだよ!』って言われたんだって(爆笑)! まー、40年以上も勘違いしたままっていう(笑)」
佐野「どうするの? これから」
こいづか「いや、もう6月13日で良いよ(笑)。邦子さんで僕が何より印象深いのが、本当にお稽古なさる方で」
山田「私、稽古が大好きなんです」
こいづか「これだけの大スターがここまでお稽古されるんだと思うと身が引き締まりますし、やっぱり今回邦子さんが出演してくださると知った時の、うちのメンバーの反応がすごかったですね『あ〜山田邦子だ!!』って大騒ぎになりました」
山田「親御さんに安心してもらえるというところはあるみたい(笑)。『東京で芝居をしていると息子は言うけどいったい何をしているやら』と案じていらっしゃるところに、山田邦子が一緒だというと、分かりやすくなると言うか(笑)。そういう面ではお役に立てているのかな?と思います。ですからこの機会に中野という街の、小劇場街についても知って頂けたら良いなと。私もこの二人のおかげで観に行くようになりましたけれど、本当に情熱、パッションが漲っているので。私がこれまでやってきた大劇場のものとは全く別の魅力があるんです。これは実際に足を運んで頂かないとわからないので、是非体感して欲しいです。
特に私は一人でマイク一本を前にして語って勝負!という世界で生きてきて、約20年前に二人と知り合うきっかけになった舞台を初めてやった時に、皆でお芝居を創る、チームワークの素晴らしさという別チャンネルの面白さにハマってしまって。だからお稽古も大好きだし、生の舞台にはどうしてもアクシデントがつきものですから、誰かが台詞を忘れるとかね(笑)。そういう時に助けてくれるのがお稽古だということもよくわかったので、今回も真夏の時期で大変なこともたくさんあるでしょうけれども、お稽古もとても楽しみです。ただ、すごく残念なのが、佐野君は演出に専念しているから舞台で共演できないのよね?」
佐野「はい、やっぱり演出と出演両方は難しくて。」
山田「それはよくわかるんだけど、そうなると問題なのはハンサムが一人抜けるってこと。絵面的にそれはどうなの?」
こいづか「昔のハンサムじゃないですか?(爆笑)」
山田「何言ってるの! 十分ハンサムじゃない! こいちゃんもいつまでも少年のような顔していてズルいと思うけど(笑)。二人共一生懸命好きな舞台を創り続けているから、本当にキラキラしていて素敵だなと思いますね」
佐野「ありがとうございます!」
――― 演劇集団イヌッコロならではの新撰組ものになりそうで、期待が膨らみますが、では改めて意気込みをお願いします。
山田「演劇自体をあまり観たことのない方にも絶対に楽しんで頂けると思いますし、山田邦子を見たことがないという方にも、是非舞台で芝居をしている私を観て頂きたいので、一人でも多くの方にいらして頂きたいです」
こいづか「新選組自体がとても有名ですし、コアなファンの方もいらっしゃる中で、是非イヌッコロらしさの出る作品にしていきたいです。もちろん邦子さんに出て頂く意味のある舞台にしたいので、イヌッコロが好きでいて下さる方々だけでなく、新撰組のお好きな方、お芝居を観るのは初めてという方にも是非来て頂きたいと思います」
佐野「ワンシチュエーションコメディというのは上演されている頻度は少ないものなのですが、計算された笑いを追求している、チームワークがないとできないお芝居ですから、一回観て頂けたらきっとその面白さがわかって頂けると思います。邦子さんや新撰組をきっかけに、是非初めての方も劇場まで足をお運び下さい! お待ちしています!」
(取材・文&撮影:橘 涼香)