1980年〜81年生まれの役者たちが、世代感溢れるJ-POPをバックにダンスや芝居を繰り広げるパフォーマンス集団=おしゃれ紳士。今年3月、神保町花月とのコラボで吉本芸人&俳優を迎えて上演した『オシャレ紳士の時間泥棒』は、メンバーとゲストの垣根を感じさせない見事な一体感を見せて大盛況となった。
そしてこの秋、早くも第2弾公演が決定! おしゃれ紳士の伊東祐輔・池田 遼・井内勇希と、コラボ相手の1人であるチーモンチョーチュウの菊地浩輔が、公演へ向けての意気込みなどを話してくれた。
芸人さんたちも含めて1つのカンパニーという空気感
――― 『オシャレ紳士の時間泥棒』は、ちょっとした芝居パートで始まって、その後はDJミックスのようにメドレーされる音楽と、演者の肉体を駆使したパフォーマンスで一気に観客を引き込み、終盤はテーマ性のある芝居で締めるという見応えたっぷりの内容でした。普段の舞台もこういうスタイルなのですか?
伊東「もともとオムニバス形式でJ-POPのミックスみたいに曲を繋いでいたんですけど、自分たちのバックボーンは演劇なので、役者がパフォーマンスをしたらこうなるかな、というところから、身体表現的なダンスや、J-POPの曲を使ったミニコント、台詞のあるお芝居パートなど、いろんな要素が増えてきました。と言っても、今の形にこだわっているわけではないんですけどね」
池田「音楽はずっと流れっぱなしです。でも、始まりが演劇だったので、ダンサー的に音楽と向き合っているというよりは、エンヤの曲がかかるとスローモーションやりたくなっちゃうみたいな(笑)、そんなところから始まっています」
井内「かなり音楽の力を借りてやっていますね」
――― では、使う曲を決めるところからスタートするのですか?
伊東「最初の稽古の1〜2回くらいはみんなで音楽を持ち寄って、ひたすら聴くみたいな感じです。こういう曲があるよとか、最近これ久しぶりに聴いたんだけど、何かに使えないかな?とか」
池田「稽古がまるまる1回TSUTAYAに行くっていうのもあったり(笑)」
伊東「あと、ネタの部分も含めて思いついて、この曲でこういうのやらない?っていうパターンもあります」
――― そんな皆さんが、『オシャレ紳士の時間泥棒』で初めて神保町花月とコラボした感想は?
池田「アウェイなのかと思って緊張して臨んだんですけど、吉本の皆さんがとにかく真面目で……菊地さんにプレッシャーかけてるわけじゃないですよ(笑)」
菊地「(笑)」
池田「でもほんと、“深夜練お願いします!”みたいな感じで。とにかく僕らのやりたいことを叶えようと、どんどん足し算をしてくださったんです。知り合いの演劇の先輩にも、“ここまでやるなんて”と、すごく褒めていただきました。だからとても感謝していますし、楽しかったですね。単純に、皆さんと仲良くもなりましたし(笑)」
伊東「それが一番大きかったですね。やっぱり最初はお互い気を遣い合っていましたが、だんだん打ち解けていって、僕らが吉本さんに呼ばれて芸人さんたちとやるという感じではなく、出てくれた皆さんが同じように僕らと向き合う時間ができた。全員でおしゃれ紳士というカンパニーの空気感が作れたかなと思います」
――― ステージ上では全員が上半身裸にネクタイ・ハット・黒パンツというスタイルもおしゃれ紳士の特徴の1つで、そういう意味でも一体感は出しやすそうですね。
伊東「体のシルエットはかなり違いますけどね(笑)」
井内「僕は『時間泥棒』の直前まで別の舞台があったので、出演はしていなかったんですけど、みんなが完全に一体化していたし、吉本の皆さんもすごく頑張ってらっしゃった。めちゃくちゃ面白かったし楽しめたと思っていたら、“明日以降スケジュール空いてる?”って聞かれて(笑)、急遽3日間だけ出させていただいたんです」
――― 音楽に合わせて作り込まれたパフォーマンスに途中から参加するのは大変だったのではないですか?
井内「人数が変わるので立ち位置とかも変わってしまうんですけど、皆さんが“じゃあここに立ったらいいんじゃないの?”みたいな感じで、僕のために時間を使ってリハーサルしてくれて。それで本番に臨ませていただくことができました。とてもありがたかったです」
この座組みでやれる面白さの可能性を探して
――― そして今回参加することになった菊地さん。どんな気持ちですか?
菊地「今の話を聞いて緊張してます(笑)。前回出させてもらった人たちの信用を裏切らないようにしたいですね。僕もダンスは好きで、自分でダンスのライブをやったこともあるんです。おしゃれ紳士さんのように全編通してダンスで、その中にお芝居が入ってくるというのは初めてなので興味津々ですし、すごく楽しそうですね」
――― チーモンチョーチュウでも、かなり肉体を使ったネタがありますね。
菊地「ダンスの技を使ったショートネタとかもあります。今回は、ネタでは出し切れない僕のダンサーとしての扉を全開放で行こうかなと」
伊東・池田・井内「おおーーーー!(拍手)」
――― 菊地さんは神保町花月でお芝居を何度も経験していますが、それらとはちょっと勝手の違う舞台ですね。
菊地「そうですね。だから、終わった後に自分の中にどんなものが経験として残るのか、すごく楽しみです」
――― 10月の公演はどんな内容になりそうですか?
伊東「今回の座組で何ができるか、というところから作り始めます。菊地さんとは今日が初対面ですし、これからキャスティングが決まる方もいらっしゃるので(注:取材が行われたのは8月頭)、全員が揃ったときの空気感から生まれるものを大事にしたいですね。例えばツッコミの人とボケの人の比率とか、トークを回すのがうまい人なのか、いじられて光る人なのか……みたいなバランスもあると思うので、そのメンバーでやれる面白さの可能性を探していくことになります。最終的にはお客様に楽しんでいただける舞台を作りたいですし、僕らがいつも考えているのは“茶番”というところなので、どう“外していくか”もポイントですね」
――― おしゃれ紳士主導の作品に芸人さんたちが加わるというより、1からコラボレーションして作っていくのですね。
伊東「僕らも活動を始めて10年を超えたので、割とスタンダードでやっている曲だったり、これは一緒にやっていただきたいというところもあったりしますけど、それ以外の新しい部分は、この人たちとやるならこんなこともできるかも?というのが出てくると思います」
池田「上半身裸にネクタイというちょっと奇抜な格好ですが(笑)、決してパワーで押し切ろうという感じではなくて、お客様の想像力に頼るというか、信じて作っているところはあります」
――― 確かにおしゃれ紳士のパフォーマンスには、舞台装置や小道具ではなく肉体でいろんなものを表現する面白さもありますね。
伊東「そこは挑戦するポイントの1つですね。そこにないはずのものが見えてくるというか、見えないからこそ見えるというか」
池田「お客さん自身が星座の線を繋いでくれるような感じですね。あと、僕らがやろうとしているのは茶番も茶番、やるからには究極の宴会芸をやりたいと思っているのですが(笑)、ただおちゃらけて終わるんじゃなくて、例えば前回の『時間泥棒』だったら、最後にちょっと風刺を効かせたりもして、そういう意味でも、“あれって、実はこういうことじゃないかな?”みたいなお客様の想像力にタッチできる舞台になればと思っています」
文化祭を観に行くような感覚で楽しんでもらえたら
――― 逆に菊地さんの方から、おしゃれ紳士と一緒にやってみたいことは?
菊地「ダンスの技を何かに使えないかなといろいろ考えてて、最近思ってるのは……乳首洗濯バサミという、乳首に洗濯バサミをつけて紐で引っ張る芸があるんですけど、全員の紐を僕の足に結びつけて、ブレイクダンスのウインドミルで一斉にパチパチパチー!ってなったら面白いかなって」
伊東・池田・井内「あはははははは!(爆笑)」
菊地「究極の宴会芸とおっしゃったので、そういうしょうもないアイデアはいっぱい提案できそうです」
池田「菊地さんには身体的なことはもちろんですけど、その声にドキドキワクワクしていて」
菊地「(いい声で)どうもありがとうございます。ここ太字にしといてください」
池田「(笑)絶対によく響く声だと思うので、それも活かせたらいいなと」
菊地「いい声してますねとか、舞台向きの声ですねってけっこう言ってもらえるんですけど、相方(白井鉄也)の声が奇抜なので、いつもそっちに持っていかれちゃうんです(笑)。そこでは勝てないので、こういうところで自分の良さみたいなものを改めて出させていただけたらありがたいですね」
池田「ちなみに、音楽はけっこう聴きますか?」
菊地「聴きますよ。最近のはあまり詳しくないですけど、学生時代の曲だったりとか」
池田「僕ら、そういう選曲がすごい多いんです。80年生まれと81年生まれなんですけど……」
菊地「僕も81年生まれです!」
伊東・池田・井内「おおーー!(喜)」
伊東「青春時代に聴いた曲にまつわる思い出とかって、すごくネタの発火剤になるんですよ。言葉で説明できないけど、わかるー!っていう感覚が」
菊地「じゃあもう、スムーズに作れそうですね(笑)」
――― では最後に、お客様に向けて一言ずつお願いします。
菊地「自分は芸人だからとかそういうことはあまり関係なく、やりたいことは何でもやっているつもりなので、普段僕らを観に来てくれているお客さんにはきっと伝わる内容なんじゃないかなと思います。あとは日々の稽古場の様子をSNSで発信して、面白そうだなと思ってもらえるように頑張ります(笑)」
伊東「じゃあ、宣伝動画で乳首洗濯バサミを……(笑)」
菊地「これは本公演に含まれません、って(笑)」
池田「僕はそうですね……初めての方もきっと推しメンが見つかります!ということで(笑)」
伊東「今、それ大事ですよね」
井内「観ている間はずっと笑っていただいて、後にはきっと何も残らないと思うんです。きれいさっぱり何も思い出せないくらいの感じで楽しんで、また明日頑張ろう!みたいな、そういう活力が湧くような舞台にしたいですね」
伊東「ちょうど秋なので、学園祭とか文化祭を見に行くような感覚で来てもらえたら楽しいんじゃないかと思います。気分としては、ロビーに屋台を出してビールとか焼きとうもろこしを売りたいくらい(笑)」
(取材・文:西本 勲 撮影:友澤綾乃)