作品で時代とどう関わっていくかは演劇の大きなテーマのひとつだが、ミュージカル・ギルドq.はミュージカルという手法を使って現代社会に斬り込んでいる創造集団。この年末に送る新作は、あるカウンセリングルームで出会った3人の女性の物語。一見順調で幸せそうに見えるものの、実は心に深い闇を抱えているという彼女たち。カウンセラーの導きで自らの闇に立ち向かう彼女たち。そこで見つける本当の自分とは?
――― 3人の女性がいる。表面的には仕事も生活も充実して見える彼女たちだが、その場所は銀座のカフェではなく、とあるカウンセリングルーム。そんな設定でこの作品は始まるという。この3人のうち、極めて優秀で仕事のできるキャリアウーマンを沼尾みゆき。セレブな奥様を村岸優希が演じる。二人に役柄への印象をまずは聞いてみた。
沼尾「少なからず共感できる部分がありました。私も四季にいた頃は役者として毎日が稽古と公演の繰り返しでしたから。周りも自分の技術を突き詰める人ばかりで、競争も激しくて。キャリアウーマンは共感出来るものがあります」
村岸「私はプライベートで主婦でもないしセレブでもない(笑)。30代にもなると自分の周りで家庭に入る人も増えてきて、不満を抱いている話を結構耳にするんです。だから間接的ですが共感できますね。セレブというのは世間から見ると憧れの存在だったりうらやましく思われますが、自分ではそれほどいいと思っていなかったりしますよね」
――― そして華やかな外面の裏には闇が貼り付いている。ここに出てくるのはそういった女性達だ。
沼尾「結構多いと思います。例えば仕事に情熱を傾けたいのに、子供が生まれると今まで通りにはどうしてもいかない悩みなどあります。私自身も子供がいますからその気持ちはよくわかります。他にもご主人との問題とか。みんな何かしらの悩みや重いものは持っているのではないでしょうか」
村岸「明るく笑顔の人ほど闇の部分が深いというイメージもあります。女友達が集まって女子会になるとそんな部分が出て愚痴大会になるんですが、こんなにキラキラしていても悩みがあったんだと思うことは結構ありますから。でも完璧な人はいないわけで、逆にそこが人としての魅力になることもあるんじゃないかと思いますね」
――― 背負った闇を少しでも軽くしたい。登場人物はそんな気持ちでカウンセラーを頼って集まる。それを演じるお二人は、どのようにしてプライベートで背負うストレスを発散しているのだろう。
沼尾「抱えている問題そのものがストレスなので、それ自体を解決する事に全力を注ぎます。軽いイライラ程度のストレスなら、犬連れて散歩するとか、ボーッとして本読んだりとか(笑)。私は昔から一人の時間が好きなので。一人の時間が充実すると、余裕ができるので、子供に優しくできたりもします」
村岸「私も一人の時間は好きです。自然溢れるところが好きで、舞台が終わって次の稽古まで間があると出かけて行きます。離島もいいですよ。電波が通じないのでSNS離れもできますし、出先で新しい出会いがあったり。一回リセットしてまた頑張る、それの繰り返しです」
沼尾「凄く良くわかります! 私も携帯から離れると楽になる(笑)」
村岸「この前クルーズ船のコンサートに出たのですが、岸から離れるともう携帯は使えなくなるからいいんですよ。でも着岸すると今度は一気にメッセージとかLINEとかが入ってきて、一気に現実に引き戻されるんですね(笑)」
――― ミュージカルでありながら、世の中にはびこる種々の問題を採り上げているミュージカル・ギルドq.。ミュージカルとしてはかなり異質ではあるが、ただ踊り歌うだけがミュージカルではないのもまた事実だろう。今回主役を務める二人は、今作をどのように観て欲しいか。最後にそこを聞いてみた。
沼尾「台本を読んでいたら、どんどんストーリーに引き込まれていきました。そんな勢いがある作品です。これから役を作り上げていく過程で、どんな風にこの役を魅せていけるかが凄く楽しみですね。お客さんも共感できるような舞台になると思います。最後はスカッとしますよ(笑)」
村岸「やはり女性に観て欲しいですね。同姓だからこそ共感できる部分が沢山あるとおもうんです。人間らしさが凄く出ているので、それを踏まえて自分がどう生きるか、一種の幸せ探しもできると思います」
(取材・文&撮影:渡部晋也)