アメリカ・ウィスコンシン州出身のリチャード・カリノスキーが、第一次世界大戦中に起きたアルメニア人迫害の実話をベースに描いた『月の獣』が、12月7日より公演決定。主演を務めるのは旬の俳優、眞島秀和だ。
「アルメニア人迫害というのはなじみのない題材だったので、作品の時代背景を知ろうと、この史実をテーマにした映画を観たりして、少しずつ準備を進めています。まだ舞台経験も少ないなか、今回こうしてボリュームのある役どころをいただけてありがたいですし、この舞台は自分にとってひとつ大きな節目になるだろうと感じています」
――― 眞島が演じるのは、オスマン帝国の迫害により家族を失い、単身アメリカに亡命した青年、アラム。彼は写真だけで選んだ同じアルメニア人の孤児の少女セタを、妻として呼び寄せる。二人は、夫婦として新しい生活を始めるが……。
「アラムは、『家族とはこうあるべき』という考え方を強く持っている男性。そんな彼がセタと夫婦になり、年月を経てどういう関係を築いていくのか。家族という普遍的なテーマを軸に、物語を紡いでいきます。セタ役の岸井さんは、みずみずしく透明感があり、華奢なルックスですが、実は“強い”女性だなという印象。ご自身のなかできちんと役を消化して演じている、骨太な方だなと。頼りにしています」
―――キャストはほかに久保酎吉、升水柚希の4人。「少人数での舞台は、正直、怖さもある」と眞島は苦笑した。
「4人で舞台を進めていくというのは……楽しみでもありますが、やはり緊張しますね。上演時間が、休憩を含めて約2時間半の予定だそうで、『休憩が40分くらいないかなぁ』とこっそり思っています(笑)」
―――演出を手掛ける栗山民也とは、2月に舞台『チャイメリカ』、で一緒に仕事をしたばかり。彼の作品に向き合う情熱に圧倒された。
「栗山さんは、現場の誰よりも高い情熱を持っていて、その熱量にキャストやスタッフがついていくという感じでした。稽古場はとてもスピーディで、テンポよく進んでいきますが、質問をすると喜んで答えてくださるので、今回も消化できないことが出たら、素直に聞くつもりです」
―――映像作品のみならず、舞台にも挑むようになった今の環境を、どう捉えているのだろうか。
「僕としては、『舞台に立ち、その日見に来てくださったお客様の前で一本芝居をやる』というのが、役者として正しい在り方なのかなと思っている部分があります。ここ数年、舞台に立たせていただく機会を得て、鍛え直され、映像でさまざまな役柄を演じられているのは、僕の中でとてもバランスがよく、心地いいですね。この『月の獣』を乗り越えないと、新年を迎えられません(笑)。精いっぱい取り組みたいと思います」
(取材・文:木下千寿)