直実にファンを増やし続け、旗揚げ4周年を迎えた演劇ユニット「爆走おとな小学生」、通称“おと小”の最新作は、人気作品『勇者セイヤンの物語(仮)』再再演に決定! 主演のセイヤン役には新たに太田将熙を迎え、初のシアター1010進出に向けて大幅にブラッシュアップする。作品を代表して、主演・太田将熙、川隅美慎、石原美沙紀(おとな小学生)、林千浪(おとな小学生)、作・演出の加藤光大に話を聞いた。
クオリティは落とさず質を上げて大胆に脚色していけたら
加藤「色々なタイミングが重なって上演が決定いたしました。4年前に旗揚げ公演をし、2017年にシブゲキで再演があり、その時初参加で準主演の川隅くんが大活躍してくれて。彼にはどうしてもまた出て欲しかったので当時から再演のお声がけをしていて、今回のシアター1010での企画でやっとタイミングが合い勇者セイヤン(仮)の再再演が決まりました。そして三代目勇者セイヤンに太田さんを迎えることができ、他キャストも含め豪華なキャストが集まってくれました。更に今回カンフェティでも初表紙を飾ることになり、おと小的にも記念の上演になります」
――― 劇場もシブゲキからシアター1010へ、台本もブラッシュアップされそうですね。
加藤「そうですね、人数も増えますししっかり脚色します。新しいキャラクターも4人出てきます。もともと千本桜ホールという小さな劇場でスタートした作品で、再演のシブゲキでの上演で脚色が広がり、そして今度は更に大きいシアター1010なので、その劇場に合わせたエンターテインメントにしていきたいと思っております。クオリティは落とさず質を上げて大胆に脚色していけたら」
モンスターひとりひとりにもドラマや背景があり人生がある
――― 物語はどこかで見た事があるようなRPGの世界を舞台に、惚れっぽいセイヤンが旅をしながら様々な人やモンスターに出会い、成長していく姿を描いていく。舞台での活躍が続く太田将熙は、おとな小学生に初出演にして主演セイヤンをどう演じていくのだろうか。
太田「2017年の上演台本を拝見しましたが、はじめの1ページ目からずっと笑っていました。ふざけていると思わせておいて途中からモンスターの方にも感情移入ができたり、人間が悪く見える瞬間もあって、色々な見方ができる作品だと思いました。普通は人間の視点でモンスターを倒して行きますが、この作品はそうではなくてモンスターひとりひとりにもドラマや背景があり人生がありました。ただの RPG ではなくてとても面白いんです」
――― ヒーローに必要な要素とは?
太田「・・・・・・愛と勇気と真っ直ぐなピュアな心があった方が何かに向かって頑張れますよね。この世界観がとにかく大好きです。今回シブゲキからシアター1010になりますが、同じセイヤンのままでは通用しないと思いますので、表現を大きくしたり色々試行錯誤をしながら挑戦していけたらと思っています」
――― モンスター・サラブレット役を続投する川隅美慎。セイヤンの敵役としてモンスター側の視点に再び挑む。
川隅「ぶっ飛んでる作品ですよね。RPGゲームは男女問わず誰もが1度はやったことがあると思うんです。その中で当たり前にモンスターや敵をただ殺し続けてたことが悪でしたが、そのあたり前だった事を逆転の発想で持ってきた作品。すごく感情移入したらゲームができなくなるんじゃないかと(笑)」
加藤「セイヤンを観たお客様にはよく言われます」
川隅「ちょっと立ち寄っても楽しめる作品。子供心を思い出させるようなところがあったりもするので、いろいろなしがらみの中で生きてきた大人たちが少しでも童心に帰ってもらえたらいいかなって」
――― 前回、童心に帰れましたか?
川隅「僕はずっと子供になっていました。子供の頃遊んでいたような感覚で、おもちゃ箱に入っている気分でやっていましたね」
――― 今回のサラブレット役はどう演じていこうと思ってます?
川隅「主演が太田さんで脚本、劇場も変わりますので、1010版のサラブレットになれたらいいな。役としてはたぶん一旦ゼロにして1から役作りをすると思います。僕も初参加の気持ちで演じていけたら。きっとRPGとしてもスケールが大きくなるので、ゲーム的にはオープンワールドに変わるというか、お客様にも伝わって楽しんでもらえたらいいなと思っております」
――― おと小メンバーの石原美沙紀は前作と同様にチャッピリン役を熱演する。
石原「私は2017年におとな小学生に参加しまして2年ですが、それからセイヤンシリーズには全て出演しております。前回のシブゲキからググっと規模が大きくなり、私自身もこんなに大きな劇場に立つのは初めての体験でドキドキしています。おとな小学生のメンバーとしてしっかりと支えていけたら。そして来ていただいたお客様におとな小学生を更に好きになってもらえるようにバージョンアップして私も成長して頑張ります。物語はぶっ飛んでいてとても面白い世界観になっていますので何も考えず足を運んでくれたら嬉しいです。
チャッピリンはモンスターハンター。RPGにおける盗賊のキャラクターです。セイヤンではヒロインが3人くらい出てきますが、その一人になります。サラブレットともめちゃめちゃ絡む重大なポジションですね、ワクワクします」
「『がんばりなー』とお声がけいただきました」
――― そして、同じくおと小メンバーの林千浪が、初めての母役キャラメロン王女に挑む。
林「シブゲキでやった再演を拝見しましたが、まさか自分が尊敬している女優さん(富田麻帆)が演じた役を演じるとは思っていませんでした。キャラメロンはモンスターが嫌いなポジション。自分と相反する役という部分で挑戦です。色々負けないように、キャラクターとしても作品のスパイスになれるように頑張ります。大きなステージも挑戦ですが、お芝居においてはどんなキャパシティーでも常に発見だと思うので、そこは変わらずにできたら」
――― 富田真帆さんからは何かメッセージはありましたか?
林「『がんばりなー(モノマネ風で)』とお声がけいただきました!」
――― 劇場が広くなることで、舞台セットやギミック、アクションシーンもレベルアップするという。
加藤「 今回舞台美術的な部分の仕掛けも変わってきて、よりRPG感が増してすごく面白くなるんじゃないかな。とにかく心強いキャスト、スタッフが集まってくれたので何の心配もしていません」
――― そして共演に小山百代さん、篠田みなみさん、小南光司さん、吉川友さん、桑野晃輔さんなどが名を連ねていますね。
加藤「とても素敵なキャストが集まってくれて、お客様には絶対楽しんでもらえると思います。前回、川隅くんから役づくりを色々提案してくれて話し合って作り上げたので今回も深く掘り下げられるのではないかなと。新しいスパイスとして太田セイヤンが何を僕に持ってきてくれるか、そこもまた作品が良くなる要素ですね」
川隅「僕と(加藤)光大さんは同い歳で彼は演出家をして舞台を作っていて、今度はシアター1010で上演、こんな同い歳はなかなか居ません。色々な仕事の現場でもあの年齢ですごいよねって光大さんの名前が出てくるんです。この公演を実現しようとしている彼の力になれたらいいなと。2.5次元作品が流行っている中で、近いんだけどそうではないオリジナル作品をやり続けていて、ちょっと他とは違う魅力がありますよね。
まさに“おとな小学生”という名前通りで、大人だけど小学生の時の気持ちを忘れてない、そういう気持ちを思い出させてくれる劇団。この魅力がもっと沢山の人に伝わって行ければいいな」
林「今回のキャストさんは同世代の20代から30代が多く、とても幅広いジャンルからいらしていただいています。光大さん作品はまず役柄のチームに別れてかたまり、そこからどんどん派生して仲良くなっていきますね」
石原「同世代が多いので気付いたら仲良くなっていますね。みんなでご飯に行きましょう!」
――― 今日の取材で少し距離が近づいたのでは?
林「そうですね、顔合わせの時に久しぶりってご挨拶してもいいですか?」(全員笑)
加藤「2人(太田、川隅)は共演していますよね?」
川隅「はい、『はたらく細胞』の舞台初演で共演していて、僕は基本的に誰とも絡まない役で、唯一将熙くんの役とだけ絡んでいて僕が将熙くんを元気にさせる役でした。今回もちょっと近いような関係性かも?」
――― では川隅さんとの舞台は心強いですね。
太田「ほんとにそうです。今回はオリジナル作品なので役作りは無限大、その中で美慎くんとガッツリ芝居で絡めるのはめちゃくちゃ楽しみですね」
数々の舞台で華麗な殺陣を魅せてきた中村誠治郎が殺陣師に就任
林「初共演のキャストの方が多くて、色んな方とお芝居できることが一番楽しみですね。そして今回殺陣がすごいことになると噂を聞いておりまして…」
加藤「実は殺陣師として中村誠治郎さんが参加して下さいます。川隅くんのご紹介で実現しまして、雲の上の存在の誠治郎さんが僕の作品で殺陣付けをしてくれるなんて、正直震えています」
石原「私たちの役も(殺陣が)ちょいちょいあるらしくて頑張ります!」
加藤「1010ならではの殺陣シーンも見どころになると思います」
林「光大さんから『中村さんが決まったよ!』と言われて、美慎さんのブログを見たら前日にご飯を食べていて(笑)直接オファー!? すごいですよね」
川隅「そうそう(笑)。2人でご飯を食べて『10月って何してるの?』って。『殺陣だけならできるかも』『マジでやってください!!』と」(全員笑)
加藤「僕が18歳の頃に戦国BASARA等で大活躍されていたのが今でも印象に強く残っているので、とても嬉しいですね」
太田「中村さんとの共演はありませんが美しい殺陣を拝見しておりました。僕の殺陣の経験値はほとんどゼロなので、とても良いご縁に恵まれました。殺陣を愛している30-DELUXの村瀬文宣さんに誠治郎さんの参加を話したらめちゃめちゃ興奮していて! この作品自体はコメディタッチですがガチの殺陣でそのギャップを出せたら。楽しみですね」
加藤「(スタート時は弱い)セイヤン的には合ってるかもしれない。これからレベルアップしていけるね。川隅くんと村瀬さんの殺陣を筆頭にして、その絡みも掘り下げていけたらと。これは前回には無かった所で、そこも新たな見どころになりそうです」
――― では最後にメッセージをお願いします。
太田「再再演できる作品は数少なく、アドリブを入れなくてもしっかり笑いをとれる面白い作品になっています。その作品をバージョンアップしてシアター1010で上演するこの時に参加でき光栄です。まずはお客様に良い作品を届けるという気持ちでみんなと切磋琢磨していけたら。笑ってホッとしてもらえたら嬉しいです」
(取材・文:谷中理音 撮影:間野真由美)